介護うつを発症すると、介護そのものが困難になるだけでなく、日常生活に支障が出ることが少なくありません。食欲や睡眠の乱れ、意欲の低下を引き起こし、介護者の生活の質が大きく損なわれてしまいます。そのため、介護うつは早期発見と予防が重要です。
介護うつの症状
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食欲不振
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倦怠感
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焦燥感
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疲労感
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睡眠障害
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思考障害
介護うつの初期症状のポイントは、食事と睡眠がうまくとれなくなることです。急に食欲を失ったり、夜中に何度も目が覚めるようになったりした場合、それは介護うつのサインかもしれません。
なお、介護うつの前段階として「介護疲れ」という状態を生じることがあります。介護疲れとは、介護にともなう負担を原因として心身に不調をきたすことです。介護疲れについて詳しく知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
介護うつのセルフチェック
<介護うつのセルフチェックリスト>
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寝つくのに30分以上かかる
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眠りが浅く、夜中に目が覚める
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起きるべき時間よりも30分以上早く目が覚める
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夜間や日中に眠りすぎる
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悲しいと感じる
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普段より食欲が低下(または増加)している
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最近2週間で体重が減少(または増加)した
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集中力や決断力が鈍っている
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自分を責めてしまう
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死や自殺について考えてしまう
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物事に興味が持てなくなっている
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普段よりも疲れやすい
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動きが遅くなった気がする
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落ち着かない気持ちになる
簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)は16項目の自己記入式の評価尺度で、うつ病の重症度を評価し、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-IVの大うつ病性障害の診断基準に対応しています。
ただし、セルフチェックはあくまでも参考です。本人や家族が「何かおかしい」と感じたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。専門家の診断を仰ぐことで、介護うつの重症化防止にもつながります。
「介護うつ」のおもな原因
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孤独や不安などの精神的な原因
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疲労や睡眠不足などの身体的な原因
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介護による出費などの経済的な原因
孤独や不安などの精神的な原因
また、介護者自身が孤立しやすい点にも注意しましょう。昼夜を問わず介護にあたっていると、家族や友人との接触が減ってしまいます。社会的なつながりを失い、孤独感を抱くことが少なくありません。
疲労や睡眠不足などの身体的な原因
さらに、仕事をしながら介護をしている場合には、仕事の疲れも重なり、疲労はますます蓄積されるでしょう。介護疲れは睡眠不足につながることが多く、身体的な不調を引き起こします。結果として、精神的な不調をきたす恐れがあるので注意が必要です。
介護による出費などの経済的な原因
介護には、介護用品の購入やリフォームなどの一時的な費用に加え、介護サービスなどの利用による継続的な費用がかかります。公的介護保険制度による支援はあるものの、出費が無くなるわけではありません。
2021年9月の生命保険センターの調査結果によると、介護に要した費用のうち、一時費用の平均は「74万円」、月々の費用の平均は「8.3万円」にのぼります。
引用:生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」
介護うつになりやすい人の特徴
完璧主義:介護に対しても完璧を求め、些細なミスや不足を許せない
几帳面:介護の計画や手順にこだわり、計画どおりに進まないとストレスを感じてしまう
責任感が強い:介護の全責任を自分一人で負おうとしてしまう
人に頼ることが苦手:他人に助けを求められず、すべて自分で解決しようと抱え込んでしまう
気を遣いすぎる:周囲に過度に気を遣い、自分のことをあと回しにする
繊細:相手の感情の機微を敏感に察知するため、ストレスを感じやすい
気が弱い:自分の意見を主張することが苦手で、周囲に流されやすい
体が弱い:健康状態が良くないため、介護の身体的負担が大きい
介護うつになってしまったら?3つの対処法
すでに介護うつの症状が出ている場合、迅速かつ適切な対処が必要です。ここでは、介護うつを克服するための3つの対処法を紹介します。