介護疲れを防ぐには?
介護疲れになる原因と対処法


家族を介護する方の多くが抱える問題の一つに、「介護疲れ」があります。介護疲れとは、介護にともなう身体的・精神的・経済的負担により、心身に不調をきたすことをいい、介護疲れがたまってしまうと、介護うつといった重大な問題に発展してしまう可能性があります。

では、介護疲れを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

介護疲れを防ぐには、公的介護保険制度や民間介護保険、民間の介護サービスなどを活用し、介護の負担を減らすことが大切です。

本記事では、介護疲れの原因と介護疲れが引き起こす問題、介護疲れにならないためのポイントを解説します。

介護にともなう3つの負担

介護疲れは、介護にともなう身体的負担・精神的負担・経済的負担の3つの負担に起因します。これらが具体的にどのようなものなのか、それぞれの内容を見ていきましょう。

身体的な負担

要介護者には、起床や移動、衣類の着脱、入浴など、一日のさまざまな場面で身体的サポートが必要となります。介護において、大人一人の身体を支えようとすると、どうしても介護者の腰や膝、腕などに過度な負担がかかってしまうのです。

要介護者の身体の状況が悪く、日常動作全般に介助が必要な場合は、身体的負担はより増します。また、日常的な介助に、散歩や通院などによる疲れや、夜間の介助による睡眠不足、生活リズムの乱れが重なると、身体的負担はより増えてしまうでしょう。

精神的な負担

要介護者や親族、近隣住民、医療関係者に対する気遣いなど、介護には精神的な負担もともないます。認知症の介護では、意思疎通ができないことなどを理由に、精神的負担がより増してしまいます。

介護の終わりが見えない不安や疲労を抱え、誰にも相談できず、精神的に追いつめられる介護者も少なくありません。精神的負担は外見からは判断しづらいため、介護者自身やその周囲が負担に気付き、負担を解消する行動をとることが大切です。

経済的な負担

公的介護保険制度だけでは、介護にかかる費用をすべて賄うことはできません。

2021(令和3)年度の生命保険文化センターの調査(※)によると、介護にかかった費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、住宅改造や介護用ベッド購入など、一時的にかかった費用は平均74万円でした。また、月々の介護費用の分布は平均で8.3万円、最も多いのは15万円以上の世帯で全体の約16%にものぼることが示されています。
介護者が介護を理由に離職した場合には、収入が減ってしまうことから経済的負担はさらに増します。経済的負担は、精神的・身体的な負担にもつながるため、公的介護保険制度を利用するとともに民間介護保険を活用し、負担の軽減に努める必要があるといえるでしょう。

介護疲れがひどくなるとどうなる?介護疲れによるさまざまな問題

介護の負担を抱え続けてしまい、介護疲れがたまると、介護うつや介護放棄(ネグレクト)、介護離職といった問題が発生します。各問題の特徴を見ていきましょう。

介護うつ

介護うつは、介護による精神的負担や身体的・経済的負担が大きくなり、介護疲れが蓄積することで発症するうつ病です。介護うつになると、食欲不振や睡眠障害、疲労感、焦燥感、思考障害などの症状が現れ、介護ができなくなるだけでなく、介護者自身の生活や健康にも大きな影響をおよぼします。

介護うつかもしれないと気付いたら、まずは心療内科や精神科を受診し、自身の状態を確認しましょう。ただし、介護者のなかには、うつ状態であることに気付かない方や、うつ状態であることを認めたくない方もいます。介護者の周囲の人が、介護者の状態に気を配ることが大切です。

介護うつになった場合、休養や薬物療法、精神療法などの対処が必要です。うつの回復には、長い時間がかかるとされているため、うつ状態になるまえに、気になる症状があればすぐに医療機関を受診してください。

介護放棄(ネグレクト)

介護放棄(ネグレクト)とは、要介護者の世話をせず、放置している状態をいいます。例えば、食事を与えない、入浴させない、医療機関で受診する機会を与えない、経済面での義務や責任(家賃、住宅ローンの支払いなど)をないがしろにする、などが介護放棄状態にあたります。

