民間介護保険とは?
知っておきたいメリット・デメリットや加入の必要性


高齢化が進むなか、民間介護保険の特徴や加入するメリット・デメリットについて、知りたい方は多いのではないでしょうか。

民間介護保険は、民間の保険会社などが提供するもので、公的介護保険とは別に任意で加入する保険です。
介護費用を貯めておきたい、将来介護を頼める人がいないなどの場合は、民間介護保険への加入をおすすめします。介護サービスを利用する高齢者は年々増加しており、将来の介護にかかる費用などと自身の備えの状況を踏まえて加入を検討しましょう。

当記事では、民間介護保険の概要やメリット・デメリット、注目されている背景、加入の必要性、選び方を詳しく解説します。

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民間介護保険は「介護に備えて任意加入する保険」

まずは、民間の介護保険に関する概要や、公的介護保険との違いについて見ていきましょう。

民間介護保険とは

民間介護保険とは、保険会社などの民間企業が提供している保険です。加入義務がある公的介護保険とは別に、介護で生じる経済的な負担に備えるために任意で加入する保険で、給付額は保険会社の商品や払込額に応じて変化します。

保険商品によって定められている要介護状態になった場合、一時金や年金として現金で支払われます。

経済面で心配しないためにも、介護費用の備えはこれから重要になるでしょう。

公的介護保険との違い

民間介護保険・公的介護保険の具体的な違いについては、以下の表の通りです。

項目

民間介護保険

公的介護保険

加入義務

なし(任意で加入)

あり(40歳以上)

給付方法

現金支給(受け取り方法は契約内容で変わる)

現物支給(介護サービス)

給付額

任意の設定によって変わる

要支援・要介護の度合いに応じて変わる

保険料支払い免除

保険商品によって異なる

なし

手続き先

保険会社など

市区町村


民間介護保険の場合、商品ごとに給付条件などの内容が異なることが特徴です。

公的介護保険の適用には、要支援・要介護認定を受ける必要があります。また、サービス利用料の1~3割の金額を自己負担しなければなりません。

民間介護保険の3つのメリット

次に、民間介護保険に加入するおもな3つのメリットを紹介します。

現金給付のため用途が自由

民間介護保険で給付されるものは現金です。給付されたあとの用途は問われないため、介護サービス利用の自己負担分に充てる以外に、生活費や交通費、住宅改修費の補てんといった目的でも利用可能です。

一方、公的介護保険の場合は、現金ではなくサービス自体が給付されるため、規定の介護サービス以外の用途に利用できません。日常的な生活費なども含めて、介護全体にかかる費用へ使えるのは、民間介護保険ならではの利点といえます。

ニーズに応じて豊富な種類から選べる

一口に民間介護保険といっても、さまざまな種類があります。例えば、認知症介護に特化して備えられる商品や、軽度の介護段階から備えられる商品など、ニーズに応じて選べる点が魅力です。

また、支払いのタイミングに関しても、年金タイプとして一生涯の給付を受けられるものや、一時金タイプとしてまとめて給付を受けられるものがあります。日々の介護費用に充てたい場合は年金タイプ、まとまった費用を受け取りたい場合は一時金タイプが適しています。

生命保険料控除の対象になる

民間介護保険の保険料は、年末調整や確定申告で生命保険料控除の対象となるメリットがあります。生命保険料控除とは、生命保険料や介護医療保険料などを支払った際に、一定額が所得控除となる制度です。

介護保険として将来に備えながら、所得税や住民税の負担を抑えられます。

民間介護保険の3つのデメリット

メリットがある一方、民間介護保険に加入する前に知っておきたいデメリットもあります。

健康状態によっては加入できないケースがある

民間介護保険に加入する際は、保険会社に対して自身の健康状態を告知する必要があります。健康状態によっては、加入できない可能性もあります。

健康上の理由で通常の保険への加入が難しい場合は、引受基準緩和型の保険も選択肢となるでしょう

また、契約可能年齢には制限があるため、年齢によっては加入できない可能性があることにも注意が必要です。

保険料の支払いが必要になる

民間介護保険に加入した場合、公的介護保険とは別に保険料の支払いが発生します。保障を手厚くしようと複数の保険に加入すれば、月々の保険料が重なり、家計を圧迫してしまいかねません。

