ワンオペ介護の現状
一人で抱え込むリスクと実行したい3つの解決策


家族の介護を「自分がやるしかない」と考え、すべての世話を一手に引き受けている方は少なくありません。そのような状況に置かれた方の多くが、心身の疲労やストレスなどの悩みを抱えています。

ワンオペ介護は個人の責任感だけで乗り切れるものではなく、無理が生じやすい構造的な問題を含んでいます。状況を悪化させないように、早い段階で適切な対処をすることが欠かせません。

本記事では、一人で介護をすることの問題点を整理し、限界を迎える前に実行したい具体的な解決策を詳しく解説します。

ワンオペ介護はなぜ起きるのか

 
まずは、ワンオペ介護の定義と、現代における介護の現状について整理します。どのような背景によって一人ですべてを背負い込むことになるのか、その構造を解説しましょう。

介護におけるワンオペとは

ワンオペとは「ワンオペレーション」の略であり、もともとは、一つの店舗や事務所などで、一人のスタッフがすべての業務を担う状態を指す言葉でした。

一般に、介護の現場では、身体的・精神的なケアから生活支援、事務手続きまでの一連の流れが一人に集中している状況を意味します。

具体的には、食事や入浴、排泄の介助、掃除や洗濯、調理など、家事全般を一人で行わなければなりません。さらには、通院の付き添いや服薬管理、見守り、金銭管理、各種申請などの煩雑な内容も含まれます。

このように、一人に掛かる負担がきわめて大きい実態は、現代における深刻な社会問題として認識されています。

ワンオペ介護が生じる背景

ワンオペ介護が生まれる背景として、少子高齢化や核家族化の進行、一人っ子や独身世帯の増加により、介護を担う人が限られてしまう状況が広がったことが一因とされています。

このような社会構造の変化に加え「介護は家族が担うもの」という規範意識も影響しています。周囲へ手助けを求めることに気兼ねしてしまい、自分だけで抱え込む状況が生まれるケースも少なくありません。外部への支援を頼りにくい心理的な壁も要因となり、介護の負担が一人に集中する状況が固定化していると考えられます。

ワンオペ介護による3つのリスク

ワンオペ介護はすべてを一人で抱え込むため、問題が客観的に見えにくくなる側面があります。まじめで自分に厳しい方ほどワンオペ介護になりやすい傾向ですが、それが続くのは危険です。

ここでは、介護者が限界を迎える前に知っておくべきリスクを、3つに分けて解説します。

身体的・精神的な共倒れのリスク

ワンオペ介護では、24時間にわたる対応が続くことで、身体的・精神的な疲労が蓄積します。常に緊張を強いられる状態にいると、慢性的な睡眠不足に陥りやすいでしょう。

体が休まらないことで、日常生活における判断力の低下を招く可能性があります。このような極限状態が長く続くと、精神を病んで介護うつを発症するリスクも上がるでしょう。

さらに追い詰められた結果、思わぬ形で虐待に至ってしまう恐れもあります。介護者と被介護者がともに倒れてしまう前に、そのような兆候を把握しておくことが必要です。

社会的孤立のリスク

ワンオペ介護では、介護に専念するために仕事をやめる「介護離職」を選択することによって、社会とのつながりが断たれやすくなるケースがあります。また、外出や他者との交流の機会が減ることで、必要な情報からも遮断される状態になりかねません。

身近に相談相手が存在しない辛さは、介護者を精神的に追い詰める要因となるでしょう。責任感が強い方ほど周囲に頼ることをためらい、逃げ場がないと感じるほどの孤立を招く恐れがあります。

経済的困窮のリスク

ワンオペ介護では、介護にかかる費用や生活費などの金銭的な負担も、一人に集中しやすくなります。暮らしを支える費用をすべて一人でまかなうことは、家計の圧迫につながるでしょう。

さらに、介護離職をした場合、収入が大幅に減少するケースも多く見られます。このような状態が続くと、生活の維持が難しくなることも少なくありません。

また、一度仕事を離れてしまうと、介護が終わった後に希望する条件で再就職することが困難になる場合があります。将来にわたる経済的な基盤を失うことによって、生活が困窮するリスクが大きいと考えられるでしょう。

ワンオペ介護への具体的な3つの対策

 
ワンオペ介護による負担を軽減し、状況を改善するには、具体的な対策を段階的に進めることが大切です。ここでは、一人で抱え込み過ぎないための対策を、3つのステップに分けて解説します。

