公的介護保険の特定施設とは?
4種類の施設や受けられるサービス内容


家族が入所できる介護施設を探している際、「特定施設ってどのような場所なんだろう」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。

「特定施設」とは、公的介護保険に基づいて指定を受けた介護施設で、入居者が日常生活の介助や機能訓練などの介護サービスを受けられる仕組みです。

この記事では、特定施設の定義や種類ごとの違い、提供されるサービスの内容、指定を受けられる施設の種類を解説します。また、人員・設備・運営の基準や利用するメリット・デメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

朝日生命では認知症介護などの経済的負担に備えられる介護・認知症保険をご提供しています。
詳しい資料はこちら

「特定施設」とは?

「特定施設」とは、介護保険法などに基づいて、都道府県知事や市区町村長から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設を指します。

入居者はケアマネジャー(介護支援専門員)が作成するケアプランに沿って、食事・入浴・排せつといった日常生活の介助に加え、機能訓練や健康管理などの介護サービスを受けられます。

また、入居者ができる限り自立して暮らせるよう支援すると同時に、家族の介護負担を軽減することも特定施設の役割の一つです。

サービスの対象者は要支援1・2または要介護1~5と認定された方で、要支援者には「介護予防特定施設入居者生活介護」として別枠でサービスが提供されます。

特定施設を利用するには要介護認定が必要となります。要介護認定の詳細は以下の記事も併せて参考にしてください。

要介護認定・認定区分とは?8区分の違いや認定の流れ・受けられるサービス

特定施設で受けられるサービス

特定施設では、入居者が安心して暮らせるよう生活全般を支える幅広いサービスが用意されています。

食事・入浴・排せつ・着替え・移動といった日常生活に欠かせない介護を24時間体制で受けられるため、一人暮らしに不安がある方でも安心です。また、居室清掃や洗濯、買い物代行などの生活支援サービスも提供されていることから、身の回りのことも安心できるでしょう。

加えて、身体機能の維持・向上を目指したリハビリや機能訓練も行われており、要介護度や身体状況に応じたきめ細やかなケアを受けられる点も特徴です。

施設によっては季節ごとのイベントや趣味活動などのレクリエーションも用意され、入居者同士の交流を深めたり、心身の活性化を促したりする効果も期待できます。

このような多面的な支援によって、入居者の生活の質も高まりやすくなっています。

特定施設の種類

特定施設は、都道府県から受ける指定の種別によって4種類に分けられ、入居できる対象者やサービス内容が異なります。利用を検討する際は、要介護度や地域の条件などに合わせて選ぶとよいでしょう。

ここでは、それぞれの特徴を解説します。

介護専用型特定施設入居者生活介護

介護専用型は、入居者全員が介護を必要とする施設です。入居できるのは要介護1~5の認定を受けた方に限られており、要支援の方や自立の方は対象外となります。

介護保険法に基づき、要介護者である入居者全員に対して特定施設入居者生活介護が提供されるため、常に介護を必要とする方にとって安心できる環境が整っています。介護職員によるケアが前提となることから、介護体制を重視する場合に適した施設といえるでしょう。

混合型特定施設入居者生活介護

混合型は、要介護の方とそうでない方が同じ施設で生活する施設です。入居対象には要介護1~5の方だけでなく、要支援1~2や自立の方も含まれます。

入居者全員が介護サービスを受けるわけではなく、要介護者に対してのみ特定施設入居者生活介護が提供されます。そのため、夫婦で一方が要介護認定を受けており、もう一方が自立である場合にも同じ施設に入居できるなど、状況に応じた柔軟な利用が可能です。

地域密着型特定施設入居者生活介護

地域密着型は、市区町村からの指定を受けて運営される小規模な施設です。入居対象は要介護1以上の方で、原則として施設と同じ市区町村に住民票を持つことが条件となります。

定員は29人以下に限定されており、申請や指定の管轄は市区町村長です。地域密着型サービスとして位置付けられているため、入居者は住み慣れた地域で暮らし続けられます。

地域密着型サービスは、以下の記事も参考にしてください。

地域密着型サービスとは?サービスの対象者・種類・利用の流れ

介護予防特定施設入居者生活介護

介護予防特定施設入居者生活介護は、介護が必要な状態にならないように、食事や入浴などの日常生活支援や機能訓練を通じて心身の状態悪化を予防する施設です。要支援1~2の方を対象としています。

要介護1以上の方は対象外です。また、自立の方は入居こそ可能であるものの、公的介護保険を利用することはできません。

特定施設の指定を受けられる介護施設

 
特定施設として指定を受けられるのは、以下の4種類の施設です。
  • 有料老人ホーム
  • ケアハウス
  • 養護老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
それぞれの特徴を見ていきましょう。

有料老人ホーム

有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けると「介護付き有料老人ホーム」と名乗れます。入居後に要介護度が変わっても、施設内で継続して介護サービスを受けられる点が特徴です。

特定施設は総量規制が設けられており、自治体判断により認定数が制限されているため、基準を満たしていても指定を受けられない場合があります。その場合は「住宅型有料老人ホーム」として運営されます。

介護付き有料老人ホームは、以下の記事も併せてご覧ください。

公的介護保険が適用される有料老人ホームとは?適用サービスや自己負担額

ケアハウス

ケアハウスは軽費老人ホームの一種で、所得が低い一定年齢以上の方を対象としています。利用料は所得に応じて低額に設定されており、経済的に利用しやすい点が特徴です。

一般型と介護型があり、一般型は60歳以上、介護型は65歳以上の方が対象とされます。介護を必要とする場合は、特定施設の指定を受けた介護型ケアハウスを利用します。食事の提供や生活相談に加え、介護型では身体機能の低下に応じた介護サービスも提供されます。

