ショートステイとは?
利用条件・費用と施設の選び方を解説


在宅介護をしていると「出張で介護ができない」「少しだけ助けがほしい」というときもあるでしょう。

一時的に在宅介護を行うことが難しいときは、ショートステイの活用がおすすめです。ただし、施設によってサービス内容や利用条件、費用などは異なるため、自分に合った施設を選択することが重要です。

この記事では、ショートステイの概要や利用条件、費用の目安、利用までの流れを中心に解説します。また、自分に合った施設を選ぶためのポイントも紹介するので、参考にしてください。

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「ショートステイ」とは?

まず、ショートステイの概要とサービス内容を見ていきましょう。

ショートステイとは

ショートステイは、自宅で介護を受けている要介護者が一時的に施設へ宿泊できるサービスです。

在宅で介護をしていると、介護者の体調不良や冠婚葬祭などの予定で一時的に在宅介護が難しくなることがあります。

このようなときに一時的に宿泊できるショートステイは広く利用されており、令和5年度の介護サービスにおけるショートステイ利用者は400万人を超えています。

受けられるサービス

ショートステイでは、おもに以下のサービスを受けられます。
  • 食事や排泄、入浴など日常生活の介助
  • リハビリ
  • レクリエーション など
なかには、医療ケアを提供している施設もあり、必要に応じて適切な医療的支援を受けられます。

ショートステイとデイサービスの違い

ショートステイと似たものに「デイサービス」があります。サービス内容に大きな違いはありませんが、利用期間が異なります。

デイサービスは日帰りが基本で、日中のみのサポートに向いています。

一方、ショートステイは宿泊が可能で、数日~1週間程度の利用が一般的です。丸一日以上にわたる不在が見込まれる場合にはショートステイの利用が適しているでしょう。

なお、やむを得ない事情がある場合には、最大30日まで連続して宿泊できるロングショートステイも認められるケースがあります。

ただし、利用日数は介護認定期間のおおむね半分までという制限があり、例えば認定期間が180日なら90日程度までの利用となります。また、施設を変えても利用日数は通算される点に注意しましょう。

ショートステイの種類と利用条件

ショートステイには、短期入所生活介護と短期入所療養介護、有料ショートステイの3種類があります。

各施設の利用条件は以下のとおりです。

 

公的介護保険の適用施設

公的介護保険の

適用外となる施設

短期入所生活介護

短期入所療養介護

有料ショートステイ

対象者

要介護認定を受けた方

要介護認定を受け、

医療ケアが必要な方

自立している方

要介護認定を受けた方

サービス内容

日常生活の介助

リハビリ

レクリエーション

機能訓練 など

日常生活の介助

病状の確認

療養上の世話

リハビリ

機能訓練 など

日常生活の介助

リハビリ

レクリエーション

機能訓練 など

利用できる施設

特別養護老人ホーム

ショートステイ専門の施設

一部の有料老人ホーム

介護老人保健施設

介護医療院

有料老人ホーム

サービス付き高齢者向け住宅

 

 




短期入所生活介護は単独でサービスを提供している施設もあれば、特別養護老人ホームなどに併設されている施設もあります。いずれもサービス内容に大きな違いはありません。

短期入所療養介護は医療型ショートステイとも呼ばれ、日常生活の介助だけでなく、喀痰吸引や投薬などの医療ケアを受けられます。

これらの施設の利用には公的介護保険が適用されるため(以下、公的施設)、1~3割の自己負担でサービスを利用できますが、要介護度により適用される利用日数は異なる点に注意しましょう。

一方、有料ショートステイは公的介護保険の適用外となるため、要介護認定の手続きは不要です。必要なときに繰り返し利用できます。

ただし、利用条件は施設ごとに異なり、費用も全額自己負担となります。

ショートステイを利用したいタイミング

ショートステイは1日から宿泊可能であり、目的や状況に応じて柔軟に利用できます。おもな利用場面を介護者側、介護を受ける側の視点から見ていきましょう。

介護者側の事情

介護者側の事情としては以下のようなケースが挙げられます。
  • 仕事の出張で留守にする
  • 冠婚葬祭や旅行などで外出する
  • ケガや体調不良で一時的に介護が難しい
  • 介護から離れてひと休みしたい
ショートステイは出張や冠婚葬祭など急な用事だけでなく、介護者の休息のためのレスパイトケアとして利用されることもあります。

レスパイトとは「休息・息抜き」を意味する言葉です。介護は心身ともに負担が大きく、負担軽減の観点からもレスパイトケアは重要視されています。

レスパイトケアの利用効果や注意点については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

介護を受ける側の事情

次に、介護を受ける側の事情です。
  • 入居する施設が決まらない
  • 退院直後でリハビリをしたい
  • 家族以外の人と交流したい
  • 生活機能の維持・改善をしたい
  • 入居を見据えて施設の体験をしたい
  • 特別養護老人ホームなどの入居待ち状態である
上記のように、ショートステイはさまざまな用途で利用可能です。

