認認介護とは?
起こりうるリスクと今すぐできる対策


離れて暮らす両親について、「最近どちらも物忘れが増えてきた気がする」「このまま2人だけで生活させて大丈夫なのだろうか」と、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。電話で同じ話を繰り返したり、会話がかみ合わなかったりする様子に、違和感を覚えることもあるでしょう。

そのような状態は、認知症の人同士が介護を行う「認認介護」に近づいている可能性があります。本人たちでは問題に気付きにくく、生活の乱れや事故、共倒れなどのリスクが高まりやすいため、注意が必要です。ただ、早い段階で適切な対策や介護サービスを利用すれば、介護負担やリスクを大きく軽減できる場合もあります。

本記事では、認認介護の基本的な意味や老老介護との関係、起こりやすい問題・リスクについてわかりやすく解説します。併せて、早期に気付くためのチェックポイントや、在宅で活用できる介護サービス、施設介護という選択肢についても具体的に紹介します。親の介護に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

「認認介護」とはどのような介護?

 
認認介護とは介護される側だけでなく、介護する側も認知症である状態のことです。高齢者の夫婦だけでなく、親と子の両方が認知症であり、互いに支え合っているケースも認認介護に該当します。

認知症になると、記憶力だけでなく理解力も低下するため、その場に応じた適切な判断や行動(服薬管理や食事の準備、金銭管理など日常に必要な対応)が難しくなります。

また、当事者同士では抱えている問題の深刻さに気付きにくく、外部からの支援につながりにくい点も大きな特徴です。気付かないうちに状況が悪化し、事故やトラブルにつながるリスクも高くなります。

認認介護は老老介護の延長として発生する傾向があります。老老介護とは65歳以上の高齢者同士が介護を行う状態を指します。夫婦や親子、兄弟など関係性はさまざまです。

高齢化が進み、現代において総人口に占める65歳以上の割合は約3~4人に1人とされています。それにともない老老介護のケースは増加傾向にあります。老老介護で一方に認知症の症状が現れ、そのまま認認介護へと移行するケースも少なくありません。

認認介護になってしまう4つの原因

なぜ認認介護の状態になってしまうのでしょうか。認認介護はさまざまな要因が重なることで発生します。ここでは、認認介護が引き起こされる背景や増加しているおもな原因について解説します。

平均寿命と健康寿命の差(長期化する介護)

「健康寿命」とは、介護を受けずに日常生活を送れる期間のことです。つまり、健康寿命と平均寿命の差が介護の必要な期間といえます。

日本の平均寿命は延伸傾向にあります。令和6年(2024年)での平均寿命は、男性は81.09年、女性は87.13年でした。一方、健康寿命は男性が72.57年、女性が75.45年(令和4年数値)です。平均すると男女ともに10年前後の差があり(男性:8.52年、女性:11.68年)、多くの人が高齢期に介護を必要とする状態となる可能性があります。
平均寿命が延びると、親の介護が始まった頃には子ども世代も高齢期に差しかかることになり、老老介護や認認介護につながる可能性も高まります。また、平均寿命と健康寿命の差が広がれば介護期間も長期化し、認認介護に陥りやすくなるでしょう。

核家族化・家族のサポート不足

子ども世帯が遠方に住んでいる場合や、同居していないケースでは、日常的なサポートを受けにくくなります。そのため、高齢の夫婦や親子だけで介護を担う状況になりやすく、負担が偏りがちです。

「子どもに迷惑をかけたくない」という思いから、限界に近い状態でも当事者同士で抱え込んでしまうケースも少なくありません。

周囲の支援が十分に入らない状態が続くことで、問題が深刻化しやすくなり、認認介護へ発展するリスクが高まります。

他人を頼れない心理・介護サービスへの抵抗

「介護は家族がするもの」という固定観念や、「他人に頼るのは申し訳ない」といった考えから、介護サービスの利用をためらう人も少なくありません。

また、他人を家に入れる抵抗感から、第三者のサポートを受け入れられないケースもあります。

外部の支援が入らない状態が続くと、生活の異変や問題に周囲が気付きにくくなるでしょう。結果として、必要なサポートを受けられないまま状況が悪化し、認認介護に発展しやすくなります。

金銭的な負担によるサービス未利用

「金銭的な余裕が乏しい」「生活保護を受給している」といったケースでは、必要な介護サービスを十分に利用できず、認認介護に発展しやすくなります。

自宅介護の設備をそろえたり、訪問型の介護サービスを利用したりするにも一定の費用がかかります。経済的な理由から利用を控え、家庭内だけで介護を続けようとするケースも多くみられます。