自身の経済状況をよく確認し、無理なく支払い続けられる商品・プランを選ぶことが大切です。

保険金を受け取るには給付条件を満たす必要がある

民間介護保険から保険金や給付金を受け取るには、各商品で定められた給付条件を満たす必要があります。保険会社独自の基準が設けられており、単に要介護認定を受けただけでは不十分なケースがあるため、加入前に給付条件を確認することが大切です。

また、公的介護保険と連動して給付される商品の場合、将来の制度改正によって給付基準が変更される可能性があります。民間介護保険に入る際は、給付条件をよく確認しておきましょう。

民間介護保険が注目されている背景

日本社会の高齢化の進行と介護費用の負担増加により、公的介護保険を補完する役割として民間介護保険が注目を集めています。

高齢者の割合は今後も増加する

内閣府の調査によると、2023年における日本の65歳以上人口は約3,623万人で、日本の人口の29.1%を占めています。2045年にはこの割合が36.3%になるという推計も出ており、ますます高齢化が進むとされています。

要支援・要介護の認定者数は増加している

2030年には65歳以上の5人に1人は要支援・要介護の認定者となる見通しです。※1
 
厚生労働省が行った2020年度の調査によると、要介護(要支援)認定者数は、同年度末時点で約681万8,000人です。※2

2000年度(平成12年度)末時点では、同認定者数は約256万2,000人だったため、20年で約2.66倍に増えている計算になります。※2

2030年には要介護(要支援)認定者数が928万人までのぼる見通しで、介護は誰にとっても他人事ではありません。※3
将来の介護費用に備えるために、民間介護保険の必要性が増しているといえます。

※1厚生労働省「第92回社会保障審議会介護保険部会資料」および「介護保険事業状況報告の概要(令和5年10月暫定版)」より当社推計(第1号被保険者に対する65歳以上の認定者数の割合を使用)

※2厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」

※3厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」および「第55回社会保障審議会介護保険部会資料」より当社推計

介護に必要な費用総額は平均580万円

介護に必要な費用総額は平均580万円※4、月額平均約8.3万円です※5。特に、認知症の方の在宅介護では、通常の介護以上の費用がかかる傾向にあります。
 

公益財団法人家計経済研究所「在宅介護のお金とくらしについての調査 2016年」(月額金額をもとに当社にて推計/試算)、厚生労働省「平成25年度 介護保険事業状況報告(年報)」厚生労働省「平成24~25年度 認知症者の生活実態調査結果」のデータより当社試算

将来介護が必要になった際への備えが不可欠です。

生命保険文化センターが行った同調査では、「今後増やしたい生活保障準備項目」として、「世帯主が要介護状態となった場合の介護資金の準備」と答えた割合は25.6%という結果でした。2012年調査時の20.6%と比べると、5.0ポイント上昇しています。

介護に備えた経済的な準備の必要性が高まっていることから、民間介護保険のニーズも今後さらに高まるともいえるでしょう。

民間介護保険に加入する必要性は?

民間介護保険に加入する必要性は、個人の状況によって異なります。将来の介護リスクと現在の経済状況を踏まえ、自身に適した判断をすることが重要です。
以下に加入の必要性が高いケースと低いケースの特徴を紹介しますので、ご自身の状況と照らし合わせて客観的に判断しましょう。

加入の必要性が高いケース

以下の特徴に当てはまる方は、民間介護保険への加入を検討するとよいでしょう。
  • 貯蓄が少なく、将来の経済的不安が大きい
  • 身近に介護を頼める家族がいない
  • 公的介護保険の給付だけでは不十分と感じる
  • 質の高い介護サービスを受けたい
家族の介護経験から将来に不安を感じ、加入を決める方も少なくありません。自身の経済状況や家族の有無などを考慮し、加入するかどうか検討しましょう。

