認知症の初期症状チェックリストと種類別の症状特徴・対策方法

みなさんのなかには、自分や家族の物忘れが増えてきたように感じている方や、中高年層になって認知症などの不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

認知症の疑いがある場合、認知症の初期症状にどのようなものがあるのか、また自分の症状は認知症に当てはまるのか簡易的なチェックリストで確認しておきたいところです。

一般的に以下のような傾向が見られる場合は、認知症の初期症状が現れ始めているおそれがあります

・同じ内容を何回も聞いたり同じものを何度も購入したりする
・テレビや他人との会話の内容をすぐ理解できない
・怒りっぽくなった など

少しでも認知症の初期症状チェックリストに当てはまるものがあった場合は、食事や運動習慣の見直しなどによって予防・対策することが大切です。

この記事では、認知症の初期症状チェックリストを確認しながら、どのような症状があるのか紹介しますので、ぜひご自身でもチェックしてみましょう。併せて、認知症の分類別に症状の特徴や、対策方法・予防方法についても解説していきます。

認知症の初期症状チェックリスト|代表的な6つの症状を確認しよう

まずは、認知症の初期症状チェックリストとして、以下に認知症の初期症状における代表的な6つの症状を記載しました。

☑同じ内容を何回も聞く、同じものを何度も買う
☑今日の日付がわからない、通り慣れた道で迷う
☑料理の手順や使い慣れた家電の使い方がわからない
☑テレビの内容が理解できない、横断歩道を渡るタイミングがわからない
☑やる気が出ない、物事への興味関心が薄れてきた
☑怒りっぽい性格になった、人付き合いが減った

上記のなかに当てはまる症状がある場合、認知症の初期症状が現れている可能性があります。では、それぞれの症状について具体的に確認していきましょう。

記憶障害

上記の認知症の初期症状チェックリストの「同じ内容を何回も聞く、同じものを何度も買う」が当てはまる場合は、認知症の初期症状の一つである記憶障害の可能性があります。

具体的な症状としては、数分前など直前に見聞きしたことを思い出せないといった症状が多く見られます。予定をすっぽかしてしまうことや、貴重品をよくなくすといったことも、記憶障害の一例としてよく挙げられる症状です。

見当識障害

見当識障害とは、自身が置かれている状況を周囲の状況と結びつけて把握する機能が低下することを指します。

認知症の初期症状チェックリストの「今日の日付がわからない、通り慣れた道で迷う」に当てはまる場合は、この見当識障害の可能性があるでしょう。

見当識障害が起こると、時間や場所の把握が難しくなります。さらに症状が進行すると、人間関係もわからなくなるため、日常生活に大きな支障をきたすおそれがあります。

実行機能障害

実行機能障害は、計画を立てて行動することが難しくなる症状のことです。認知症の初期症状チェックリストの「料理の手順や使い慣れた家電の使い方がわからない」に当てはまる場合は、実行機能障害が起こっている可能性があります。

具体的には、料理を並行して進められなくなったり、手順がわからず味付けが変わってしまったりすることがあります。また、予算内で複数の商品を購入できなくなる、薬の管理が難しくなるなど、日常生活に影響が出るケースも珍しくありません。

理解力・判断力・集中力の低下

理解力・判断力・集中力の低下も、認知症の初期症状の一つです。

認知症の初期症状チェックリストの「テレビの内容が理解できない、横断歩道を渡るタイミングがわからない」が当てはまる場合は、上記の症状が起きていることが考えられるでしょう。

他にも、会話の内容がすぐに理解できない、車の運転や銀行ATMの操作、趣味・家事に集中できないなどの症状が見られます。

感情の変化(うつ状態)

認知症になると、感情が変化するようになるケースが多くみられます。認知症に見られるうつ状態は、気持ちの落ち込みや無気力・無関心といった特徴があります。

認知症の初期症状チェックリストの「やる気が出ない、物事への興味関心が薄れてきた」に当てはまる場合は、この症状の傾向が見られるでしょう。

認知症が原因でうつ状態になると、やる気や意欲の低下が目立つようになり、趣味や食事だけでなく自身のおしゃれ・身だしなみにも気を遣わなくなります

また、自己否定や悲観的に考えてしまう場合は、認知症に関係ないうつ病の可能性も否定できません。認知症が原因のうつ状態と、いわゆるうつ病は区別が難しく、専門医を受診して正しい診断・治療を受ける必要があります。

性格が変わる

認知症になると、感情の変化だけでなく性格に変化が起こるケースも珍しくありません。認知症の性格の変化は、「頑固になる、怒りっぽくなる、人への当たりが強くなる」などが挙げられます。

認知症の初期症状チェックリストの「怒りっぽい性格になった、人付き合いが減った」に当てはまる場合は、上記の症状が起きている可能性が高いでしょう。

例えば、昔は温厚だったのにきつい性格になった、もともと穏やかな性格だったのによく怒鳴るようになったと思われる機会が増えた場合は、注意が必要です

認知症の種類で症状の特徴が異なる?