高齢者同士で無理に支え合う状況が続くことで、介護負担が蓄積し、認認介護に陥るリスクが高まります。

認認介護に陥っている可能性が高い3つの状態

 
認知症は本人や家族が気付かないうちに進行し、日常生活のなかに認認介護につながるサインが現れていることがあります。ここでは認認介護に陥っている可能性が高い、代表的な状態について解説します。

日常生活に支障が出ている状態

認認介護の初期段階で現れやすいサインは、日常生活の変化です。以前は問題なくできていたことが少しずつ難しくなり、生活全体に影響が出始めます。

以下のような変化が見られる場合には、注意が必要です。
  • 夫婦ともに物忘れが増えてきた
  • 食事や服薬の管理が以前より難しくなっている
  • 家の中の片づけが行き届かなくなってきた
  • 近所付き合いや外出の機会が減っている
上記のような状態は、単なる加齢による変化ではなく、認知機能の低下や生活管理能力の低下が背景にある可能性があります。日常生活に支障が出始めている場合、早めに状況を確認することが大切です。

認知症の初期症状が見られる状態

認認介護では、介護する側・される側の双方に認知症の初期症状が見られるケースがあります。認知症の進行は緩やかなため、本人や家族が変化に気付きにくくなっています。

特に、以下のような変化には注意が必要です。
  • 同じことを何度も聞くことが増えた
  • 物の置き場所を忘れることが多くなった
  • 日付や曜日の感覚があいまいになることがある
  • 以前より判断に迷う場面が増えている
これらの状態が複数重なっている場合、自覚がなくても、すでに生活に支障が出始めている可能性があります。

認知症は早期に対応することで、症状の進行を緩やかにできる場合もあります。気になる変化がある場合には、家族間で状況を共有し、専門機関へ早めに相談することが大切です。

支援がなく孤立している状態

認認介護が生じやすくなるのは、外部からの支援が少ない環境です。特に、高齢者同士で生活している場合、問題が表面化しにくく、気付いたときには深刻化しているケースもあります。

以下のような状況に当てはまる場合は、注意が必要です。
  • 軽度の認知症患者同士で生活している
  • 介護サービスを利用していない
  • 家族が生活状況を十分に把握できていない
いずれの状況も、本人たちに自覚のないまま症状が進行している場合があります。外部とのかかわりが少ない状態が続くと、生活の異変や健康状態の悪化に気付きにくくなり、認認介護へ発展するリスクが高まります。

認認介護で起こる問題やリスク

認認介護では、日常生活のさまざまな場面で支障が生じやすく、気付かないうちに状況が悪化していくリスクがあります。認認介護で起こる問題やリスクは以下のようなものです。

生活が回らなくなる

認認介護では日常生活を送ることが少しずつ困難になっていきます。これは認知症による記憶力や判断力、認識力の低下によって起こるものです。

例えば、食事を作れない、同じものばかり食べてしまう、そもそも食事をとらないなど、食事の管理ができなくなる場合があります。また、体調管理ができずに脱水症状になってしまったり、服薬管理ができず薬の飲み忘れや飲みすぎが起きたりすることも少なくありません。その結果、健康状態の悪化につながりやすくなります。

さらに、掃除やゴミ出しが滞ることで衛生状態も悪化します。こうした状況は生活の基盤そのものが崩れ始めている状態といえるでしょう。

事故やトラブルの増加

認知症の影響で危険を正しく判断できなくなると、事故のリスクが高まります。火の不始末やガスの消し忘れなど、日常的なミスが火事につながるケースもあるでしょう。

高齢者同士の認認介護になると、体の衰えや歩行の不安定さにより転倒・骨折が起こるリスクが高まります。また、徘徊による行方不明なども発生しやすくなります。誤嚥や脱水といった健康面でのトラブルも見逃せません。

判断力の低下と対応の遅れが重なることで、小さなミスが重大な事故やトラブルにつながります。

金銭トラブルや詐欺被害

お金の管理が難しくなることで、支払い忘れや必要以上に高額なものを購入してしまうといった金銭トラブルが起こりやすくなります。キャッシュカードの暗証番号を忘れてしまい、現金を引き出せないといった状況に陥ることもあるでしょう。

近年は高齢者を狙った詐欺被害があとを絶ちません。電話による詐欺や架空請求、不要な契約を結ばされるなど、その手口は多様化しています。

認認介護の場合、被害に遭っても本人たちが異変に気付けないまま適切な対処ができず、被害の長期化や拡大のおそれがあります。

介護が機能していない

認認介護の場合、介護しているつもりでも実際には必要なケアが十分に行われていない場合があります。例えば、食事を用意したつもりで食べられていなかったり、薬を飲ませたつもりでも服薬できていなかったりするケースです。

