介護について知る

介護レベル(要介護度)とは?
認定区分と利用できる介護サービスの違い


将来介護が必要になったとき、公的介護保険で十分な介護サービスが受けられるのか、不安に感じる方もいるでしょう。

公的介護保険では、個人の介護レベルに応じた介護サービスが受けられるようになっています。

この記事では、8段階の介護レベル(認定区分)や、区分ごとに利用できる介護サービスの違いを解説します。介護サービスを受けるために必要な要介護認定から、介護サービス利用までの流れも確認しておくと安心です。

介護レベルとは

介護レベル(要介護度)とは、公的介護保険制度において要介護認定の申請の際に判定される、介護の必要性の程度を表す指標です。認定区分とも呼ばれます。

介護レベルには要支援1~2、要介護1~5の7段階があり、支援・介護の必要がない「非該当(自立)」を含めると8段階に分けられます。

公的介護保険制度では、介護レベルをもとに利用できる介護サービスや給付の限度額が設定されており、必要な人に必要な量の介護サービスが提供されます。

厚生労働省の介護保険事業状況報告によると、65歳以上の要介護者・要支援者は2021(令和3)年3月末時点で668万9,000人に達しています。

また、75歳以上になると要介護者の割合が大きく上昇する傾向です。年齢を重ねると、介護は避けられない問題となるため、健康なうちから将来の介護について考えておく必要があるでしょう。

8段階の介護レベルと利用できる介護サービス

先に述べたとおり、公的介護保険制度では介護レベルに応じて利用できる介護サービスが定められています。ここからは、それぞれの介護レベルの目安などを解説します。

要支援と要介護の判断基準

介護レベルについてまず知っておきたいのは、要支援と要介護の違いです。要支援と要介護のどちらに該当するかは、日常生活において常時介護が必要かどうかで判断されます。

要支援とは、日常生活の一部に支障があり支援が必要なものの、支援により状態の改善や維持ができる状態です。

6カ月にわたり常時介護が必要な状態、あるいは今後約6カ月以内に状態が大きく進行すると予想される場合には、要介護と判断されます。なお、認知症の症状が見られる場合には、要介護と判断される可能性が高いでしょう。

8段階の区分と状態の目安

8段階の介護レベルについて、区分別に状態の目安を表にまとめました。なお、実際の要介護認定ではさまざまな要素が考慮されるため、状態と区分が一致しないこともあります。

要支援1

・食事や排せつは自分でできる

・日常生活動作の一部で見守りや支援などが必要

要支援2

・要支援1よりも多くの場面で支援を要する状態

・将来介護が必要になる可能性が高いが、支援により予防可能な段階

要介護1

・日常生活において部分的な介助が必要

・認知機能の低下が見られることもある

要介護2

食事や排せつを含む生活全般で介助が必要な状態

・認知機能のさらなる低下が見られることもある

要介護3

要介護2に加えて自力での移動などの動作にも支障があり、ほぼ全面介助が必要な状態

問題行動が見られることもある

要介護4

・介助なしでは日常生活を送るのが難しい状態

・問題行動が顕著になる

要介護5

寝たきりで食事や排せつが自力でできず、介護がなければ生活できない状態

意思疎通が困難

非該当(自立)

日常生活に支援や見守りが必要ない状態

介護レベル別に受けられる介護サービス

公的介護保険制度では、介護レベル別に保険給付の対象となる介護サービスや、区分支給限度基準額が定められています。実際の自己負担額は本人の所得に応じて区分支給限度基準額の1~3割となり、区分支給限度基準額を超えた利用は全額自己負担が必要です。

介護レベル別に、区分支給限度基準額と、基準額内で受けられる介護サービス利用の目安を見ていきましょう。

なお、区分支給限度基準額は単位での管理です。1単位は原則10円ですが、地域により異なります。以下で紹介する区分支給限度基準額は1単位10円で計算しています。

要支援

要支援と判定されると、介護予防給付の対象になります。おもに訪問型・通所型サービスの利用が可能です。

1カ月あたりの支給限度額と介護サービス利用の目安は以下のとおりです。

 

1カ月あたりの支給限度額

利用できる在宅サービス・地域密着型サービスの目安

要支援1

5320

23回程度のサービス利用が可能

要支援2

105,310

34回程度のサービス利用が可能

要介護

要介護と判定されると、介護給付を受けられます。要介護では、施設サービス利用の選択肢が増え、要介護度が上がるほど、貸与対象となる福祉用具の幅も広がります。

また、地域密着型の介護サービスにおいても、夜間対応型訪問介護や定期巡回など、利用可能な介護サービスが増えます。なお、特別養護老人ホームへの入居は、原則要介護3以上が条件です。

1カ月あたりの支給限度額と介護サービス利用の目安は以下のとおりです。

 

1カ月あたりの支給限度額

利用できる在宅サービス・地域密着型サービスの目安

要介護1

167,650

1日1回程度のサービスが利用可能

要介護2

197,050

112回程度のサービスが利用可能

要介護3

27480

12回程度のサービスが利用可能

要介護4

309,380

123回程度のサービスが利用可能

要介護5

362,170

134回程度のサービスが利用可能

非該当(自立)

介護が必要ない非該当(自立)と判定された場合は、公的介護保険制度による給付は受けられません。

日常生活に不安がある場合には、自治体による介護予防・日常生活支援総合事業の対象となります。基本チェックリストに照らして生活機能の低下が見られる場合は、訪問型サービスや通所型サービスなどの利用が可能です。

介護が必要になるきっかけとは?

