認知症は何歳から発症する?若年性認知症4つのリスク


認知症は高齢者に多く見られる症状ですが、若い方でも発症する可能性があります。

「認知症は何歳くらいから発症する?」
「若年性認知症には、どのようなリスクがある?」
自分や家族の認知症について考える際、このような疑問を持つ方もいるでしょう。

若年性認知症と高齢者の認知症は、症状の出方に大きな差はありません。しかし、若年性認知症は高齢者の認知症よりも、家計や家族などに与える影響が大きくなる可能性があります。

この記事では、年齢別の認知症の有病率や初期症状、若年性認知症を発症した際の4つのリスクについて解説します。認知症の予防方法についても紹介しますので、参考にしてください。

認知症の発症は何歳から?

認知症を患う方の多くは高齢になってから発症し、年齢が高くなるほど患者数が増加しますが、40代や50代の方も「若年性認知症」を発症するケースがあります。

若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症を指します。若年性認知症の推定発症年齢の平均※は54.4歳です。

出典:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 『「わが国における若年性認知症有病率・生活実態把握」に関する調査研究報告書』(2020年)より朝日生命で試算

若年性認知症者数は、65歳以上の高齢者の場合と同様に、年齢の増加にともない増加する傾向にあります。

【年齢別】認知症の有病率はどれくらい?

次に、「65歳以上の認知症」と「18歳~64歳の若年性認知症」の有病率について見ていきましょう。

【65歳以上】認知症の有病率

65歳以上の認知症の有病率は、以下のとおりです。
 

年齢

全体

男性

女性

65歳~69

1.5

1.5

1.6

70歳~74

3.6

3.4

3.8

75歳~79

10.4

9.6

11.0

80歳~84

22.4

20.0

24.0

85歳~89

44.3

35.6

48.5

90歳以上

64.2

42.4

71.8

出典:厚生労働省 第97回社会保障審議会介護保険部会(令和4年9月12日)参考資料 地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進(2)

男性と女性の認知症の有病率を比較すると、79歳までは大きな差が見られません。しかし、80歳以降になると次第に差が大きく開き始め、男性よりも女性のほうがより有病率が高くなります。

【18歳~64歳】若年性認知症の有病率

若年性認知症の人口10万人当たりの有病率(推計・有病者の人数)は、以下のとおりです。
 

年齢

人口10万人当たり有病率(人)

推定患者数

(万人)

総数

18歳~19

1.6

0.0

0.8

0.002

20歳~24

7.8

2.2

5.1

0.037

25歳~29

8.3

3.1

5.8

0.045

30歳~34

9.2

2.5

5.9

0.055

35歳~39

11.3

6.5

8.9

0.084

40歳~44

18.5

11.2

14.8

0.122

45歳~49

33.6

20.6

27.1

0.209

50歳~54

68.1

34.9

51.7

0.416

55歳~59

144.5

85.2

115.1

1.201

60歳~64

222.1

155.2

189.3

1.604

18歳~64

57.8

36.7

47.6

3.775

出典:厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について」(2009年3月)

若年性認知症の有病率は、どの年代においても、女性よりも男性のほうが高い傾向にあります

認知症の初期症状とは?

高齢者の認知症や若年性認知症は、認知症の種類によって初期症状に以下のような特徴があります。認知症を早期に発見し、適切な治療に結びつけるには、初期症状について知っておくことが大切です。

認知症の種類

初期症状

 アルツハイマー型認知症

ž   物忘れ

ž   怒りやすくなる

ž   片付けが苦手になる

ž   時間や場所の感覚が衰える

ž   趣味などへの興味が薄れる

ž   匂いに鈍くなる

 脳血管性認知症

(障害が生じた血管の場所により症状が異なる)

ž   物忘れ

ž   感情のコントロールが難しくなる

ž   記憶力、理解力、計算力などの障害

ž   嚥下機能の低下

ž   排尿障害

ž   歩行障害

ž   運動麻痺

ž   抑うつ症状

 ビー小体型認知症

ž   パーキンソン症状(手足の震えなど)

ž   幻視

ž   妄想

ž   軽度の物忘れ

ž   抑うつ症状

ž   レム睡眠期行動異常症

ž   嗅覚異常

ž   便秘

 前頭側頭型認知症

ž   身だしなみに無頓着になる

ž   同じ言動を繰り返す

ž   社会性が低下する

ž   人格が変化する

ž   非常識な行動をする

ž   失語

ž   感情移入や共感ができない


若年性認知症の発症で考えられるリスクとは?