認知症は、代表的なものとしては「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」「前頭側頭型認知症」の4種類に大きく分けられます。

認知症の種類別に、症状の特徴などについて確認していきましょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは、脳細胞が壊れることで脳が萎縮する病気です。すべての認知症のうち、全体の約60%を占めるといわれています。

アルツハイマー型認知症は、記憶を司るといわれている側頭葉の内側の海馬から萎縮し始めることが多く、発症すると初期症状として物忘れなどの記憶障害が現れます。記憶障害のほかにも、見当識障害や実行機能障害といった症状も現れるのが特徴です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の次に多い認知症です。脳細胞のなかに、「レビー小体」という特殊なタンパク質が蓄積されることで、脳が変性・機能低下して起こるといわれています。

他の認知症と同様に、記憶障害、見当識障害、実行機能障害が初期症状として挙げられます。また、パーキンソン症状や現実味のある幻視、寝ている時に大声を出したり体を大きく動かしたりするレム睡眠行動異常などが現れるのも特徴の一つです。
  

脳血管性認知症

脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などが原因となって起こる認知症を指します。血管が詰まって脳血管の血流障害が起こり、細胞の死滅や出血によって脳細胞がダメージを受けることが原因です。

アルツハイマー型認知症と同様に、記憶障害や見当識障害といった初期症状が見られるだけでなく、脳細胞のダメージによって身体麻痺や言語障害をともなうケースもあります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉の変性・萎縮によって発症する認知症です。前頭側頭型認知症は、他の認知症よりも比較的若い年齢で発症する傾向があります。

前頭側頭型認知症になると、理性を保てなくなるといった性格の変化や、万引きや交通違反を繰り返すなど社会的ルールから逸脱した行動を起こしてしまうことがあり、人間関係や社会的地位が大きく損なわれてしまうことがあります。

認知症の初期症状チェックリストに当てはまったら?3つの対策方法

上記で紹介した認知症の初期症状チェックリストに当てはまるものがあった場合、症状の進行を抑えるにはどうすれば良いのでしょうか?

ここからは、認知症の初期症状が見られた場合の対策方法・予防方法や、これから生活するうえで意識するべきことなどについて解説していきます。

食生活を見直す

高血圧や糖尿病といった生活習慣病は、認知症の発症リスクを高めるのをご存知でしょうか?そのため、「間食や塩分・糖分を摂りすぎない」「バランスの良い食事を心がける」といった対策が認知症予防に効果的です。

例えば、米やアルコールの摂取を控えめにすると、認知症予防に良いという研究結果 が出ています。

また、大豆製品や緑黄色野菜・淡色野菜、藻類、乳製品、果物、イモ類、魚などを普段の食事に取り入れることでも、認知症の予防効果が期待できるでしょう。

運動習慣を身につける

身体を動かすことによって脳の活性化につながり、認知機能の低下予防が期待できます。そのため、ウォーキングなど運動習慣を身につけるのがおすすめです。

週2~3回のウォーキングをするだけでも、認知症予防と症状の進行抑制の両面に効果が期待できます

また、ウォーキングの際は背筋を伸ばし、腕をしっかり振ると運動効果が上がり、代謝アップにつながります。1人だと続かない場合は、家族や友人と一緒に行なうとよいでしょう。

認知トレーニングをする

認知症予防の一環として、認知トレーニングをするのもおすすめです。具体的には、計算ドリルやパズルなどの問題を解くなどの方法があります。

また、他者とコミュニケーションを取ることで認知機能の低下予防にもつながるため、家族や友人などと一緒に会話しながら取り組むとよいでしょう。

その他、病院で認知リハビリテーションや認知機能訓練、運動療法、音楽療法を受けるといった方法もあります。

日々のチェックで認知症の予防と早期発見を

認知症の初期症状としては、おもに以下のような症状が挙げられます。
認知症の初期症状 症状の具体例
記憶障害 同じ内容を何回も聞く、同じものを何度も買う
見当識障害 今日の日付がわからない、通り慣れた道で迷う
実行機能障害 料理の手順や使い慣れた家電の使い方がわからなくなる
理解力・判断力・集中力の低下 テレビの内容が理解できない、横断歩道を渡るタイミングがわからない
感情の変化(うつ状態) やる気が出ない、物事への興味関心が薄れてきた
性格が変わる 怒りっぽい性格になった、人付き合いが減った

上記に当てはまるものがある場合は、認知症の進行が始まっているかもしれません。

ただし、認知症と一口にいっても、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」など、さまざまな種類があります。認知症の種類によって発現する初期症状も異なるため、認知症の疑いがある場合は、1人で抱え込まず専門医に相談してください。

また認知症は、食生活の見直しや運動の習慣化、認知トレーニングなどを行なうことで、予防・症状の進行抑制効果が期待できます。

将来的に認知症になるのを予防したい場合や、症状の進行を抑えたい場合は、今回紹介したような対策方法を実施するのもおすすめです。

  

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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年6月30日

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