将来の介護について心配な方は、どのようなことがきっかけで介護が必要になるのかも気になるのではないでしょうか。

厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」によると、介護が必要になる原因として最も多いのは「認知症」(16.6%)です。次いで「脳血管疾患(脳卒中)」(16.1%)、「「骨折・転倒」(13.9%)という結果でした。
また、65歳未満でも特定疾病(末期がん、リウマチなど16の疾患)で介護が必要になることもあるため、介護は決して遠い将来の問題ではありません。介護が必要になるときに備えて、今のうちから受けられる支援や選択肢、手続き方法などについて理解しておきましょう。

要介護認定から介護サービス利用までの流れ

公的介護保険制度を利用して介護サービスを受けるには、どの程度介護や支援が必要な状態であるのかを認定する「要介護認定」が必要です。続いて、要介護認定の受け方から、介護サービス利用までの流れを紹介します。

まずは地域包括支援センターや役所の窓口に相談

介護が必要になり介護サービスを受けたい場合には、まず地域包括支援センターや、自治体の介護保険担当窓口などに相談しましょう。

地域包括支援センターとは、ケアマネジャーや社会福祉士、保健師などの専門家が、地域の高齢者を支える業務を行なう機関です。おもに介護サービスについて総合的な相談や、介護予防ケアマネジメント、公的介護保険の申請受付などを行なっています。

このほか、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに相談することも可能です。

なお、要介護認定を受ける際には、主治医の意見書が必要です。通院中の場合には、主治医にあらかじめ要介護認定について相談しておくと、要介護認定の手続きがスムーズに進むでしょう。意見書の依頼は、要介護認定の際に自治体が行ないます。

公的介護保険の利用に必要な要介護認定を受ける

要介護認定を行なうのは自治体です。自治体の介護保険窓口へ、要介護認定の申請を行ないます。要介護認定の申請は、本人や家族が行なうほか、居宅介護支援事業所などに代行を依頼できます。申請には以下が必要です。

・ 要介護・要支援認定申請書
・ 介護保険被保険者証(65歳以上)または加入している公的医療保険の保険証(40歳以上65歳未満)
・ マイナンバーカード、またはマイナンバー通知カード+本人確認書類

要介護認定は、まず介護に要する手間を時間に換算した「要介護認定等基準時間」に基づき、認定調査員による訪問調査の結果と主治医の意見書の内容を用いて、コンピューターによる一次判定を行ないます。その結果をもとに介護認定審査会が二次判定を行ない、介護レベル(認定区分)が決定されます。

調査項目は以下の5項目で、基準は公平性を保つため全国共通です。

・ 身体機能・起居動作
・ 生活機能
・ 認知機能
・ 精神・行動障害
・ 社会生活への適応

また、過去14日間に点滴や透析など特別な医療(一時的ではないもの)を受けている場合は認定にかかわるため、認定調査員に知らせてください。

調査の際には、現在の状況を認定調査員に正しく把握してもらうために、生活における困りごとも伝える必要があります。本人以外からも状態の聞き取りを行なうため、家族に同席してもらうとよいでしょう。

要介護認定と介護レベルの決定・通知は、申請から原則30日以内に行われます。要介護・要支援と認定された場合には、通知書と、認定結果が記載された介護保険被保険者証が郵送されます。

ケアプランの作成・サービス利用

公的介護保険制度を利用して介護サービスを受けるには、介護レベルに応じたケアプランの作成が必要です。

ケアプランとは、介護目標と必要な介護サービスをまとめた計画書で、ケアマネジャーが作成します。要介護の場合は居宅介護支援事業所に、要支援の場合は地域包括支援センターにケアプランの作成を依頼しましょう。

満足のいく介護を受けるには、ケアプラン作成依頼時に、本人および家族が「どのような介護を受けたいか・受けさせたいか」という具体的な希望を伝えることが大切です。

ケアプランが完成したら、介護サービス事業者と契約を結んで介護サービスの利用を開始します。

介護状態が変化した場合には区分変更が可能

要介護認定には、有効期間が設けられています。新規に要介護認定を申請した場合は原則6カ月、更新時は12カ月です。ただし、必要と認められる場合には、期間短縮や延長もあります。

要介護認定を受けたあと、有効期間が終了する前に状態が悪化することもあるでしょう。その場合は区分変更の手続きが可能です。介護が必要なシーンが増え、より手厚い介護サービスが必要だと感じたら、ケアマネジャーや地域包括支援センター、居宅介護支援事業所に相談してください。

介護レベル別に受けられる介護サービスを知っておこう


将来介護が必要になる可能性は誰にでもあります。介護が必要になったときどのような介護サービスが受けられるかを知っておくと安心でしょう。

また、介護を受けながらどのような生活を送りたいのかを考えるためにも、公的介護保険制度に対する理解は欠かせません。「介護を受けるのはまだまだ先」と考えずに、健康なうちから介護について自分ごととしてとらえておくことが大切です。

 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

赤上 直紀

元銀行員。住宅ローンを通じて、多くのお客様のライフプランニングに携わる。住宅ローンは人生で一番の買い物と言われているため、慎重に契約すべきだと考える。現在は、編集者として金融機関を中心に、ウェブコンテンツの編集・執筆業務を行う。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士

公開日:2023年8月22日

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