介護保険の申請ができる人とは?
条件とわかりやすい申請プロセスを解説


親が高齢になり、介護が必要になった場合にかかる経済的な負担について、不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

そのような場合に重宝するのが介護保険(公的介護保険)です。公的介護保険を利用すると、介護サービスを受ける際の費用負担を軽減できます。
介護保険によるサービスを利用するには、要介護認定の申請が必要になります。

本記事では、公的介護保険を申請できる人の要件や申請時に必要な書類、申請から要介護認定を受けるまでのステップ、結果に不服がある場合の対処法について詳しく解説します。

介護保険を申請できるのはどのような人?

介護保険(公的介護保険)とは、老化に起因する病気などで介護が必要になった高齢者や介護者の負担を軽減し、社会全体で支え合うことを目的につくられた公的制度です。国や都道府県、市区町村などが保険者となり、被保険者から保険料を徴収して介護サービスを提供します。

公的介護保険は原則現金給付ではなく、介護サービスなどの現物給付となる点が特徴です。

公的介護保険の申請ができるのは、所定の要件を満たす本人とその家族、または介護支援事業者などの代理人とされています。それぞれ詳しくみていきましょう。

第1号被保険者・第2号被保険者の要件を満たす本人

公的介護保険は、支援を受ける本人が第1号被保険者もしくは第2号被保険者で、それぞれの要件を満たす場合に申請可能です。

第1号被保険者

第1号被保険者には、65歳以上の方が該当します。
病気や身体的な事由によって日常生活に支援が必要な方が介護保険を申請でき、第1号被保険者の場合、第2号被保険者で説明する特定疾病の指定はありません

申請によって要支援または要介護の認定を受けた方は介護サービスが受給可能となります。

第2号被保険者

第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者(健康保険組合・協会けんぽ・国民健康保険など)、かつ特定疾病の診断を受けた方が該当します。

特定疾病に該当するのは、以下16種類の疾病です。

l  がん(末期)

l  関節リウマチ

l  筋萎縮性側索硬化症

l  後縦靱帯骨化症

l  骨折を伴う骨粗鬆症

l  初老期における認知症

l  進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病

l  脊髄小脳変性症

l  脊柱管狭窄症

l  早老症

l  多系統萎縮症

l  糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症

l  脳血管疾患

l  閉塞性動脈硬化症

l  慢性閉塞性肺疾患

l  両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

引用:厚生労働省|介護保険制度について

上記のがんは、医師が一般的な医学的知見に基づいて、回復の見込みがない、いわゆる末期がんと判断したものに限定されます。
第2号被保険者も第1号被保険者同様、申請によって要支援・要介護認定を受けた方が介護サービスを受給できます。

被保険者の家族や介護支援事業者などの代理人

本人の病状によっては、身体が自由に動かないなど自力での申請が難しいケースもあります。そのような場合は、本人が要件を満たしていれば、家族や地域包括支援センター・指定居宅介護支援事業者・公的介護保険施設などの職員により代理申請が可能です。

また、家族が遠方に住んでいる場合には、郵送による申請もできます。

介護保険申請の必要書類

公的介護保険の申請には、以下の書類が必要です。
  • 要介護認定・要支援認定申請書
  • 介護保険被保険者証 ※第1号被保険者の場合
  • 医療保険被保険者証(健康保険被保険者証) ※第2号被保険者の場合
  • マイナンバーが確認できるもの
  • 身分証明書
本人以外が代行申請する場合には、代行者の身分証明書や委任状も必要です。申請書類は、居住地の自治体窓口や地域包括支援センターで入手できるほか、市区町村によってはホームページからダウンロードすることもできます。

介護保険被保険者証は、65歳になる前に自治体から送付されます。40歳以上65歳未満の第2号被保険者は、介護保険被保険者証の代わりに医療保険被保険者証(健康保険被保険者証)が必要です。

マイナンバーが確認できれば、マイナンバーカード原本ではなく、通知書や写しでも構いません。身分証明書は本人の顔写真付きのものが必要です。

介護保険申請の流れは5ステップ

公的介護保険のサービスを受給するには、所定の手続きを踏まなければなりません。受給までの流れを5ステップに分けてみていきましょう。

ステップ1 申請書類を提出

まず、自治体や地域包括支援センターの窓口に、要介護認定・要支援認定申請書などの書類を提出し、「要介護(要支援)認定」の申請をします。自治体窓口の名称は「福祉課」「介護保険課」など地域によって異なるため、わからなければ総合窓口で確認しましょう。

代理人が申請する場合には、委任状や印鑑、代理人の身元を確認できるものが必要です。

ステップ2 要介護認定の調査

申請後は、自治体の認定調査員が自宅を訪問し、本人や家族から心身の状況などについて聞き取り調査を行います。

調査内容は全国共通で、以下の5つのカテゴリから合計74項目のチェックをします。
  • 身体機能・起居動作
  • 生活機能
  • 認知機能
  • 精神・行動障害
  • 社会生活への適応
加えて、主治医・かかりつけ医に医学的見地から意見書を作成してもらいますが、主治医がいない場合は自治体が指定する医師の診察が必要です。意見書には病名や病状、身体に関する状態を細かく記入してもらいます。