2021(令和3)年度の厚生労働省の調査(※)によると、養護者による被虐待高齢者の総数 16,809 人のうち、養護者による介護等放棄は3,225人にのぼります。また、同調査では重度の認知症がある場合に、要介護者が介護等放棄を受ける割合が高いという結果も示されました。

介護放棄は罪に問われる場合もあります。介護放棄状態にならないためにも、介護疲労を抑制するためのレスパイトケアや、介護サービスの適切な利用が欠かせないといえるでしょう。

介護離職

介護を理由に退職してしまうことを、介護離職と呼びます。厚生労働省の雇用動向調査(※)によると、2021(令和3)年に介護・看護を理由に離職した人は約9.3万人で、多くの人が介護・看護を理由に離職していることがわかるでしょう。

介護離職してしまうと、これまで得られていた収入がなくなって経済力が低下してしまいます。また、離職によってキャリアにブランクができてしまうため、介護が落ち着いて再就職しようと思っても就職先が見つからない、といった問題も発生します。

介護離職は介護者の経済的負担が大きく、その負担は介護終了後も続いてしまうのが特徴です。介護離職を防ぐには、働き続けながら介護できるような体制づくりが必要だといえるでしょう。

介護疲れしやすい人の特徴

介護疲れしやすい人には、以下のような特徴があるといわれています。特徴に当てはまる場合は、介護疲れを避けられるよう、より一層対策していきましょう。

介護疲れしやすい人の特徴
● 責任感が強い
● 完璧主義
● 我慢しすぎてしまう
● 身体が弱い
● 経済的に余裕がない

次の章では介護疲れを防ぐ方法を具体的に紹介します。

介護疲れを避ける6つの方法

介護疲れを避けるには、適切なレスパイトケアを受けたり、より介護しやすい環境を整えたりすることが必要です。レスパイトケアとは、介護者が心身ともにリフレッシュできるよう支援することを指します。
ここでは、介護疲れを避ける方法を6つ紹介します。現在の介護環境に合った方法を取り入れてみてください。

介護サービスを利用する

国の介護保険制度によって、65歳以上の方や40歳から64歳の特定疾病のある方は、介護が必要と認められた場合に公的な介護サービスを受けられます。おもな公的介護サービスには、以下のようなものが挙げられます。

サービス名

内容

訪問介護

ホームヘルパーが自宅を訪問し、要介護者の身体介護や生活支援を行なう。事業所によっては通院などを介助するサービスを提供している場合もある

訪問入浴介護

看護職員と介護職員が浴槽を持参して自宅を訪問し、入浴の介護を行なう

デイサービス

デイサービスセンターなどの通所介護施設に通うことで、日常生活支援や機能訓練などを日帰りで受けられる

ショートステイ

特別養護老人ホームなどに短期間入所することで、日常生活支援や機能訓練などを受けられる

介護サービスを受けたい場合は、お住まいの市町村で要介護認定を受ける必要があります。まずは自治体の介護担当窓口で、要介護認定の申請を行ないましょう。

また、公的介護保険制度の対象外のサービスや行政サービスとして、企業や市区町村が要介護者・介護者を支援する仕組みもあります。介護が始まったら、利用できる制度がないか、自治体などに確認してみましょう。

● 公的介護保険制度の対象外のサービス
配食サービス、家事代行サービス、送迎サービス など

● 行政サービス
緊急通報サービス、理美容サービス、おむつサービス など

仕事をしている人は介護休業制度を利用する

仕事をしながら介護を続ける方のために、介護休業制度があります。介護休業制度は、要介護状態にある対象家族を介護するために休業できる制度で、制度を利用すると、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

また、介護休業期間中、一定の要件を満たす場合は給付金が支給されます。給付金額は休業開始時賃金月額の約67%で、給付を受けるにはハローワークへの申請手続きが必要です。

