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介護のイライラでもう限界!現状を改善して心を軽くするには


身近な人の介護で「イライラがたまってもう限界」「もっと優しく接するべきなのに」という思いを抱えている方も多いのではないでしょうか。

現在のつらい状況を改善するためには、専門家へ相談したり高齢者支援サービスを活用したりすることが効果的です。時には気持ちをリフレッシュさせる時間を確保することも大切でしょう。

この記事では、介護のつらい状況を改善する方法や、イライラ・ストレスの解消法、介護に必要な心構えなどを解説します。

介護でイライラしてしまう原因

介護を行なう人には大きな負担がかかるため、たとえ相手が親や身近な人であってもイライラしてしまうものです。そのイライラやストレスの原因は大きく4つに分けられます。

まずは、自分にとってどのような事柄がストレスにつながっているのか、考えてみましょう。

精神的ストレス

介護が始まると、多くの場合要介護者と過ごす時間が増えることになります。その結果、自分だけの時間を確保しにくくなるのはもちろん、「慣れない介護で疲労が溜まる」「要介護者とうまくコミュニケーションが取れずイライラする」などの精神的ストレスが生まれやすくなるのです。

また、親族・介護スタッフとのやりとりや関係性の構築も、精神的ストレスにつながります。

身体的ストレス

在宅介護では起床介助や移動介助、入浴介助などが必要です。一日に何度も要介護者を持ち上げたり支えたりしなければいけないため、どうしても介護者の身体的負担は大きくなります。疲労がたまって腰やひざを痛めてしまうこともあるでしょう。

また、夜中のおむつ交換や排せつ介助が必要な場合は、十分な睡眠時間を確保するのが難しくなります。

このような生活が毎日続くことで、介護者自身が体調を崩してしまうケースもあるため注意が必要です。

経済的ストレス

親など身近な人の介護が始まると、普段の生活費に加えて介護サービス費の自己負担分も新たに必要となります。公的介護保険の対象となる介護サービスなら、負担額は基本的に1~3割(負担割合は所得によって定まる)ですが、紙おむつやデイサービス・デイケアでの食事代など、日常生活にかかる費用は全額自己負担となります。

また、介護のために時短勤務に切り替えたり、転職・退職したりした場合は、収入が大幅に減少します。経済的な不安を抱えながら介護することになり、次第に精神的ストレスへとつながることもあるでしょう。

認知症介護の疲れ

介護のなかでも、認知症になった方の介護は、心身の負担を感じやすいといわれています。認知症の進行度合いによっては、徘徊や暴言・暴力、失禁などの行動が見られ、介護者は日々対応に追われるためです。夜中に要介護者が活動を始めるケースもあり、生活リズムが安定しないことも多くあります。

これらの行動一つひとつに介護者が付き添った結果、疲労が蓄積し、イライラすることも増えてしまうのです。

介護のイライラで限界を迎えると要介護者への虐待や介護うつの危険性も

在宅介護が続いてイライラが限界を迎えると、要介護者への虐待につながることもあるため注意が必要です。

厚生労働省の調査結果(※1)によると、2021(令和3年)度における養護者(※2)による高齢者虐待の相談・通報件数は3万6,378件にものぼっています。

この調査を開始当初から振り返ってみると、多少件数が下がる年はあるものの、徐々に増加していることがわかります。「自分は大丈夫だろう」と思っている方もいるかもしれませんが、実際には介護疲れによって虐待にまで発展してしまうケースも多いのです。

また、介護を続けていくうちに「介護うつ」を発症してしまう方もいます。介護うつとは、介護による疲れやストレスを原因とするうつ病のことで、食欲不振や倦怠感、睡眠障害などの症状が出てきます。

「何かおかしいな」と感じたら、状態が悪化して生活が成り立たなくなる前に、精神科もしくは心療内科の受診をおすすめします。

介護がつらいという状況を改善するには

親や身近な人の介護をしている方のなかには「精神的・身体的にもう限界」と感じている方もいるでしょう。ここでは、介護のつらい状況を改善する方法について解説します。

専門家に相談する

ケアマネジャーや地域包括支援センター、主治医といった専門家への相談は、つらい状況を改善するのに有効といえます。特に、ケアマネジャーは介護の専門知識も豊富で介護状況からケアプランを調整してくれるため、身近な人に相談しにくい事柄でも伝えやすいでしょう。

専門家に相談することで、アドバイスをもらえるだけでなく、介護による孤立を防げるのも良い点です。

介護に関する知識を身に付ける

介護者自身が介護に関する知識を身に付けることで、排せつ介助やおむつ交換などが、これまでよりも楽にできるようになります。スムーズに介護できると要介護者も安心できるため、信頼関係が築きやすくなるでしょう。

自治体によっては、家族向けの介護教室を開催していることがあるため、興味のある方は一度調べてみてください。

高齢者支援サービスを活用する

介護サービスのような高齢者支援サービスの活用も、心身の負担を軽くするために効果的です。

在宅介護で利用できる代表的な高齢者支援サービスとして、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどが挙げられます。ケアマネジャーと相談しながら、プロへ任せる部分と家族が担当する部分を決めるのが賢明です。

また、全額自己負担にはなってしまうものの、公的介護保険の適用外のサービスが有用な場合もあるでしょう。要介護認定を受けていなくとも利用でき、提供しているサービス内容も幅広いのが特徴です。

