認知症の方は、訪問販売で勧められるまま不要な契約を結んでしまう場合があります。新聞購読や住居の修理、太陽光パネルの設置、電話代が安くなるとうたった契約などを勧められ、そのまま手続きしてしまうケースも少なくありません。
本人が契約した事実を十分に理解しておらず、あとになって家族が書類や請求書を見つけて、契約に気付くケースも多くあります。訪問販売は支払額が高くなることが多いため、気づいたら速やかに対応することが必要です。
認知症の方に買い物トラブルが起きる背景には、さまざまな原因があります。ここでは、代表的な4つの原因として、認知機能の低下、長年の買い物習慣、なくなったら困るという不安感、悪質な業者の存在について解説します。
認知症になると、判断力や記憶力、論理的思考力などの認知機能が低下します。その結果、商品やサービスが自分に必要かどうかの判断が難しくなってしまうのです。また、最近同じ商品を購入したかどうかや、お店で会計を済ませたかどうかを思い出せなくなる場合もあります。
こうした認知機能の低下が、買い物トラブルにつながる原因の一つとなります。
長年の暮らしのなかで買い物が習慣として身に付いている方やお店巡りが好きだった方などは、認知症を発症したあとも、それまでと同様に買い物に出かけたくなることがあります。本人にとっては買い物が日常生活の一部になっているため、周囲の人がやめるように伝えても、多くの場合は受け入れてくれません。
このようなケースでは、買い物を無理にやめさせようとするのではなく、買い物トラブルが起きないような工夫や対策をすることが大切です。
認知症の方のなかには、「食品や日用品が家になくなったら困る」といった不安を抱く方がいます。認知症で記憶力や判断力が低下すると、自宅に何がどれだけあるか把握できなくなり、不安や焦りが強まる場合があるためです。
このような不安を解消するために、同じものを何度も購入したり、一度に大量に買ったりしてしまうことがあります。
買い物トラブルが起きる背景として、認知症の方を狙う悪質な業者の存在もあります。このような業者は、認知能力が低下している方や日頃から孤独を感じている方に、巧妙に近づいてきます。そして、親切を装いながら言葉巧みに不要な商品やサービスを勧めるのです。
本人が必要な商品・サービスだと思い込み、家族に相談せずに契約してしまうと、被害に気付くことがとても難しいです。こうしたトラブルを防ぐには、状況に応じた対策が必要です。具体的な方法は、後ほど詳しくお伝えします。
以下では、買い物トラブルを防ぐための具体的な工夫を紹介します。まず大切なことは、買い物トラブルが起きた際に、一方的に本人を責めない姿勢です。頭ごなしに注意しても、行動の改善につながらないことの方が多く、むしろ本人の自信を喪失させてしまうでしょう。
また、買い物に出かけること自体は、軽度の認知症の方にとって良い刺激になる面もあります。そのため、外出や買い物をすべて止めてしまうのではなく、できるだけ安全に買い物ができるようサポートすることが大切です。
買い物トラブルを防ぐためには、周囲の人が買い物に付き添い、適度にサポートする工夫が必要です。買い物を禁止するのではなく、誰かが一緒に出かけて、できるだけ一人にさせないようにしましょう。認知症の程度に応じて適度な距離を保ち、会計の場面など必要なときだけ手を貸すようにするのがおすすめです。
あらかじめ「買うものリスト」や「買わなくてよいものリスト」を書いて渡しておくと、本人が買い物中に戸惑ったときの助けになります。家族だけで対応するのが難しい場合は、介護サービスの一つである付き添いサービスを利用するのも効果的です。
本人がよく買い物に行く店がある場合、あらかじめ事情を説明して協力をお願いすることも大切です。可能であれば、店内で見かけた際に声をかけてもらったり、会計を済ませるように促してもらったりすると、買い物トラブルを防ぎやすくなるでしょう。
会計をせずに商品を持ち帰ると、店側に迷惑をかけてしまいます。店と良い関係を築き、無理のない範囲で見守りをお願いすることをおすすめします。
家庭内の金銭管理を見直すことも大切な工夫の一つです。例えば、キャッシュカードやクレジットカードを持たせないようにしたり、銀行口座を分けて一つの口座に多額のお金を入れないように管理したりする方法があります。
また、少額をチャージしたプリペイドカードを渡し、買い物に使ってもらうようにすると、使い過ぎを防ぐこともできます。併せて、買い物をしたいときは家族に相談してからにするよう、日頃から話し合っておくとよいでしょう。
通信販売や訪問販売との接触をなるべく減らす工夫も、不要な注文や契約を防ぐために必要です。例えば、通信販売のカタログやダイレクトメールの送付を止めるだけでも、購入のきっかけを減らせます。
また、家にある固定電話を常に留守番電話に設定しておいたり、玄関先に「訪問販売お断り」のステッカーを貼ったりする方法も、効果が期待できます。さらに、見知らぬ人が訪ねてきても玄関を開けないなど、無理のない範囲でルールを決めておくのもよいでしょう。