介護休業制度と似た制度に、介護休暇制度というものもあります。介護休暇制度も介護休業制度と同様に、要介護状態にある対象家族を介護する際に利用できる制度ですが、介護休業制度より取得できる休暇の日数が少なく、取得単位も1日または時間単位と短くなっています。

介護休業制度と介護休暇制度の違いをふまえながら、状況に合った制度を選択しましょう。

介護のスキルを身に付ける

専門家のアドバイスを受け、介護技術を学ぶと介護負担が減る場合もあります。移動介助や排せつ介助などのコツを知っておくと、介護がスムーズにできるようになり、介護の身体的負担を軽減できるでしょう。症状への理解を深めると、要介護者への対処法がわかるようになることもあります。

介護のスキルは、自治体が介護者向けに開催している介護教室などで身に付けられます。参加できる教室がないか、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。

相談できる人や団体を見つける

悩みを相談すると、介護のストレスが減ったり、介護負担を軽減できる手段が見つかったりするかもしれません。

家族や知り合い、地域のケアマネジャー、地域包括支援センターの職員など、介護の話ができる相手を見つけ、ストレスがたまるまえに相談しましょう。全国には介護者同士が集まる会などもあります。同じ介護者同士だからこそ話せることもあるため、積極的に活用しましょう。

ストレスを発散させる方法を見つける

介護だけに集中していると、心身が疲労しやすくなります。自分の時間を作って介護から離れ、ストレスをためないような工夫が必要です。ストレスを発散させ、ふたたび介護に取り組めるよう心身の調子を整えましょう。

また、介護の状況を他人の状況と比較しない、一人で頑張りすぎない、気負いすぎずにできることをやるといった姿勢も大切です。介護サービスや周囲の人の力を借りながら、介護負担を抱え込まないよう努めましょう。

介護施設を利用する

自宅で介護するのではなく、介護施設を利用するのも一つの方法です。

「家族だからこそ、できるだけ自宅で介護したい」と思っていても、介護者に負担がかかり続けると、介護者と要介護者の共倒れになりかねません。介護のプロがいる施設を利用すれば、要介護者は安心して介護を受けられ、介護者は介護から離れてリラックスして過ごせます。介護施設のメリットもふまえて、介護施設利用を検討してみてください。

おもな介護施設には以下のようなものがあります。

施設名

概要

特別養護老人ホーム

要介護者の生活支援や機能訓練などを行なう施設。24時間介護の提供を目的としており、認知症の方も利用できる

グループホーム

認知症の方を対象に専門的なケアを行なう施設。介護スタッフとともに少人数の利用者が共同生活を送り、日常生活上の支援や機能訓練などを受けられる

サービス付き高齢者向け住宅

バリアフリー構造を持ち、介護や医療と連携して高齢者を支援するサービスを提供する施設。一般型と介護型に分かれており、ほかの介護施設と比べて生活の自由度が高いのが特徴

有料老人ホーム

介護、食事、家事、健康管理などの生活サポートを受けられる施設。介護付き、住宅型、健康型の3種類がある

介護施設を利用するなら、介護の限界を迎えるまえに早めに情報収集しておくことが大切です。施設の種類やケア体制、費用、立地などをふまえて、最適な施設を選択しましょう。

周囲の人や専門家と協力して介護疲れを乗り越えよう


介護疲れは、介護にたずさわる誰しもがなり得るものです。公的介護サービスや民間の介護サービスを活用して、介護のストレスをためない環境を作り、介護にともなう身体的・精神的・経済的負担を減らしていきましょう。

介護の経済的負担に備えるなら、民間介護保険の利用がおすすめです。

 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

赤上 直紀

元銀行員。住宅ローンを通じて、多くのお客様のライフプランニングに携わる。住宅ローンは人生で一番の買い物と言われているため、慎重に契約すべきだと考える。現在は、編集者として金融機関を中心に、ウェブコンテンツの編集・執筆業務を行う。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士

公開日:2023年8月28日

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