親が認知症になったら財産管理はどうする?
よくある財産管理のトラブル例と4つの対策


親が高齢になるにつれて、「もし親が認知症になったら、お金の管理はどうなるのだろう」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

親が認知症を発症すると、預貯金の引き出しや不動産の売却、相続対策などが思うように進まなくなるケースが少なくありません。

本記事では、親が認知症になった場合に起こりやすい財産管理のトラブルと対策、さらに親が認知症になる前にやっておきたい備えについて、わかりやすく解説します。

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親が認知症になった場合に起こる財産管理トラブル

 
近年、認知症患者は増加傾向にあります。2030年には約1,116万人が認知症患者またはMCI(軽度認知障害)となり、65歳以上の約3人に1人が該当する見込みです。
 

65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用
内閣府「令和6年版高齢社会白書」より当社推計

認知症は、誰にとっても他人事ではない問題といえるでしょう。まずは、認知症になると、どのような財産管理トラブルが起こり得るのかを知っておくことが大切です。

金銭管理が難しくなる

認知症の症状が軽度の段階でも、意思能力や記憶力の低下により、これまで当たり前にできていた金銭管理が難しくなります。例えば、家計の収支が把握できなくなったり、同じものを何度も購入したりして、浪費が増える可能性もあるでしょう。

さらに、キャッシュカードや通帳、財布などの保管場所を忘れてしまい、紛失や盗難のリスクが高まる点にも注意が必要です。

銀行口座が凍結され預貯金を引き出せない

銀行口座の名義人が認知症で意思疎通が難しいことを銀行が知ると、その口座を利用できないように凍結する可能性があります。

口座が凍結されると、たとえ家族であっても、預貯金の引き出しや振替、解約などが一時的にできなくなります。

そのため、親の生活費や医療費、介護費、ローンの返済費用などを家族が立て替えなければならない状況に陥るかもしれません。口座の凍結解除には、原則、成年後見制度を利用する必要がありますが、時間や労力がかかります。

成年後見制度は、のちほど詳しく解説します。

不動産の売却ができない

不動産の売却は法律行為です。意思能力があれば、たとえ寝たきりであっても不動産の売買契約は有効ですが、認知症により意思能力がないと判断された場合、本人が不動産の売買契約をすることはできません。

「介護施設への入居資金を確保するために自宅を売却したい」「バリアフリー住宅に住み替えたい」といった希望があっても、売買契約そのものができず、資金繰りに行き詰まる可能性もあるでしょう。

親が認知症になった場合の不動産の売却は、下記の記事でも詳しく解説しています。

認知症になった親の不動産を売却するには?成年後見制度の活用と注意点

相続対策が難しい

認知症により意思能力がないと判断されると、遺言書の作成や生前贈与といった契約行為もできなくなります。

意思能力の有無は、遺言書作成時の健康状態や医師の診断・診療記録などから、総合的に判断されます。

相続対策が不十分だと、相続人同士のトラブルに発展するリスクも高まるため注意が必要です。

詐欺・悪徳商法の被害に遭いやすい

認知症によって意思能力が低下すると、詐欺や悪徳商法の被害に遭いやすくなります。オレオレ詐欺や還付金詐欺、預貯金詐欺などは、認知症の方や高齢者の方を狙った典型的な手口です。本人が被害に気付かないまま、多額の金銭をだまし取られてしまうケースも少なくありません。

親の認知症が軽度の場合の4つの財産管理・相続対策

 
認知症であっても、症状が軽度で本人の意思能力が保たれている段階であれば、できる対策はあります。早めに行動することで、将来の選択肢を広げられるでしょう。

遺言書を作成する

遺言書は、本人の意思に基づいて財産の分け方を定められる重要な書類です。遺言書を作成しておくことで、相続トラブルの予防につながります。

ただし、遺言書は法律で形式や記載事項が細かく定められており、不備があると無効になるおそれがあります。

また、法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が保障されているため、これを侵害しない内容にする配慮も必要です。

なお、遺言書には「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」などの種類があります。自筆証書遺言は大きな費用負担はなく、自分で好きなときに作成できますが、不備があると無効となるリスクが高いため、公証役場で作成する公正証書遺言のほうが安心でしょう。

生前贈与を行う

生前贈与は、任意のタイミングで財産を贈与できる方法です。本人が死亡したときに発生する相続と異なり、子どものマイホーム購入や孫の進学支援など、必要なときに必要な金額を贈与できます。

相続トラブルが懸念される場合や、特定の相手に確実に財産を残したい場合に有効です。

ただし、生前贈与は契約行為のため、贈与する方と受け取る方、双方の合意がなければなりません。未成年者の場合は受託の意思表示が難しいケースもあるでしょう。

また、年間110万円までの生前贈与なら贈与税は非課税ですが、贈与者の死亡のタイミングによっては相続税の対象となったり、定期贈与とみなされて課税されたりする可能性もあります。税務面も含め、慎重な判断が必要です。

成年後見制度を活用する

成年後見制度は、認知症などで意思能力が不十分な人の財産管理や契約行為などをサポートする制度です。大きく「法定後見制度」と「任意後見制度」に分かれます。

法定後見制度

法定後見制度は、本人の意思能力が不十分になったあとに、家庭裁判所が法定後見人を選任し、財産管理や契約行為などを法的に支援する制度です。法定後見人には、一定の範囲で本人の代理となる権限や、本人が締結した契約を取り消す権限が与えられ、本人に不利益となる契約を防ぐ役割を担います。

