認知症デイサービスとは?
利用条件や費用・特徴


家族が認知症になってしまうと、在宅でずっと介護するのは負担が大きいものです。認知症デイサービスはどのようなプログラムで一日を過ごしているのか、通常のデイサービスとの違いは何か気になる方もいるでしょう。

認知症デイサービスは認知症の方に限定した通所介護サービスです。認知症デイサービスに通うことは、本人にとっても家族にとってもさまざまなメリットがあります。

当記事では、認知症デイサービスの特徴、利用条件や費用について解説します。

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認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)とは?

認知症デイサービスの正式名称は「認知症対応型通所介護」といい、介護保険法に基づく介護サービスの一つです。まずは、このサービスの特徴や種類について解説します。

認知症デイサービスの特徴

認知症デイサービスとは、認知症の方に限定した通所型の介護サービスです。日帰りで施設を利用できます。基本的な流れは、朝に自宅まで迎えに来てもらい、日中を施設で過ごしたあと、夕方に再び自宅まで送ってもらいます。

サービス内容は、食事や入浴といった日々の生活の支援だけではありません。レクリエーションや機能訓練を通じて、利用者が自宅で自立した生活を送れるようサポートすることをおもな目的としています。

認知症の方は、どうしても自宅に引きこもりがちとなるため、家族以外とのふれあいがなく孤独を感じやすくなります。認知症デイサービスは、認知症が原因で社会から孤立してしまうことを防ぎ、また、家族の介護負担を軽減する役割を担っています。

認知症デイサービスの種類

認知症デイサービスには以下の3種類があります。

●単独型:認知症デイサービス単独で運営している

●併設型:病院や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設に併設されている

●共用型:グループホームのリビングや食堂などの一画で実施する

共用型は、その施設の利用者と一緒にサービスに参加します。

認知症デイサービスを運営している事業所は、半数が単独型です。
それぞれのタイプによって料金が異なるため、通所を検討する際は予算も考えておきましょう。

認知症デイサービスで受けられるサービスは?

次に、認知症デイサービスではどのような内容のサービスが実施されているのか、また一日をどのように過ごしているのかを紹介します。

受けられるサービス内容

認知症デイサービスで提供されているおもなサービス内容は以下のとおりです。
  • 自宅から事業所までの送迎
  • 体調の管理
  • 食事、入浴、排泄の介護
  • 生活に関する相談
  • 機能訓練
  • レクリエーション
基本的な内容は通常のデイサービスと同様です。

施設のスタッフはすべてを介助するのではなく、利用者が自分でできることは継続して自分で行えるようにコミュニケーションをとっています。

認知症デイサービスの一日の例

次に、認知症デイサービスの一日の流れを見てみましょう。
  • 9時:送迎、体調チェック
  • 午前:機能訓練、入浴
  • 12時:昼食
  • 午後:機能訓練、レクリエーション
  • 15時:おやつ
  • 16時:送迎により帰宅
もちろん事業所によって一日の過ごし方は異なります。見学の際などに、実際のスケジュールを確認してみましょう。

通常のデイサービスと異なる3つのメリット

認知症の方でも一般的なデイサービスに通うことはできますが、認知症の方にとっては専門的なサービスが受けられる認知症デイサービスはメリットも多いです。
ここでは、一般的なデイサービスとは異なるメリットを解説します。

認知症専門のケアが受けられる

認知症デイサービスでは通常のデイサービスと異なり、認知症ケアに特化していることが特徴です。認知症の方一人ひとりに合った個別ケアに力を入れており、まずは利用者の興味や関心を知ることから始め、本人のペースに合わせた活動を提供しています。そのため、一般の施設ではうまく馴染めなかった利用者でも、無理なく通えることが期待できるでしょう。

このような認知症に特化した支援ができるのは、認知症への理解が深いスタッフが在籍しているからです。特に、事業所の管理者には、認知症対応型サービス事業管理者研修の修了が義務付けられています。経験豊富なスタッフと過ごせるため、利用する方も家族も安心できるでしょう。

