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レスパイトケアとはどのようなサービス?利用効果や注意点

在宅介護では、多くの場合介護者である家族に身体的・精神的に負担がかかります。
日々の介護で疲労が蓄積され、頼れる人や場所がわからずに無理をしてしまい体調を崩してしまう人も少なくありません。
そのようなリスクを回避するための対処法として休息時間を確保するためのサービスである「レスパイトケア」が注目されています。

本記事では、レスパイトケアの概要・サービス内容・利用効果・注意点を紹介します。

レスパイトケアの概要

レスパイト(respite)は、英語で「休息」や「息抜き」を意味する言葉で、レスパイトケアとは、在宅で介護をしている家族が休息を取れるようサポートを行なうサービスです。

具体的には、家族の代わりに、介護サービス事業者が代行して介護を請け負います。希望に合わせて、数時間の利用から宿泊まで、幅広いサービスが利用可能です。
一時的であっても介護生活から離れる時間を作ることで、普段介護を行なっている方は心身ともにリラックスできます。

また、レスパイトケアは、育児・医療・障がい分野など、介護以外の場面でも取り入れられています。

将来、ご自身が介護を受ける側になったときに、家族や周りの人の負担を軽くできるよう、レスパイトケアが一体どのようなサービスなのか知っておくと安心です。心置きなく活用できるよう事前に準備しておきましょう。

レスパイトケアの目的・効果とは?

レスパイトケアは、日々の介護生活による疲労やストレスを軽減させることを目的としていますが、実は介護を受ける側にとっても、心身の状態を改善させる効果が期待できます。

ここからは、レスパイトケアの目的や効果を具体的に解説します。

介護者の負担軽減

繰り返しになりますが、レスパイトケアの目的は、介護者が抱えるさまざまな負担の軽減です。

一時的に介護から離れ、介護者が抱える日々のストレスや疲労を癒すことで、介護生活における孤独感なども解消でき、長く在宅介護を続けられやすくなります。

介護者のなかには「自分だけ休んでしまって申し訳ない」「周囲の人に介護放棄だと思われないか?」と不安に思う人もいるかもしれません。

しかし、休息を取らなければ疲労・ストレスが限界を超えてしまい、在宅介護の継続が難しくなるリスクが高まります。無理をせずに、レスパイトケアを有効活用することが大切です。

介護を受ける人の負担軽減

介護を受ける側も、家族に対して「介護をさせてしまって申し訳ない」という想いを抱え、精神的な負担を感じることがあります。
家族による介護ではなく、公的なサポートである介護サービスを利用することで「大切な家族が休める」と安心できるため、本人も心を休ませられるでしょう。

このように、レスパイトケアは介護をする家族・介護を受ける人の両者にとって、身体的・精神的な負担が軽減できるメリットの大きいサービスです。

レスパイトケアのサービス一覧

レスパイトケアのサービスは、訪問サービスや施設に通うサービス、宿泊サービスなど、さまざまです。本人の要介護レベルによっても利用できる範囲が異なるため、事前に確認しておきましょう。

以下では、レスパイトケアの具体的なサービス内容を紹介します。

訪問介護

訪問介護とは、利用者の自宅に訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問し、身体介護・生活援助・通院に際する乗降介助などを提供するサービスです。時間利用が可能であり、家族が日常の介護で大変だと感じている部分の介護を中心にサポートが受けられます。
また、訪問を通して日常生活の困りごとの相談や介護技術のアドバイスなどが受けられるケースもあり、介護生活の孤独感からの解放にもつながります。

具体的なサポート内容は、以下のとおりです。
身体介護 入浴や食事の介護、おむつ交換など、本人の介護など
生活援助 調理や洗濯、掃除など、本人の身の回りのサポート
通院等乗降介助 通院時の乗降車のサポート、移動の介助・通院先での受診等手続きのサービスなど
訪問介護の利用は、原則65歳以上で、要介護1以上の人が対象です。自宅に来てくれるため、施設や病院に外出することに対して不安や抵抗がある場合でも安心して利用できるでしょう。

通所サービス

通所サービスでは、日中に一定時間、介護施設に通うことで介護が受けられるサービスです。利用時間帯は、半日もしくは朝~夕方までの全日利用など、希望に合わせて選択できます。

介護施設までの送迎がサービスに含まれており、家族が介護施設へ連れていく負担がないことがメリットです。本人が出かけている間、家族は自由に時間を使えます。用事を済ませたり、友人と会ったりすることができるため、気分転換ができるでしょう。

通所サービスは、以下の2種類に分かれています。

デイサービス(通所介護)

デイサービスは、要介護1以上の人が利用できるサービスで、入浴や排せつ・食事の介護や機能訓練などの介護が受けられます。

外出することで家族以外の人との関わりができ、利用者本人もリフレッシュできる時間を作れることがメリットです。施設で過ごす時間をより楽しめるように、脳トレやリズム体操、書道、生け花、カラオケなどのレクリエーションの用意があり、通うことが楽しみにつながる工夫がされています。

