認知症で寝てばかり…その理由は?
介護時にできる対策や注意点


認知症になった親が、最近寝てばかりいる気がして不安を感じている方はいませんか?
たしかに認知症で寝てばかりになる可能性もありますが、理由や対策を理解し、正しい対応ができれば心配はいりません。

そこでこの記事では、認知症で寝てばかりになるのはなぜなのか説明したうえで、寝てばかりの理由の一つである意識障害について解説します。介護時にできる対策や、寝てばかりの方と接するときの注意点も紹介します。

認知症で寝てばかりになるのはなぜ?

認知症と寝てばかりいることに関係性があるとは思えない方もいるかもしれません。しかし、認知症の初期症状として睡眠障害があります。

睡眠障害にもさまざまなタイプがあり、例えば、アルツハイマー型認知症の初期には不眠の症状が現れます。不眠の場合は夜眠れず昼夜逆転になり、日中は寝てばかりいるようになります。

一方、アルツハイマー型認知症が進行した場合や、レビー小体型認知症の場合に表れるのは過眠の症状です。ほかにも、認知症の方は無気力になりやすく、それが周囲からは寝てばかりに見えることもあります。

また、意識障害の一種である傾眠が認知症の症状として現れ、寝てばかりになっている可能性もあるでしょう。

意識障害は居眠りと似ていますが、前者は起きたときにその前の出来事を忘れている健忘が生じることも多いため、その点を判断材料にできます。意識障害の詳細は次の見出しで解説します。

意識障害の4つのレベル

認知症では傾眠傾向が見られますが、意識障害はそれだけではありません。4つの段階があるため、それぞれ詳しく確認しておきましょう。

意識清明

意識清明は、意思の疎通や状況の判断が問題なくできる状態です。意識もはっきりしており、障害はありません。

傾眠

傾眠は浅い眠りの状態です。うとうとしていますが、肩をたたくなどの軽い刺激で意識を取り戻します。呼びかけにも目を覚ましますが、目覚めたあとも注意力が欠如したり、無気力な状態が続いたりする方もいます。

また、傾眠の場合、いったん目覚めてもそのままにしておくと再び眠ってしまうこともあります。

昏迷

昏迷は傾眠よりも深い眠りの状態で、簡単には意識を取り戻しません。覚醒させるためには、体を強く揺すったり、大声で呼びかけたりする必要があります。そのとき、強い刺激に対して、手で払われたり大きな声を出したりするなどして嫌がる場合もあります。

昏睡

昏睡は意識障害のうち最も重度で、外部からどのような刺激を与えてもまぶたを閉じたまま意識を取り戻さない状態です。外部からの刺激に抵抗することもありません。

もし体を強くつねったり揺すったりした際に、顔をしかめたり避けたりした場合は半昏睡状態です。ただし、昏睡状態でも脊髄反射や排泄行為は見られます。この点が、一切の反応が見られない脳死状態との違いです。

認知症で寝てばかりの方の介護時にできる対策

認知症で寝てばかりの方への対策には、介護する際にできることもあります。ここではそのなかから5つを紹介します。

こまめな水分補給

水分が不足すると脳の働きが低下し、傾眠につながりやすいため、こまめな水分補給は欠かせません。特に高齢になると水分を蓄える機能が衰えるうえに、喉の渇きを感じにくくなるため、積極的に水分補給を促す必要があります。

水分補給の際のポイントは、一度に大量に飲ませないことです。口に含む程度の少量の水をコップに入れ、誤嚥防止のために意識がはっきりしているときに飲ませるようにしましょう。

飲むタイミングは起床時や食事中、入浴前、就寝前などがおすすめです。水分補給には水が最適ですが、お茶など本人が好むものでも問題ありません。

服薬の見直し

服用中の薬が原因で傾眠になっている可能性もあります。認知症の薬にも副作用で眠くなるものがありますが、風邪や花粉症のときに処方される抗ヒスタミン薬にも眠くなる成分が含まれています。

脳細胞の興奮を抑えるための抗てんかん薬も、服用すると傾眠になる可能性があります。新しい薬を服用し始めたときや、薬の量が増減したときなどに傾眠傾向が見られるようになったら、医師に相談しましょう。

その際、症状が現れ始めた時期や頻度なども忘れずに伝えてください。また、薬を服用する際は副作用について事前に確認し、用法用量を守るのも重要です。

積極的な声かけ

認知症で傾眠症状が現れている方には、介護時に積極的に声をかけてください。声かけは目を覚ますためだけでなく、眠る時間を減らす効果もあります。

単に声をかけるだけでなく、会話をするとコミュニケーションにもなり、脳の活性化にもつながって傾眠の症状改善も期待できるでしょう。

声をかけても目覚めない場合は、肩を揺するなどして刺激を与えるのも有効です。定期的に声かけで意識確認することで、異変があった際にも迅速に対応できます。

運動の促進

日中に軽い運動をすると、脳を活性化して覚醒状態を保つだけでなく、身体機能の向上にもつながります。覚醒状態を保つための運動は、軽い散歩やストレッチなどでかまいません。

