介護保険負担限度額認定証とは・取得条件や申請手続き


老後の生活において、介護保険施設の利用の際などに費用負担の軽減をしたいと考えている方もいるでしょう。その際に役立つのが、介護保険負担限度額認定制度です。

介護保険負担限度額認定制度によって費用負担の軽減を実現するためには、所定の手続きを行い、介護保険負担限度額認定証を取得する必要があります。ただし、取得には収入・資産状況など条件が設けられている点に注意が必要です。

この記事では、介護保険負担限度額認定証の概要や取得条件、手続き方法などを解説します。

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介護保険負担限度額認定証の概要

介護保険負担限度額認定証がどのようなものかを知るためには、介護保険負担限度額認定制度についても理解しておくことが大切です。

ここでは、介護保険負担限度額認定制度についての説明、また、介護保険負担限度額認定証の概要を解説します。

負担限度額認定制度とは

介護保険施設を利用した場合、食費や居住費は全額自己負担となっています。このような介護施設利用時にかかる費用負担を軽減するための制度が「負担限度額認定制度」です。

負担限度額認定制度は一定の条件を満たしている人に適用され、対象者には負担限度額認定証が交付されます。交付後は自己負担上限額が設定され、負担する費用が軽減されます。

「介護保険負担限度額認定証」は制度の対象者に交付される

介護施設へ入居する際に必要な費用には、下記のようなものがあります。

● 介護サービス費
● 居住費
● 食費
● 日常生活費

これらのうち、介護サービス費は公的介護保険が利用できるため、自己負担は1~3割で済みます。しかし、それ以外の費用に関してはすべて自己負担となってしまいます。

そこで、介護保険施設へ入居した場合の居住費と食費の負担を軽減するための制度が、介護保険負担限度額認定制度です。

介護保険負担限度額認定証は、介護保険負担限度額認定制度の認定を受けた方に発行される書類のことです。この認定証を交付されることで、介護保険施設の利用にかかる居住費や食費の負担を減らせます。

介護保険負担限度額認定証が使える介護保険施設

介護保険負担限度額認定のもとで使える介護保険施設は下記のとおりです。
  • 特養(特別養護老人ホーム)
  • 老健(介護老人保健施設)
  • 介護医療院
  • 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)
また、下記のいわゆるショートステイも対象となります。
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
ただし、グループホームや有料老人ホームなどは制度の対象外となります。

介護保険負担限度額認定証の申請・取得条件

介護保険負担限度額認定証は、誰でも申請・取得できるものではありません。申請・取得するためには、所得と預貯金についてそれぞれ条件を満たす必要があります。

さらに、この認定は本人の収入状況や預貯金によって「第1段階」「第2段階」「第3段階(1)」「第3段階(2)」「第4段階」の5段階に分けられます。

段階

本人の収入状況

預貯金等の基準額

1段階

老齢福祉年金や生活保護を受給している

夫婦:2,000万円以下

単身:1,000万円以下

2段階

年金収入等が80万円以下

夫婦:1,650万円以下

単身:650万円以下

3段階(1

年金収入等が80万円超120万円以下

夫婦:1,550万円以下

単身:550万円以下

3段階(2

年金収入等が120万円超

夫婦:1,500万円以下

単身:500万円以下

4段階

上記以外

上記以外

以下では、介護保険負担限度額認定証の申請・取得条件、段階の区分(5段階)について具体的に解説します。

【所得の条件】世帯全員が住民税非課税であること

まず所得の条件は、認定を受ける本人と、本人と同じ世帯の全員が住民税非課税であることです。

「世帯全員が住民税非課税ということは、住民票上の世帯を分ければ良いのでは」と思う方もいるかもしれません。しかし、夫婦で世帯を分けている場合でも、本人と配偶者の両方が住民税非課税でないと条件を満たしたことにはなりません。

【預貯金の条件】預貯金等が基準額以下であること

さらに、預貯金等が基準額以下である必要があります。基準額は、本人の収入状況によって異なります。

本人の収入状況

預貯金等の基準額

老齢福祉年金や生活保護を受給している

夫婦:2,000万円以下

単身:1,000万円以下

年金収入等が80万円以下

夫婦:1,650万円以下

単身:650万円以下

年金収入等が80万円超120万円以下

夫婦:1,550万円以下

単身:550万円以下

年金収入等が120万円超

夫婦:1,500万円以下

単身:500万円以下


ここでいう「預貯金等」とは、金融機関に預けている貯金のほかに、下記のものも含まれます。
  • 株式や債券などの有価証券
  • 金・銀などの貴金属
  • 投資信託
  • 現金(タンス預金)
また、住宅ローンや借入金などの負債があると、預貯金等の合計から差し引かれます。

介護保険負担限度額認定は5段階

先述した5段階に応じて、各費用の負担限度額は以下のように決まっています。

なお、2024年(令和6年)8月1日から介護保険施設などにおける居住費の負担限度額が変更されたため、以下では現行の負担限度額を記載しています。

段階

居住費の負担限度額(ユニット型個室)

居住費の負担限度額(多床室)

食費の負担限度額(ショートステイを除く)

1段階

880円/日

0円/日

300円/日

2段階

880円/日

430円/日

390円/日

3段階(1

1,370円/日

430円/日

650円/日

3段階(2

1,370円/日

430円/日

1,360円/日

4段階

2,066円/日

437円/日(※)

1,445円/日

※特別養護老人ホームまたは短期入所生活介護を利用する場合は915円/日

段階によって、上記のように居住費や食費の負担限度額は異なります。なお、第4段階に当てはまる方は、特例はあるものの基本的には負担軽減の対象ではないため、ここでは国が定めた標準的な費用を記載しています。

