認知症の方が食事を拒否した際には、無理に食べさせてはいけません。ここからは、認知症の方が食事拒否をした場合の対応方法を8つ紹介します。
認知症の症状の一つである「失認」では、食器の柄と食べ物が判別しにくいことがあります。そのため、食器はシンプルな形状の、食べ物が目立つ色のものを用意するとよいでしょう。食欲が湧きやすい暖色系(黄色・オレンジなど)の食器もおすすめです。
また、箸がうまく使えない場合はスプーンやフォーク、補助箸を用意しておくとよいでしょう。食事する際のストレスを軽減することで、食べることに集中できます。
食材の工夫や調理方法・盛り付け・メニューの変更をする
本人に食べやすいと感じてもらえるよう、食材をカットする際の大きさや、食べ物の固さを意識して調理することも大切です。
食欲が湧くように、盛り付け方を工夫しましょう。彩りのバランスが良い盛り付けをしてみたり、小分けにして出したりするのもおすすめです。また、盛り付けの量が多いと見た目にも圧迫感が生じ、食欲の減退を招くこともあるため注意が必要です。
栄養バランスも大事ですが、本人の苦手な食べ物ばかりでは食欲が湧きづらく、食事拒否につながる可能性があります。可能な範囲で本人の好きなメニューを出し、食欲の増進に結び付けていきましょう。
食事拒否は、声かけや食事介助をすることで改善できることもあります。認知症により「食べたくても食べ方がわからない」という失行状態になってしまう方がいます。
そのようなときは一緒に食事を取ったり、食べ方を見せたりすると、認知症の方が真似して食べてくれることもあります。料理内容の説明など、食欲が湧くような声かけも効果的です。食事の前に食べ方や箸などの道具の使い方を説明しておくのもよいでしょう。
自分で食事するのが難しいという方にはさりげなく手助けをしましょう。その際は急かすことなく、本人のペースに合わせてゆっくりと行うことが大切です。
認知症の方は周囲の環境の影響を受けやすくなっているため、食事の際はテレビを消す、食事以外のものを机上に置かないなど、食事に集中できる環境を整えることが大切です。
また、「照明が明るすぎる・暗すぎる」「食事を取る空間が広すぎる」といった些細なことがストレスに感じられ、食欲不振へとつながる場合もあります。認知症の方が心地良く食事を取れる環境作りをしましょう。
このほか、椅子やテーブルの高さを調整し、食べやすい体勢をとれるようにすることも大切です。体勢が悪いまま食事しようとすると、食べ物をこぼしたり、飲み込みがうまくできなかったりして、心地良く食事が取れなくなってしまいます。
「入れ歯が合わない」「歯周病や虫歯などによる痛みがある」などの口腔トラブルも、食事拒否の原因の一つです。入れ歯の不調でしっかりと噛むことができなかったり、痛みで食事に集中できなかったりといったストレスから、食事拒否に至ることがあります。
また、口腔ケアが不十分で舌が汚れていると食べ物の味を感じられなくなるため、毎日の口腔ケアをしっかりと行うことが大切です。
体調管理は毎日を快適に過ごし、ご飯をおいしく食べるためにも大切なことです。認知症の方は、体調の変化や痛みなどを自覚しにくかったり、体調が悪いことをうまく伝えられなかったりします。
「体調が悪く食欲がない」「便秘でお腹に不快感があり、食欲が湧かない」といった理由から食事拒否をしているケースもあります。周囲の方が適切に健康チェックを行い、体調管理をしましょう。
活動量が少ない認知症の方の場合、食事の時間になってもお腹が空かないことが食事拒否につながっている可能性もあります。身体への負担が少ないストレッチや散歩など、日常生活のなかに適度な運動を取り入れるとよいでしょう。
本人にとって興味のある活動をしてもらう、できる範囲での運動を取り入れるといった取り組みで、食欲の促進ができます。
食事拒否している相手に対し、食べることを強要したり責めたりしてはいけません。認知症の方が大きなストレスを抱え、食事の時間が苦痛の時間になってしまい、食事拒否を強めてしまう危険性があるためです。
認知症の方が食事拒否をしているときは、本人の意思を尊重することが大切です。見守る姿勢を保ちつつ、食欲がなくても食べられそうなものを用意するとよいでしょう。