介護認定調査とは?
調査項目や調査の流れ・事前準備と当日のポイント

家族の介護が必要になったり、自分の老後について調べたりしていくと目にする、「介護認定調査」とは何でしょうか。

介護認定調査とは、対象者の要介護度を判断するために、市区町村の認定調査員が実施する聞き取り調査のことです。認定調査員が自宅などを訪問し、対象者の身体機能や生活の状況、認知機能などを幅広く調べます。

当記事では、要介護認定の流れや介護認定調査の概要、おもな調査項目を解説するとともに、介護認定調査前に準備すべきことや、調査当日のポイントも紹介します。

介護認定調査について詳しく知りたい方はもちろん、すでに介護認定調査を受けることが決まっている方も、ぜひ参考にしてください。

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介護認定調査とは?

公的介護保険の被保険者が公的介護保険による介護サービスを利用するためには、介護の必要性の有無やその程度等の認定(要介護認定)を市区町村から受ける必要があります。この認定を行うために実施されることが介護認定調査です。

介護認定調査とは、市区町村に要介護認定(要支援認定を含む)を申請した際、後日実施される聞き取り調査のことです。市区町村や委託先の認定調査員が、要介護認定の対象者本人や家族に聞き取りを行い、要介護度の判定に用いる情報を収集します。

訪問による調査後は、コンピュータでの一次判定、介護認定審査会の二次判定によって、次のいずれかの要介護度が決まります。
  • 非該当
  • 要支援1・2(日常生活において、多少の支援が必要な状態を指す)
  • 要介護1・2・3・4・5(日常生活全般において、介護が必要な状態を指す)
なお、要介護度の判定では、主治医の意見書の内容も考慮されます。

【4STEP】要介護認定の流れ

要介護認定を受けるまでの流れは、申請から結果通知までの4つのステップに分けられます。この過程には介護認定調査も含まれ、利用者に適した介護サービスを提供するために重要なステップとなっています。

以下では、要介護認定の具体的なステップについて説明します。

1. 要介護認定を申請する

まず、居住する市区町村の窓口で要介護認定の申請を行います。申請は本人が行うことが基本ですが、本人が申請できない場合は、家族や施設の職員等が代理で申請することも可能です。

申請には介護保険被保険者証(40~64歳の方は医療保険証)が必要です。
申請が完了すると、次のステップである介護認定調査に進みます。

2. 認定調査を受ける

申請後、要介護認定に係る調査が行われます。この調査は本人の心身の状況を詳しく把握するために実施されるもので、自宅や入院先の病院、入居施設などに認定調査員が訪問します。調査にかかる時間は通常30分~1時間程度です。

同時に、市区町村の依頼に基づき、かかりつけ医が主治医意見書を作成します。この意見書は、介護認定調査と併せて要介護度の判定に必要なものです。

かかりつけ医がいない方は、市区町村や最寄りの地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。職員の助言を受けてかかりつけ医を決めたあとに診察を受け、主治医意見書を作成してもらいます。

認定調査員はどのような人?

調査を行う認定調査員は、市区町村の職員、もしくは市区町村から委託された指定市町村事務受託法人に所属する介護支援専門員(ケアマネジャー)です。

また、保健・医療・福祉に関する専門的な資格を持ち、必要な研修を修了するなどの条件を満たした人も認定調査員となる場合があります。

3. 介護認定審査会で判定が行われる

介護認定調査の結果と主治医意見書をもとに、まずコンピュータによる一次判定が実施されます。

その後、一次判定の結果と主治医意見書、介護認定調査の特記事項をもとに、介護認定審査会で二次判定が行われます。この審査会は医療・保健・福祉の専門家が参加しており、総合的に判断されます。