少人数で落ち着いて過ごせる

一般的なデイサービスには人数制限がありませんが、認知症デイサービスは利用定員が12名以下と決められています

認知症の方のなかには、大人数や知らない人ばかりの環境だと不安定になってしまう方もいます。そのような方にとって、少人数制のほうが心穏やかに過ごせるでしょう。また、利用者1人に対して手厚いサポートが受けられたり、スタッフと家族との連携がとりやすかったりすることもメリットです。

住んでいる地域とのつながりが深まる

認知症デイサービスは介護保険法で「地域密着型サービス」に分類されており、原則として施設と同じ地域に住んでいる人のみが利用できます。

地域密着型サービスでは、認知症の方が住んでいる場所で生活できるようにその地域に合ったサービスを提供しています。また、利用者も同じ地域に住む人ばかりなので、地域でのつながりが深まるでしょう

認知症デイサービスで得られる3つの効果

続いて、認知症デイサービスに通うことで得られる効果について解説します。

認知症の進行を予防できる

認知症デイサービスでは認知症患者一人ひとりに合ったケアを受けられるため、認知症の進行を予防する効果が期待できます。

例えば、認知症デイサービスで実施されているプログラムには以下のようなものがあります。
  • カードゲームやパズル(脳のトレーニング)
  • ラジオ体操やストレッチ(身体機能の維持・向上)
  • 調理・園芸・工作など(一人ひとりに役割を与える、趣味を楽しむ)
このような活動や家族以外との交流により脳が刺激されることで、認知症の悪化予防につながるでしょう

健康を維持できる

自宅介護では、介護する家族の都合によっては、栄養を考えた食事作りや散歩の同行を毎日行うことは難しいでしょう。認知症デイサービスへ通うと、バランスの良い食事や適度な運動で健康的な生活を送れます。デイサービスでは一日のスケジュールが規則的に組まれているので、定期的に通うことで生活リズムが整いやすいでしょう。

また、定期的な健康チェックや症状管理を受けられるので、小さな体調の変化や認知症の進行に気付きやすいのもメリットです。

家族の負担を軽減できる

認知症の方の在宅介護では、介護している家族が休む時間や自由な時間を取りづらいのが現状です。認知症デイサービスの利用で、介護する家族に自由な時間が生まれ負担を軽減できます。また、介護に対する相談先ともなり得るので、介護者の精神的な負担も和らげられるでしょう。

厚生労働省の調査でも、認知症デイサービスに通うことで家族の不安や心配が軽くなり、介護に前向きになったと報告されています。

認知症デイサービスの利用条件

認知症デイサービスを利用するには、以下の3つの条件を満たすことが必要です。
  • 認知症と診断された
  • 要支援または要介護の認定を受けた
  • 事業所と同じ市区町村に住んでいる
市区町村によっては、例外としてほかの地域の事業所を利用できる場合があります。

要支援の方は、介護予防を目的とした「介護予防認知症対応型通所介護」の利用となります。
サービスの名称は変わりますが、要介護の人と同様に認知症デイサービスに通える点は変わりません。

要支援段階の利用者は多くなく、要支援の方の認知症デイサービスの利用割合は、要支援1で0.8%、要支援2で0.7%です。

認知症デイサービスの利用料金

続いて、認知症デイサービスを利用した場合にかかる料金について解説します。

認知症デイサービスの費用は要介護度、利用時間、事業所の種類により異なります。自己負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得のある人は2割または3割負担です。

ここでは、1割負担の場合の1日当たりの利用料金と追加でかかるサービス費用を紹介します。

ただし、事業所の所在地や職員全体における介護福祉士の割合などによっても料金が変動するため、希望する施設の料金をしっかり確認しましょう。

また、基本料金に送迎代は含まれますが、食事代・おむつ代などの日常生活費は別途必要です。

単独型

 
 

