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公的介護保険制度をわかりやすく!受けられるサービスの種類や利用の流れは?

身近な人に介護が必要になったときに、本人や家族だけでは対応できる内容に限りがあります。そのため、生活の支援や身体的な介護を要する高齢者を支える仕組みとして設けられているものが、公的介護保険制度です。

当記事では、公的介護保険制度の概要や利用できる介護サービスの内容、利用の流れを解説します。介護保険料の支払い開始年齢や金額についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

公的介護保険制度とは?

公的介護保険制度とは、介護や支援を必要とする人(要介護・要支援者)に、介護や介護予防の費用の一部を給付する公的な社会保険です。

公的介護保険制度は以下の3者で構成されています。

・ 被保険者
・ 保険者
・ 介護サービス事業者

被保険者とは、介護保険料を支払っている人です。保険者とは、介護サービス費用の被保険者が負担しない部分の支払いや、制度の運営をしている国・都道府県・各市町村・特別区(東京23区)などを指します。

介護サービス事業者は、実際に介護サービスを要介護・要支援者へ提供する人や団体です。

公的介護保険制度は、公費と保険料で運営されている制度です。介護保険の給付を受けるには、市区町村の担当窓口に申請したり、審査を受けたりする必要があります。

申請の結果、要介護・要支援者に認定されて介護サービスを受けた場合、原則として費用の1割の自己負担が必要です。ただし、前年度の所得によっては自己負担率が2割や3割になることもあります

公的介護保険制度について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
公的介護保険制度とは

介護保険で受けられるサービスは大きく分けて3つ

公的介護保険で受けられるさまざまなサービスを、居宅・施設・地域密着型の3つに大別して解説します。

居宅サービス

居宅サービスとは、要介護・要支援者が自宅に居住したまま受けられる介護サービスのことです。

居宅サービスの種類は多岐にわたっていることから、さらに「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「その他サービス」の4つに分類されます。

以下は、4つに分類した居宅サービスの主な内容です。

訪問サービス

要介護・要支援者が生活する自宅に訪問して、さまざまなサービスを提供します。具体的には、掃除・洗濯・買い物などの生活支援や、食事・排せつといった直接的な介護、移動式浴槽を使った入浴介護・リハビリテーションなどです。

看護師が医師の指示のもとに、健康チェックや療養上の世話などを行なう訪問看護サービスも、必要に応じて受けられます。

通所サービス

自宅で生活を送る要介護・要支援者が、施設に通って日中を過ごすタイプのサービスです。

デイサービス(通所介護)では、食事・排せつ・入浴の支援や、心身の機能の維持・向上を目的とするレクリエーションなどを受けられます。また、デイケア(通所リハビリテーション)では、理学療法士や作業療法士などが実施する機能訓練を受けることも可能です。

短期入所サービス

要介護・要支援者が施設に短期間宿泊し、食事や入浴、リハビリテーションなどの支援を受けられるショートステイサービスです。

介護を担う家族の負担軽減や、施設入居への準備に活用できます。

その他サービス

車いすや介護ベッドなどの福祉用具をレンタルする、福祉用具貸与を受けられます。

また、排せつや入浴などレンタルに不向きな福祉用具を購入する特定福祉用具購入費や、手すりの取り付け・段差解消といった小規模な自宅の改修を行なう住宅改修費の支給も可能です。

施設サービス

介護保険の施設サービスとは、介護保険施設に入居して受ける介護サービスです。

介護保険施設には以下の4種類があります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護を常に必要とし、在宅での介護が難しい人を対象とした施設です。日常生活に必要なサポートや機能訓練を行ないます。

介護老人保健施設

状が安定している人を対象とした施設で、看護・医学的な管理のもとに介護や機能訓練を受け、在宅への復帰を目指します。

介護療養型医療施設

慢性疾患があり長期療養を必要とする人に、医療と介護、日常生活に必要なサポートを提供する施設です。2024(令和6)年3月末までに、介護医療院への転換が予定されています。

介護医療院

医療と介護の両方を必要とする人が、長期的に暮らしていくための施設です。介護医療院は、介護療養型医療施設の役割を引き継ぐ形で創設されました。

医療的なケアをおもに行なっていた介護療養型医療施設の役割に加え、日常生活を送るための支援にも力を入れています。
また、有料老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)などのうち、自治体から「特定施設入居者生活介護」における「特定施設」に指定されている施設では、介護サービスへの介護保険適用が認められています。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、介護が必要になった場合でも住み慣れた地域で生活を続けられるように、地域ぐるみで介護を支援する仕組みのことです。

地域密着型サービスは、主に「訪問・通所型サービス」「認知症対応型サービス」「施設・特定施設型サービス」が挙げられます。

訪問・通所型サービス

自宅で生活する要介護・要支援者を訪問または施設に受け入れ、生活支援や介護、健康管理や衛生管理指導などの看護を提供します。

認知症対応型サービス

自宅から通う認知症の方やグループホームに入居中の認知症の方に、生活のサポートや認知症ケアを行ないます。

施設・特定施設型サービス

地域密着型の小規模な特別養護老人ホームや有料老人ホームで暮らす要介護・要支援者に、生活支援や介護、機能訓練や看護を提供するサービスです。

介護サービスを受けられる人は?

