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介護保険負担限度額認定証でできることや申請手続き


介護にはお金がかかります。生命保険文化センターが実施した「生命保険に関する全国実態調査」によると、毎月の介護費用は平均8.3万円です。「少しでも経済的負担を減らしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

介護保険負担限度額認定証を取得すると、介護保険施設利用時の居住費や食費の負担を軽減できます。本記事では、介護保険負担限度額認定証の概要や申請のための条件、申請時に注意すべきことを解説します。

参考:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
※公的介護保険サービスの自己負担費用を含む

認定を受けると介護保険施設の居住費や食費の負担を軽減できる

介護保険負担限度額認定証は、介護保険負担限度額認定制度の認定を受けた方に発行される書類のことです。この認定を受けると、介護保険施設の利用にかかる居住費や食費の負担を減らすことができます。

介護保険負担限度額認定証で減らせる費用負担

介護施設へ入居する際に必要な費用には、下記のようなものがあります。

● 介護サービス費
● 居住費
● 食費
● 日常生活費

これらのうち、介護サービス費は公的介護保険が利用できるため、自己負担は1~3割で済みます。しかし、それ以外の費用に関してはすべて自己負担となってしまいます。

そこで、介護保険施設へ入居した場合の居住費と食費の負担を軽減するために、介護保険負担限度額認定制度が作られました。

介護保険負担限度額認定証が使える介護保険施設

介護保険負担限度額認定の対象となる介護保険施設は下記のとおりです。

● 特養(特別養護老人ホーム)
● 老健(介護老人保健施設)
● 介護療養型医療施設
● 介護医療院
● 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)

また、下記のいわゆるショートステイも対象となります。

● 短期入所療養介護
● 短期入所生活介護

ただし、グループホームや有料老人ホームなどは対象外となります。

介護保険負担限度額認定証の申請・取得には条件がある

介護保険負担限度額認定証は、誰でも申請・取得できるものではありません。申請・取得するためには、所得と預貯金についてそれぞれ条件を満たす必要があります。

世帯全員が住民税非課税であること

まず所得の条件は、認定を受ける本人と、本人と同じ世帯の全員が住民税非課税であることです。

「世帯全員が住民税非課税でなければならないということは、住民票上の世帯を分ければ良いのでは」と思う方もいるかもしれません。しかし、夫婦で世帯を分けている場合においても、本人と配偶者の両方が住民税非課税でないと条件を満たしたことにはなりません。

預貯金等が基準額以下であること

さらに、預貯金等が基準額以下である必要があります。基準額は、本人の収入状況によって異なります。
 

本人の収入状況

預貯金等の基準額

老齢福祉年金や生活保護を受給している

夫婦:2,000万円以下

単身:1,000万円以下

年金収入等が80万円以下

夫婦:1,650万円以下

単身:650万円以下

年金収入等が80万円超120万円以下

夫婦:1,550万円以下

単身:550万円以下

年金収入等が120万円超

夫婦:1,500万円以下

単身:500万円以下

ここでいう「預貯金等」とは、金融機関に預けている貯金のほかに、下記のものも含まれます。

● 株式や債券などの有価証券
● 金・銀などの貴金属
● 投資信託
● 現金(タンス預金)

また、借入金や住宅ローンなどの負債がある場合、預貯金等の合計から差し引かれます。

介護保険負担限度額認定は5段階に分かれている

介護保険負担限度額認定は、世帯全員が非課税かつ預貯金等が基準額以下の場合に受けられると説明しました。さらに、この認定は本人の収入状況や預貯金によって「第1段階」「第2段階」「第3段階(1)」「第3段階(2)」「第4段階」の5段階に分けられます。

段階の区分は、先ほど「預貯金等が基準額以下であること」の項目で解説した収入状況や預貯金の分け方と同じです。
 

段階

本人の収入状況

預貯金等の基準額

1段階

老齢福祉年金や生活保護を受給している

夫婦:2,000万円以下

単身:1,000万円以下

2段階

年金収入等が80万円以下

夫婦:1,650万円以下

単身:650万円以下

3段階(1

年金収入等が80万円超120万円以下

夫婦:1,550万円以下

単身:550万円以下

3段階(2

年金収入等が120万円超

夫婦:1,500万円以下

単身:500万円以下

4段階

上記以外

上記以外

段階によって、下記の例のように居住費や食費の負担限度額が異なります。なお、第4段階に当てはまる方は、特例はあるものの基本的には負担軽減の対象ではないため、ここでは国が定めた標準的な費用を記載しています。
 

段階

居住費の負担限度額(ユニット型個室)

居住費の負担限度額(多床室)

食費の負担限度額(ショートステイを除く)

1段階

820円/日

0円/日

300円/日

2段階

820円/日

370円/日

390円/日

3段階(1

1,310円/日

370円/日

650円/日

3段階(2

1,310円/日

370円/日

1,360円/日

4段階

2,006円/日

377円/日(※)

1,445円/日

特別養護老人ホームまたは短期入所生活介護を利用する場合は855円/日

参考:出雲市公式ホームページ

介護保険負担限度額認定証を申請する方法

介護保険負担限度額認定の条件を満たしていることがわかったら、認定証の申請を行ないましょう。手続きの方法は下記のとおりです。

認定証の申請先

申請先は、住んでいる市区町村の介護保険担当窓口です。提出書類を持ち込むか、郵送で申請しましょう。

申請するために必要な書類

申請時に用意すべき書類は下記のとおりです。

● 介護保険負担限度額認定申請書
● 同意書(金融機関等に預貯金等の報告を求めることに同意する書類)
● 預貯金等を証明するための書類

介護保険負担限度額認定申請書と同意書は、自治体の窓口で受け取るか、ホームページからダウンロードします。預貯金等を証明するための書類は、通帳や口座残高の写し、借用証書などを用意しましょう。

自治体によって必要書類が異なる場合もあるため、詳しくはお住いの自治体のホームページを確認することをおすすめします。

認定証の交付

申請後、約1週間で認定証が自宅に郵送されます。なお、第4段階と認定された場合は通知のみで、認定証は交付されません。

介護保険負担限度額認定証申請で気を付けること

介護保険負担限度額認定証を申請する際に気を付けたいポイントを解説します。

有効期間があるため更新を忘れずに

介護保険負担限度額認定証には1年間の有効期間があり(8月1日~翌年7月31日)、有効期間が満了すると利用できなくなってしまいます。事前に更新のお知らせや更新用の書類が郵送で届くため、手続きを忘れないようにしましょう。

なお、前年と比べて収入状況などに変化があった場合、負担限度額の段階が変動する場合や、認定を受けられない場合があります。

虚偽の申告はNG

認定を受けるために、所得や預貯金等を実際よりも少なく申告してはいけません。

「預貯金通帳の残高が少ない部分をコピーして提出すればよいのでは」と考える方もいるかもしれませんが、自治体には金融機関に対して申請者の残高照会を行なう権限があるため、虚偽の申告が明らかになる可能性が高いです。

虚偽の申告をして不正に認定を受けた場合、それまでに受けた給付額を返還するのはもちろん、最大2倍の加算金を支払わなければなりません。所得や預貯金等の金額は正確に申告しましょう。

介護保険負担限度額認定証を利用して負担を減らそう


介護保険負担限度額認定証を取得することで、介護保険施設を利用する際の居住費や食費の負担が軽減されます。認定証の申請には収入状況や預貯金等の条件があるため、ご自身が条件を満たしているか確認したうえで手続きを行ないましょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行なう。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行なっている。

公開日:2023年10月2日

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