老後の介護費用はどれくらい?
介護費用の平均額と備える方法


高齢化が進むなか、親や自分の介護費用について不安を感じる方も多いのではないでしょうか。要介護度や利用する介護サービス、介護する場所などによって費用は異なりますが、平均的な介護費用の総額は約542万円です。※

※ (公財)生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」より当社試算

介護が始まると、心身だけでなく、経済的な負担も避けられません。あらかじめ介護の費用を知っておくことで、必要な備えがしやすくなります。

本記事では、要介護度や介護を受ける場所ごとの介護費用の目安を中心に解説します。併せて、将来の年金額や介護費用を準備するための方法も紹介しますので、参考にしてください。

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介護にかかる平均費用はいくら?

 
まずは、生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」の結果をもとに、介護費用の平均額や介護期間の目安を確認しましょう。

介護にかかる一時費用の平均は47万円

介護が始まると、介護ベッドや車いすなどの介護用品の購入、住宅のリフォームなど、初期費用としてまとまった支出が発生するケースがあります。

本調査によると、上記のような一時的な介護費用の平均額は47万円です。ただし、金額は介護の必要性や公的介護保険の利用の有無などによって、以下のように差があります。

区分

一時費用の平均額

公的介護保険制度の利用経験あり

46万円

 

要支援1

44万円

 

要支援2

44万円

 

要介護1

30万円

 

要介護2

54万円

 

要介護3

42万円

 

要介護4

52万円

 

要介護5

47万円

公的介護保険制度の利用経験なし

68万円


公的介護保険制度を利用していない場合、一時的な費用が高くなる傾向が見られます。早めに制度を理解し、活用することが負担軽減につながるでしょう。

介護費用の月平均は9万円

介護では、一時的な初期費用だけでなく、継続的にかかる費用もあります。本調査によると、介護サービスの自己負担費用を含む介護費用の月平均は約9万円となっています。

区分

介護費用の月平均額

公的介護保険制度の利用経験あり

9.1万円

 

要支援1

5.8万円

 

要支援2

7.0万円

 

要介護1

5.4万円

 

要介護2

7.5万円

 

要介護3

8.5万円

 

要介護4

12.4万円

 

要介護5

11.3万円

公的介護保険制度の利用経験なし

4.0万円


要介護度が上がるほど費用も上昇する傾向にあり、要介護4~5では10万円を超えるケースも少なくありません。

介護期間の平均は55ヵ月

介護の費用を考えるうえで、介護期間を知っておくことも重要です。本調査によると、介護期間の平均は約55ヵ月(4年7ヵ月)でした。ただし、あくまでも平均であり、実際の介護期間には大きなばらつきがあります。

介護期間

割合

6ヵ月未満

6.1

6ヵ月~1年未満

6.9

12年未満

15.0

23年未満

16.5

34年未満

11.6

410年未満

27.9

10年以上

14.8

データを見ると、介護経験者の約7人に1人は10年以上の長期介護を行っていることがわかります。こうした長期にわたるケースでは、経済的な負担が増加しやすいため、早い段階での備えが重要になります。

介護費用の総額は約542万円

介護費用の平均総額は約542万円です。この金額は初期費用の平均額47万円と、毎月の介護費用の平均額9万円を55ヵ月間(4年7ヵ月間)負担した場合の合計額です。

平均寿命の延伸により、今後さらに介護期間が長くなる可能性があります。介護サービスを利用してもこのような自己負担費用があることを踏まえ、備えは早めに進めておきたいところです。

もし介護が必要になったら、まずは速やかに要介護認定を受け、公的介護保険制度を上手に活用することが重要です。

以下の記事では、要介護認定を受けるための介護認定調査について詳しく解説しています。

介護認定調査とは?調査項目や調査の流れ・事前準備と当日のポイント

また、以下の記事では介護の経済的負担を軽減する方法を解説しています。併せてご覧ください。

介護費用や介護期間の平均はどれくらい?費用負担を軽減する方法も解説

介護を受ける場所によって費用は異なる

介護費用は、自宅で介護サービスを受けるか施設に入居するかによっても異なります。あらかじめ金額を把握して、介護が必要となったときにどのように過ごしたいかを考えておくことが大切です。

在宅サービスを利用する場合の費用

自宅で介護を受ける場合は、公的介護保険の「居宅サービス」を利用できます。

要介護度に応じた「支給限度額」の範囲内であれば、介護サービス利用時の自己負担は原則1~3割になります。要介護度別の支給限度額は以下のとおりです。

要介護度

支給限度額

要支援1

50,320

要支援2

105,310

要介護1

167,650

要介護2

197,050

要介護3

270,480

要介護4

309,380

要介護5

362,170

利用するサービスの内容や頻度によっては、この限度額を超えることもあります。限度額を超えた分は全額自己負担となる点に注意が必要です。

訪問介護やデイサービスなど複数のサービスを組み合わせて利用する場合は、費用のシミュレーションをしておくとよいでしょう。

厚生労働省「介護サービス情報公開システム」では、要介護度と介護サービス、月の利用回数を入力すると1ヵ月当たりの介護サービス費用の目安を確認できます。

厚生労働省「介護サービス情報公開システム」

以下の記事では、居宅サービスのうちの一つである「デイサービス」でかかる費用について詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

デイサービス(通所介護)にかかる費用はどのくらい?