認知症によって判断力や理解力が低下しているため、体調の変化や異変に気付きにくくなります。発熱や脱水、転倒などが起きても「病院を受診すべきか」「救急車を呼ぶべきか」などの判断ができず、適切な対応が遅れてしまうこともあるでしょう。

さらに、介護に関する知識や情報が不足していると、必要な支援ができないこともあります。その結果、健康状態の悪化や症状の重症化を招くおそれがあります。

認認介護では介護する側とされる側、双方が認知症のため、介護そのものが成立しにくい状態であるという認識が必要です。

共倒れをしてしまう

体力や気力が低下しやすい高齢者が介護を行う場合、身体的にも精神的にも大きな負担になります。介護者が転倒して骨折し、突然介護ができなくなるといったことも起こりうるのです。

認認介護が長期間続くと、身体面だけでなく精神面にも限界が生じ、これまでどおりの生活を維持できなくなる危険があります。その結果、介護する側とされる側が共倒れとなってしまうこともあるでしょう。

認認介護では当事者同士で状況を客観的に把握することが難しく、必要な支援につながりにくい傾向があります。外部からの支援が入らない限り、状況を改善することは簡単ではありません。

さらに、要介護者の介護度が高くなるにつれて、必要な介護時間も増えていきます。介護中心の生活になることで、仕事や地域活動、人付き合いの継続が困難となり、社会とのつながりが薄れてしまうこともあります。

外部とのかかわりが減ることで、家族や周囲も状況を把握しにくくなり、問題が表面化したときにはすでに深刻化していることもあるかもしれません。孤立や発見の遅れは、認認介護における共倒れのリスクをさらに高める要因といえるでしょう。

認認介護を防ぐ・回避する方法

認認介護の状況を未然に防ぐためには、家族間で早めに情報共有し、利用できる支援や介護サービスを事前に把握しておくことが大切です。いざというとき慌てず対応できるように、できることから少しずつ準備を進め、無理なく介護を続けられる環境を整えておきましょう。

早めに家族・周囲で情報共有する

ささいな異変を感じた段階で、家族や周囲に情報を共有しておくことが大切です。周囲の人が状況を把握することで、体調の変化や生活上の問題にも気付きやすくなり、いざというときも慌てず対応しやすくなります。

離れて暮らしている場合でも、定期的に連絡や訪問をすることで、変化に早く気付ける可能性があります。また、家族だけで抱え込まず、日頃から周囲へ相談しやすい環境を作っておくことが重要です。

専門家や公的機関に相談する

自分の置かれている状況に不安を感じた場合には、早めに専門家に相談するとよいでしょう。

地域包括支援センターや市区町村の窓口、ケアマネジャー事業所、医療機関などでは高齢者の生活や介護に関する相談を受け付けています。状況に応じて適切な支援や介護サービスを提案してもらえるため、問題を一人で抱え込まずに済むでしょう。

在宅介護サービスの利用

訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスを活用することも、認認介護の予防につながります。

これらのサービスを利用することで、食事や入浴、服薬管理など日常生活のサポートを受けられます。外部の支援が入ることで、介護負担が軽減されるだけでなく、異変の早期発見にもつながります。

必要に応じて介護施設の利用を検討する

在宅での生活が難しい場合には、介護施設の利用を検討することも選択肢の一つです。

専門スタッフによる介護や見守りを受けられるため、安全性も高まり家族の負担軽減にもつながります。無理に家庭内で支え続けるのではなく、状況に応じて適切な支援を選ぶことが大切です。

見守り体制を整える

認認介護を防ぐためには、日常的な見守り体制を整えておくことも重要です。地域とのつながりを持っておくことで、周囲が異変に気付きやすくなるほか、孤立の防止も期待できます。

地域によっては、シルバー人材センターや地域のボランティア、民生委員などが見守り活動をしている場合もあります。身寄りのない高齢者をサポートする、民間のサポートを頼るのもよいでしょう。

在宅介護で利用できる「介護サービス」

在宅で介護を続ける場合、要介護認定を受けていれば、公的介護保険制度による介護サービスを利用できます。

在宅介護サービスとは、介護が必要な高齢者を対象に、自立した生活の継続を支援するサービスです。施設に入所することなく、これまでの生活環境を大きく変えずに専門的なケアを受けられます。

認認介護では介護する側も認知症のため、服薬管理や体調の変化への気付き、日常生活の見守りなどが十分に行えない場合があります。そうした不足を補う手段として、在宅介護サービスの利用は有効です。専門の方がかかわることで、当事者同士では難しい対応もサポート可能となります。

