介護施設の利用は何歳から?
施設利用を考える際の3つのポイント


自分や家族の介護について考える際、「介護施設の利用は何歳から可能?」「介護施設を利用するタイミングはいつ?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。

介護施設の一般的な利用可能年齢は、60歳または65歳からです。ただし、これは施設によって異なります。将来、施設の利用が必要になった際に慌てなくても済むように、介護施設は早めに検討しておくことが大切です。

この記事では、介護施設の利用可能年齢や、利用を開始するタイミングなどについて解説します。介護施設の利用を考える際の3つのポイントも紹介するので、参考にしてください。

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介護施設利用は何歳から?

まずは、介護施設の利用可能年齢について解説します。

一般的には60歳または65歳から

介護施設を利用できる一般的な年齢は、60歳または65歳からです。ただし、介護施設の利用可能年齢は、以下のように施設によって異なります。

原則60歳から利用できる介護施設

l  サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

l  軽費老人ホーム(AB型)

l  軽費老人ホーム(C型・自立型)

l  住宅型有料老人ホーム

原則65歳から利用できる介護施設

l  特別養護老人ホーム

l  介護老人保健施設(老健)

l  介護医療院

l  グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

l  介護付き有料老人ホーム

l  軽費老人ホーム(C型・介護型)

介護施設によっては、年齢のほかにも以下のような条件が設けられています。

● 要介護度
● 医療依存度
● 保証人、身元引受人の有無
● 収入
● 認知症の有無
● 住民票の変更
● 入居目的

介護施設の利用を希望する際は、利用条件の事前確認が必要です。

条件に該当すれば40歳からでも利用可能

公的介護保険制度では、65歳以上の方を「第1号被保険者」、40歳以上64歳までの方を「第2号被保険者」として介護保険料の支払いを義務づけています。

公的介護保険制度の第2号被保険者が厚生労働省の定める16の特定疾病に該当し、要介護・要支援認定を受けている場合は、60歳未満でも介護施設を利用できることがあります。
16の特定疾病は以下のとおりです。
  1. がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形をともなう変形性関節症

介護施設の利用を開始するタイミング

次に、介護施設の利用を開始するタイミングについて見ていきましょう。

認知症の進行や加齢により自力での生活が難しくなったとき

加齢や認知症の進行により、入浴・食事・排泄・薬やお金の管理など、自分で家事や身の回りのことができなくなる、家族の日常生活にも支障が生じるようになってきたら、介護施設の利用を考えるタイミングといえるでしょう。

また、自分で生活できたとしても、本人が「日常生活に不安を感じる」「家族に迷惑をかけたくない」と考えた時も同様です。

加齢や認知症が進行すると、ガスやストーブの火の消し忘れ、周囲の人とのトラブル、徘徊による行方不明など、日常生活の危険性が高まることが予想されます。
大きなトラブルが起こる前に、施設入所を検討されることをおすすめします。

身体状況から要介護認定が必要と判断されるとき

病気やケガなどが原因で要介護認定が必要と判断され、自力で生活できないほか、在宅介護では対応しきれない場合も施設利用を考えるタイミングといえるでしょう。

要介護度別の介護が必要になったおもな原因(上位3位)を見てみましょう。
 (単位:%)

現在の

要介護度

1

2

3

総数

認知症

16.6

脳血管疾患
(脳卒中)

16.1

骨折・転倒

13.9

要支援者

関節疾患

19.3

高齢による衰弱

17.4

骨折・転倒

16.1

 要支援1

高齢による衰弱

19.5

関節疾患

18.7

骨折・転倒

12.2

 要支援2

関節疾患

19.8

骨折・転倒

19.6

高齢による衰弱

15.5

要介護者

認知症

23.6

脳血管疾患
(脳卒中)

19.0

骨折・転倒

13.0

 要介護1

認知症

26.4

脳血管疾患
(脳卒中)

14.5

骨折・転倒

13.1

 要介護2

認知症

23.6

脳血管疾患
(脳卒中)

17.5

骨折・転倒

11.0

 要介護3

認知症

25.3

脳血管疾患
(脳卒中)

19.6

骨折・転倒

12.8

 要介護4

脳血管疾患
(脳卒中)

28.0

骨折・転倒

18.7

認知症

14.4

 要介護5

脳血管疾患
(脳卒中)

26.3

認知症

23.1

骨折・転倒

11.3

注:「現在の要介護度」とは、2022(令和4)年6月の要介護度をいう

出典:厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ介護の状況

介護が必要になったおもな理由には、認知症のほか、関節疾患・高齢による衰弱・骨折や転倒・脳血管疾患(脳卒中)が挙げられます。

介護者の精神的・身体的負担が限界に近いとき

要介護度が上がるにつれ、介護者の精神的・身体的負担は増加します。また、介護期間が長くなるほど、介護者の体力の低下も考えられるでしょう。

介護者のなかには、介護と仕事の両立が難しくなり、介護離職をしなければならない方もいます。介護者が限界を迎える前に、介護施設の利用を考えることが大切です。

介護施設を利用するといくらかかる?