しかし、公的施設は人気があり、希望どおりに予約が取れない可能性もあります。急ぎでなければ、連休などの混雑時は避けて利用するとよいでしょう。

有料ショートステイは費用が高い傾向にありますが、その分柔軟に利用できる施設もあります。緊急度に応じて使い分けることも重要です。

ショートステイの1日の過ごし方

 
1泊2日でショートステイを利用した場合のスケジュールを紹介します。
 1日目≫

900

送迎

1000

健康チェック

1030

体操やリハビリ

1200

昼食

1400

レクリエーション

1500

おやつ

1600

入浴

1800

夕食

2100

就寝

 

2日目≫

600

起床・健康チェック

700

朝食

900

リハビリ

1200

昼食

1400

レクリエーション

1500

おやつ

1600

送迎

ショートステイではほかの利用者とも交流ができるため、リハビリやレクリエーションを一緒に楽しめるでしょう。食事も栄養バランスが整った旬な食材を嚥下機能に合わせて提供してくれます。

食後の口腔ケアや、血圧測定などの健康チェックもあるため、安心して利用できます。

ただし、上記の過ごし方は一例です。施設によってサービス内容は異なるため、気になる施設があれば、事前に確認しましょう。

ショートステイの費用の目安

 
ショートステイを利用する際は、大きく分けて3つの費用が発生します。
  • 基本料金
  • 特別サービスによる加算料金
  • 公的介護保険の適用外となる費用
それぞれ詳しく解説します。

基本料金

入浴や食事の介助など、介護サービスにかかる基本的な費用で、施設の種類や部屋のタイプ、利用者の要介護度、利用日数などによって金額が異なります。

例えば、医療ケアが提供される短期入所療養介護は、生活支援が中心の短期入所生活介護よりも高額になる傾向があります。

なお、基本料金には公的介護保険が適用されるため、実際の自己負担は1~3割です。

特別サービスによる加算料金

送迎サービスや個別機能訓練、病状に応じた療養食の提供、若年性認知症の方への対応など、特別なサービスを受けた場合や、施設側で一定のサービス提供体制を整えていた場合に追加される費用です。

これらの費用も公的介護保険の対象であり、自己負担割合に応じて支払います。

公的介護保険の対象外となる費用

食費や居住費、日用品費などは公的介護保険の適用外です。全額自己負担となりますが、施設によって金額に差があるため事前に確認するとよいでしょう。

ショートステイ費用の具体例

特別養護老人ホームに併設されたショートステイの1日当たりの費用を見てみましょう。

自己負担が1割の方の場合、部屋のタイプや要介護度別の基本料金は以下のとおりです(いずれも併設型のケース)。

要介護度

部屋のタイプ

従来型個室/多床室

ユニット型個室/

ユニット型個室的多床室

要介護1

603

704

要介護2

672

772

要介護3

745

847

要介護4

815

918

要介護5

884

987

ショートステイの基本料金は、従来型個室や多床室に比べて、ユニット型のほうが高く設定されています。また、要介護度が高いほど必要なケアの量も増えるため、基本料金も上がります。

ショートステイの利用までの流れ

有料ショートステイの場合は、公的介護保険の手続きは不要です。直接施設へ問い合わせて利用方法を確認しましょう。

公的施設については、以下の流れでサービスを利用します。

1.要介護認定を受ける

はじめに、要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定とは、介護サービスの必要度を数値で表したものです。「自立」「要支援1・2」「要介護1~5」の8区分で判定され、各区分の目安は以下のとおりです。

要介護状態
(認定の目安)とは?

要支援2・要介護1
  • 家事の一部や入浴などに見守りや手助けを必要とすることがある
  • 立ち上がりや片足での立位保持などに何らかの支えを必要とすることがある
次に該当する場合は「要支援2」となります
適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持・改善が見込まれる
要介護2
  • 食事や排泄などに手助けを必要とすることがある
  • 物忘れなど認知機能の一部に低下がみられることがある
要介護3
  • 食事や排泄などに介助を必要とする
  • 認知機能の低下がみられ、それに伴ういくつかの行動・心理症状*がみられることがある
要介護4
  • 食事や排泄などに全面的な介助を必要とする
  • 全般的な認知機能の低下がみられ、それに伴う多くの行動・心理症状*がみられる
要介護5
  • 日常生活を遂行する能力が著しく低下し、全面的な介助を必要とする
  • 意思の疎通ができないことが多い
*行動・心理症状とは、暴力・暴言、徘徊などの行動症状や、幻覚、妄想、うつなどの心理症状のこと
※要介護度別の状態はあくまで目安であり、実際に認定を受けた人の状態がこの表に示した状態と一致しないことがあります。
(公財)生命保険文化センター「介護保障ガイド」(2024年10月改訂版)をもとに作成
申請先は利用者が居住する自治体の窓口や地域包括支援センターです。

