認知症の方とのコミュニケーションのコツとは?
ポイントを押さえて信頼関係を築こう


認知症の方は脳の認知機能が低下しているため、コミュニケーションをうまく取れない場合が多くあります。認知症の方と接する際、コミュニケーションのポイントを知っておかなければ、トラブルになったり認知症の症状を悪化させたりするかもしれません。

認知症の方とコミュニケーションを取るときは、否定せず共感し、耳元でゆっくり話すなどのポイントを押さえることが大切です。

本記事では、認知症の方とのコミュニケーションのコツと、ケース別の具体例を解説し、より良いコミュニケーションのために介護者ができることを紹介します。

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認知症の方と向き合うときの考え方

まずは認知症の方と向き合うときに知っておきたいケアの考え方について見ていきましょう。ケアの考え方を知っておけば、状況に合わせた対応がしやすくなります。

認知症ケアの目的は、認知症の方の尊厳を守り、認知機能の低下を防ぐ・遅らせるために日常生活を支援することです。

また、認知症ケアのおもな考え方には、パーソン・センタード・ケア、バリデーション、ユマニチュードがあります。ケアの考え方を知り、ケアの考え方に沿ったコミュニケーションを心がけましょう。
 認知症ケアの考え方

パーソン・センタード・ケア

認知症の方の感情に寄り添い、理解することを重視する考え方

バリデーション

要介護者が自尊心を取り戻すことを目標とし、あるがままの状態や感情を認めることを基本とする考え方

ユマニチュード

介護者と要介護者が平等であるという精神のもと、人間らしさを尊重する考え方。その人が持つ力を奪わないことを基本として介護を提供する側の心構えを定めている

認知症の方とコミュニケーション4つのコツ

認知症の方とコミュニケーションする際は、以下の4つのポイントに注意しましょう。

否定せず気持ちに寄り添う

認知症の方との会話では、妄想が混ざっていたり会話がかみ合わなかったりする場合もあります。認知症の方の言動に疑問があったとしても、内容を否定せず、共感し受け入れてあげてください。

否定せずに話を聞くことで安心感が生まれ、信頼関係の構築にもつながります。また、会話の際の表情に注目すると、感情を読み取りやすくなるため、表情にも気を付けながら会話することも大切です。話の内容をふまえて、何を感じながら話しているのかを読み取って対応してみてください。

相槌を打つ・共感する

話を聞いている姿勢を見せるために相槌を打つことも大切です。相槌によって共感する気持ちを表現すれば、認知症の方にとって「認めてもらえた」、「話を聞いてもらえた」という安心感につながります。

会話をしたあとに、負の感情を残さないように心がけることも大切です。

耳元でゆっくりはっきり話す

認知症の方は、聴力の低下により、話しかけられても気づかなかったり、きちんと聞こえていなかったりする場合があります。正確かつスムーズにコミュニケーションするためにも、会話する際は耳元でゆっくりはっきり話すことが大切です。

また、用件は簡潔に伝えましょう。認知症の方は、一度に多くの内容を理解することが難しい傾向にあるため、矢継ぎ早に話をするのは混乱のもとです。決して相手の言葉を先取りすることなく、相手が話の内容を理解するのを待って、相手のペースでコミュニケーションできるよう気を配ってください。

ジェスチャーを採り入れる・スキンシップをとる

認知症の方は疎外感や不安感を覚えやすく、これらの感情から妄想などの症状が発生する場合もあります。スキンシップをとり、味方であることをアピールし、認知症の方に不安感を与えないようにしましょう。