4. 結果の通知を受ける

通常、要介護認定の申請から30日以内に判定結果の通知書と要介護区分が記載された介護保険被保険者証が本人のもとに届きます。

ただし、申請件数の増加などの事情により40日程度かかることもあるため、介護サービスが必要になったときには早めに申請しましょう。

なお、要介護区分はこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

介護認定調査の基本調査項目

介護認定調査では、「概況調査」と「基本調査」が行われます。概況調査では、現在利用中の介護サービスや家族の状況、居住環境、日常的に使用する機器などを確認します。

基本調査は、全国共通で定められた項目を一つずつ確認するのが特徴です。具体的には、次のような項目を調査します。

分類

調査項目の内容例

身体機能・起居動作

麻痺があるか
関節が動く範囲はどれくらいか
寝返り・起き上がりができるか
座位・立位(片足/両足)を保てるか
立ち上がり・歩行ができるか
体を洗えるか
視力・聴力はどれくらいか

生活機能

移動・移乗できるか
食べ物を飲み込めるか
排せつできるか
歯磨き・洗顔・整髪ができるか
衣類の着脱ができるか
外出の頻度はどれくらいか

認知機能

意思の伝達ができるか
生年月日・年齢・名前を答えられるか
直前に何をしていたか思い出せるか
今の季節を理解しているか
今いる場所を理解しているか
徘徊があるか

精神・行動障害

被害妄想・作り話をするか
感情が不安定になるか
昼夜が逆転しているか
しつこく同じ話をするか
大声を出すか
介護に抵抗するか
ひどい物忘れがあるか
独り言・独り笑いをするか
自分勝手な行動があるか

社会生活への適応

薬を内服できるか
金銭管理ができるか
意思決定できるか
集団行動ができるか
買い物ができるか
簡単な調理ができるか

その他

過去14日間に受けた医療について
(点滴の管理・中心静脈栄養・透析・モニター測定など)


上記のとおり、調査項目は大きく6つに分けられ、細かく見ていくと全部で74項目です。安全を考慮したうえで、座る・立つ・歩くなど、実際の動作確認を行うこともあります。
基本調査では把握できない状況や判断に迷った事象があれば「特記事項」に記載し、より正確に対象者を審査できるようにします。

介護認定調査に向けた4つの準備

以下では、介護認定調査当日までに準備すべきことを解説します。

家族が同席できる日程を調整する

要介護認定の対象者本人が「できる/できない」と思っていることと、家族から見て「できる/できない」と判断されることには差があるかもしれません。特に、認知機能が低下傾向にある方は、注意が必要です。

適切な認定を受けるためには、本人が問題なく会話できる状態でも、家族が同席して客観的な状態を伝えることが大切です。介護認定調査を受けることになったら、家族が同席できる日程を決めましょう。

認定調査票に目を通す

基本調査の調査項目は、前章「介護認定調査の基本調査項目」のとおりです。

一方、「概況調査では具体的にどのようなことを聞かれるのか」と不安に感じる方もいるでしょう。概況調査で使用する「認定調査票(概況調査)」は、以下で確認できます。

認定調査票(概況調査)

あらかじめ認定調査票に目を通しておくと、事前に情報収集すべきこと・考えを整理すべきことがわかりやすいでしょう。調査当日にスムーズかつ漏れなく回答を伝えられれば、要介護認定の正確な判定につながります。

普段の介護内容をまとめる

介護認定調査の所要時間は、長くても1時間程度であり、伝えたいことを伝えきれなかったり、伝えるのを忘れてしまったりする可能性があります。また、要介護認定の対象者の症状に波がある場合、介護認定調査当日に該当の症状が出ないかもしれません。

そのため、通常はどのような症状があるのか、食事や入浴の際にどのような介護が発生しているのかなど、介護者の目線で普段の様子をメモにまとめておくとよいでしょう。

過去のケガや病気について確認しておく

要介護認定では、主治医意見書も参考にされますが、本人の過去の病気やケガについても事前に確認しておくことが重要です。主治医意見書にすべての既往歴が記載されていない場合もあるため、特に気になる病気やケガがあれば、あらかじめメモしておくとよいでしょう。