3時間以上

4時間未満

4時間以上

5時間未満

5時間以上

6時間未満

6時間以上

7時間未満

7時間以上
8
時間未満

8時間以上
9
時間未満

要介護1

543

569

858

880

994

1,026

要介護2

597

626

950

974

1,102

1,137

要介護3

653

684

1,040

1,066

1,210

1,248

要介護4

708

741

1,132

1,161

1,319

1,362

要介護5

762

799

1,225

1,256

1,427

1,472

併設型

 
 

3時間以上

4時間未満

4時間以上

5時間未満

5時間以上

6時間未満

6時間以上

7時間未満

7時間以上
8
時間未満

8時間以上
9
時間未満

要介護1

491

515

771

790

894

922

要介護2

541

566

854

876

989

1,020

要介護3

589

618

936

960

1,086

1,120

要介護4

639

669

1,016

1,042

1,183

1,221

要介護5

688

720

1,099

1,127

1,278

1,321

共用型

 
 

3時間以上

4時間未満

4時間以上

5時間未満

5時間以上

6時間未満

6時間以上

7時間未満

7時間以上
8
時間未満

8時間以上
9
時間未満

要介護1

267

279

445

457

523

540

要介護2

277

290

460

472

542

559

要介護3

286

299

477

489

560

578

要介護4

295

309

493

506

578

597

要介護5

305

319

510

522

598

618

追加でかかるサービスの料金

基本料金以外にも、以下のようなサービスが組まれている場合には料金が追加されます。
  • 入浴介助:40~55円
  • 個別機能訓練:27円
  • 栄養改善:200円(月2回を限度)

認知症デイサービスの事業所を選ぶポイント

認知症デイサービスを選ぶ際は必ず見学に行きましょう。可能であれば利用者本人も一緒に見学できると良いでしょう。

見学時は以下のポイントを確認してください。
  • 事業所の雰囲気は明るいか
  • 設備は充実しているか
  • ケア体制は十分か
  • スタッフの対応が威圧的ではないか
  • 効果的な訓練やレクリエーションが実施されているか
また、本人に合ったより良い事業所を見つけるために、担当のケアマネジャーにも相談してみましょう。

認知症デイサービスに関するよくある質問

最後に、認知症デイサービスを利用するにあたって、よくある質問を紹介します。

認知症デイサービスは週何回利用できる?

認知症デイサービスの利用回数に制限はありません。担当のケアマネジャーや施設のスタッフと相談して決めましょう。

ただし、利用回数が多くなるほど費用は必要になり、公的介護保険の支給限度額を超えた分は全額自己負担になるため注意してください

支給限度額内で通える目安は以下のとおりです。


【単独型・利用時間が6時間以上7時間未満の場合】

要介護度

要介護1

要介護2

要介護3

要介護4

要介護5

利用回数

19

20

25

27

29

ただし、上記の目安はほかの介護サービスを受けずに、認知症デイサービスのみを利用する場合です。
これとは別に福祉用具のレンタルや訪問介護を受けている場合は、支給限度額内で利用できる回数が少なくなるため注意しましょう。

認知症デイサービスへ行くことを嫌がるときは?

認知症デイサービスに通うことを嫌がる方も珍しくありません。理由として、慣れない場所で疲れる、認知症による記憶障害で何をしに行くかわからなくて不安といったことが考えられます。

通所を拒むときは、まずは本人が嫌がる気持ちを理解しましょう。嫌がっているのを無理やり行かせるのは、むしろ逆効果になってしまう恐れがあります。
行きたがらない場合は短時間の利用から始めたり、慣れないうちは家族が同行したりして、少しずつ施設になじめる環境を整えましょう。

本人にも家族にもメリットの大きい認知症デイサービスを活用しよう


認知症の方の介護は精神的なストレスをともない、介護疲れを感じることもあるでしょう。また、認知症の方本人にとっても、ずっと自宅で過ごしていると社会から孤立してしまいます。

認知症デイサービスは、本人にとっては健康の維持や地域との交流につながり、また家族にとっても自由な時間ができて介護負担が軽減されるなどのメリットがあります。認知症の方の在宅介護にお悩みの方は、ぜひ活用してみてください。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年1月17日

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