公的介護保険の被保険者は、年齢によって「第1号被保険者」と「第2号被保険者」に分かれています。

ここでは、公的介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者が介護サービスを受給する要件を解説します。

第1号被保険者

公的介護保険の第1号被保険者とは65歳以上の人のことで、介護サービスを受給するには要介護・要支援認定を受けている必要があります

公的介護保険制度下にあるサービスを受けられるのは、原則として第1号被保険者だけに限られています。

また、第1号被保険者が介護サービスを受ける場合、介護や支援を必要とするに至った原因は問われません。

第2号被保険者

公的介護保険の第2号被保険者とは、40歳から64歳までの医療保険加入者です。介護サービスを受給する要件は、老化に起因する16種類の特定疾病のいずれかによって要介護・要支援認定を受けていることです。

老化起因の16種類の特定疾病には、脳血管疾患や初老期における認知症、末期がんなどが挙げられます。

特定疾病以外の原因で要介護・要支援状態になった場合は、公的介護保険制度下のサービスを受給できません。ただし、障害者福祉制度など介護保険以外の制度でサービスを利用できる可能性があります。

介護保険料を支払い始める年齢と金額

介護保険の保険料の支払いが始まる年齢と保険料の金額、介護保険料を滞納した場合の措置について説明します。

介護保険料はいつから支払う?

介護保険料は、満40歳に達した月から支払うことが義務づけられています。満40歳は第2号被保険者となる年齢です。

40歳から64歳までの間は、加入している医療保険と一緒に介護保険料が徴収されます。65歳以降の介護保険料は、年金から天引きされるのが原則です。

介護保険料の金額

第1号被保険者(65歳以上)の場合、介護保険料の金額は自治体ごとに異なります

厚生労働省の発表によると、2021年(令和3年)~2023年(令和5年)度における、第1号被保険者の介護保険料の基準額の全国平均は、月額6,014円 です。

第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の場合は、加入している医療保険によって介護保険料の計算方法が異なります

加入中の医療保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)や共済組合などの被用者保険(社会保険)であれば、自己負担分の介護保険料は「標準報酬月額または標準賞与額×介護保険料率×1/2」で計算することが可能です。計算に使用される介護保険料率は被用者保険ごとに設定されており、保険料の支払いは事業主との折半となります。

個人事業主等、国民健康保険に加入している場合は、世帯ごとの所得に応じて介護保険料の金額が算出されます。

介護保険料を滞納した場合はどうなる?

介護サービスを受けた際、費用の1~3割を自己負担します。しかし、特別な事情がなく介護保険料を滞納した場合は、滞納期間に応じて3種類の措置がとられます。

滞納期間ごとの措置の内容は、以下のとおりです。
滞納期間 措置の内容
1年以上 介護サービスの費用をいったん全額負担します。後日、申請によって費用の9~7割分の払い戻し(償還払い)を受けられます。
1年6カ月以上 費用の全額を負担します。後日申請したとしても、9~7割の払い戻し分の一部または全部が一時的に差し止められたり、滞納中の保険料の支払いにあてられたりする場合があります。
2年以上 保険料の滞納から2年以上経過すると、以降の保険料は支払えなくなります。また、介護サービスの利用時、保険料未納の期間に応じて費用の自己負担が1~2割の人は3割に、3割の人は4割に引き上げられます 。

【5ステップ】介護サービスを利用する流れ

介護サービスを利用する流れを、5ステップに分けて解説します。

ステップ1:要介護・要支援認定の申請

まずは要介護・要支援の認定を受けるために申請しましょう。申請先は市区町村の担当窓口です。

申請の際、40歳から64歳までの方は医療保険の被保険者証、65歳以上の方は介護保険の被保険者証を持参しましょう。

ステップ2:認定調査

申請後、認定調査員が自宅や施設を訪問し、被保険者の心身の状況に関する聞き取り調査を実施します。

並行して、自治体は医師に主治医意見書の作成を依頼します。主治医意見書とは、被保険者の心身の状況について主治医の意見を記した書類で、要介護・要支援認定のために必要なものです。

ステップ3:結果の通知

認定調査と主治医意見書をもとに、介護認定審査会で介護の必要性や、どれくらいの介護を要するのかについての判定を行ないます。判定後、申請者に結果が郵送されます。

要介護・要支援の申請から結果の通知までにかかる日数は、原則として30日以内です。

ステップ4:ケアプランの作成

要介護・要支援者の認定を受け、介護サービスを利用する際には、ケアプランの作成が必要です。ケアプランの作成は、居宅介護支援事業者や地域包括支援センターが行ないます。

ステップ5:介護サービス事業者と契約

ケアプランをもとに介護サービス事業者と契約を交わし、介護サービスを利用しましょう。

なお、介護・要支援者に認定されなかった場合でも、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)によって、介護予防ケアマネジメントに沿ったサービスの利用が可能です。

総合事業の介護予防サービスを受けるには、各自治体が作成している「基本チェックリスト」を受け、「介護予防・生活支援サービス事業対象者」に認められる必要があります。

介護サービスを活用して介護にかかる負担の軽減を

公的介護保険制度は、要介護・要支援者に認定された場合にさまざまな介護サービスを利用できる仕組みです。

介護サービスは、費用の1~3割の自己負担で利用できます。しかし、実際の支払い時には大きな金額に感じるケースは少なくありません。

そのような場合に備えて、公的介護保険の自己負担分や公的介護保険が適用されないサービスにかかる費用をカバーする民間介護保険に、あらかじめ加入しておくと安心です。

 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 金子 賢司

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務めるなか、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強をはじめる。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

資格:CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年6月30日

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