ただし、法定後見制度はいったん開始されると、意思能力が回復する、あるいは本人が死亡するなどの特別な事情がない限り、原則として途中で終了することはできません。

なお、法定後見人は本人が候補者を推薦することは可能ですが、最終的な選任は家庭裁判所が行うため、希望どおりにならない場合もあります。実務上は、弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースも少なくありません。

任意後見制度

任意後見制度は、本人が十分な意思能力を有しているうちに、将来後見人となる人や、依頼する事務内容をあらかじめ契約で定めておく制度です。

信頼できる家族などを任意後見人として指名できる点が大きな特徴でしょう。

ただし、任意後見人には、本人が締結した契約を取り消す権限はなく、本人の代理となる権限も任意後見契約の範囲内に限られます。

家族信託を活用する

家族信託とは、本人の財産を家族などの信頼できる第三者に託し、契約で定めた目的にしたがって、管理・運用・処分を行う仕組みです。

本人の意思能力があるうちに契約する必要がありますが、信託内容を柔軟に設計できるため、本人の意思を反映しやすい制度といえるでしょう。

ただし、対象となるのはあくまで財産管理であり、入院や介護施設の入居手続き、手術の同意などの「身上保護」は行えない点に注意が必要です。

親の認知症が重度の場合の財産管理は選択肢が限られる

親が重度の認知症で意思能力がないと判断された場合、財産管理の選択肢は基本的に法定後見制度に限られます。

法定後見人が本人の財産を管理することで、一定の保護は受けられますが、法定後見人への報酬が必要となる点や、財産保護の観点から、家族が自由にお金などを使えなくなる点には注意が必要です。

また、先述のとおり、法定後見制度は原則として途中で終了できない点も留意しましょう。

認知症が進行する前に、できる限り対策を講じておくことが重要です。

親が認知症になる前に行っておきたい5つのこと

親が認知症になると、さまざまな財産管理トラブルが生じる可能性があります。将来のリスクを軽減するには、意思能力があるうちからの備えが欠かせません。

ここでは、親が認知症になる前に行っておきたい5つのポイントを紹介します。

親の財産状況を確認する

まずは、親がどの金融機関にどのような財産を保有しているのかを把握しておきましょう。

銀行口座や証券口座、加入している保険などを確認することで、相続税が発生しそうか、財産分配は問題なさそうか、介護費が十分に賄えるかといった見通しも立てやすくなります。

キャッシュカードの保管場所や暗証番号についても、可能な範囲で把握しておくと安心でしょう。

相続対策を行う

親の認知症が進行すると、遺言書の作成や生前贈与、家族信託といった対策が難しくなります。

親の意思能力が十分なうちに、どのように財産を分配するのか、家族間で話し合っておくことが大切です。本人の意思を尊重しながら進める姿勢が、将来的なトラブル防止につながります。

不要な銀行口座やクレジットカードを解約する

複数の銀行口座やクレジットカードを使い分けている場合、管理が煩雑になりがちです。

銀行口座やクレジットカードはできるだけ集約しておくと、残高の把握が容易になり、残高不足による引き落とし不能などのリスクも減らせるでしょう。本人や家族の自宅から近い銀行や、ATMが多い銀行を残すのも一つの方法です。

銀行口座の代理人登録を行う

原則として、預金の引き出しは本人しかできませんが、金融機関によっては「代理人登録制度」が用意されています。事前に本人が手続きしておけば、万が一本人が認知症になった場合でも、家族が生活費などを代理で引き出すことが可能です。

ただし、代理での引き出しは相続時のトラブルにつながるリスクもあるため、利用は慎重に判断しましょう。家族が預金を使用した際は、使途の記録や領収書の保管を徹底することが大切です。

介護の希望・意思を確認する

親が認知症になり、介護が必要になった場合に備え、どこでどのような介護を受けたいのかを家族間で話し合い、本人の希望を事前に確認しておきましょう。

家族だけでの介護は大きな負担となるため、公的介護保険の介護サービスの利用も選択肢の一つです。あらかじめ介護サービスの種類や利用方法を調べておくと、いざというときに慌てずに済むでしょう。

介護サービスの種類や特徴は、下記記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

介護サービスの種類とは?3つの分類と各サービスの特徴
公的介護保険とは?公的介護保険申請から利用開始まで

認知症の親の財産管理は誰に相談する?

成年後見制度や家族信託などの手続きは、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に相談できます。

ただし、司法書士や行政書士には業務範囲の制限があるため、財産管理や相続対策を包括的に任せたい場合は、弁護士への相談が適しているでしょう。

弁護士への依頼費用はほかの士業より高額になる傾向がありますが、料金体系は事務所ごとに異なります。事前に見積もりを確認しておくと安心です。

自治体や各種団体が無料相談会を実施していることもあるので、不安な方は参加を検討するとよいでしょう。

親が認知症になった場合に備えて、事前に財産管理・相続対策をしよう


親が認知症になると、預貯金の引き出しや不動産の売却、相続対策など、多くの場面で制約が生じます。

認知症の症状が軽度であれば、遺言書や生前贈与、家族信託、任意後見制度といった選択肢もありますが、重度になると法定後見制度に限られるのが現実です。そのため、早いうちから財産状況の把握や家族での話し合いを進めておくことが、将来の安心につながるでしょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2026年1月15日

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