認知症の方の在宅介護をうまく続けるポイントは?


認知症の方を在宅で介護する方のなかには、「基本的なケアとしてどんなことをすれば良い?」「認知症の方の在宅介護をうまく続けるポイントは?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。

認知症の方の在宅介護では、介護者に身体的・精神的・経済的な負担がかかることが予想されます。

在宅介護をうまく続けるには、介護の悩みや不安を相談すること、介護サービスの利用と見直し、介護者自身のケアに努めることも大切です。

この記事では、認知症の方を在宅介護する際の5つの基本ケアや、在宅介護のストレスで考えられる介護者の問題などを解説します。認知症の方の在宅介護をうまく続けるためのポイントも紹介するので参考にしてください。

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認知症の方の在宅介護における基本的ケアとは?

まずは、認知症の方を在宅介護する際の基本的なケアを5つ紹介します。

健康管理

認知症を患うと、自分で健康管理することや、身体に不調を感じても周りの人に伝えることが困難になります。そのため、認知症の方の在宅介護では、介護者が健康管理することで、体調不良や疾患の早期発見、重症化予防などの効果が期待できます。

認知症の方の健康を管理する際のポイントを見てみましょう。
  • 気候や湿度に合った服装や空調を心がける
  • 栄養バランスの良い食事を、食べやすい量に分けて提供する
  • 規則正しい生活を心がける
  • 無理のない範囲で、適度な運動を促す
  • 病院から処方された薬は、指示どおりに服用する

信頼関係を築く

在宅介護を円滑に行なうには、認知症の方に「この人なら頼っても大丈夫」と思ってもらえるような信頼関係を築くことが大切です。信頼関係を築く際のポイントは、以下のとおりです。
  • 目を見て、ゆっくりと、優しく話す
  • 相手のペースに合わせる
  • 悩みや迷いに寄り添う
  • 考えていることを理解しようと心がける
認知症の方と介護者の信頼関係が構築されると、認知症の方の精神状態が安定しやすくなり、より良いケアが可能になります。

社会とのつながりを保つ

認知症の方のなかには、「他人に認知症を知られたくない」「認知症を理解してもらえるか不安」と感じて、外出がおっくうになり、社会とのつながりを断ってしまう方もいます。

認知症の方が社会や家族以外の人と接することは、脳の活性化、ストレスの軽減、活動量増加による生活習慣病のリスク軽減などにつながります。

そのため、認知症の方の在宅介護では、散歩に出かける、デイサービスを利用する、地域活動に参加するなど、社会とのつながりを持たせることが大切です。

自尊心を傷つけない

在宅介護をする際は、認知症の方の尊厳を尊重しながら接しましょう。

介護者は、トイレの失敗や同じ質問の繰り返し、暴力や暴言といった症状に直面すると、「どのように対応して良いのかわからない」「気持ちの整理ができない」などの理由から、叱るまたは怒るなどの行為を取ってしまう場合があります。

認知症の方に接する際は、命令口調や否定的な言葉で驚かせないよう、「できること」を見付けて褒めるなど、認知症の方の自尊心を傷つけないよう心がけることが大切です。

なるべく環境を変化させない

認知症の方は、環境の変化に敏感な傾向があります。環境の変化が不安やストレスにつながり、暴力や暴言、睡眠障害、妄想や徘徊などのBPSD(周辺症状)を悪化させる場合があります。

なるべく環境を変化させないためには、部屋の模様替えはできるだけ行なわない、入院や引っ越しなどの際は、本人の愛用している小物、または家族写真など、安心できるものに囲まれるようにする、などの配慮が必要です。

認知症の方の在宅介護で介護者がストレスを感じる原因は?

認知症の方の在宅介護では、介護者にさまざまなストレスが生じます。ここでは、在宅介護における介護者のストレスの原因について、おもなものをいくつか挙げてみましょう。

精神的負担

認知症の方の要介護度が上がるにつれ、介護者の負担や介護にかかる時間が増加します。
「いつまで介護生活が続くのか」といった、将来の見通しが立たない不安が介護者の心理的負担となることもあるでしょう。

認知症の方の在宅介護では、介護者が自分の時間を確保するのが難しいケースもあります。そのような場合、ストレスを解消できない、適切な介護の相談先を調べることが難しい、社会的に孤立する、介護者が1人の場合は介護の負担が大きくなるなどの問題が生じます。

内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」によると、令和元年(2019年)における健康寿命と平均寿命の差は、男性8.73年、女性12.07年です。
介護者が最後まで在宅介護を続ける場合は、介護期間が長くなるほど、介護者の精神的負担の増加が予想されるでしょう。

