認知症のリスクを調べる血液検査とは?
検査の種類と特徴、必要な理由


認知症は根本的な治療法が見つかっていないため、「自分も発症するのではないか」「認知症のリスクを回避する方法はあるのか」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。

アルツハイマー型認知症について、血液検査で将来の発症リスクを判別できる場合があります。

本記事では、アルツハイマー型認知症の予防に血液検査が有効な理由、血液検査の種類、概要について解説します。血液検査を受けたほうがいいケースについても紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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認知症の血液検査が必要な2つの理由

まずは、認知症の現状を踏まえて、血液検査が必要な理由について解説します。

認知症の早期対処につながる

内閣府作成の年次報告書「平成29年版高齢社会白書」によると、2012年時点の認知症高齢者数は約462万人であり、約7人に1人が認知症を患っている状況です。
2030年には約830万人に増加し、MCI患者も含めると65 歳以上の高齢者のうち約3人に1人が認知症になると予測されています。

出典:65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用  内閣府「平成29年版高齢社会白書」、首相官邸認知症施策推進関係閣僚会議(第2回)資料  厚生労働省老健局 社会保障審議会介護保険部会(第92回)「介護保険制度をめぐる最近の動向について」より当社推計

認知症は症状が進行すると、1人で日常生活を送ることが困難になる深刻な疾患です。自分や家族、周囲の人のためにも、発症する前の対応策が重要です。血液検査では認知症を発症する前にリスクを発見できるため、認知症に早期対処するための有効な手段の一つとして注目されています。

軽度認知障害(MCI)のリスクを発見できる

血液検査により、軽度認知障害(MCI)のリスクを発見することが可能です。軽度認知障害(MCI)とは、健常者と認知症の中間の状態を指します。


MCIの症状は、以前より物忘れが多くなる、周囲の人から物忘れを指摘される程度であり、日常生活に大きく支障はありません。しかし、そのまま治療せずに過ごした場合、1年で約5~15%、5年後には約40%の方が認知症に移行するといわれています。

認知症のなかで最も多い、アルツハイマー型認知症を発症する原因の一つは、アミロイドβというタンパク質の蓄積です。アミロイドβが、老化や生活習慣の乱れで脳内に蓄積され、神経細胞を破壊することで認知機能の低下を招きます。

アミロイドβは発症する約10~25年前からたまり始め、認知機能に少しずつ影響をおよぼします。
その過程であらわれるのがMCIの症状です。

MCIになっても、この段階で適切な対策をとることで約16~41%の人は健常な状態に回復することもわかっています。したがって、認知症の予防や発症を遅らせるためには、MCIの段階で認知障害に気付き適切に対処することが重要です。

認知症のリスクを判別する2つの血液検査

認知症のリスクを判別する血液検査は、「MCIスクリーニング検査」と「APOE遺伝子検査」の2種類があります。この章では検査の概要、費用を解説します。

MCIスクリーニング検査

アルツハイマー型認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)のリスクを調べる血液検査を、MCIスクリーニング検査といいます。将来的にMCIになるリスクがどの程度あるか、すでにMCIの可能性があるか、判別可能です。

人間の体には、アミロイドβを排除する機能が備わっていますが、生活習慣病などによって血管の老化が進むと、血管の弾力性が失われ、排除機能が低下します。アミロイドβが脳内に蓄積されることで認知機能の低下を招き、アルツハイマー型認知症を引き起こすと考えられています。

MCIスクリーニング検査は、アミロイドβの排除や毒性の防御などに関与するタンパク質の血中量を測定し、発症リスクを判別する仕組みです。検査は少量の採血のみで受けられます。

MCIスクリーニング検査は健康保険適用外のため、全額自己負担となります。医療機関によって異なりますが、高額になる場合が多いでしょう。検査を受ける前に、近隣の病院やクリニックに問い合わせると安心です。

APOE遺伝子検査

APOE(アポイー)遺伝子検査は、認知機能低下に深くかかわるAPOE遺伝子の型を測定し、アルツハイマー型認知症の発症リスクを判定する検査です。

APOE遺伝子は、アミロイドβの蓄積や凝集に関与するタンパク質を司る遺伝子のことで、おもにε(イプシロン)2、ε3、ε4の3種類があります。これらは2つで一組の遺伝子型を構成し、そのなかでもε4型を1つ、または2つ保有する遺伝子型の場合、認知症の発症リスクはおよそ約3~12倍に高まるといわれています。

しかし、ε4型のAPOE遺伝子を持つ方が必ずアルツハイマー型認知症を発症するわけではありません。発症する要因には、加齢や生活習慣なども大きく影響するためです。

APOE遺伝子検査で、自身の発症リスクを知ったうえで、適切な予防や改善を図ることでアルツハイマー型認知症の早期対処につながる可能性があります。

検査方法は、基本的にMCIスクリーニング検査と同じく採血のみです。APOE遺伝子検査も健康保険適用外となるため、検査費用は高額になる場合が多いです。

このような方は認知症の血液検査を

以下のような方は、MCIや認知症の発症リスクが高い可能性があるため、血液検査を検討してみるとよいかもしれません。
  • 45歳以上の方
  • 物忘れが増えてきた方
  • 高血圧・高血糖・脂質異常などの指摘を受けたことがある方
  • 家族に認知症の方がいる方

将来の認知症リスクに備えて血液検査の検討を


認知症は根本的な治療法が見つかっていないため、早期に対処することが重要です。

「物忘れが多くなってきた」と感じる場合は、軽度認知障害(MCI)の可能性が考えられます。この段階で適切に対処すれば、アルツハイマー型認知症の早期対処が可能となるかもしれません。

少しでも不安がある場合は、血液検査を選択肢として覚えておくとよいでしょう。医師に相談してみることをおすすめします。

 

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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年6月3日

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