デイケア(通所リハビリテーション)

デイケアでは、おもに身体機能の回復や維持のために、リハビリテーションを中心に行ないます。

デイサービスと同様に入浴や排せつ、食事などのサポートも受けられます。理学療法士、作業療法士など、リハビリテーションの専門家によるケアが受けられる点が特徴です。

要介護1以上の人が対象ですが、デイケアを利用するためには、主治医(医師)の指示書が必要です。主治医が必要と判断しなければ、原則デイケアは利用できません。

ショートステイ(短期入所生活介護)

ショートステイは、特別養護老人ホームなどの介護施設に短期間入所が可能なサービスです。要支援1以上の人が対象で、1泊から利用できます。要介護度によっては30日間の連泊も可能です。
施設入居者と同様に、食事・排せつ・入浴などの日常生活のサポートはもちろんのこと、健康管理のフォローも受けられるメリットがあります。

また、医療ケアが必要な場合は、医療型ショートステイ(短期入所療養介護)の利用が可能です。医療型ショートステイでは、医師や看護師が在籍する、介護老人保健施設・病院・介護医療院などに入所します。

上記のようなショートステイの利用によって、家族は24時間以上介護から解放されるため、ゆっくりと休める時間が確保できます。また、突然の体調不良や冠婚葬祭など、緊急時にも活用できるため、在宅介護を行なう家族の支えとなるサービスといえるでしょう。

レスパイト入院

レスパイト入院とは、点滴や経管栄養、酸素管理など、医療依存度が高い人を病院で受け入れるサービスです。入院は医療保険適用となり、介護度の条件はありません。
日常生活の介護に加え、医師・看護師による医療的なケアを受けられます。医師の判断によって、必要であれば身体機能回復や維持のためのリハビリテーションが受けられることもあります。

介護度の基準はないものの、「病状が安定している」「在宅で医療機器を使用している」など、医療ケアの面で受け入れ条件が決まっているケースがあります。条件は病院によって異なるため、受け入れ条件の確認が必要です。入院の期間は、一般的に1週間~2週間程度となっています。

レスパイトケアを利用する際の注意点

レスパイトケアは、本人・家族が休息を取ることを目的としたサービスです。効果的に利用するために、利用目的やリスクの理解を深めておきましょう。

ここからは、レスパイトケアを利用する際の注意点について解説します。

レスパイトケアの目的をしっかりと理解しておく

レスパイトケアの利用に対して本人・家族がマイナスな印象を抱いている場合、「介護を休んでよかったのか?」と心配する気持ちが強くなり、余計に疲弊してしまうおそれがあります。

レスパイトケアの目的は、介護を担う側・介護を受ける側がお互いに休息を取ることで、心身ともに気分転換を図ることです。家族だけで無理に介護をする必要はなく、長く在宅生活を送るために必要なことなのだと、理解しておきましょう。

利用には予約が必要

レスパイトケアを利用するには、予約が必要です。介護をサポートする介護サービス事業者が、本人の状況をしっかりと把握しておかなければ、安全に過ごすための環境調整が難しくなってしまうからです。
受け入れ側である施設や病院は、本人の身体機能・認知機能、病状、服薬内容などを確認したうえで、適切なサービスが提供できるかを判断します。

また、公的介護保険制度によるレスパイトケアを利用するには、ケアマネジャーもしくは地域包括支援センターの職員によってケアプランを作成してもらう必要があります。

予約や介護サービスの手配に際しては、ケアプランの作成担当者によるサポートが受けられるため、家族だけで対応する必要はありません。レスパイトケアを利用する際には、担当のケアマネジャーや、地域包括支援センターにまずは相談してみてください。

状態が変化するリスクがある

レスパイトケアの利用によって、本人の身体状況や精神状態が変化するリスクがあります。住み慣れている自宅とは環境が変わるため、体調を崩すことや精神的に疲弊してしまうこともあるかもしれません。

本人が安心して過ごせるように、サービス内容や施設の環境、不安に思う点を解消したうえで利用することが大切です。

  

レスパイトケアは、在宅介護を担う家族と介護を受ける本人の休息を目的としています。住み慣れた自宅で安心して生活を送るためには、家族の継続的なサポートが必要であり、家族にとって息抜きの時間を設けることはとても重要です。

レスパイトケアは時間単位の利用から宿泊まで、幅広くサービスが展開されており、家族の体調不良などの緊急時にも利用できます。

本人・家族の支えとなるサービスのため、介護を離れることに対してマイナスな感情を持つのではなく、少しでも長く在宅生活を送れるよう積極的に休息時間を確保しましょう。

社会福祉士 梅山 茜

介護施設へのボランティア活動に携わったことをきっかけに介護関連の情報に強い関心を持ち、社会福祉士の資格を取得。3年ほど精神科・急性期病院にて相談業務に従事。自身の経験や実務経験を活かし、介護保険をはじめとした社会制度全般、各施設の解説など幅広く執筆活動中。

公開日:2023年5月22日

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