もう少し運動量を増やして、ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分以上行なうと、認知機能低下の予防にもつながります。また、無酸素運動である筋力トレーニングも併せて行なうとより効果的で、筋力アップや心肺機能向上も期待できます。

腕立て伏せや腹筋などを週に2~3日行なうのもよいでしょう。日中に運動することで適度な疲労感が生まれ、夜間の睡眠の質も向上するなど生活リズムを整える効果も生まれます。

病院の受診

単なる居眠りと意識障害の傾眠は、簡単には区別がつきません。また、傾眠はほかの病気が原因の場合もあります。気になる点があれば早めに病院を受診し、医師の判断を仰ぎましょう。

傾眠を含む意識障害の診察では、例えばどのようなときに症状が現れるか、ほかに患っている病気はあるか、どのくらいの頻度で症状が現れるかなどを聞かれます。

日常の些細な出来事が判断材料になることもあるため、普段の生活で気になった点は細かく記録し、なるべく正確に答えられるようにしておきましょう。

認知症で寝てばかりの方と接するときの注意点

認知症で寝てばかりになると生じるリスクもあります。認知症の方と接する際は、以下の3点に注意してください。

誤嚥に注意する

寝てばかりの方と接するときは、誤嚥に注意しなければなりません。傾眠症状により意識がはっきりしていない状態で食事をとろうとすると、食べ物をよく嚙まずに飲み込むおそれがあり、誤嚥につながります。

うとうとして姿勢が悪くなるのも誤嚥の原因になりかねません。また、高齢者は飲み込む力が弱いうえに、嚥下機能も低下しています。

そのため、食べ物が気管から肺に入り、誤嚥性肺炎になる可能性もあるでしょう。さらに、傾眠症状が現れると吐き出す機能が働かず、最悪の場合窒息するおそれもあります。

誤嚥のリスクを減らすためには、正しい姿勢で食べることも重要です。介助が必要な方がベッドで食べる際は、背もたれの角度を30度程度にすると食べやすい姿勢がとれます。食事のメニューにも気を配り、飲み込みやすいものなどにしましょう。

事故に注意する

認知症の方は事故を起こしやすいため注意が必要です。認知症の方は車いすを使うことも多く、その際に傾眠症状が現れると姿勢が崩れて車いすから転落するおそれがあります。

傾眠症状でうとうとしているときに立ちあがろうとして、転倒する場合もあるでしょう。また、傾眠傾向が続くと活動量の低下から筋力が衰え、転倒につながることもあります。

転落や転倒で打撲や骨折を負うとさらに活動量が低下し、その結果ますます傾眠傾向がひどくなるという負の連鎖に陥る可能性も否定できません。

認知症で寝てばかりの方を介護する際はなるべく目を離さないようにし、姿勢を正したり支えたりといったサポートをしてあげましょう。

せん妄に注意する

寝てばかりの方はせん妄状態になる可能性があるため注意をしましょう。せん妄状態になると見当識障害が始まり、時間や場所がわからなくなります。

集中力や思考力も低下し、生活リズムが崩れて不眠症状が現れることもあるでしょう。

実際の出来事と異なる解釈をする妄想の症状や、実際にはいない人や動物、虫などが見える幻視の症状が現れる場合もあります。せん妄の症状は一日のうちに悪化と改善を繰り返し、この状態が数日間続くこともあります。

認知症以外で考えられる寝てばかりの原因

寝てばかりの症状が現れるのは認知症の方だけではありません。ここでは、認知症以外で考えられる寝てばかりの原因を2つ紹介します。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫は、硬膜と脳の間に血腫ができる病気です。病気が進行すると認知機能や活動量が低下し、周りからは寝てばかりに見える場合もあります。

頭部の外傷が原因の場合が多いため、どこかで頭をぶつけてから寝てばかりになったと気付いたら、すぐに受診しましょう。ほかにも、頭痛や歩行困難など、寝てばかりの症状と併せて気になる点が表れたときは、早めの受診をおすすめします。

内科的疾患

寝てばかりの症状は、内科的疾患があるときにも表れます。例えば、代謝にかかわる肝臓や腎臓に異常があると寝てばかりになりやすいでしょう。

風邪やインフルエンザで発熱した際も、体を休めるために寝てばかりになります。通常なら、内臓の働きが正常になったり熱が下がったりすれば、寝てばかりの症状も収まります。

寝てばかりになる症状が見られた時の対策や注意点を覚えておこう


認知症の症状には睡眠障害があり、その影響で寝てばかりになることもあります。また、意識障害の一つである傾眠の症状が現れ、寝てばかりなっている可能性もあります。

寝てばかりの方を介護する際はこまめに水分補給を促すようにし、服薬も見直すとよいでしょう。積極的に声をかけ、運動を促すことも対策になります。

また、寝てばかりの方と接する際は誤嚥や事故、せん妄などにも注意が必要です。認知症以外の病気で寝てばかりになっている可能性もあるため、気になる点があれば早めに病院を受診しましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年2月27日

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