70歳以上になると介護保険料はどうなる?
保険料額の計算や納付の方法


70歳以上でも介護保険料を納める必要があるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。結論としては、70歳以上の方も原則介護保険料を納める必要があります。

なお、介護保険料の計算方法や納付方法は65歳から変わりますが、それ以降は特に変更はありません。

本記事では、70歳以上の方の介護保険料について、計算方法や平均の納付額、納付方法などを解説します。

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70歳以上の方でも介護保険料の納付義務がある

ここでは、70歳以上の方に介護保険料の納付義務がある理由を解説します。

65歳以上は何歳であっても第1号被保険者になる

公的介護保険制度では年齢によって、65歳以上の方を第1号被保険者、40歳~64歳までの方を第2号被保険者と定めており、70歳以上の方は第1号被保険者に該当します。

また、介護保険料の支払いは、特定の年齢に達したら終了するわけではありません。被保険者となった40歳から一生涯支払い続ける必要があるため、70歳以上の方にも納付義務があります。

なお、第1号被保険者の納付した保険料は、お住まいの市区町村が保険者として回収します。被保険者が介護サービスを利用したときに、その費用の7~9割を保険者が負担するためです。保険者の費用負担の財源は、介護保険料と税金から成り立っています。

介護サービスを利用中の方も例外ではない

前述のとおり、原則、介護保険料の支払いは40歳から一生涯続きます。すでに介護サービスを利用中の方も例外ではなく、70歳以上で要支援・要介護の認定を受けても、納付義務は変わりません。

また、介護サービスを利用する場合は、介護保険料とは別に、介護サービス利用料の支払いも必要です。介護サービス利用料の自己負担割合は基本的に1割ですが、一定以上の所得がある方は2~3割負担となります。

70歳以上の方の介護保険料はどのくらい?

次に、介護保険料の計算方法と、平均額を紹介します。

介護保険料の計算方法

第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村が設定する介護保険料の「基準額」をもとに算出され、基準額は3年ごとに見直されます。

この基準額に、所得段階ごとに定められた数値をかけることで介護保険料が決まります。なお、所得段階は、被保険者本人の所得や世帯の住民税課税状況などによって段階分けされています。

65歳から第1号被保険者となりますので、そのタイミングで上記の計算方法に切り替わった後は、70歳以上になっても計算方法が変わることはありません。

ひと月当たりの介護保険料の具体例

では、ひと月当たりの介護保険料はどれくらいになるのでしょうか。

ここでは、新宿区に居住していると仮定して、2つの例をご紹介します。新宿区では、2024~2026年度の基準額は月額6,600円、所得段階は第1~18段階です。


【例1】
本人が住民税課税対象で、合計所得金額が125万円未満の場合


所得段階は第6段階、基準額に対する割合は「基準額×1.1」です。
6,600円(新宿区の基準額)×1.1=7,260円

ひと月当たり7,260円となり、年額にすると87,120円です。

【例2】
世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて120万円以下の場合


所得段階は第2段階、基準額に対する割合は「基準額×0.35」です。
6,600円(新宿区の基準額)×0.35=2,310円

ひと月当たり2,310円となり、年額にすると27,720円です。

このように、介護保険料は所得や住民税課税状況などによって調整されます。

なお、新宿区の所得段階は18段階でしたが、国が示す標準段階は13段階です。分け方や段階数は各市区町村で異なるため、詳しくは、お住まいの市区町村のホームページで確認してみてください。

介護保険料の平均額

厚生労働省によると、第1号被保険者が2024~2026年度に支払う介護保険料の一人当たり平均月額は6,225円です。
公的介護保険制度が始まった2000年度の平均月額は2,911円です。高齢化の影響で介護保険料は上昇が続いており、現在、納付額は過去最高となっています。

70歳以上の介護保険料の納付方法

次に、介護保険料の納付方法を紹介します。65歳からは、「特別徴収」もしくは「普通徴収」で納付することになります。70歳以上の方も同様です。

特別徴収

年間で受け取る年金が18万円以上ある方は、「特別徴収」となり、年金から介護保険料が天引きされます。条件を満たすと自動的に切り替わるので、特別な手続きは必要ありません。

ただし、特別徴収の対象者であると把握されてから天引きが始まるまでは、6カ月ほどかかります。年度途中で65歳となった方や所得変更による介護保険料の増額があった方、ほかの市区町村へ引っ越した方などは、一時的に口座振替や納付書で納める場合があります。

普通徴収

年間で受け取る年金が18万円未満の方は、「普通徴収」となり、口座振替もしくは納付書でコンビニや銀行から納付します。また、最近ではスマートフォンの決済アプリに対応している自治体も増えています。

納付書で納付する場合は、納め忘れないよう注意しましょう。

介護保険料の納付が免除される人

公的介護保険制度の被保険者でも、介護保険料の納付が免除される人がいます。

まずは、生活保護を受けている方です。65歳未満の方は公的介護保険の被保険者ではありませんが、65歳になると生活保護受給者の方も第1号被保険者となります。ただし、介護保険料は生活保護費の生活扶助費として賄われるため、実質的な自己負担は発生しません。

そして、介護保険適用除外施設に入所・入院している方も、介護保険料を納める必要はありません。介護保険適用除外施設とは、介護保険法施行規則第170条第2項に定められている施設で、国立ハンセン病療養所等、障害者支援施設など9つの種類があります。

なお、健康保険の被扶養者は、65歳未満まで介護保険料の納付は免除されていますが、65歳以上になると納付義務が発生します。

介護保険料は社会保険料控除の対象?

社会保険料控除とは、本人または配偶者、そのほかの親族が負担すべき社会保険料を納付した場合に受けられる所得控除(所得から一定の金額を差し引き、納税額を少なくする制度)のことです。

介護保険料も、社会保険料控除の対象になっています。

公的年金等の収入金額が400万円以上ある方、400万円以下でも公的年金等にかかわる雑所得以外の所得が20万円以上ある方は、確定申告が必要です。確定申告の際は、その年に納付した介護保険料の金額も忘れずに記入しましょう。

なお、納付した介護保険料の金額は、1月頃に送付される公的年金等の源泉徴収票(特別徴収)、もしくは介護保険料納付額確認書(普通徴収)で確認できます。

介護保険料の納付が難しいときは?

介護保険料の納付が難しいときは、特別な事情があれば、介護保険料の免除や減額が認められることがあります。例えば、災害で大きな損害を受けた、長期入院や事業の廃止などにより世帯収入が著しく減少したなどの場合は認められる可能性があるでしょう。

介護保険料を滞納すると、滞納した期間によってさまざまなペナルティがあります。納付が難しいときは、できるだけ早めにお住まいの市区町村窓口に相談しましょう。

介護保険料の免除や減額の条件、ペナルティは以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

関連記事:公的介護保険料の免除・減免は可能?免除・減免措置の対象となる条件

公的介護保険の仕組みを知り、遅滞なく介護保険料を納付しよう


介護保険料の納付は、40歳から一生涯続きます。65歳からは納付方法が変わるため、納付書で納付する方は納め忘れがないように注意が必要です。

納付が難しい場合は、免除・減免措置もあります。滞納してしまうとペナルティがあるため、まずは、お住まいの市区町村窓口に相談しましょう。

介護が必要になると、介護保険料に加えて介護サービスを利用した場合の費用負担も発生します。もしも介護への備えに不安があれば、民間介護保険への加入も検討してみてはいかがでしょうか。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2025年4月8日

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