なお、介護は「在宅介護」と「施設介護」に分けられ、施設介護のほうがより費用がかかる傾向にあります。
初期費用(入居一時金)
一方、施設介護の初期費用の内訳は一般的に「入居が想定される期間分の家賃の前払い金」と「退去時に部屋の修繕費に充てるための敷金」です。場合によっては「入居一時金」や「前払い金」とも呼ばれます。
多くの施設では「初期償却」として、初期費用全体の約2~3割の額を償却(精算)します。初期償却後は、規定の期間をもとに家賃相当額を毎月償却していくのが一般的です。これを「均等償却」といい、仮に期間内に入居者が死亡を含め退去した場合は、未償却分が返還されます。
初期償却がない施設の場合は、初期費用全額を毎月一定額で償却したり、年単位で段階を経て償却したりするなど、施設によって幅広い方法が採られます。
また、初期費用は老人福祉法で「短期解約特例(クーリングオフ)」が定められているのも特徴です。この特例により、入居者が90日以内に退去した場合、それまでの利用料と修繕費を引いた初期費用が返還されます。
月額費用
・水道光熱費
・家賃(居住費)
・食費
・医療費
・管理費
・おむつや嗜好品などの日常生活費 など
例えば、介護老人保健施設や特別養護老人ホームといった一部の施設では、初期費用がなく月額費用のみの場合も少なくありません。
より詳細な費用の内訳は、施設やサービスの内容、入居者の要介護度によって異なります。そのため、施設や利用内容次第では、サービス加算や介護保険対象外のサービス費、上乗せ介護費なども発生する場合があるでしょう。
民間の介護施設と公的な介護施設の費用の違い
民間の介護施設
民間の介護施設の例としては、介護付き有料老人ホームやグループホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などが該当します。
公的な介護施設
したがって、民間よりも低い水準の料金に加え、一部の施設では初期費用不要、もしくは低所得者に対して優遇措置をとっていることから、所得が低くても利用できる点が特徴です。
ただし、初期費用不要はあくまで一部であり、なかには初期費用を支払う必要がある施設もゼロではありません。また、入居・退去の条件が厳しく定められている点も注意すべきでしょう。
公的な介護施設の例としては、特別養護老人ホームや介護老人保険施設、介護医療院、介護老人福祉施設などが該当します。
介護施設の種類別・初期費用と月額費用の相場
介護付き有料老人ホーム
24時間体制の介護を受けられ、日中に看護師が常駐していることから、自宅での生活が難しく介護が欠かせない方にとっては安心の施設といえます。
【費用相場】
初期費用:0~数億円
月額費用:10万~50万円
住宅型有料老人ホーム
ただ、施設によって入居条件が異なるため、入居状況や入居希望者の状況次第では、60歳未満でも入居可能なケースも少なくありません。
【費用相場】
初期費用:0~数億円
月額費用:10万~50万円
サービス付き高齢者向け住宅
おもに提供しているサービスは、安否確認や生活相談などで、その他のサービス内容によって「一般型」「介護型」に分けられます。
「一般型」は、入居後に要介護度の進行次第で退去の可能性があるほか、介護は外部のサービスを受ける必要があります。一方、「介護型」は前述の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているため、要介護度が高い方でも入居でき、常駐する介護スタッフが介護サービスを提供しているのが特徴です。
【費用相場】
初期費用:0~数億円
月額費用:10万~30万円
グループホーム
入居者同士でコミュニケーションを取り合うだけでなく、家事の役割分担も行なう点が特徴です。また、食事や入浴、洗濯などの生活支援や常駐の介護スタッフによる介護サービスを提供しています。
【費用相場】
初期費用:0~100万円
月額費用:10万~30万円
ケアハウス
「一般型(自立型)」では、掃除や洗濯、食事など自立生活が可能な方を対象に日常生活のサポートを行ないます。一方「介護型」では、要介護認定を受けた方を対象に、日常生活の介護や健康管理、療養上の世話などのサービスを提供しています。どちらも比較的利用料が低く、なかには所得によって費用が減額される補助制度が利用できる施設も少なくありません。