ここからは、公的介護施設と民間介護施設の入居一時金や、月額費用の目安について解説します。

公的介護施設

公的介護施設は、要介護認定を受けた方のみが利用できる介護施設です。例えば、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は原則要介護3以上を条件とします。要支援認定を受けている方は一定の要件に合致しないと利用できません。

施設ごとの利用条件は要介護度だけでなく、医療ケアの要否も関係します。一般的に、公的介護施設は、民間の介護施設にくらべ安価な傾向にあります。

 

入居一時金

月額費用の目安

特別養護老人ホーム(特養)

0

520万円

介護老人保健施設(老健)

0

525万円

介護医療院

0

520万円

※朝日生命調べ(2023年1月時点)

民間の介護施設

民間の介護施設は、公的介護施設にくらべサービスの充実度が高い傾向にあるため、入居一時金や月額費用が高めに設定されています。

 

入居一時金

月額費用の目安

グループホーム

0~数百万円

1025万円

介護付き有料老人ホーム

0~数千万円

1530万円

※朝日生命調べ(2023年1月時点)

介護施設の利用を考える際の3つのポイント

最後に、介護施設の利用を考える際に考慮しておきたい3つのポイントを解説します。

施設での理想の暮らしを考える

介護施設によって、提供されるサービスや雰囲気は異なります。介護施設の利用を検討する際は、入居した際の理想の暮らしをイメージし、その理想に近い施設を探しておくことが大切です。

例えば、活動的な生活を望む方なら、入居者同士の距離が近く、サークル活動やレクリエーションが盛んに行なわれる施設が適しています。一方、静かな環境を好む方なら、少人数制かつ穏やかで落ち着いた雰囲気の施設がよいでしょう。

このように理想の暮らしをイメージしておくことで、自分に適した介護施設に出会える可能性が高まります。

介護施設入居後の理想とする暮らしは、家族や周りの人に共有しておきましょう。施設によっては、要介護度が変わると退去しなければならなくなる場合もあります。その際に困らないよう、要介護度が変わった際の転居先も考えておくことが大切です。

経済状況を確認して予算を決定する

介護施設にかける予算を決定する際は、現在の資産状況の確認や、将来受け取る公的年金やその他の収入の見込み額を把握するところから始めましょう。現在の資産や今後見込まれる収入には、以下のようなものが挙げられます。

現在の資産

今後の収入

l  預貯金

l  金融資産(債券・株式など)

l  不動産(土地・建物など)

l  満期を迎える生命保険など

l  退職金

l  公的年金

l  私的年金(個人年金保険、iDeCoなど)

l  不動産収入

l  金融資産の配当、利子など

 


現在の経済状況や今後の収入見込み額を把握したら、毎月いくら施設にお金を使えるかを計算します。不動産収入や配当金などは、価格が変動するため、低く見積もっておきましょう。

介護施設の利用では、入居一時金や月額利用料のほかにも、レクリエーションの実費・医療費・理美容代なども考慮しておくことが重要です。

元気なうちに情報収集をする

介護が必要になった時点で施設を探そうとしても、じっくり検討できない、身体的負担が大きく見学に行けないなどの問題が生じるかもしれません。元気なうちに情報収集をすると、以下のようなメリットを得られます。

● 施設をじっくり比較検討できる
● 自分に合う施設を判断できる
● 老後の金銭計画を立てられる
● 見学または体験入居ができる

「介護施設のことを考えるのはまだ早い」と思っても、いざというときに慌てないですむように、元気なうちから複数の施設を見比べ、自分に合う施設を見つけておくことをおすすめします。

介護施設の利用は早めに検討しておこう


介護施設の一般的な利用可能年齢は、60歳または65歳からです。また、16の特定疾病に該当し、要介護・要支援認定を受けた40歳以上の方も利用可能な場合があります。

介護施設の利用を考えるタイミングは、認知症や加齢により自力での生活が難しくなったときや、要介護認定が必要なとき、介護者の精神的・身体的負担が限界に近づいたときがよいでしょう。

介護施設の利用には、入居一時金や月額費用などが必要です。あらかじめ介護施設での理想の暮らしをイメージしておくと同時に、現在と将来の経済状況を把握して予算を決めておくことをおすすめします

また、介護施設の比較検討や、複数の介護施設の見学や体験入居をするためにも、元気なうちに情報収集をしておくことが大切です。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年1月26日

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