介護が辛いと感じるときは?
辛さを和らげるポイントや具体的な相談先


身近な人の介護を担うなかで、「辛い」と感じたり、不安や孤立感におそわれたりすることもあるでしょう。

在宅介護では、誰もが辛く感じる瞬間が訪れます。そのため、介護者にとっての辛さとは何かを知り、その気持ちを和らげる方法を身に付けることが大切です。

この記事では、介護者がどのようなときに辛いと感じるのかを紹介し、その辛さを軽減するためのポイントや具体的な相談先を解説します。

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介護が辛いと感じている人は少なくない

身近な人を介護していると、自分だけが辛さを感じて孤独になることがあるかもしれません。しかし、実際には多くの人が同じように辛さを感じています。

厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査」によると、同居をしている主な介護者のうち、「悩みやストレスがある」と回答している人の割合は以下のとおりです。

全体

68.9

男性

62.0

女性

72.4

介護者の約7割が悩みやストレスを抱えていると答えています。

介護を担う際に生じる辛さは個人的な問題にとどまらず、社会的な問題となっているといえます。

介護が辛いと感じるとき6選

在宅介護の辛さは、介護者によってさまざまです。ここでは、特に多くの人が感じる6つの辛さを紹介します。

要介護度が重くて対応が難しいとき

一般的に、被介護者の要介護度が重いほど、介護する側の対応は難しくなります。特に、車いすとベッドの間での移乗介助や入浴介助などは、かなりの体力が必要です。

また、食事がうまくいかない場合や尿漏れのために頻繁に着替えが必要な場合など、精神的な負担も大きいことがあります。

深夜の介護で睡眠不足が続くとき

在宅介護では、深夜のオムツ交換やトイレ介助が必要になる場面があります。深夜に起こされる場合も珍しくなく、生活リズムが乱れがちです。

夜間は被介護者と一緒に起きて過ごし、日中は家事や仕事などを行なう生活が続くと、睡眠不足に陥る可能性があります。睡眠不足は体だけでなく心にもダメージを与えるため、注意が必要です。

介護者自身の健康状態が悪化したとき

長時間同じ姿勢で介護を行なうこともあります。腰や膝、腕などに負担がかかりやすく、健康状態が悪化してしまうことがあります。

健康状態が万全ではない状態で介護を続けると、慢性的な疲労や痛みに悩まされ、日常生活に支障をきたすかもしれません。

また、精神的なストレスが蓄積して、うつ病などの精神疾患を患うリスクも高まります。

認知症である現実を受け入れられないとき

認知症の介護は、精神的にも身体的にも負担が大きくなる傾向があります。

大事なものを盗られたと思い込む「物盗られ妄想」や、家から出て戻れなくなる「徘徊」など、認知症が引き起こす症状によって辛さを感じる介護者は少なくありません。

特に、認知症の進行によって親が自分のことをわからなくなってしまう場合などは、現実を受け入れるのが容易ではなく、負担がさらに増すことがあります。

介護費用の負担を実感したとき

介護サービスの利用には公的介護保険が適用されるとはいえ、自己負担が必要な費用もあります。

要介護度が重くなるにつれて費用負担も大きくなるのが一般的です。オムツ代や福祉用具代などの出費も増えるでしょう。また、介護を理由に離職することになれば、経済的な負担はさらに大きくなります。

介護費用への不安は、介護者にとって大きな負担となるのです。

辛い気持ちを相談できないとき

介護を行なうなかで悩みが生じることはよくあり、誰かに話を聞いてほしいと感じることもあるでしょう。しかし、在宅介護では、周囲との交流が減りやすく、介護者が孤立しやすい傾向があります。

辛い気持ちを一人で抱え込み、自分だけで解決しようとすると精神的に追い込まれてしまうかもしれません。そのような場合、周囲に助けを求めることは非常に重要です。

介護の辛さを和らげるポイント

介護の辛さを少しでも軽減させるためには、押さえておきたいポイントがいくつかあります。

介護サービスを積極的に利用する

公的介護保険が適用される介護サービスを利用することで、介護者の負担を軽減できる可能性があります。

すでに介護サービスを利用している場合は、ケアマネージャーに相談してケアプランの見直しを検討しましょう。利用回数を増やしたり、別の介護サービスの利用を開始したりすることで、これまでよりも負担が軽減するかもしれません。

