成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立てをする必要があります。申立てから利用開始までは、一般的に1~2カ月ほどかかります。相続税の申告など期限がある場合には注意が必要です。
家庭裁判所への申立てを検討されている方は、まずは地域の相談窓口で成年後見制度について相談しましょう。窓口となるのは、地域包括支援センターや社会福祉協議会などです。
申立てをする前には、成年後見制度の概要や必要な書類、成年後見人等ついて案内を受けることができます。成年後見制度は一度開始したら原則的に途中でやめられないので、事前に相談することで制度についての理解を深め、適切な申立てを行えます。
成年後見制度の利用を決めたら、家庭裁判所に申立てをします。申立ての際は以下のものが必要です。
●申立書
●申立手数料
●登記手数料
●郵便切手
●戸籍謄本
●住民票
●成年後見に関する登記事項証明書
●診断書
家庭裁判所への申立てに必要な書類は、申立ての種類や状況によって異なります。そのため、事前に家庭裁判所に確認することをおすすめします
申立てのあと、裁判所の職員による審問・調査・鑑定などが行なわれます。申立人や後見人候補、本人から事情を聞いたり、本人の判断力についての鑑定が行なわれたりします。裁判所での調査にかかる期間は約1~2カ月です。
調査の結果、後見開始の審判が行なわれると同時に成年後見人等が選任されます。成年後見制度では、本人の判断力の程度に応じて、「後見・保佐・補助」の3種類があります。
●後見:判断力が欠けている
●保佐:判断力が著しく不十分
●補助:判断力が不十分
この判断力の程度によって、成年後見人等に与えられる権限の範囲が異なります。
※任意後見制度の場合、手続きの流れや必要書類が異なります。事前に確認するようにしましょう。
認知症になると判断力が低下し、財産管理や日常生活に支障をきたすことがあります。そのような場合に、本人の財産や権利を保護するため成年後見制度を利用することがあります。
認知症になる前に対策を考えておけば、より使い勝手の良い制度を検討することも可能です。例えば、本人の意思を尊重した財産管理や、本人の希望に沿った生活支援が受けられる制度を利用するかどうかも検討できます。
以下で、認知症になる前に考えておきたい対策を紹介します。
任意後見制度は、成年後見制度の一種ですが、判断力が低下したあとに選任する法定後見制度よりも自由度が高いのが特徴です。
任意後見制度では、判断力が十分あるときに、任意後見人になる人と任意後見人の仕事内容を決めておきます。そして、本人と任意後見人との間で任意後見契約を締結しておけば、判断力が低下したあとに実行してもらえます。
法定後見制度の場合は、成年後見人等を裁判所が選任するので、弁護士や司法書士といった専門家が任命される場合がほとんどです。
しかし、任意後見制度では成人であれば基本的に誰でもなれます。また、任意後見人の報酬の有無や金額に関しても事前に決めておくことができます。
家族信託契約とは、判断力が低下したあとでも、家族が本人の財産を預かって管理・運用・処分できる財産管理方法です。判断力が十分なうちに家族信託契約を締結し、そこに定めた目的であれば財産の管理・運用・処分ができる仕組みです。
例えば、親と子どもで家族信託契約を結ぶと、親が認知症になって判断力が低下したあとも、子どもが親所有の不動産や預貯金などを継続して管理できます。
成年後見制度と比較すると、家族信託では柔軟に財産の管理や活用ができます。家族信託の特徴は次のとおりです。
●家族だけが関与して財産の管理ができる
●信託法に基づく書類作成の義務はあるが、家庭裁判所への報告義務はない
●成年後見制度では原則として認められない不動産や有価証券の売却も可能
●積極的な資産運用や活用ができる
信頼できる家族に財産を託して、柔軟に管理・運用・処分したい場合は家族信託を検討してみるとよいでしょう。