身体的負担

在宅介護では、起床・食事・入浴・排せつ・体位変換など、介護者の身体的負担がかかる場面が多々あります。要介護度が高くなるにつれ、その負担は増加していきます。

特に、認知症の方に夜間の徘徊がある場合、介護者は介護のために夜間に何度も起きなければならず、十分な睡眠を確保できないこともあるでしょう。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設などの介護サービスを利用しなければ介護者の身体的疲労はなかなか解消されません。

経済的負担

公的介護保険の適用範囲内のサービスを利用する場合でも、認知症の方の所得によって、利用料の1~3割を自己負担する必要があります。

加えて、食費・光熱費・ベッドパッドやおむつ代・医療費などのほか、場合によっては自宅のリフォーム費用などの考慮も必要です。介護費用の捻出が難しいときは、介護者や家族などが介護費用を負担することもあります。

また、介護者が介護と仕事の両立が難しくなり、辞職することを「介護離職」といいます。介護離職をする場合は、介護者の経済的な問題も考えなければなりません。

在宅介護のストレスで考えられる介護者の問題は?

ここからは、認知症の方の在宅介護で考えられる介護者の問題について見ていきましょう。

介護離職

介護離職をした場合、介護者の収入が途絶えるため、経済的に苦しくなることがあります。総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」によると、介護・看護のために、過去1年間に前職を離職した方の数は2022年中で10万6,000人に上ります。
介護離職では、介護者の経済的困窮のほか、キャリアが途絶える、再就職が困難になる、社会とのつながりが減少し孤立するなどの懸念も考えなければなりません。

介護うつ

介護者に身体的・精神的な疲労が蓄積されると、「介護うつ」を発症することがあります。介護うつを発症し、症状が進行した場合、在宅介護の継続が難しくなることも予想されます。

介護うつのおもな症状は、次のとおりです。
  • 食欲不振
  • 疲労感
  • 神経質
  • 気分の落ち込み
  • 無関心
  • 自殺願望
  • 睡眠障害 など
完璧主義や責任感の強い人は、介護うつになりやすい傾向があるため、注意が必要です。

虐待・殺人

介護疲れや経済的困窮が原因となり、介護者による介護虐待、介護虐待がエスカレートした結果の介護殺人が発生することがあります。また、介護者と要介護者がともに死亡する無理心中も深刻な問題です。

認知症の方の在宅介護をうまく続けるための3つのポイント

最後に、認知症の方の在宅介護をうまく続けるための3つのポイントについて解説します。

介護の悩みを相談する

在宅介護の悩みを他人に相談することで、介護者の精神的負担の軽減が期待できます。また、ケアマネジャーなどの専門家への相談は、介護サービスの利用や介護に関する問題の解決につながります。

身近に悩みを相談する人がいないときは、地域包括支援センターへの相談がおすすめです。地域包括支援センターとは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるように、市町村が主体となって設置する総合的な施設です。

地域包括支援センターには、ケアマネジャーのほか、保健師や社会福祉士などが在籍し、介護が必要な方やその家族をサポートするために日々業務を行なっています。

在宅介護は、決して1人で抱え込まず、頑張りすぎず、他人と比較しないことが大切です。

介護サービスの利用や見直しで負担を軽減する

介護のすべてを在宅で行なっている場合は、デイサービス・ショートステイ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入所などの、介護サービスの利用を検討しましょう。

介護サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。地域包括支援センター・自治体の相談窓口・かかりつけの医療機関などに相談すると、公的介護保険制度に関する知識や適切な支援を受けることができます。

すでに介護サービスを利用し、それでも介護者の負担が大きいと感じるときは、介護サービスの内容が適切ではないのかもしれません。そのような場合は、介護サービスの見直しを検討してみるとよいでしょう。

介護者自身のケアに努める

介護サービスの利用や見直しにより、介護者に時間の余裕ができた場合、睡眠を十分に取る、趣味や外出でストレスを解消するなど、自身のケアを心がけることも大切です。

介護者の身体や精神の状態が良くなると、余裕をもって在宅介護を続けていくことが期待できます。

認知症の方の在宅介護がつらいときは専門家に相談を


認知症の方の在宅介護においては、健康管理・信頼関係の構築・社会とのつながりの保持などの基本的ケアが重要であることに留意する必要があります。

同時に、認知症の方の要介護度や、在宅介護の長期化などにより、介護者の負担が増加する可能性があるため、介護離職・介護うつ・介護虐待などの問題を引き起こさないよう、注意が必要です。

認知症の方の在宅介護をうまく続けるには、相談先の確保や、介護サービスの利用と見直し、介護者自身が心身ともに健康な状態を保つことも大切です。

在宅介護がつらいと感じるときは、1人で抱え込まず、介護の専門家や家族、友人などに相談しましょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2023年12月18日

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