第4段階の特例措置の対象になるのは、以下の条件をすべて満たしている場合です。
  1. 属する世帯の構成員数が2人以上である
  2. 介護保険料を滞納していない
  3. 世帯における現金および預貯金などが450万円以下(債券や有価証券などを含む)
  4. 家屋や日常生活に必要な資産を除き不要な資産を所有していない
  5. 介護保険施設に入所または入院しており第4段階の食費や居住費を負担
  6. 世帯の年間収入から施設の利用者負担の見込み額を除いた額が80万円以下
ただし、上記5つ目「第4段階の食費や居住費の負担」において、ショートステイの利用の場合は適用外です。

介護保険負担限度額認定証を申請する方法

介護保険負担限度額認定の条件を満たしていることがわかったら、認定証の申請を行いましょう。手続きの方法は下記のとおりです。

認定証の申請先

申請先は、住んでいる市区町村の介護保険担当窓口です。提出書類を持ち込むか、郵送で申請しましょう。

申請するために必要な書類

申請には下記の書類が必要になるため事前に用意しましょう。
  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 同意書(金融機関等に預貯金等の報告を求めることに同意する書類)
  • 預貯金等を証明するための書類
介護保険負担限度額認定申請書と同意書は、自治体の窓口で受け取るか、ホームページからダウンロードします。預貯金等を証明するための書類は、通帳や口座残高の写し、借用証書などを用意しましょう。

自治体によって必要書類が異なる場合もあるため、詳しくはお住まいの自治体のホームページを確認することをおすすめします。

なお、ショートステイを利用する際の申請では、「介護保険施設の所在地」および「名称」の記載は不要です。被保険者本人の氏名を記入し、押印した書類を提出してください。

第1・第2・第3段階に該当している場合は、申請後に介護保険負担限度額認定証が交付されます。施設を利用する際、事前に提示しなければ減額されないため注意が必要です。

認定証の交付

申請後、約1週間で認定証が自宅に郵送されます。なお、第4段階と認定された場合は通知のみで、認定証は交付されません。

介護保険負担限度額認定証の注意点

介護保険負担限度額認定証の申請にあたって気を付けるポイントを解説します。

有効期間があるため更新を忘れずに

介護保険負担限度額認定証には1年間の有効期間があり(8月1日~翌年7月31日)、有効期間が満了すると利用できなくなってしまいます。事前に更新のお知らせや更新用の書類が郵送で届くため、手続きを忘れないようにしましょう。

なお、前年から収入状況などに変化があった場合、負担限度額の段階が変動する可能性があります。結果が届いたら、新しい負担段階をよく確認しましょう。

虚偽の申告はNG

認定を受けるために、所得や預貯金等を実際よりも少なく申告することは避けましょう。

「預貯金通帳の残高が少ない部分をコピーして提出すればよいのでは」と考える方もいるかもしれませんが、自治体には金融機関に対して申請者の残高照会を行う権限があるため、虚偽の申告が明らかになる可能性が高いです。

虚偽の申告をして不正に認定を受けた場合、それまでに受けた給付額を返還することはもちろん、最大2倍の加算金を支払わなければなりません。所得や預貯金等の金額は正確に申告しましょう。

介護保険負担限度額認定を受けられそうにない場合の選択肢

介護保険限度額認定を受けたい場合も、虚偽の申告をすることは厳禁です。しかし、高齢になると、介護施設を利用しなければ生活に支障が出る可能性は高まります。

では、高齢者施設にはどのような種類があるかご存じでしょうか。具体的には、以下のような施設が挙げられます。

介護付き有料老人ホーム

定額で介護サービスを受けられる施設。要介護5までを入居対象としており、入居後に要介護度が高くなっても転居の必要がないケースが多い。

住宅型有料老人ホーム

入居者同士コミュニケーションを取りながら共同生活を送る施設。レクリエーションなどのイベントが多いこともあり、一人暮らしによる不安を抱くことなく生活できる。

サービス付き高齢者向け住宅

(サ高住)

老人ホームではなく、シニア向けの賃貸住宅。自宅で暮らしているかのような自由度があり、見守りサービスも受けられる。施設内はバリアフリーのため、一般的な賃貸住宅を借りるよりも安全性が高い。

グループホーム

認知症の人を専門に受け入れている入居施設。認知症ケアの専門スタッフによるケアを受けることが可能で、症状進行の緩和を目的としたレクリエーションなどを体験できる。

生命保険文化センターによれば、介護に必要な費用は総額平均約580万円※1、月額約8.27万円※2といわれています。また、認知症を発症している方の在宅介護では、通常の介護よりも費用が高額になる傾向です。
以上を踏まえると、老後の生活への備えは必須といえるでしょう。公的介護保険で足りない部分の備えは、民間介護保険でカバーすることもおすすめです。

介護保険負担限度額認定証を利用して負担を減らそう


介護保険負担限度額認定証とは、介護保険負担限度額認定制度を受けられる人に発行される書類のことです。介護保険負担限度額認定証を取得することで、介護保険施設を利用する際の居住費や食費の負担が軽減されます。

認定証の申請には収入状況や預貯金等の条件があるため、ご自身が条件を満たしているかを確認したうえで手続きを行いましょう。

また、限度額認定証には有効期限があることや、認定を受けるために虚偽の申告をすることは厳禁であることなどに注意が必要です。

認定を受けられないと予想される場合には、老後の備えとして民間介護保険への加入も検討すると安心でしょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年1月17日

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