高齢になるとノンレム睡眠の時間が減少しやすく、上質な睡眠が得られにくくなります。また、無気力な状態が続くことで食事がおろそかになり、栄養不足に陥る可能性も考えられるでしょう。
このようなことが慢性的に続けば、アパシーの症状はさらに悪化する恐れがあるため、生活習慣を見直して症状の改善を目指すことが大切です。
例えば、無理のない範囲からの取り組みとして、毎朝起床後に日光を浴びる方法が挙げられます。日光を浴びてセロトニンの分泌を促すと、脳の活性化や精神の安定が期待でき、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成も増えるでしょう。
脳機能の低下、認知症の一症状としてアパシーが現れているケースでは、医師の判断により薬物療法が提案されることもあります。
アパシーに対して用いられる薬として挙げられるのは、脳の代謝を活性化させる「脳代謝賦活剤」や、認知症の進行を抑制する「抗認知症薬」などです。
薬の種類や投与量は、患者の年齢、健康状態、症状の程度などを総合的に考慮して決定されます。まずは医療機関を受診し、必ず医師の指導を仰ぐようにしましょう。
ご家族にアパシーと思われる症状が見受けられた場合、どのように接するとよいのでしょうか。ここでは、具体的な接し方について解説します。
アパシー状態の家族に対して、つい何でも手を差し伸べたくなる気持ちは自然なものです。特にトイレや着替え、食事といった日常生活のサポートは、「困っているなら助けたい」という思いからくる行動でしょう。
しかし、過度なサポートはかえって本人の「何もしなくても良い」という意識につながり、症状の長期化や悪化を招くこともあります。
本人が自力でできることがある場合、静かに見守る姿勢が大切です。小さな行動であっても、自分の力で達成するという成功体験は、活動意欲の回復に大きく貢献します。
アパシーの大きな特徴の一つは、他者への関心が薄れることです。そのため、孤立した状態が続くと、ますます無関心が深まり、社会とのつながりを断ってしまう恐れがあります。これを防ぐためには、意識的に人との交流機会を増やす工夫が必要です。
例えば、地域のデイサービスに参加したり、近所のコミュニティー活動に参加したりすることで、他者とかかわる機会を作れます。また、家族や友人と一緒に趣味の時間を過ごすことや、気分転換のために軽い運動を取り入れることも効果的です。
アパシー状態にある人は、生活リズムが崩れやすく、日々の生活に対する関心や意欲が失われていることが多く見られます。そのため、規則正しい生活習慣を取り戻すことは、症状の改善において重要なポイントといえるでしょう。
しかし、本人が自ら生活を整えるのは難しいものです。介護者がすべてを代行する必要はありませんが、例えば「そろそろご飯の時間だよ」「今日は早めに寝ようか」など、さりげない声がけで生活のリズムを整えてあげることが大切です。
適切なタイミングで働きかけを行うことで、自然な形で生活習慣の改善につなげられるでしょう。
アパシーが確認される高齢者に寄り添い、声をかけ続けることは大切なことですが、それが本人にとっては負担になる場合もあります。アパシーの状態では他人とのかかわりをストレスと感じることもあるため、体調や気分に配慮しなければなりません。
このような場合は、無理に一緒に過ごすのではなく、本人の希望を尊重し、静かな一人の時間を大切にしてあげることも必要です。患者本人が穏やかな気持ちで過ごせるようになれば、介護者自身の心の負担も軽減されるでしょう。
日々の生活に小さな目標を設けることは、行動意欲を引き出す有効な方法です。例えば「1日に1回は散歩する」「毎週木曜日は掃除をする」など、無理なく達成できる目標は、成功体験につながり行動意欲を高めることが期待できます。
ただし、無意欲・無関心ゆえに拒否反応が見られる場合は、心理療法などと組み合わせて支援するのも一つの方法です。介護者は、焦らずに見守りながら、継続的に声がけをして習慣化を促すことが大切です。
本人のペースに寄り添いつつ、少しずつ前向きな行動を取り戻せるよう、根気強く支えていきましょう。