認知症とアルツハイマーの違いとは?
症状や進行速度


記憶があいまいになることが頻繁にあると、「認知症ではないか」「アルツハイマーかも」と不安に駆られる人は少なくありません。また、認知症とアルツハイマーは同じ病気なのかと疑問に思うこともあるでしょう。

認知症は症状の名前であり特定の病気の名前ではありません。認知症の原因となる病気はさまざまで、そのなかの一つがアルツハイマーとされています。

この記事では、認知症とアルツハイマーの違いをわかりやすくまとめました。アルツハイマー型認知症の症状や進行スピードのほか、似た症状が出る病気も併せて紹介します。

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認知症とアルツハイマーの違いは?

認知症は病名ではなく、記憶力や判断力が低下するなど認知機能にトラブルが起きる症状の総称です。認知症はおもに4つの病気に分類され、アルツハイマーはそのなかの代表的な疾患「アルツハイマー型認知症」に該当します。

アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める要因として加齢や生活習慣病が考えられますが、発症の原因自体は明確にはわかっていません。

認知症患者数は増加傾向にあり、2025年で推計約730万人、2030年には約830万人 にのぼるとされています。

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アルツハイマー型認知症の症状と進行速度

アルツハイマー型認知症がもたらす具体的な症状と、その進行速度について詳しく見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症の症状の特徴

個人差はありますが、アルツハイマー型認知症の初期段階に多く見られるのは以下のような症状です。
  • もの忘れが増える
  • 慣れた場所で道に迷う
  • 家事の手順がわからなくなる
  • 人の話が理解できない
  • 性格に変化が現れる
  • 身だしなみが整えられない
記憶障害のほか、理解力・判断力の衰えによって、これまで簡単にできていたことが難しく感じられることがあるでしょう

日常生活に支障をきたすほどではない場合、軽度認知障害(MCI)の可能性も考えられます。

アルツハイマー型認知症の進行速度

認知症の進行速度は原因となる病気によって異なり、アルツハイマー型認知症は比較的ゆっくり進行する傾向にあります。

認知症には軽度から重度まで4つの進行段階があり、重度に至るまで10年以上かかる人も珍しくありません。また、認知症を発症するまでにも、ゆっくりと脳の状態が変わっていくこともあります。

認知症を発症すると寿命にも影響をおよぼすとされ、アルツハイマー型認知症の場合、平均余命は約8年ともいわれています。

アルツハイマー型認知症と間違えやすい3つの病気と症状

前述のアルツハイマー型認知症の症状がみられた場合も、必ずしも認知症とは限りません。症状のなかには、認知症によく似た疾患もあるため、見極めが必要です。

加齢によるもの忘れ

記憶力の低下や理解力の衰えは、年を取れば誰にでも起こることです。

認知症の場合は日常生活に影響をおよぼし、体験したこと自体を忘れてしまう傾向があります。加齢による生理的もの忘れでは、日常生活に支障をきたすことはなく、体験したことの一部だけを忘れてしまうことなどが特徴です。

学習能力や感情コントロールにも問題はなく、新しいことを覚えることができ、人が変わったように怒りっぽくなったり、活動的だったのが一転意欲的ではなくなったりすることもありません。

軽度認知障害(MCI)

「軽度認知障害(MCI)」とは、認知症の前段階とされる症状です。アルツハイマー型認知症の多くは、健常の状態から急激に発症・進行するのではなく、健常と認知症の境目であるMCIの状態を通過していく傾向にあります。

MCIは認知症と似たような症状が見られることがありますが、基本的な日常生活には支障がないため、本人だけではなく周囲も見過ごしがちです。

MCIを放置しておくと、1年で約10~30%が認知症に進行するとされ、認知症まで進行すると健常に戻りにくくなります。しかし、MCIの状態の間に適切な治療を開始すれば、認知症の発症を遅らせたり、なかには健常に回復したりすることも見込めるため、なるべく早く専門医のいる病院を受診することが大切です。

甲状腺機能低下症

のどぼとけの下には、新陳代謝をうながすホルモンを分泌する甲状腺という臓器があります。この甲状腺が正常に機能せず、甲状腺ホルモンの分泌量が減り、新陳代謝が鈍ってしまう状態が「甲状腺機能低下症」です。

甲状腺機能低下症による症状の表れ方には個人差があります。記憶力や意欲が低下したり、疲れやすく倦怠感が続いたりするケースも少なくありません。

認知症と勘違いされやすいのですが、これらの症状は適切な治療により改善が可能です。そのため、甲状腺機能低下症による認知機能の低下症状は、「治療可能な認知症」とされています。

「認知症かもしれない」と悩んだときの相談先は?

認知症を疑う症状が出始めると、本人はもちろん、家族も大きな不安やストレスにさらされるでしょう。そのようなときに頼れる相談窓口を紹介します。

かかりつけ医

気になる症状があったら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。いつも診てもらっている医師なら、それまでの健康状態や服用中の薬などを踏まえた診察が可能です。

その結果、専門的な検査が必要だと診断されれば、適切な医療機関を紹介してもらえます。紹介状を書いてもらえば、病院間で既往歴なども共有されるため、初診もスムーズです。

かかりつけ医がいない場合は、後述の地域包括支援センターへの相談や、精神科・脳神経内科・老年内科の受診をしましょう。総合病院やクリニックで物忘れ外来を専門に行っているところがありますので、探してみるとよいでしょう。

地域包括支援センター

かかりつけ医を持たなかったり、認知症かもしれない本人が受診に難色を示したりする場合には、市区町村が設置する地域包括支援センターで相談してみるのも一案です。
地域包括支援センターでは、地域住民が安心して生活できるように、さまざまな相談を受けられます。
保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーといった専門スタッフが配置され、認知症の診断ができる医療機関をアドバイスするなど、必要とする人を適切なサービスにつなぐことも、地域包括支援センターのおもな役割の一つです。

厚生労働省によると、地域包括支援センターは全国で5,431箇所、ブランチやサブセンターを含めると7,397箇所が設置されています(令和5年4月末現在)。具体的な場所は各市区町村の介護保険担当窓口で確認しましょう。

オレンジカフェ

気軽に情報交換がしたい人には、オレンジカフェ(認知症カフェ)がおすすめです。オレンジカフェは、認知症の人やその家族と、保健や介護の専門家や地域の人々が交流を持てる場です。

介護事業所・病院・公民館などで行われ、お茶を飲んでゆっくりおしゃべりができ、講話やイベントが開催されることもあります。

参加費は無料か数百円程度であることがほとんどです。詳しい開催場所は、地域包括支援センターなどで確認できます。

認知症・アルツハイマー型認知症への理解を深めよう


認知症は病名ではなく、記憶力や判断力の低下などを含む認知機能のトラブルを起こす病気の総称です。一方、アルツハイマー病は特定の疾患名であり、認知症を引き起こす代表的な疾患です。

アルツハイマー型認知症はゆっくりと進行し、もの忘れや道に迷うといった症状が初期段階で見られます。進行速度は個人差がありますが、末期に達するまでに10年以上かかることもあります。

認知症が疑われる場合、かかりつけ医や精神科、脳神経内科などの専門医を受診するとよいでしょう。また、地域包括支援センターやオレンジカフェといった地域のサポートを活用することもおすすめです。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2025年1月17日

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