「介護離婚」を避けるためにできること
周囲の理解と協力を得ることが回避策に


介護は、介護者の日々の暮らしに大きな影響を及ぼします。

配偶者や義理の両親、自分の両親といった大切な存在が介護を必要とする状態となった場合、精神的に大きな負担がかかります。さらに、相手の心情をくみ取り、コミュニケーションを図りながら介護をするのは、難しい面もあるでしょう。

介護によってストレスフルな状況が続くことで、「介護離婚」に至るケースもあります。「介護離婚」を未然に防ぐためには、経済的な問題や体力的・精神的な面で、配偶者や親族との協力関係の構築が重要です。そのうえで、手が回りきらない部分は、無理をせずに行政サービスや民間の介護サービスの利用、施設への入所など、負担を軽減する方法を検討しましょう。

今回は、「介護離婚」の原因を解説するとともにメリットやデメリット、「介護離婚」を避けるためにできることなどを紹介します。

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「介護離婚」とは

「介護離婚」とは、夫や妻、自分の両親・義理の両親の介護をきっかけに、夫婦関係が破綻して離婚に至ることを指します。

近年、晩婚化や少子高齢化により、家庭内での介護の人手不足が深刻な問題となっています。

こうした状況下では、介護の負担が夫婦の一方に偏ったり、経済的負担が重くなったりする可能性が高くなります。

介護が離婚の原因となる4事例

介護が離婚の原因となる事例は、大きく以下の4つに分けられます。

義両親の介護が原因となる事例

義両親の介護を、妻または夫のどちらか一方がメインで行なっているにもかかわらず、配偶者やその兄弟姉妹の協力が得られなかったり、感謝されなかったりすることがストレスになり、離婚に至るケースがあります。

自分の親の介護が原因となる事例

自分の両親に介護が必要となった際に、「親孝行をしたい」という気持ちで介護に尽力していることが配偶者に理解されず、場合によっては「家事をおろそかにしている」などと批判されることがストレスとなり、離婚に至るケースです。

配偶者の介護が原因となる事例

配偶者がケガや病気、高齢などの理由で介護が必要になり、精神的にも疲弊し、離婚するケースもあります。もともと夫婦仲が悪い場合、介護が理由でさらに関係が悪化し離婚に至ってしまうケースもあります。

子どもの介護が原因となる事例

障がいを持つ子どもの介護が原因で、離婚に至ることもあります。例えば、配偶者やその親族が子どもの障がいに対する理解が乏しく、介護への協力が得られずに離婚するケースです。

ケース別介護離婚のメリット

介護離婚のメリットとしては、次のようなものが考えられます。

義両親や配偶者の介護が原因で介護離婚する場合のメリット3つ

介護をする相手が義両親や配偶者の場合、考えられる介護離婚のメリットには、以下3つがあります。

精神的負担からの解放

介護を担うことは、日常的にプレッシャーとなります。それに加えて、夫婦間だけでなく、兄弟姉妹や親戚、血のつながりのない義理の両親と、介護方針・分担方法・費用面などでトラブルが生じている場合、離婚によってその状況から解放されるかもしれません。

経済的な自由を手に入れられる

介護に必要となる費用は、家庭にとって大きな負担です。離婚をすれば、経済的自由が手に入り、自分の趣味や好きなものの購入などにお金を自由に使えるようになります。

時間的な自由を手に入れられる

介護に追われる日々を過ごしていると、自分だけの自由な時間を確保できず、外出や旅行ができないほか、自分のやりたい仕事を諦めざるを得ない状況も考えられるでしょう。

介護離婚をすることで、自分のためだけに時間が使えると考え、離婚を決意するケースもあります。

自分の両親や子どもの介護が原因で介護離婚する場合のメリット2つ

自分の両親や子どもの介護が原因で介護離婚をする場合のメリットは、以下の2つです。

精神的なストレスから解放される

自分の両親は、配偶者にとっては血縁関係のない義理の両親です。そのため、介護方針や費用面における意見の相違が出てくるでしょう。また、両親や子どもの介護が忙しくなり、配偶者に対して「介護を手伝ってほしい」と期待しても手伝ってもらえなかった場合、ストレスを感じるようになります。

