嚥下障害は、認知症のほか、くも膜下出血・脳梗塞・脳出血などの脳疾患による後遺症、パーキンソン病や口・喉の腫瘍などによって起こると考えられています。
一方で、特定の病気がなくても高齢になることで筋力が低下し、噛む力など嚥下機能が衰えていくケースも少なくありません。
認知症にはおもに「アルツハイマー型」「レビー小体型」「脳血管性」「前頭側頭型」の4つの種類があり、嚥下障害の表れ方がそれぞれ異なります。各種の特徴を理解し、適切なサポートにつなげましょう。
認知症の型のなかで最も多いタイプで、進行すると「食事をしたこと自体を忘れる」といった記憶障害が表れます。飲み込む機能そのものは維持されやすい傾向がありますが、症状が進行して脳全体の機能が低下すると「食事を拒否する」「食べ物だということ自体がわからない」「飲み込まずに口の中に溜めてしまう」といった障害が表れることが多くなります。
脳の身体機能を司る部位がダメージを受けるため、ほかのタイプの認知症に比べると早い段階で嚥下障害が起こりやすいのが特徴です。飲み込む動作が困難になり、むせやすくなります。
脳梗塞や脳出血などによって生じる認知症で、損傷が起きた場所によって症状が異なることが特徴です。そのなかで、誤嚥やむせるといった症状が表れることがあります。また、食事に関する行動に異常が見られることもあるでしょう。
大脳皮質の前頭葉や側頭葉が萎縮するため、食事の行動に変化が出やすくなります。例えば「他人の食べ物を奪う」「食べ物を口いっぱいに入れる」「スプーンなどを使わず器から直接食べようとする」といった行動が見られ、誤嚥や窒息のリスクが高まります。
嚥下障害の具体的な症状として、食べ物や飲み物を胃へ送る過程に異常が生じ、食事中に激しくむせたり、喉に水分が絡んだような湿性嗄声(させい)が見られたりすることがあります。
嚥下障害は「食べ物が飲み込みにくい」というだけではなく、命にかかわる重大なリスクをはらんでいます。特に注意すべきリスクは、食べ物が気管に入ることで起きる窒息や誤嚥性肺炎です。中でも誤嚥性肺炎は、高齢者にとって死亡の危険性が非常に高い病気です。
また、うまく食べられないことが原因で、栄養不足(栄養障害)や脱水症状も起きやすくなります。これによって体の抵抗力が弱まり、肺炎のリスクが高くなるだけでなく、筋力低下によって嚥下障害がさらに悪化するという負の循環をもたらすおそれがあります。
嚥下障害がある方にとって、食事は危険と隣り合わせです。安全においしく食べ続けるには、どのような配慮が必要なのでしょうか。具体的な介助方法や食事の工夫、相談先について詳しく解説します。
食事のサポートをする際、介助者は立ったままではなく椅子に腰かけ、相手の目の高さに合わせて接するようにしましょう。上から見下ろす形になると、相手の様子を確認しにくいうえ、対象者のあごが上を向いてしまうことで誤嚥を招くおそれがあります。
また、言葉だけでなくジェスチャーを交えて、献立内容や、してほしい動きを伝えます。食事中は常に様子を観察し、声かけを行うなどして、飲み込んだあと口の中に食べ物が残っていないかを確認しましょう。こうした配慮が、安全な食事につながります。