在宅介護には複数のサービスを組み合わせて利用できるものもあります。例えば、看護小規模多機能型居宅介護では、訪問介護や訪問看護、通い、泊まりなどの支援を柔軟に組み合わせることが可能です。夜間の見守りが必要な場合や、介護負担が大きくなっている場合にも対応しやすく、負担軽減につながります。

ただし、夜間の常時見守りが必要な場合や重度の認知症の場合、在宅での対応が難しいケースもあるため、注意が必要です。

在宅で利用できるおもな介護サービスは、次のとおりです。
  • 訪問系サービス(訪問介護・訪問看護など)
    ホームヘルパーや看護師が自宅を訪問し、食事や排せつ、入浴介助、服薬確認、健康状態のチェックなどを行います。認認介護では日常的な見守りを補う役割としても重要です。

  • 通所系サービス(通所介護(デイサービス)・通所リハビリテーション(デイケア))
    日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどの支援を受けられます。本人の生活リズムを整えるだけでなく、介護者が休息を取る時間の確保にも役立ちます。

  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
    一定期間、施設に宿泊しながら介護や生活支援を受けられるサービスです。介護者の体調不良時や外出時、一時的に介護負担を軽減したいときにも活用できます。

在宅介護サービスを利用する際は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するとよいでしょう。本人の状態に応じた適切なプランを提案してもらえます。

公的な介護サービスを利用する際には、所得に応じてサービス費用の1~3割の自己負担があります。ただし、月々の自己負担額の上限は所得に応じて設定され、一定以上の負担が続かないよう配慮されているため、費用に不安がある場合もまずはケアマネジャーに相談することをおすすめします。

認認介護では早い段階から在宅介護サービスを取り入れることで、生活の安定だけでなく、事故や共倒れの予防にもつながるでしょう。

施設介護というもう一つの選択肢

 
認認介護では、在宅介護サービスを利用しながら生活を続けることもありますが、認知症の進行や介護負担の増加により、在宅での生活を続けることが難しくなる場合もあります。そのような場合、介護施設の利用も有効な選択肢です。

介護施設は在宅介護サービスに比べると費用が高くなる傾向がありますが、専門スタッフによるケアを受けられるため、介護する側・される側双方の負担を大きく軽減できます。

「できるだけ一緒に暮らしたい」と考える高齢夫婦は、夫婦での入居が可能な施設を検討することも選択肢の一つとなります。

介護施設にはさまざまな種類があり、対象者や目的が異なります。どの施設が適しているかは、本人の状態や家族の状況によっても変わるため、専門家に相談しながら検討することが大切です。

おもな介護施設には以下のようなものがあります。
  • 特別養護老人ホーム
    公的介護保険の要介護認定で「要介護3」以上の認定を受けた、原則65歳以上の高齢者が入居できる介護保険施設。長期的に生活しながら介護を受けられる。

  • 介護老人保健施設
    病状が安定している要介護1~5の方を対象とした施設。自宅復帰を目的としており、リハビリを中心とした支援を受けられる。

  • 介護付き有料老人ホーム
    民間企業が運営する施設。食事や介護、生活支援などを包括的に受けられ、設備やサービス内容が施設ごとに異なる。

  • グループホーム
    認知症の高齢者を対象とした少人数制の施設。家庭的な環境のなかで共同生活を送りながら支援を受けられる。

  • サービス付き高齢者向け住宅
    安否確認や生活相談のサービスが付いたバリアフリーの賃貸住宅。比較的自立度の高い高齢者向けで、必要に応じて外部の介護サービスも利用できる。

認認介護が起きる可能性を理解して、リスクに備えよう


認認介護は、生活の乱れや事故、金銭トラブル、共倒れなどのリスクが高まりやすく、本人たちだけでは問題に気付きにくい点が特徴です。

認認介護は高齢化や家族の支援不足、介護サービスへの抵抗など、さまざまな要因が重なることで起こります。気になる変化が現れたら、早めに家族で状況を共有し、地域包括支援センターやケアマネジャー事業所などの専門機関に相談することが大切です。

在宅介護サービスや介護施設の適切な活用は、介護負担を軽減し、事故や共倒れの予防にもつながります。認認介護の特徴や早期の対策を知り、将来に備えておきましょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

小玉 有紀[介護福祉士]

1986年生まれ。福祉系専門学校にて介護福祉士・介護事務士を取得。介護業務を経験。その後、生活相談員・ケアマネジャーとしても勤務。全国展開する有料老人ホームにてアセスメントツールの開発事業に携わる。また系列施設で社員研修の講師となる。現在も、ケアマネジャーとして勤務するかたわら、ライターとして活動中。

資格:介護福祉士・介護事務士・介護支援専門員

公開日:2026年6月19日

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