施設サービスを利用する場合の費用

公的介護保険の施設サービスには、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院があり、施設の種類や住環境の違い(個室か多床室か)、サービス内容によって、費用に差が生じます。

例えば、要介護5の方が特別養護老人ホーム(多床室)に入所した場合、1ヵ月当たりの費用は以下のとおりです。

項目

費用の目安

施設サービス費(1割負担)

26,130円(871単位×30日)

居住費

27,450円(915円/日)

食費

43,350円(1,445円/日)

日常生活費

10,000円(施設ごとに異なる)

合計

106,930

なお、所得に応じて負担軽減制度が適用される場合があります。制度の対象となるかどうか、事前に市区町村の窓口で確認しておくとよいでしょう。

介護費用は年金で足りる?

介護にかかる費用は、基本的に年金や貯金でまかなうことになります。では、年金は将来いくらもらえるのでしょうか。

自営業者などが加入する国民年金の場合、老齢基礎年金の満額は月69,308円です。

これに対し、厚生年金に加入していた会社員などの場合、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な受給額は月232,784円です(令和7年度)。
実際のご自身の年金額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。マイナンバーカードがあれば、マイナポータル経由でも「ねんきんネット」にアクセスできるため、確認してみるとよいでしょう。

将来の介護に備え、年金でまかなえるか不安に感じる場合は、事前介護費用を準備しておくことが大切です。

老後の介護費用を準備する方法

 
要支援・要介護認定を受ける人の数は年々増加しています。厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」および内閣府「令和6年版高齢社会白書」をもとに朝日生命で試算したデータによると、2030年には65歳以上の約4人に1人が要支援・要介護状態になる見通しです。

出典:厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」および内閣府「令和6年版高齢社会白書」より当社にて推計

このように、介護は他人事ではなく、誰にとっても身近な問題です。「介護はまだ先のこと」と思う方もいるかもしれませんが、いざというときに慌てないためにも、早いうちから将来に備えておきましょう。

ここでは、貯金以外で介護費用を準備する方法を紹介します。

投資信託を積み立てる

投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を、投資の専門家が株式や債券などで運用する金融商品です。

毎月決まった金額を積み立てる「自動積立サービス」を活用すれば、少額からでも無理なく始められます。また、毎月一定額を長期的に積み立て、購入時期を分散することでリスクを軽減できるため、特に初心者には取り組みやすい方法といえるでしょう。税制優遇のあるNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用すれば、より効率的に資産形成が可能です。

ただし、投資信託は金融機関ごとに取り扱っている商品やサービス内容、手数料が異なるため、比較検討したうえで選択することが重要です。
また、元本は保証されていない点も認識しておく必要があるでしょう。

NISA

通常、投資信託の売却益や分配金には約20%の税金がかかりますが、NISAを利用すれば、一定額までこれらが非課税になります。

特に「つみたて投資枠」の対象は金融庁が定めた基準を満たす投資信託商品のみが対象で、長期・積立・分散投資に適したラインナップがそろっています。2024年1月からは年間投資上限額や非課税保有限度額、非課税保有期間などが拡充され、より柔軟に運用できるようになりました。

iDeCo

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、投資信託などで運用していく私的年金制度です。原則として60歳以降に資金を受け取る仕組みで、老後資金の準備に向いています。

iDeCoは税制面のメリットが大きい点も特徴です。掛金は全額が所得控除の対象となり、運用益は非課税、さらに受取時にも一定の税制優遇があります。税金を抑えながら効率的に老後に向けて資産形成ができる制度といえるでしょう。

民間の保険を活用する

民間の保険商品を活用して将来の介護費用に備えることも、選択肢の一つです。ここでは、個人年金保険と民間の介護保険について解説します。

個人年金保険

個人年金保険は、一定の保険料を支払い、契約時に設定した年齢に達すると、一定期間または終身にわたって年金を受け取れる保険です。

介護費用や老後の生活資金として備えられますが、途中解約や早期死亡によって元本割れするリスクもあるため、契約内容をよく確認しておく必要があります。

介護保険

民間の介護保険は、各保険会社が定める所定の状態になった場合に、保険金が給付される仕組みです。給付の形態には一時金や年金形式があり、使い道は自由です。

毎月の介護費用や生活費など、さまざまな用途に充てられるため、公的制度だけでは不足する部分を補う手段として活用できます。

介護にかかる費用を把握して、早めに準備を始めよう


介護には介護用品などを購入するための一時的な費用に加えて毎月の介護費用が必要となり、その総額は平均で約542万円にのぼります。しかし、介護の度合いや場所によって必要となる費用は異なるため、一概にいくらとはいえません。

貯金や将来の年金で介護費用をまかなうことに不安がある方は、早めに準備を始めましょう。

貯金以外にも、投資信託の積み立てや民間保険の活用など、ライフスタイルや価値観に合った方法を選んで費用を準備しておくと、将来の不安を和らげることができるでしょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年9月10日

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