1. 介護のプロに相談して支援を受ける

まずは、地域包括支援センターに相談してみましょう。この施設は全国に5,487カ所、窓口や支所を含めると7,374カ所設置されています(2025年4月末現在)。
地域包括支援センターには、保健師や主任ケアマネジャー、社会福祉士といった介護の専門家が在籍し、状況に応じて適切な機関や支援制度へとつなぎます。「何から相談すればよいかわからない」という漠然とした状態でも相談が可能です。なお、施設の名称は地方自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

すでにセンターで相談している場合は、担当のケアマネジャーと密に話し合うのも一案です。ケアマネジャーは、介護サービスの計画を立てる専門職です。現在の介護状況や抱えている悩みを伝え、介護者自身の健康を守るという視点から、ケアプランの見直しを依頼しましょう。

2. 介護サービスや公的支援制度をフル活用する

介護者の負担を軽減し、休息を確保するためには、レスパイトケアサービスの活用もよいでしょう。レスパイトとは小休止や息抜きを意味する言葉で、介護においては介護の担い手の心身を癒やすことを目的として、一時的に介護を代行する支援を指します。具体的にはショートステイの利用やデイサービス、訪問看護などを活用して、介護の負担を一時的に軽減します。

介護疲れを感じたときはもちろん、冠婚葬祭や私用で家を空ける場合にも利用可能です。具体的なサービス内容や利用方法は、地域包括支援センターで相談できます。

また、経済的負担を抑えるためには公的支援制度の活用も必要です。高額療養費制度のほか、特定福祉用具の購入費や住宅改修費の支給などがあります。

さらに、介護と仕事の両立をサポートするため、介護休業給付の支給や所定労働時間の短縮等の措置なども設けられています。このような経済的支援制度についても、地域包括支援センターでアドバイスを受けることが可能です。

3. 施設入居を検討する

施設への入居は決して悪い選択ではなく、介護する側とされる側の双方を守る方法の一つです。専門スタッフによる質の高いケアが受けられる環境に託すという考え方は、家族を守ることにつながります。「最後まで家で看たい」という思いから、罪悪感を抱く方もいますが、自分を責める必要はありません。

施設には特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームなどがあります。

入居後は定期的に面会を行うことで、家族との時間を大切に過ごすことができるでしょう。ほかの家族と情報交換ができる、施設の家族会に参加することもお勧めです。

ワンオペになりがちな介護との向き合い方

 
以下では「ワンオペになりがちな介護に対して、どのように向き合うべきか」を整理します。

まずは、完璧な介護を目指さない姿勢が大切です。「こうしなくてはならない」という既成概念にとらわれず、介護の作業を簡素化する工夫をしましょう。これは手抜きではなく、生活していくための合理的な考えだと捉えると受け入れやすくなります。

また、外部とのつながりを断たないよう意識することも必要です。自分の悩みや弱音を安心して話せる場所を持つことは、精神的な安定につながります。SNSや家族会などのコミュニティを活用して、外の世界との接点を維持しましょう。厚生労働省が運営する「働く人の『こころの耳電話相談』」のような相談窓口を利用するのも有効な手段です。

さらに、自分の人生を大事にする勇気を持つことも忘れないようにしましょう。「介護は家族が担うべき」という固定概念に縛られる必要はありません。限界を迎えて心身を壊してしまう前に、自分自身のケアを優先的に行うことが大切です。

一人で背負わずに持続可能な介護をしよう


ワンオペ介護は、一人で抱え込むほどに介護者自身の負担が増し、心身の健康が損なわれる危険性があります。心身の疲労や経済的な不安を放置することなく、早い段階で状況を見直すことが大切です。

公的なサービスや支援制度を活用したり、施設入居といった選択肢を検討したりすることは、家族を守るための前向きな判断です。自分自身を大切にしながら、無理のない持続可能な介護の形を目指しましょう。

 
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久毛 希[作業療法士]

作業療法士として回復期病院や介護老人保健施設での臨床を経て、リハビリテーション専門学校の専任教員を歴任。現在は特別養護老人ホームにて機能訓練指導員として従事しながら、医療・介護ライターとしての医療・介護系記事執筆・編集・監修を行っている。

資格:作業療法士・福祉用具プランナー・福祉住環境コーディネーター2級・認定心理士・薬機法・医療法規格協会 YMAA個人認証 取得
など

公開日:2026年5月22日

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