公的介護保険の「給付制限」とは、介護保険料を一定期間以上滞納した場合に、通常の給付を受けられなくなる措置です。介護サービス利用時は一時的にサービス費用を全額自己負担するほか、給付の減額や差し止めなどの制限がかかる場合があります。これらの措置は、滞納期限の長さに応じて段階的に適用されます。
給付制限が設けられている理由は、公的介護保険を公平に運営するためです。公的介護保険は、加入者全員が保険料を出し合って支え合う「相互扶助」で成り立っています。誰かが滞納すると、その負担がほかの加入者におよぶおそれがあり、制度全体の信頼性にも影響します。給付制限は、制度を健全に保つための重要な措置といえます。
介護保険料は、年齢や年金支給額などによって「特別徴収」または「普通徴収」で納付します。ここでは、それぞれの納付方法について解説します。
65歳以上の方は公的介護保険制度の第1号被保険者に区分されます。保険料の納付方法は2種類です。
特別徴収とは、公的年金から介護保険料が自動的に差し引かれる仕組みのことです。納付書による支払い手続きが不要なため、納め忘れの心配がありません。
対象となるのは、年金を受給している65歳以上で、年金支給額が年額18万円以上の方です。偶数月(2・4・6・8・10・12月)の年金支給時に、2カ月分ずつ介護保険料が差し引かれます。
ただし、年度途中で65歳を迎えた方や、年金額が条件を満たさない方などは、一時的に普通徴収へ切り替わることがあります。
普通徴収とは、市区町村から送付される納付書を使って、ご自身で介護保険料を納める仕組みです。金融機関やコンビニエンスストアなどで支払えるほか、口座振替を利用することもできます。
対象となるのは、年金支給額が年額18万円未満の方や、年度途中で65歳になった方などです。年間で複数回に分けて支払いますが、自治体によって支払い回数や納付書の発送時期、支払期日は異なります。
なお、口座振替の対象は普通徴収の方のみで、特別徴収(年金天引き)の方は手続き不要です。
第2号被保険者(40歳~64歳)の介護保険料の納め方
40歳~64歳までの第2号被保険者は、加入している国民健康保険や健康保険組合の保険料と合わせて介護保険料が徴収されます。
65歳を迎えた際に一時的に普通徴収となるため、納め忘れることがないように注意しましょう。
介護保険料を滞納した場合、滞納期間に応じて段階的な制限が設けられます。ここでは、滞納期間ごとに適用される3つの措置を解説します。
なお、以下は一般的な内容であり、自治体によって運用が異なる場合があります。不明点は事前に確認しましょう。
介護保険料を1年以上滞納した場合、給付方法が「償還払い」に切り替えられます。
償還払いとは、一時的に介護サービスの費用を全額自己負担(10割)し、後日申請により保険給付分として9~7割が払い戻される仕組みです。
払い戻しを受けるには、介護サービス利用時の領収書などを添えて、自治体の介護保険担当窓口で手続きを行う必要があります。払い戻しは受けられますが、一時的な負担が大きく、経済的影響が出やすい措置です。
介護保険料を1年6カ月以上滞納した場合、償還払いに加えて「給付の差し止め」が行われる場合があります。
これは、介護保険給付の一部または全部を一時的に停止する措置です。差し止めにより保険料の滞納分が充当されるため、払い戻しの申請をしても、本来の償還分の全額は受け取れません。
納付期限から2年以上滞納|給付の減額・自己負担増加
介護保険料の滞納が2年以上続くと、自己負担割合が通常より引き上げられる「給付の減額」措置が行われます。
具体的には、自己負担が3割(所得が一定以上の人は最大4割)となる措置です。また、「高額介護(予防)サービス費」といった一部サービスの支給を受けられなくなります。長期滞納による給付制限は生活への影響が大きく、早めの納付や自治体への相談が重要です。
給付制限が適用されると、利用者や家族にさまざまな負担が生じます。経済的な影響だけでなく、手続き上の手間や制度の制限によって、日常生活に支障をきたすこともあります。
ここでは、給付制限によって生じるおもな問題を解説します。