このようなケースでは、介護離婚により自分が介護を担う必要はあるものの、ストレスの原因となる状況から脱することができるでしょう。

自分のペースで介護ができる

配偶者が介護に協力的であっても、介護に対する考え方や方針、方法に違いがあると、それが原因でトラブルとなることがあります。

介護離婚すれば、配偶者の考えなどを気にする必要がなく、自分のペースで介護に取り組めるでしょう。

ケース別介護離婚のデメリット

義両親や配偶者、子どもや自分の両親などの介護が理由で介護離婚した場合のデメリットをみていきましょう。

義両親や配偶者の介護が原因で介護離婚する場合のデメリット3つ

介護をする相手が義両親や配偶者の場合の介護離婚で、考えられるデメリットは以下の3つです。

将来的な経済不安

介護離婚をすると、仕事と家事をすべてひとりでこなす必要があり、収入源も自分の稼ぎのみとなります。

その結果、将来の経済的な不安が生じやすくなります。介護離婚をして自由な時間を手に入れても、やりたいことにお金をかける余裕がなくなる場合もあるでしょう。

精神的な支えを失う

いざ配偶者がいなくなると、その存在がいかに精神的な支えであったか、あらためて気付くことがあります。年齢を重ねていくと、体力的な不安や病気などの心配が出てくるため、支え合える配偶者のありがたみを感じる場面も出てくるでしょう。

自分の両親の介護時に頼れる人がいなくなる

自分の両親に介護が必要になった際に、頼れる人がいないことを心細く思う人もいます。ひとりで介護を担うことになるため、体力的にも精神的にも大きな負担となり、孤立感や不安感にさいなまれることもあるでしょう。

自分の両親や子どもの介護が原因で介護離婚する場合のデメリット2つ

離婚しても、自分の両親や子どもの介護は継続します。そのため、このようなケースにおける介護離婚のデメリットを、あらかじめ理解しておくことが重要です。

将来的な経済不安

介護離婚した場合、介護による負担が大きくなり、家事や仕事の両立が困難になって収入が減少することもあるでしょう。また、介護が理由で離職するケースもあります。

介護離婚をして自由な時間を手に入れても、やりたいことにお金をかける経済的余裕がなくなることも考えられます。

精神的な支えを失う

介護離婚によって配偶者という精神的な支えを失うと、自分の心身に大きく影響します。また、自身の病気や家族の問題、災害などのトラブルに遭遇しても配偶者に相談することなく自力で解決しなければなりません。

介護離婚を検討している場合は、これらのデメリットも十分に理解したうえで、慎重に判断することが大切です。

介護を理由とした離婚はできる?

介護を理由とした場合の離婚の可否と、離婚が認められる事由について解説します。

介護を理由とした離婚には法的に認められる理由が必要

離婚の理由について、配偶者が合意する場合には介護を理由に離婚できますが、配偶者の合意を得られなければ法的に認められる理由が必要です。

なお、介護に関する条文として、民法第877条では「介護を必要とする親族には、直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養をする義務がある」とされ、民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とされています。

配偶者が介護離婚に応じない場合、民法第770条に定められる法的離婚事由に該当すると認められることが必要になると覚えておきましょう。

法的に離婚が認められる5つの主な事由

法的に離婚が認められる5つの事由は、以下のとおりです。

不貞行為(民法第770条1項1号)

配偶者が不倫や浮気などの不貞行為を行なっていた場合は、離婚が認められます。

悪意の遺棄(民法第770条1項2号)

悪意の遺棄とは、配偶者が正当な理由なく、同居・協力扶助義務を継続して履行しないことを指します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
  • 生活費を渡さない
  • 理由なく家に帰らない
  • 介護を手伝わない など
悪意の遺棄があると判断された場合には、離婚が認められます。

