認知症について知る

認知症の方向けレクリエーションの内容は?
楽しみや生きがいとなる活動を企画しよう


「認知症の方が楽しめるようなレクリエーションを企画したいが、具体的にどういうものがいいかわからない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

認知症の方へのレクリエーションは回想法や軽い運動、手遊び、料理などがおすすめです。ただし、参加者自身が興味を持てるものを企画する、毎回同じメンバーで行なうなどの工夫も忘れてはいけません。

この記事では、認知症の方向けのレクリエーションや実施する際の注意点、楽しんでもらうコツなどを解説します。

レクリエーションが認知症の方にもたらす効果

レクリエーションが認知症の方にもたらす効果は4つです。

● 心身機能を維持・向上
● 脳の活性化
● コミュニケーション機会の創出
● 生活の質の向上

人は年齢を重ねていくと、筋肉や内臓などのさまざまな機能が低下していきます。しかしレクリエーションで軽い運動や簡単なゲームをすることにより、心身機能の維持・向上を期待できます。

特に、手指を使ったり物事を考えたりするレクリエーションは脳の活性化を促すため、認知症の症状緩和・予防に効果があるとされています。

また、レクリエーションは他者と楽しい時間を共有できる良い機会です。その人に合ったレクリエーションを行なえば、生きがいの獲得や自尊心の向上にもつながります。

認知症の方におすすめのレクリエーション

認知症の方におすすめのレクリエーションは、大きく分けて5つあります。

回想法

回想法とは、写真や音楽などを手がかりに、昔のことを話してもらうレクリエーションのことです。昔のことを思い出して他人に話すという行為は脳に大きな刺激を与えるため、脳の活性化につながります。また、他者とのつながりを取り戻すきっかけにもなるはずです。

実施するときは「この写真はどういうときに撮影したものですか?」と質問したり、幼い頃から時系列順に語ってもらったりするとよいでしょう。

回想法には、1対1で会話する「個人回想法」と、利用者と介護スタッフで合計10名ほどのグループになって行なう「グループ回想法」があります。前者は本人の話をじっくり聞け、後者は利用者間で思いを共有できるのがメリットです。

軽い体操・運動

軽い体操・運動は、心身機能の向上や脳の活性化に効果的といわれています。認知症の方は体を動かす機会が少なくなりやすいため、レクリエーションとして取り入れれば便秘や筋肉のコリ、血行不良のような身体的不調の解消にも役立つでしょう。

代表的なレクリエーションとしては、ウォーキング(散歩)や簡単なダンス、風船バレーなどが挙げられます。

ウォーキングは、認知症の方と会話しながら行なうのがおすすめです。歩くことと話すことはそれぞれ脳の別の場所へ働きかける行為のため、より大きな刺激を与えられます。

手指を使う作業や遊び

折り紙や編み物のような手指を使う作業も、認知症の方に向いているレクリエーションです。脳を刺激できるのはもちろん、達成感や生きがいにもつながるため、実際に多くの介護施設で取り入れられています。

作品を壁に飾ったり家族にプレゼントしたりすることが、楽しみの一つにもなるでしょう。

また、手指を使う遊びには脳を活性化させる効果が期待できます。相手が出した手の形に合わせて出す手を変えてもらう「後出しジャンケン」や、数字を数えながら指を曲げていく「指折り体操」などがその例です。

音楽や創作活動

音楽はストレス解消になるだけでなく、認知症にも好影響をもたらすといわれています。特に効果的とされているのは、合唱や楽器演奏のような、利用者自身が何かを行なうレクリエーションです。

もちろん、好きな曲を聴くだけでも構いません。音楽は言語障害を患っている方でも楽しめます。

このほかには、絵や俳句のような創作活動も、認知症の方におすすめです。家族やほかの利用者と一緒に行なえば、コミュニケーションの機会が増えて精神の安定につながるでしょう。

料理や家事

料理の際には「食材を切る」「きれいに盛りつける」などさまざまな行動をとる必要がありますが、その分、脳に良い刺激を与えられます。料理経験者であれば一つひとつの動作を体で覚えていることが多いため、しばらく包丁を握っていなかったとしても自然とやり方を思い出せるでしょう。

料理は昔の思い出を呼び起こすことにもつながり、食べる楽しみもあるのが魅力です。

また、食器洗いや配膳といった料理以外の家事も、レクリエーションとして行なわれる場合があります。それぞれの能力に適した家事を任せることで自分の役割・必要性を感じ、自信を取り戻すきっかけになります。

認知症向けのレクリエーションを行なう際の注意点

認知症の方向けにレクリエーションを行なう際は、以下の4点に注意が必要です。

自信が持てるような適度な難易度に設定する

レクリエーションは、参加者の判断能力や状態に合う、適度な難易度のものを選びましょう。

簡単すぎるものだと参加者が「馬鹿にされている」と感じ、自尊心が傷ついてしまう可能性があります。反対に難しすぎるものであれば、うまくできずに自信をなくしてしまうかもしれません。

