介護食とは?食事の基本知識や作り方から
おいしく食べられる工夫


介護される方々にとって、栄養バランスの取れた健康的な食事は非常に重要です。

ただ、介護食を初めて作る人からすると、普通の食事との違いやどのようなものを作るべきかわからないと悩むことも多いでしょう。介護食を作る際は、調理方法や使う食材などで通常食とは異なる点があり、注意が必要です。

この記事では、介護食とはどのようなものか、基本知識をはじめとして、初めて介護食を作る場合に知っておくべきポイントについて解説します。記事を通じて、介護食の基本を理解し、大切な方の食事を豊かにしていきましょう。

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介護食とは何か?

介護食とは、病気・障害を抱えた方や高齢の方のために作られる特別な食事です。嚥下(飲み込むこと)が困難な方や、特定の栄養ニーズを持つ方に向けて提供されます。

介護食の目的は、要介護者の健康と生活の質を維持することであり、栄養不足や食事摂取の困難を解消することを目指しています。

介護食の作成にあたっては、食材の選択や特別な調理方法による、栄養バランスや嚥下の安全性への考慮が重要です。

介護食のおもな形状5種類と特徴

介護食は、その形状によっていくつかの呼び方で分類されています。以下では、介護食のおもな形状5種と、その特徴を紹介します。

きざみ食

通常食を小さく刻んだもので、嚙む機能が低下している方に適しています。刻む細かさは介護される方の状態によって異なりますが、一般的には5ミリから2センチ程度です。

軟菜食

食材を舌や歯茎でつぶせるくらいやわらかく調理したものを指します。嚙む機能や飲み込む機能が低い方に適しています。やわらかく仕上げているだけなので、見た目や味は通常食に近く、食事の楽しみも得やすいでしょう。

ソフト食

食材をすりつぶし、型にはめて整形したものです。その形状から、ムース食と呼ばれることもあり、咀嚼力が弱い方や唾液量の少ない方に適しています。やわらかく仕上げた介護食という意味で、軟菜食とムース食をまとめてソフト食と呼ぶこともあります。

ゼリー食

食材をすりつぶしたものに、ゼラチンや寒天、でんぷんなどを加えて、ゼリー状に加工したりとろみを付けたりした食事です。おもな目的は、嚥下力が低く、誤嚥が心配な方への食事の提供です。

つるりとした口当たりやのどごしの滑らかさがあり、形状があることから、流動食と比べて視覚的に食欲もわきやすいでしょう。

ミキサー食

食事を液体状に加工したもので、食材を混ぜ合わせ、ポタージュ状に仕上げます。流動食の一種で、嚙むことが難しく、嚥下力が低下した方に適しています。

一方で、食感や見た目の問題から、満足感や食事の楽しみが低下する可能性があるため、食べる方の心理的な側面にも注意が必要です。

市販の介護食の規格

市販の介護食(レトルト)のパッケージには、咀嚼力・嚥下力の状態を目安に区分された規格が表示されています。規格には以下の2種類があります。

・日本介護食品協議会が制定した自主規格「ユニバーサルデザインフード」
・農林水産省が整備した介護食の枠組み「スマイルケア食」

レトルト品はスーパーやドラッグストアのほか、インターネット通販などでも手に入ります。初めて介護食を作るときは、これらの規格と実際の中身の形状・やわらかさを見比べ、調理方法や仕上がりの参考にするのがおすすめです。また、味付けの濃さなども市販品が参考になるでしょう。

介護食作りの4つのポイント

介護食作りでは、通常食を作るときとは異なる配慮が必要になります。ここでは、介護食作りのポイントを4点紹介します。

食材は適切に調理する

介護食作りでは、食べる方の状態に応じて食材を調理することが大切です。同じ食材でも、調理方法によって食べやすさが変わります。

包丁の入れ方や油分・水分の加減、とろみ付けなどの工夫を施し、食べる力をサポートしましょう。

おいしそうな見た目にする

介護食は普通の食事と比べると見た目が劣るため、食欲がわきにくいという問題があります。液体状の食事など、何を食べているかわかりにくいものは、介護される方も食べたいと思いづらいものです。

スムーズに栄養を摂ってもらうためにも、できるだけおいしそうに見せ、食欲を引き出すよう工夫しましょう。例えば、ブレンダーにかけるときは食材同士を混ぜない、彩りや型抜きを工夫する、メニュー表を添える、食器や盛り付けにこだわるなどの方法が考えられます。