施設への入所を検討する

要介護者に施設へ入所してもらうことで、介護者自身の介護疲れやストレスを大きく軽減できます。「在宅介護をすること自体がもう限界」「頑張れないと思うほどに疲れ切っている」などの場合は、ぜひ一度検討してみてください。

施設へ入所することによって、要介護者の状態が落ち着くケースもあります。物理的に距離を置くことで、良い関係を保つことができる場合もあるでしょう。

入所できる施設は、要介護度や要介護者の状態によって異なります。自分には必要ない、と今は感じている方も、万が一に備えて、今から介護施設を調べたり情報を集めたりしておくのが大切です。

介護のイライラ・ストレスを解消する方法

介護のイライラやストレスを解消する方法は、大きく分けて3つあります。

気持ちをリフレッシュする時間を作る

介護のストレスを解消するには、気持ちをリフレッシュする時間を作るのが効果的です。おいしいものを食べたり音楽を聴いたりするなど、好きなことをして過ごしてみましょう。

自分のためだけの時間を確保することで、介護生活のオン・オフを作り出せ、ストレスのたまりすぎを防げます。

時間を作るのが難しい方は、デイサービスやショートステイなどを活用するのがおすすめです。

誰かに話を聞いてもらう

友人や家族に介護の悩み・愚痴を聞いてもらうのも一つの方法です。心のモヤモヤを外へ出すことで気持ちがすっきりしますし、誰かと会話すること自体がストレス解消につながるともいわれています。

「身近な人に家族の愚痴を話すのは抵抗がある…」という方は、ケアマネジャーや地域包括支援センターのスタッフなど、介護の専門知識がある方へ相談するとよいでしょう。

そのほか「介護者の会」などであれば、家族を介護している人たちが集まるため、同じような悩みを共有できます。

無理なく介護できる環境を作るにはどうしたら良いか考える

ケアマネジャーや親族と相談して、無理なく介護できる環境を作るにはどうしたら良いか考えるのも重要です。介護体制を見直すことで、介護によるイライラやストレスの根本的な解決につながります。

例えば、介護者との接し方に悩んでいる場合は、ケアマネジャーにアドバイスをもらったり、介護に関する知識を深めたりするとよいでしょう。睡眠時間を十分に確保できていないと感じるなら、親族で介護を分担・交代する、もしくは介護サービスを利用するなどで、状況を改善できる可能性があります。

「兄弟姉妹のなかで私ばかりに介護が集中している」という場合は、お互いに何ができるか・できないかを本音で話し合うことが大切です。

介護のストレスが限界に達する前に知っておきたい心構え

イライラしすぎることなく在宅介護をしていくには、以下の3つの心構えが大切です。

頑張りすぎない

親や身近な人の介護を行なっている方のなかには、熱心に介護へ取り組むあまり、必要以上に頑張ってしまう方もいます。もちろん悪いことではありませんが、完璧を目指す必要はありません。無理なく介護を続けるためにも、自分の心身や時間を大切にすることを心がけましょう。

1人で抱え込まない

介護は決して1人で抱え込まず、周囲の人間や介護サービスを頼りましょう。抱え込む介護が続くと心身ともに疲弊しやすく、介護うつや虐待に発展する可能性もあります。

「人に迷惑をかけたくない」「他人に介護を任せることに不安を感じる」などの理由から、介護を1人で抱え込んでしまう方は多いのです。

しかし、現在は医療が進歩していることもあり、介護が長期化しやすい状況でもあります。高齢者の介護を1人だけで担い続けること自体が難しくなっているため、外部の手を借りることはむしろ望ましいことである、と心得ておきましょう。

他人と比較しない

要介護者の状態や認知症の症状は人によって異なるため、他人と比較する必要はないことも覚えておきましょう。

比較すると、「どうして自分の親(要介護者)はこんなに症状が重いのだろう」などとネガティブな考えに陥りやすくなります。

介護に正解はありません。介護する側とされる側が自分らしくいられるのが、最も良い介護だといえます。

介護でイライラしてしまったときの対処法

介護をしている最中にイライラしてしまったときは、以下のような行動を試しましょう。

● 心の中で6秒間カウントする
● 少しの間その場を離れて気持ちを落ち着かせる
● イライラ・モヤモヤした思いを紙に書き出してみる
● 短時間で気持ちをリフレッシュできることをする

6秒間カウントすれば、自然と怒りの感情が消えていくといわれています。これはアンガーマネジメントと呼ばれる手法の一つです。アンガーマネジメントとは、自分の怒りの感情を客観的に分析してコントロールするためのスキルで、介護でのイライラにも役立ちます。

また、他人へ愚痴をこぼすのも良いのですが、紙に書き出すのもおすすめです。思いついたまま正直に書いていけば、心が落ち着いて冷静に物事を考えられるようになるでしょう。

在宅介護をするなら、要介護者にイライラしたときの対処法を知っておくことは非常に大切です。

介護のイライラで限界を迎えないよう誰かに頼ることが大切


介護のイライラで限界を迎える前に、専門家への相談や施設への入所を検討しましょう。認知症になった方を介護する場合、特に心身が疲弊しやすいため、1人で抱え込まないようにすることが大切です。

経済的な負担に関しては親族と話し合う、もしくはケアマネジャーへ相談することで解決につながるかもしれません。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行なう。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行なっている。

公開日:2023年10月2日

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