要介護認定の区分や認定の流れは下記の記事でも解説しています。併せてご覧ください。

2.ケアマネジャーに相談する

ショートステイの利用手続きは、基本的にケアマネジャーが行います。

要介護認定を受けたら、ケアマネジャーに利用の目的や期間、日程などを伝えましょう。そのうえで、条件に合ったショートステイ施設の調査を進めてもらいます。

多くの施設では3ヵ月前から予約を受け付けていますが、年末年始や連休の時期などは早めに埋まってしまうこともあります。

事前に日程が決まっている場合は、遅くとも1~2ヵ月前までにケアマネジャーに相談し、施設を探すことをおすすめします。

3.ケアマネジャーが利用申し込みをする

ショートステイ施設が決まると、ケアマネジャーは利用者本人の介護や医療に関する情報を施設側に伝え、宿泊可否や予約の空き状況を確認し、申し込みます。

なお、施設によっては事前に本人との面接や、健康状態・生活状況などの確認を求められることもあります。

4.ケアプランを作成する

正式に施設が決まったら、ケアマネジャーが施設の担当者と一緒にケアプランを作成します。

ショートステイでは、ケアプランをもとに介護サービスを提供します。

5.契約・サービス利用開始

ケアプランが決まり、施設からの重要事項説明などを受けて問題なければ契約を締結し、サービスの利用開始となります。

自分に合ったショートステイ施設の選び方

ショートステイ施設によって、特徴や雰囲気はさまざまです。

自分に合った施設を見つけるために、事前に確認しておきたいポイントを紹介します。

パンフレットやホームページからも情報を得られますが、見学に行くと実際の雰囲気や利用時のイメージがつきやすくなるでしょう。

サービス内容

まずは、提供されるサービスが利用目的に合っているかを確認しましょう。

医療的ケアが必要な方は、「短期入所生活介護」ではなく「短期入所療養介護」を選ぶ必要があります。

レクリエーションの頻度や内容、参加したがらない方への対応などもチェックすべきポイントです。無理に参加を促すのではなく、個々の気持ちに配慮した対応がされているかを見ておくとよいでしょう。

また、食事の栄養バランスや量が適切か、一人のスタッフが複数人の介助を同時に行っていないかといった点も、安心して利用するための重要な判断要素です。

スタッフの対応

スタッフの対応は、施設全体の雰囲気や安心感に直結します。見学の際は、スタッフの言葉遣いや表情、接し方に温かみがあるかを確認しましょう。

スタッフ同士のコミュニケーションや連携の取り方も見ておくとよいでしょう。安全性の面で大切なポイントです。

利用者の様子

利用者の表情や過ごし方も確認しておきましょう。
  • 穏やかに過ごしているか
  • 笑顔や安心した表情があるか
  • 利用者同士での交流ができているか など
自分と同程度の要介護度の方が多い施設を望む場合は、ほかの利用者の要介護度も見ておくとよいでしょう。

費用

ショートステイの費用は、公的施設・有料ショートステイ、要介護度、部屋のタイプなどによって異なります。

また、食費や日用品費は全額自己負担です。施設によって費用に幅があるため、総額を確認し、自分たちの家計に見合った施設を選ぶことが大切です。

民間の介護保険を活用して、将来の介護費用の負担に備えることも一案です。経済的に余裕があれば、公的施設の予約が取れない場合や緊急時に有料ショートステイも利用しやすくなるでしょう。

生活環境

施設内の生活環境も重要です。

必要な設備が整っているか、清潔で衛生的な環境が保たれているか、転倒のリスクを減らすために整理整頓が行き届いているかなどをチェックしましょう。臭いも、汚物をすぐに処理しているかの指標になります。

ショートステイの理解を深め、自分に合った施設を選ぼう


一時的に在宅介護ができない場合だけでなく、介護者のレスパイトや要介護者のコミュニケーション機会を確保するためにもショートステイは有用です。

サービス内容やスタッフの対応、雰囲気などを確認のうえ、自分に合った施設を選択しましょう。

民間の介護保険を活用すると、経済的な負担を軽減できます。公的施設の予約が取れないときや緊急時に有料ショートステイを利用できるなど、介護の選択肢が広がるかもしれません。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年7月10日

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