年を重ねると身体の変化だけでなく、口腔内にも変化が起こります。高齢者の口腔内にはどのような問題があるのでしょうか。
本来、口腔内には汚れや細菌を唾液によって洗い流し、清潔に保つ「自浄作用」があります。しかし、身体能力が衰えている高齢者は唾液の分泌量が減少しており、自浄作用が低下しています。
特に運動障害や麻痺がある場合、口腔機能や自浄作用のさらなる低下が見られるため、口腔内の環境の悪化が気になるところです。
高齢になると歯茎は下がってくるので、歯の根もとと歯茎の間が開き、虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。
高齢者は自浄作用が低下しており、本来は唾液によって流されるはずだった細菌が残って増殖してしまうため、歯周病にかかりやすい状態となります。加齢による免疫力の低下も、虫歯や歯周病が増える一因といえるでしょう。
多くの高齢者は虫歯や歯周病を経験しており、治療跡が残っていたり、入れ歯になっていたりします。虫歯の治療で詰め物や被せ物をしている場合、詰め物の下で虫歯が進行している可能性もあり、注意が必要です。
歯周病によって歯が抜けて入れ歯をしている場合は、入れ歯と粘膜のすき間で細菌が繁殖しやすくなっています。
加齢によって噛む力が衰えてくると、唾液量も減少するのでドライマウスになりやすい傾向があります。特に薬を定期的に飲んでいる場合、副作用によってさらに唾液の分泌量が減り、口腔内の乾燥が進むこともあるでしょう。
唾液には口腔内の汚れや細菌を洗い流す役割があるため、ドライマウスになると虫歯や歯周病を進行させたり、口臭の原因になったりします。
高齢者は自浄作用の低下にともない、味を感じる器官である舌の表面に「舌苔(ぜったい)」が付きやすくなり、味を感じにくくなってしまいます。また、偏った食生活による栄養不足も、味覚が変わる原因の一つに挙げられるでしょう。