加入の必要性が低いケース

以下のケースに当てはまる方は、民間介護保険に加入する必要性が低いといえます。
  • 十分な貯蓄があり、将来の介護費用をカバーできる見込みがある
  • 身近に介護を担える家族がいる
ただし、身近に家族がいても、仕事などが忙しく介護に十分な時間を割けない場合は、民間介護保険への加入を検討した方がよいでしょう。また、家族に介護の負担をかけたくない場合も、将来への備えとして民間介護保険への加入を検討する価値があります。

自身の状況だけでなく、家族の状況も鑑みたうえで判断することが大切です。

民間介護保険への加入タイミングはいつが良い?

民間介護保険への加入タイミングは、早い段階がおすすめです。当社が100人のFPに行った介護・認知症への備えに関する調査における「介護に対する経済的な備え(保険への加入・貯金等)はいつから始めるべき?」という質問では、「40代から」という回答が全体の33.0%を占めました。

また、介護が必要になったおもな原因の40.8%は生活習慣病を含む疾病であり、介護は高齢者だけの問題ではないことが伺えます。
 

厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」

年齢が若いうちに加入するほど、保険料が安くなる傾向です。しかし、保険料の負担期間が長くなる可能性や、より医療・介護環境に適した商品が今後発売される可能性もあります。それらも考慮し、民間介護保険への加入を検討するとよいでしょう。

民間介護保険の選び方

ここからは、民間介護保険を選ぶ際のポイントを4つ紹介します。民間介護保険への加入を検討するうえで、ぜひ参考にしてください。

給付金の受け取り方

まずは、給付金の受け取り方について紹介します。

年金タイプ

年金のように、複数回にわたって給付されるタイプです。月々発生する介護サービスの利用料や、生活費などをまかなうことに適しています。

一時金タイプ

給付金を1回でまとめて受け取るタイプです。多くの場合、年金タイプと比べて1回で受け取る給付金額を高めに設定できることが特徴です。施設への入所費や住宅リフォーム費など、まとまったお金が必要な場面にも備えられます。

保険期間

次に、保障の期間について解説します。

定期タイプ

保障期間が「●●歳まで」「●●年●●月●●日まで」と区切られているタイプで、期間内に給付条件を満たした場合に給付を受けられます。 保障期間が終身タイプに比べると短いため、多くの場合、保険料を抑えられることが特徴です。

終身タイプ

保障が一生涯続くタイプです。介護保障では特に、高齢期になってから必要となることが想定されるため、一生涯の保障があると安心です。

給付条件

続いて、給付条件ごとの特徴について解説します。

公的介護保険と連動した給付条件のタイプ

公的介護保険制度での要支援・要介護認定が、そのまま給付条件として設定されているタイプです。その他の条件が設定されていないため、非常にわかりやすいという特徴があります。

保険会社・商品独自の条件があるタイプ

保険会社が独自に定めた条件に当てはまる場合、給付を受けられるタイプの介護保険です。条件は保険会社の商品ごとに異なるため、加入前にしっかりと内容を確認することが大切です。

その他の特徴で選ぶ

受け取り方法や給付条件以外の特徴としては、保険料払込免除制度の有無などが挙げられます。保険料払込免除制度がある介護保険の場合、条件に合致することで保険料の払込みが不要となります。

保険料の払込みが免除されることで、家計への負担が抑えられるというメリットがあります。

介護への理解を深め民間介護保険への加入を検討しよう

民間介護保険は、公的介護保険ではカバーしきれない介護サービス費や生活費の負担を軽減できるものです。給付条件や受け取り方法などは保険商品によって大きく異なるため、ご自身の状況に合わせたものを選ぶことで、より心強いサポートとなるでしょう。
  
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2024年11月5日

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