また、民間のサービスを利用するのもおすすめです。配食サービスやボランティアによる付き添い・安否確認など、さまざまな選択肢があります。

便利な介護グッズの利用や環境整備を検討する

介護の負担を軽減するためには、便利な介護グッズを利用するのもおすすめです。

防水シーツやコールボタン、消臭剤や介護向け洗濯洗剤などは、日々の負担を軽くする助けになります。また、市販のお惣菜や介護食を利用すれば、調理の手間を減らせます。

さらに、自宅の環境を整えるのも大切です。例えば、被介護者が過ごす部屋とトイレの距離を近づけたり、介助しやすいようベッドの周囲にスペースを空けたりするなど、日常の介護を行ないやすい環境を整えましょう。

介護者自身をケアする

介護者が健康でいることも、介護の負担を軽減するために重要です。バランスの良い食事や十分な睡眠を心がけましょう。

また、介護者がリラックスできる時間を確保することも大切です。日々忙しいとなかなか難しいものですが、短時間でもゆったりと入浴する、音楽を聴く、ドラマを観るなど、自分が心地よく過ごせる時間を持つと自身のケアに繋がります。

また、適切なタイミングで「レスパイトケア」を行ない、心身をリフレッシュさせる必要があります。レスパイトケアとは、介護者が一時的に休息を取るために被介護者を施設に預けるサービスです。デイサービスやショートステイを利用すると、介護者の心身の健康を保ち、介護の負担を和らげるのに役立ちます。

専門家や似た境遇の人に辛さを相談する

介護の辛さを相談できる相手がいると、心の支えになります。似た境遇の悩みを抱える介護家族の会や、介護の経験がある友人・知人などは、相談相手におすすめです。

コミュニティへの参加が難しい場合は、インターネットやSNSを通じて同じような経験をした人とつながるのもよいでしょう。

また、介護の専門家に相談することで、具体的な解決策を提示してもらえることがあり、アドバイスによっては状況が好転する可能性もあります。

具体的な相談先は、次項で詳しく紹介します。

介護が辛いときの具体的な相談先

介護が辛いと感じたときには、一人で抱え込まずに相談することが大切です。ここでは、介護に関する悩みを相談できる専門家や機関を紹介します。

市区町村

市区町村は要介護認定の申請窓口であり、介護の悩みや疑問も相談できる場所です。本人だけでなく、家族が代理人として窓口に行っても問題ありません。

電話相談を受け付けている市区町村もあるため、問い合わせてみるとよいでしょう。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の生活や介護に関する悩みを気軽に相談できる総合的な窓口です。

介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者をサポートし、住み慣れた地域で生活できるように専門知識を持つ職員が相談に応じています。

ケアマネージャー

ケアマネージャーは、介護相談に応じたりケアプランを作成したりする、介護の専門家です。介護サービス事業者との連絡調整役も担っていて、介護に関するさまざまな相談に対応できます。

担当ケアマネージャーがいない場合は、ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)を訪ねて相談してみるのもよいでしょう。

医療機関

相談窓口を設けている医療機関でも、介護について相談できます。医療ソーシャルワーカーなどの福祉の専門家が、病気になった患者やご家族を社会福祉の面でサポートします。

ケアマネージャーとの連携や、地域の社会資源の紹介などの専門的なアドバイスをもらえるため、介護の辛さの軽減につながるでしょう。

介護施設への入所を検討するのも選択肢の一つ

介護は周囲の想像以上に負担が大きく、家族だけで抱え込むと心身ともに疲弊してしまうことがあります。

さまざまな対処法を試しても介護の辛さが軽減しない場合は、介護施設への入所を検討するのも一つの方法です。

介護施設では、専門のスタッフによる適切なケアを受けられるだけでなく、安全で安心な生活を楽しめます。家族が笑顔で面会に訪れることも、介護のあり方の一例です。

入所を検討する際、本人が入所を嫌がる場合があるかもしれません。しかし、介護施設の見学や体験入所をすることで、抵抗感が和らぐケースも多くあります。

入所によって被介護者の状態が落ち着く場合もあるため、入所は決して後ろ向きな選択ではありません。

大切なのは、介護の辛さが限界になる前の、「まだ在宅で介護できる」と考えているうちから情報収集を始めることです。早めに介護施設の情報を集めておけば、いざ入所が必要となった場合でも、慌てずに適切な判断がしやすくなります。

また、入所という選択肢を視野に入れておくと、心も少し軽くなることがあります。

介護の辛さは抱え込まずに相談しよう


介護は心身ともに負担が大きく、辛いと感じるタイミングが誰にでも訪れます。そのような場合は、一人で悩まずに周囲に助けを求めることが大切です。

専門家や機関に相談したり、介護サービスや便利な介護グッズを活用したりすることで、負担が軽減できる部分もあります。

また、なるべく介護者自身が休息をとれるようにすることが大切です。介護施設への入所も選択肢の一つとして、情報収集をしておくとよいでしょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年3月28日

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