3年以上の生死不明(民法第770条1項3号)

配偶者が行方不明や音信不通の状態が3年以上継続し、生死が明らかでない場合には、離婚が認められます。

回復の見込みがない強度の精神病(民法第770条1項4号)

重度の病気やケガなどにより回復の見込みがない場合や、意思の疎通が困難で夫婦として相互扶助の義務を果たすことができない場合には、離婚が認められます。

そのほかの婚姻を継続しがたい重大な理由(民法第770条1項5号)

婚姻を継続しがたい重大な理由がある場合には、離婚が認められます。義理の両親の介護は、この理由が該当して離婚が認められるケースがあります。

親の介護を理由とした離婚が可能なケース

介護を理由とした離婚が可能な事例を3つ、紹介します。

夫婦間の合意

夫婦間で話し合いを行ない、合意が得られた場合は離婚できます。相手が離婚に同意しない場合は、離婚調停が必要です。

離婚事由に該当する

配偶者が介護に非協力的であることなどの離婚事由が、前述した民法第770条で定められている「婚姻を継続しがたい重大な理由」に該当すると裁判所が判断した場合には、離婚が可能です。

長期間の別居など、介護が原因で夫婦関係が破綻している

介護が原因のトラブルで長期の別居状態に至るなど、夫婦関係が破綻している場合には、離婚が可能です。ただし、遠方に住んでいる両親の介護で別居状態が続いている場合などは、離婚が認められない可能性が高いでしょう。

介護離婚を避けるためにできること

介護離婚を避けるための取り組みには、次のようなものがあります。

経済的な問題を配偶者、親族と話し合う

介護では、経済的に大きな負担が生じます。経済的に破綻しないためにも、配偶者や兄弟姉妹など介護の中心となる人々が話し合いを行ない、介護費用に関する問題を明確にしましょう。

配偶者、親族との協力関係を構築する

介護には、体力的・精神的に大きな負担がかかります。その負担を軽減するためには、配偶者や親族と連携を取り、協力体制を構築することが必要です。円滑な連携が取れれば、励まし合いながらお互いを支えられるでしょう。

行政サービスなどを活用する

介護が始まったら、公的介護保険でどのような支援が受けられるかを調べて活用しましょう。

介護サービスとは、要介護認定を受けた人が利用できるサービスです。要介護認定では、介護が必要な度合いに応じて、要支援1・2、要介護1~5の7つの段階で評価されます。

利用できる介護サービスは要介護度によって異なります。そのため、必ずしも希望する介護サービスが受けられるとは限らない点に注意しましょう。

なお、要支援1・2の場合は介護予防(在宅)サービス、要介護1~5の場合は在宅サービス・施設サービスなどが受けられます。

民間の介護サービスを利用する

民間の介護サービスを把握して活用することも、介護離婚を避けるためにできる対策の一つです。

民間の介護サービスでは、要介護認定を必要としない場合もあります。ただし、公的介護保険が適用される介護サービスと比べて費用が割高となる場合もあるため、経済的な見通しが立っていないと大きなリスクを負うことになるでしょう。

介護施設への入所を検討する

在宅介護の継続が難しい場合は、介護施設への入所も負担を軽減する選択肢の一つになります。被介護者が比較的健康な状態で入所を検討する場合は、ほかの入所者とレクリエーションや会話などを楽しめる環境かどうかをチェックしましょう。

施設によっては、入所後に要介護度が上がった場合に施設側の医療体制や介護体制の問題で退去が求められます。このような施設があることも、あらかじめ認識しておくことが大切です。

介護離婚を避けるには家庭内の連携が大切


介護離婚を避けるためには、夫婦間はもちろん、親族との連携が欠かせません。自分たちにとって大切な存在である家族の介護が理由で離婚しなければならない状況は、お互いにとってもつらい決断となります。

介護離婚を避けるためにも家族内で相談する場を持ち、協力して介護に取り組みましょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2023年12月26日

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