ケアハウスの詳細は、以下の記事を参考にしてください。

「ケアハウス」とは?ほかの施設との違いや入居条件・利用の流れ

養護老人ホーム

養護老人ホームは、経済的な理由や家庭環境の事情により自宅での生活が難しい高齢者が入居対象となります。介護が必要ない高齢者を想定しており、生活支援を通じて自立や社会復帰を目指す施設です。

原則として介護サービスは提供されませんが、条件を満たせば特定施設の指定を受け、介護サービスを行うこともできます。

養護老人ホームについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

「養護老人ホーム」とは?特養との違いや目的・対象者・サービス・費用まで解説

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者向けの賃貸住宅です。安否確認や生活相談といったサービスが提供されます。

一般型と介護型に分かれ、前者は比較的自立した高齢者を対象とし、介護サービスを利用する場合は外部事業者に委託される仕組みです。

特定施設の指定を受けた介護型では、要支援・要介護者が施設内で介護サービスを受けられます。

特定施設の基準(人員・設備・運営)

ここでは、特定施設として運営するための人員配置や設備、運営方法に関する基準について紹介します。

なお、特定施設のサービス提供方式には、事業者が直接介護を担う「一般型」と、介護を外部事業者に委託する「外部サービス利用型」の2種類があります。

人員の基準

特定施設で定められている人員の基準は以下のとおりです。
  • 管理者:原則専従だが、支障がなければ施設内で他業務の兼務も可能
  • 介護職員・看護職員:要介護者である入居者3人に対して1人が必要(要支援1の入居者に対しては10人に1人)
  • 看護職員:入居者30人以下で常勤1人、31人以上は50人ごとに追加が必要
  • 生活相談員:入居者100人に対して常勤1人以上を配置
  • ケアマネジャー:原則、専従で1人以上が必要(兼務可)
  • 機能訓練指導員:理学療法士や看護師などの有資格者1人以上を配置(兼務可)

設備の基準

特定施設では、車いすで円滑に移動できる構造であることが求められます。介護居室は原則個室ですが、やむを得ない場合には4人以下の多床室も認められ、プライバシーや災害時の避難に配慮した設計が必要です。

また、一時介護室、食堂、機能訓練室、浴室、トイレを備えることが定められており、機能訓練室は食堂を兼用することもできます。

浴室は身体の不自由な方が利用できる構造とし、トイレは居室のあるフロアごとに設置するほか非常用設備も整える必要があります。なお、地階を居室として使用することは原則として認められていません。

運営の基準

特定施設では運営面でも基準が設けられています。

契約時には重要事項説明書が交付され、内容について説明を受けたうえで同意し、契約書を取り交わすのが一般的な流れです。

介護サービスはケアマネジャーが一人ひとりに合わせたケアプランを作成し、その計画に沿って提供されます。自力で入浴が難しい方には、週2回以上の入浴または清拭(せいしき)が行われることも定められています。

サービスの内容は記録に残され、苦情を受け付ける窓口も設置されているため、トラブルの際も相談しやすいでしょう。

職員は定期的に研修を受けてスキルを高め、質の高いサービスを提供できる体制を維持しています。

特定施設を利用するメリット・デメリット

 
特定施設を利用する場合、安心や利便性といったメリットがある一方で、費用や利用範囲に関するデメリットも存在します。

利用のメリット

特定施設には介護・看護職員が24時間常駐しており、夜間や緊急時にも対応してもらえる安心感があります。

要介護度ごとの定額制でサービスを受けられるため、費用の見通しが立てやすい点も魅力です。要介護5まで対応可能であり、要介護度が上がっても転居せず同じ施設で暮らし続けられます。

また、入居者の状態に合わせて自立を支援することで生活の質を保ち、同時に家族の介護負担を軽減できる点も大きなメリットです。

利用のデメリット

特定施設は利便性が高い一方で、いくつかのデメリットもあります。

まず、費用が定額制とされていることから、介護サービスの利用が少ない方にとっては割高になる可能性があります。

また、公的介護保険の満額を支払って施設内のサービスを受けるため、外部のデイサービスや訪問介護を併用することはできません。外部サービスを使い続けたい場合は全額自己負担となり、介護サービスの選択肢が制限されかねない点もデメリットといえるでしょう。

特定施設は介護と生活支援を総合的に提供する場所


特定施設は、食事や入浴などの日常生活介助に加え、機能訓練や健康管理まで総合的に支援を受けられる公的介護保険指定の施設です。種類によって対象者や規模などが異なり、基準に基づいた人員配置や設備、運営体制が整えられています。

特定施設には、24時間の介護体制や定額制による費用の安定といったメリットがある一方で、外部サービスを公的介護保険で利用できないなどの制約も存在します。

利用を検討する際は、それぞれの特徴を理解したうえで、自分や家族に最適な選択を心がけましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年10月15日

介護について知る

介護を予防する

介護について考える

公的制度・支援サービス

介護の費用

介護が始まったら

認知症について知る

認知症とは

認知症の予防

もの忘れ・認知症の専門家の
特別コンテンツ

生活習慣病について知る

生活習慣病とは

生活習慣病の予防

老後の備え方

年代別アドバイス