【費用相場】
初期費用:0~数百万円
月額費用:5万~30万円
特別養護老人ホーム
【費用相場】
初期費用:0円
月額費用:5万~35万円
介護老人保健施設
医師の医学的管理のもと、看護のほか、食事や入浴、排せつなど日常生活における介護、作業療法士や理学療法士による、家庭復帰を目指すためのリハビリや機能訓練も提供しています。
【費用相場】
初期費用:0円
月額費用:5万~20 万円
年金のみで老人ホーム・介護施設の入居は可能か
結論として、年金のみで老人ホームや介護施設に入居することは可能ですが、年金受給額や入居を希望する施設の費用によって難易度は変動します。
厚生労働省の発表(※)によると、2021年度の年金受給額(月額)の平均は国民年金で約5.6万円、厚生年金で約14.5万円です。 自身の年金受給額よりも施設の月額費用が低く、かつ初期費用も支払える(もしくは初期費用がかからない)老人ホームや介護施設であれば、年金のみでの入居は可能です。
ただし、上記はあくまでも平均額であり、実際の年金受給額は人によって異なります。国民年金しか受け取れない方の場合は入居までのハードルが高くなりやすく、特に民間の介護施設への入居は厳しいため注意すべきでしょう。
年金のみで老人ホームや介護施設への入居を検討するなら、「月額費用の低さ」「初期費用の有無」などを重視して施設を選ぶのがおすすめです。この場合、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、ケアハウスなどがおもな選択肢となるでしょう。加えて、一部の民間の介護施設でもリーズナブルな費用で入居できる場合があるため、探してみることをおすすめします。
入居中の老人ホーム・介護施設の費用が支払えない場合はどうなる?
ここでは、入居中に費用が支払えなくなった2つのケースについて解説します。
入居者本人が支払えなくなったケース
身元引受人(連帯保証人)とは、本人が費用を支払えなくなった際、本人に代わり費用を支払う人を指します。加えて、本人の死去後に残置物の撤去などの義務を負う契約をしている場合もあります。
費用の請求は基本的に一括のため、一括での支払いが難しい場合は、身元引受人(連帯保証人)自身が分割での支払い交渉などを行なう必要があるでしょう。
支払いを滞納したケース
多くの施設では、3~6カ月ほどの猶予期間が設けられたのち、契約解除の予告や強制退去を求められる流れが一般的です。ただし、施設によって猶予期間や対応が異なる場合があるため、万が一の事態に備えるためにも、事前に契約書や重要事項説明書の内容の確認が大切です。
老人ホーム・介護施設の費用が支払えない場合の4つの対処法
施設スタッフやケアマネージャー に相談
相談することで、今後必要になる介護を想定したうえで、費用の補填策や負担軽減のための方法などを検討してくれる場合があります。また、より低額で利用できる施設や、仲介業者の紹介などのサポートを受けられるケースもあるでしょう。
支払い可能な施設へ転居できるか調べる
転居時、すでに施設へ支払っている初期費用のなかで未償却分が残っている場合は、返金対応となる可能性があります。このお金を転居先の施設の初期費用に充てられれば、さらに支払い負担を軽減することも可能でしょう。
ただし、費用が低く人気の高い施設は、転居しようとしても待機期間が長引く恐れがあるため、待機中に猶予期間が終わってしまうなどのトラブルに注意が必要です。
減免制度の利用を検討する
以下はおもな減免制度の例です。
・高額介護サービス費
・高額医療・高額介護合算療養費制度
・特定入所者介護サービス費
・医療費控除
・自治体の助成制度 など
これらの制度は、減免の対象となる施設や費用項目、利用できる条件、申請方法などが異なります。どの制度が利用できるのかがわからない場合は、ケアマネージャーや自治体の窓口に相談するとよいでしょう。
生活保護を検討する
ただし、生活保護費の受給には、生活状況や資産状況、収入状況などの審査を受ける必要があります。
また、生活保護費の受給によって、日常生活に制限が発生するケースも少なくありません。そのため、あくまで最終手段ととらえておくとよいでしょう。
加えて、事前に自治体の生活支援担当窓口やケースワーカー、ケアマネージャーに生活保護について相談することも重要です。