ステップ3 一次判定・二次判定

介護認定調査のあとは、調査結果と主治医の意見書をもとに、一次判定・二次判定が行われます。

一次判定では、厚生労働省作成の専用ソフトを用いて要介護認定等基準時間を分析し、要介護レベルを割り出します。要介護認定等基準時間は介護に要する時間を指し、この時間が長いほど要介護度が重いと判定されます。

要介護認定等基準時間は、要支援・要介護度に応じて次のように定められています。

要支援1

要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態

要支援2

要介護1

要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態

要介護2

要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態

要介護3

要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態

要介護4

要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態

要介護5

要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態


二次判定では、一次判定の結果と主治医の意見書に基づき、保健・医療・福祉の専門家5名程度で構成された介護認定審査会で要支援もしくは要介護度の判定を行います。

一般的には、申請日から30日以内に自治体から認定結果が通知されます。認定結果は、要介護1~5、要支援1・2、非該当のいずれかです。第2号被保険者は、要介護もしくは要支援に加え、その原因が特定疾病によるもののみ認定されます。

ステップ4 ケアプランの作成・提出

要介護1~5の認定を受けたあとにまず行うのがケアプラン・介護サービス計画書の作成です。

在宅で介護サービスを受ける場合は、居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)と契約し、介護支援専門員(ケアマネジャー)にケアプランを作成してもらいます。施設へ入所する場合は、希望する施設に直接依頼しましょう。

要支援1・2の認定を受けた方は、地域包括支援センターの職員が介護予防ケアプランを作成します。

ステップ5 介護サービスの利用

ステップ4までの手順を踏んだあとは、ケアプラン(介護予防ケアプラン)に基づいて各種介護サービスを利用できるようになります。

受けられる代表的な介護サービスは以下のとおりです。
  • 自宅訪問(訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリなど)
  • 施設に通う(デイサービス、通所リハビリ、認知症対応通所介護)
  • 訪問・通い・宿泊(小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護)
  • 短期間の宿泊(短期入所生活介護、短期入所療養介護)
  • 施設などで生活(介護老人福祉施設、介護老人保健施設など)
  • 地域密着型サービス(認知症対応型共同生活介護など)
  • 福祉用具の利用(福祉用具貸与、特定福祉用具の販売)
介護サービスの利用においては、介護保険被保険者証や介護保険負担割合証の提示が必要です。自己負担額は1割もしくは2~3割で、第1号被保険者は所得に応じて負担割合が変動します。

第2号被保険者の場合は、所得に関係なく1割負担です。

介護保険申請の結果に不服がある場合はどうする?

「想定よりも要介護度が低く認定された」「申請が通らなかった」など、公的介護保険申請の結果に不服がある場合もあるでしょう。その場合には、以下3つの対象方法があります。
  • 相談窓口に相談する
  • 不服申し立てをする
  • 区分変更を申請する
一般的には、まず相談窓口に相談し、その後の対処方法を検討する流れになります。

相談窓口に相談する

認定結果に対して不服がある場合には、市区町村の介護保険担当課や地域包括支援センターの相談窓口で認定調査結果の理由を確認できます。

その結果に納得できない場合は、「不服申し立てをする」「区分変更を申請する」のどちらの対処方法をとるべきか、相談が可能です。

不服申し立てをする

理由を確認し、それでも認定結果に納得できなければ、介護認定審査会に対して不服申し立てを行えます。

申請期間は、結果の通知を受け取った日の翌日から自治体が指定する期間内に限られるため、注意が必要です。また、再度申請を行うことで時間がかかるうえに、必ずしも希望する認定結果が得られるとは限りません。

区分変更を申請する

けがや病気の進行により、認定結果が現在の状況にそぐわなくなった場合、要介護または要支援の区分変更を申請できます。

要介護認定には有効期間が設けられており、新規申請の場合は6ヵ月、更新申請の場合は12ヵ月ごとに更新を行わなければなりません。更新を待たず、この有効期間内に手続きを行うケースを「区分変更」といいます。

区分変更は不服申し立てとは異なり、申請の期間制限はありません。また、審査の結果が出るまでには、1ヵ月程度がかかります。

要介護認定の区分変更について、以下の記事でも解説しています。ぜひ、こちらも併せてご覧ください。

介護保険の給付を受けたいときは要介護認定の申請をしよう


公的介護保険の給付を受けるには、要介護または要支援認定を受ける必要があります。加えて、第2号被保険者の場合、要介護または要支援となる原因が特定疾病によるものでなければなりません。

申請時には必要書類の提出など所定のステップを踏む必要があるため、居住している地域の自治体に、あらかじめ確認・相談しておくとよいでしょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年6月27日

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