その結果、以前なら興味をいだいていたレクリエーションにでさえ、関心を示さなくなることも十分考えられます。

レクリエーションのレベル設定は、それほど重要なものだということです。

要介護度が同レベルの少人数で行なう

認知症は、進行度合いによって症状やその表れ方が異なります。そのため、要介護度が同レベルの人でグループを組み、レクリエーションに取り組むのが最適です。

参加者のレベル感を合わせれば、介護者側もレクリエーションの内容を考えやすいでしょう。

また、少人数で行なうことも忘れてはいけません。認知症を発症すると、新しい人を覚えるのが難しくなるためです。

安全に十分配慮する

レクリエーションの参加者が転倒するなどして怪我をしてしまわないよう、安全には十分配慮してください。認知症の症状によっては突然、予期せぬ行動をとることがあります。

少しの空き時間でも目を離さないようにし、別の場所へ移動するときは必ず付き添いましょう。認知症の方の周囲に危険なものを置かないなどの工夫も必要です。

無理に参加させない

本人がやりたくないと感じている場合は無理に参加させず、その人の意思を尊重しましょう。

認知症の方は脳が疲れやすく、周囲からの刺激を受けやすい状態にあります。そのため、興味のないことや苦手なことを無理にさせると、大きなストレスがかかってしまいます。

興味を示したときは一緒にレクリエーションを楽しみ、嫌がる様子を見せたときは無理強いしない、もしくは内容の変更を検討するのが望ましいでしょう。

認知症の方にレクリエーションを楽しんでもらうコツ

認知症の方にレクリエーションを楽しんでもらうコツとして、以下のようなものが挙げられます。

● 参加者自身が興味のある活動をする
● ルールはシンプルでわかりやすくする
● 積極的に声かけする
● 15分経ったら一度休憩を入れる
● 毎回同じメンバーでレクリエーションを行なう

レクリエーションの際は、介護スタッフから積極的に話しかけたり「上手ですね」「すごい!」と褒めたりするのがおすすめです。そうすることで参加者の意欲が向上しやすく、レクリエーションも盛り上がりやすくなります。

また、15分を目安に一度休憩を入れるとよいでしょう。参加者にとって興味のあるレクリエーションでも、長時間続けていると集中力の低下や精神的ストレスにつながります。イライラしている様子が見られたら、レクリエーションの内容を変えるのも一つの選択肢です。

レクリエーション中にトラブルが起きたときの対処法

レクリエーション中にトラブルが起きたときには、状況に応じた対応が求められます。

小道具を食べようとする場合

認知症が進行すると、食べ物の区別がつかなくなる異食行動や、食欲が抑えられなくなる異常状態が見られることもあります。レクリエーションで使う小道具などを食べようとする場合は「今はやめましょうね」と優しく止めましょう。 小道具の使い方を介護スタッフが再度実演したり、代わりに本物の食べ物を渡したりするのも有効です。 認知症の方が小道具を食べようとしている際は、本人の口もとに手を近づけないよう注意してください。噛まれてしまうおそれがあります。

大声で怒鳴ってしまう場合

大声で怒鳴ってしまう場合は、一度ほかのスタッフに別の場所へ連れて行ってもらい、本人が落ち着くまで待つのが理想的です。 認知症が進行すると、理性を司るとされる脳の前頭葉が萎縮して感情のコントロールが難しくなることがあります。ときには暴言・暴力が出る場合もあるでしょう。そのため、まずは物理的・感情的な距離を置くのが重要です。 そして十分に落ち着いたら、本人の話をよく聞いてあげましょう。多くの場合、何かしらの原因やきっかけが隠されており、解決することで情動の安定のきっかけとなることもあるでしょう。

レクリエーションとは関係のない話をしてしまう場合

レクリエーションとは無関係の話を作業中にしてしまう場合は、まず認知症の方の話を聞いて受け入れてあげましょう。その後、自然に話をそらし、レクリエーションへ注意が向くよう誘導していきます。 話を遮ったり否定したりすると相手の心を傷つけてしまうため、注意が必要です。

重度の認知症の方向けレクリエーションについて

重度の認知症の方は、寝たきりになることもあるため「レクリエーションへの参加は難しいのでは?」と感じる方もいるでしょう。しかし、レクリエーションはイベント型やグループ活動のみを指すわけではありません。

● 花や写真を飾る
● 散歩する
● 介護スタッフが声をかける、手を握る
● 介護スタッフがハンドマッサージをする

上記のような行動であっても、本人が楽しさや感動を味わえていれば、それは立派なレクリエーションです。集団レクリエーションを見ているだけでも楽しいという方もいます。

美しいものを美しいととらえる感性や感動する力は認知症が進行しても残っているため、ぜひその人に合ったレクリエーションを探してみてください。生まれ故郷に関する事柄や、過去に打ち込んだ趣味を盛り込むのもおすすめです。

楽しいレクリエーションは認知症の方の生きがいにもつながる


認知症の方向けのレクリエーションは散歩や折り紙、合唱などいくつかの種類があります。一人ひとりの興味や特技に合ったものを選べば、心身機能の向上や脳の活性化が期待できるでしょう。

参加者にとって楽しいレクリエーションは、生きがいにもなります。

また、高齢の家族がいる方のなかには「介護が必要になったときに、十分なお金を用意できるだろうか」と不安になっている方もいるかもしれません。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年11月28日

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