このメモは認定調査当日に認定調査員へ詳細を伝えられるだけでなく、再発予防や適切な介護内容を検討するうえでも役立ちます。

介護認定調査当日のポイント

介護認定調査当日、要介護認定の対象者本人や家族は、次の点に気を付けましょう。

質問に正直に・正確に答える

例えば、「介護サービスをできるだけ多く利用したい」という気持ちが先走り、介護状況などを実際よりも誇張して答えたくなる方もいるかもしれません。

しかし、認定調査員からの質問に対して誇張または控えめに回答すると、適切な認定を受けられないだけでなく、矛盾が生じて再調査となってしまうこともあります。また、誤った認定に基づき過度な介護サービスを受けることになれば、かえって要介護度が進行しやすくなるリスクもあるでしょう。

困っていることは遠慮なく伝える

定められた質問事項とは別に、本人や家族の困りごとがあれば、遠慮なく伝えて問題ありません。それらは特記事項として、要介護度を審査する際の判断材料となります。
本人の前で伝えにくい場合は、メモにまとめて認定調査員に渡すこともおすすめです。

要介護認定を受けると利用できる介護サービス

要介護認定を受けることで、各種の介護サービスが利用可能になります。

主なサービスは以下です。
  • 訪問:訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーションなど
  • 通所:通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)など
  • 短期入所:短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
  • 施設入所:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)など
そのほか、福祉用具の購入やレンタルも、公的介護保険の給付対象となっています。例えば、車いすや介護ベッドのレンタル、ポータブルトイレの購入などで公的介護保険による費用補助が受けられます。

これらの介護サービスを適切に組み合わせ、個々の状況に合わせた介護を受けられます。

介護サービスの種類はこちらの記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。

要介護認定の有効期間に注意が必要

介護認定調査による要介護度の認定結果には、次のとおり有効期間があります。
  • 初めての認定の場合:原則として6カ月(3~12カ月の範囲内で設定されるケースもある)
  • 更新の場合:原則として12カ月(要介護、要支援状態区分が更新の前後で同じ場合3~48カ月、異なる場合3~36カ月の範囲内で設定されるケースもある)
有効期間満了後も介護サービスを継続して利用したい場合は、更新認定の申請が必要です。市区町村から更新認定申請の通知が届くため、有効期間満了の60日前から満了日までに手続きを行いましょう。

要介護認定の結果に納得できない場合の対処法

要介護認定の結果に納得できないときの対処法として、「不服申し立て(審査請求)」「区分変更申請」の2種類の方法があります。

介護認定審査会に不服申し立てを行う

要介護認定の結果に納得できない場合、市区町村の行政処分に対して「不服申し立て(審査請求)」を行うことが可能です。申し立て先は都道府県が設置する介護保険審査会で、決定内容を知ってから3カ月以内に文書または口頭で請求する必要があります。

不服が認められた場合、要介護認定が取り消されて再調査が行われますが、結果が出るまでに数カ月かかることもある点に注意しましょう。

区分変更を申請する

区分変更申請は本来、認定結果に不服がある場合ではなく、要介護度が変化したと判断された際に行う手続きです。しかし、要介護認定の結果に不服がある場合にこの方法を選択することも可能です。

申請方法は通常の要介護認定と同じで、再度の訪問調査のあと、30日以内に結果が通知されます。

ただし、区分変更申請をしても必ずしも希望する要介護度に認定されるとは限らない点に留意しておきましょう。

区分変更はこちらの記事で詳しく解説しているため、併せて参考にしてください。

将来に備えて介護認定調査に関する理解を深めておこう

介護認定調査は、要介護認定を受けるうえで欠かせない調査です。市区町村や委託先の認定調査員が自宅などを訪問し、聞き取りによる概況調査と基本調査を行います。

調査項目や流れを事前に理解しておくことで、当日にスムーズに対応できます。本記事や認定調査票を参考に、どのような質問がされるのかをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

介護認定調査には家族も同席したうえで、質問に正直に・正確に答えることや、困っていることは遠慮なく伝えることが大切です。家族やご自身が、将来的に介護が必要になった場合に備え、介護認定調査の前に準備すべきポイントなどを理解しておきましょう。

 

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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年11月11日

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