また、言葉以外のコミュニケーションは、記憶に残りやすい傾向にあります。そのため、ボディタッチやジェスチャーを会話に採り入れてみるのもおすすめです。

【ケース別】コミュニケーションの具体例

同じ認知症患者でも、人によって現れる症状は異なります。ここでは、ケース別にコミュニケーションの具体例を紹介します。

対人妄想がある場合

対人妄想は対人関係にまつわる妄想です。孤独感や不安感により発症しやすくなり、誰かが勝手に家に入ってきた、暴言を吐かれた、乱暴を受けたなどの妄想症状がでます。

対人妄想のある方へ対応する際は、日常のコミュニケーションを見直すのが基本です。孤独感や不安感を解消できるよう丁寧に接し、自尊心を損なわないよう配慮しましょう。

物盗られ妄想がある場合

物盗られ妄想は認知症で発生する被害妄想の一つです。お金や鍵などの財産を盗まれたと思い込み、周囲に攻撃的になる場合もあります。

物盗られ妄想がある方には、「大変ですね」「一緒に探してみましょう」などの声かけを行ない、気持ちに寄り添いながら対応しましょう。

なくなったものを一緒に探す際は、本人よりも先に家族や周囲の人が先に見つけたとしても、見つけやすいところにさりげなく置くなどして、本人に見つけてもらうことが大切です。本人以外の人間が先に見つけ、「ここにある」と指摘すると、「本当は盗んだくせにそれをごまかすために見つけた」と、妄想の連鎖になってしまうことがあります。

<物盗られ妄想の詳しい記事はこちら>

徘徊がある場合

徘徊は不安な気持ちから発生する症状です。徘徊を放置してしまうと、事故に巻き込まれてケガをしたり、自分の居場所がわからず思わぬトラブルになったりする可能性があります。

徘徊のある方への対応で最も大切なのが、可能な限り行動を制限せず見守ることです。徘徊には理由や目的があります。徘徊を制限してしまうと、症状が悪化する可能性もあるため、安全を確保できる範囲内で行動を見守ってください。

ただ見守るだけでなく、徘徊の理由をたずねたり、ほかのことへ気を逸らせたりすることも大切です。徘徊する理由がわかれば、理由へ対処することで徘徊の症状を軽減できるかもしれません。

<徘徊の詳しい記事はこちら>

帰宅願望がある場合

帰宅願望は、帰りたいと頻繁に訴えたり、実際に家や施設を出て行ったりしようとする症状です。帰宅願望のある認知症の方に対応する際は、帰宅したいという願望を否定せず、帰宅したい理由を知り、理由に合わせてコミュニケーションしましょう。

帰宅願望も、自分の居場所を感じられないことが原因となり、、孤独感や不安感から「ここから逃げたい」と行動している場合があります。そのため、帰宅したいという気持ちを受け止め、落ち着いてもらうことが大切です。帰宅願望を抑え込もうと行動を制限してしまうと、かえって認知症の症状が悪化する可能性があります。

症状に合わせて、「少し休んでいってください」「今日は泊まっていきましょう」「理由をお聞きしてもいいですか?」などといった声かけをしてみましょう。また、声かけに加えて、認知症の方が落ち着いて安心できるような環境づくりも行ないましょう。

より良いコミュニケーションのために介護者ができること

認知症の方とより良いコミュニケーションを取るために、介護者にできることを2つ解説します。

認知症の知識を身に付ける

より良いコミュニケーションのためには、まず、認知症の諸症状について知っておくことが大切です。症状や症状によって発生する言動の背景を理解し、症状別の対処法を知っておけば、落ち着いて対処できるようになります。

認知症の方の状況を正しく理解すると、コミュニケーションによって介護者がストレスをためてしまうことも少なくなるかもしれません。

また、専門家の相談やアドバイスを受けるのもおすすめです。どのような状況でどのような症状が現れたのかを専門家と共有し、より良い対処法を探っていきましょう。

周囲と協力して介護する

認知症の症状によっては、介護者に心身ともに大きな負担がかかります。介護者のストレスがたまれば、心の余裕がなくなり、落ち着いて介護できなくなってしまうことも珍しくありません。

認知症の方とスムーズにコミュニケーションするためにも、介護者がストレスをためない環境を作りましょう。介護を一人でやっていると、どうしてもストレスがたまりやすくなります。周囲の人だけでなく、地域包括支援センター、医療機関、専門家などと協力し、落ち着いて介護できるよう工夫しましょう。

コミュニケーションのポイントを知って信頼関係を築こう


認知機能が低下すると、コミュニケーションをとるのが難しくなってしまいます。認知症の方とコミュニケーションする際は、認知症の方の気持ちに寄り添い、否定せず、ジェスチャーなどを取り入れながらゆっくりと話すようにしましょう。

症状別の対応方法を知っておくと、よりスムーズにコミュニケーションできるようになります。専門家とも協力しながら、認知症について深く知り、コミュニケーションしやすい環境づくりを心がけてみてください。

認知症の方と信頼関係を築くには、介護者の心身に負担がかからないようにすることも大切です。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年10月27日

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