味付けと香りを工夫する

個人差はありますが、高齢になるほど味覚が衰えることから、濃い味を好む傾向があります。要望どおりに味付けを濃くすると、塩分の摂りすぎにつながるため注意が必要です。

ただ、単純に塩味を減らすだけでは、味気ない食事になってしまいます。対策として、出汁を上手に利用する、香辛料の使い方を工夫するなど、旨味や香りでおいしさを維持するのがおすすめです。

飽きないメニューにする

介護食に向いている食材と向いていない食材があるため、メニューがマンネリ化することもあるかもしれません。ただ、同じメニューばかりだと食べる側も飽きてしまい、食事が楽しくなくなってしまいます。できる範囲で飽きのこないメニューを考えるのは、介護食をスムーズに食べてもらうためのコツです。

例えば、ご飯、主菜、副菜、汁物などで、バリエーションとメリハリをつけたり、レトルト・作り置きをうまく使い、より少ない手間で献立の幅を広げるよう工夫したりするのもよいでしょう。

食材の選び方

介護食を作る際に迷うのが、どのような食材を使うべきかについてです。以下では、高齢の方が食べやすい・食べにくいと感じる食材を紹介します。

高齢者が食べやすい食材

やわらかいものや、ぬめりがあるものは、高齢の方にとって食べやすい食材です。以下に挙げる食材はその具体例です。ただし、個々の健康状態や嗜好に合わせる点は忘れないようにしましょう。
  • 脂ののった魚や肉
    まぐろやぶりのような脂ののった魚や、脂身のある薄切り肉は、嚙む力が弱い方でも食べやすく、栄養価も豊富です。

  • 豆腐
    やわらかい食感の豆腐は、タンパク質やカルシウムを含み、カロリーが控えめでありながら栄養豊富です。木綿豆腐は絹ごし豆腐と比べてやや水分量が少なく、口に残りやすいことから、そのままではなく豆腐ハンバーグのような調理に使うとよいでしょう。

  • バナナ
    熟れたバナナはやわらかくて消化も良く、高齢の方にとって食べやすい果物です。果物をメニューに取り入れることで、飽きさせない工夫にもなります。

  • 納豆
    納豆はやわらかい食感で、良質なタンパク質や食物繊維を含みます。咀嚼や嚥下に不安がある場合は、包丁の背でたたくなど、加工するとよいでしょう。つるつるして嚙みにくい場合は、ほかの食材と混ぜておやきにするのもおすすめです。

  • とろろ昆布
    とろろ昆布は食べやすく、のどごしも滑らかです。口の中でほかの食べ物のまとまりを補助してくれる効果もあります。味噌汁などの汁物に入れるのも、口当たりが滑らかになっておすすめです。

  • オクラ
    ぬめり成分のあるオクラは、食べやすい食材です。調理する際、種は取り除きましょう。

高齢者が食べにくい食材

まとまりがないもの、パサついたものは高齢者の誤嚥が起きやすく、食べにくい食材です。例としては、ひき肉やおから、芋類などが挙げられます。ただ、これらはしっかり煮込む、とろみを付けるなどで、水分量を調節すれば食べやすくなるため、介護食に利用することも可能です。

一方、ごぼうなどの繊維の多い野菜、いかやたこなどの嚙みにくいもの、かまぼこのような弾力があるものは、介護食の食材に基本的に向きません。これらの不向きな食材は無理に使わず、別のもので代替しましょう。

介護食の作り置きはできる?

毎日の介護食作りには手間がかかるため、まとめて作り置きできないか気になる方もいるのではないでしょうか。適切な調理方法と保存方法に気を付ければ、介護食は作り置きも可能です。作り置きを活用すれば、より効率的にメニューのバリエーションが出せるため、活用してみるのもよいでしょう。

ただし、一度にたくさん作りすぎると劣化や食中毒の原因になるため、作り置きの量は最大で2食分程度を目安にし、1食分ずつ小分けに保存します。高齢者は若者と比べて免疫力が落ちている可能性があるため、衛生面には細心の注意を払いましょう。冷凍や加熱によって死滅しない細菌も存在するため、調理や保存の段階からしっかり管理するのが鉄則です。

介護食のポイントを知って食事体験を充実させよう


介護食は、咀嚼力や嚥下力が低下した方々に配慮された食事です。食べる方に合った調理方法を知り、栄養不足や食事摂取の困難を解消しましょう。味付けや加工に不安がある場合は、市販の介護食を参考にするのも一つの手です。

また、栄養バランスや食材の選び方はもちろん、食事の場を楽しめる献立や食欲を喚起する工夫も必要です。状況に応じてレトルトや作り置きもうまく使い、健康の土台作りと食事体験の充実を図りましょう。

 
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CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年8月28日

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