若年性認知症の原因には、生活習慣病・飲酒や喫煙・遺伝的要因・薬物乱用などが挙げられます。若年性認知症の症状の出方は、高齢者の認知症と大きく変わりません。

しかし、若年性認知症を発症した際の状況や周囲に与える影響は、高齢者の認知症と異なります。

ここでは、若年性認知症を発症した際のリスクについて解説します。

経済的な問題が発生する

若年性認知症の推定発症年齢は54.4歳のため、多くの方は働き盛りに発症します。働き盛りに若年性認知症を発症し、仕事を休職・退職する場合、収入が減ることで経済的に苦しい状況になることが考えられます。

また、認知症を発症した方のパートナーが介護をすると、多くの時間を介護に費やさなければならないため、パートナーの収入も減る可能性を考えなければなりません。生活費以外にも、患者本人の医療費や子どもの教育費などの捻出が厳しくなることもあるでしょう。

家族への影響が大きい

若年性認知症の患者は、若さゆえに体力があるため、徘徊や暴力などの症状が出ると介護者に大きな負担がかかります。厚生労働省の調査※では、家族介護者の約6割が抑うつ状態にあると判断されています。

厚生労働省 報道発表資料「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について」(2009年3月)

また、認知症を発症した方の親も介護が必要なケースがあります。家庭内で複数の介護が発生すれば、それだけ負担が大きくなります。

受診が遅れる

物忘れや行動の変化などの異変に気付いても、「まさか自分が」と若年性認知症を疑わないケースが見られます。

身体の異変を「疲れ」や「更年期障害」などと勘違いすると、受診が遅れることも考えられます。また、認知症以外の診療科を受診して、発見が遅れることもあるかもしれません。

若年性認知症は、高齢者の認知症と比べて、約2倍のスピードで症状が進行します。そのため、早期に発見し、早期治療を受けることが大切です。早期治療を受ければ、症状の進行が遅くなり、不安を軽減するなどのメリットが期待できます。「いつもと違う」と感じたら、すぐに認知症専門の医療機関で診察を受けることが大切です。

公的介護サービスを受けられない場合がある

公的介護保険制度では、40歳以上64歳までの方は、第2号被保険者として介護サービスを受けられます。ただし、老化や加齢などに起因する特定疾病による、要支援または要介護状態でなければなりません。

若年性認知症の原因が加齢によるものであれば、介護サービスの利用は可能です。しかし、アルコール性認知症や外傷性認知症など、老化や加齢に起因しない若年性認知症では特定疾病として認定されないことがあります

認知症を予防する4つの対策

認知症には、「認知症の進行を緩やかにする」「認知症になるリスクを減らす」ことに期待できるという観点で推奨される予防策がいくつかあります。ここでは、認知症の予防策を4つ解説します。

適度な運動を心がける

適度な運動を行なうと、全身の血行が促進され、脳に刺激が行き渡るようになります。

運動のなかでも、認知症への効果が高いとされるのは、ジョギング・ウォーキング・水泳・サイクリング・エアロビクスなど、無理なく長時間続けられる有酸素運動です。

運動をする習慣のない方は、まずは1日30分、週2~3回以上の運動を心がけるとよいでしょう。

人とのコミュニケーションを増やす

人と話す機会が減ると、「新しいことを発見する」「人の表情を読み取る」といった、脳への刺激が減るだけでなく、口を動かす機会も減ります。

人とのコミュニケーションを増やすためにも、外出する機会を増やしましょう。趣味の教室に通い仲間と交流したり、お店の店員さんと会話したりすることで、日常生活が活性化されるだけでなく、運動不足の解消にもつながります。

生活習慣病を予防する

生活習慣病とは、ストレス・食事・飲酒・喫煙・運動などの生活習慣が発症の原因となる疾患の総称です。具体例として、脳血管疾患・がん・心疾患・高血圧症・糖尿病・脂質異常症・動脈硬化症などが挙げられます。

生活習慣病を患うと認知症になるリスクが高まるため、正しい生活習慣を身に付けるよう心がけましょう。持病がある場合は、定期的に診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。

バランスの良い食事を心がける

バランスの良い食事は、生活習慣病の予防を期待できます。農林水産省※は、栄養バランスを整えるために、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上食べることを推奨しています。

健康のために良いとされる食材を一度にたくさん食べるのではなく、食材の種類やバランスを考えながら摂取しましょう。食事をする際に、しっかり食材を噛むと脳が活性化されます。

また、大量の飲酒は、認知機能の低下や生活習慣病のリスクを高めるため、なるべく控えめにするよう心がけてください。

農林水産省「考える やってみる みんなで広げる ちょうどよいバランスの食生活」(令和2年5月)

認知症は年齢に関係なく誰もが発症する可能性がある


認知症は多くの場合、高齢になってから発症します。しかし、若年層の方にとっても、決して他人事ではありません。

若年性認知症の多くは、働き盛りの方が発症するため、家計や家族への負担が大きくなる傾向にあります。

また、自分を認知症だと認識できない場合が多く、適切な医療機関での受診が遅れる場合や、発症の原因によっては介護サービスを受けられない場合があるなどのリスクも考えられます。

早いうちから認知症予防に取り組むとともに、将来へ向けての備えを考えておきましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年8月7日

介護について知る

介護を予防する

介護について考える

公的制度・支援サービス

介護の費用

介護が始まったら

認知症について知る

認知症とは

認知症の予防

もの忘れ・認知症の専門家の
特別コンテンツ

生活習慣病について知る

生活習慣病とは

生活習慣病の予防

老後の備え方

年代別アドバイス