認知症への貼り薬とは?知っておきたい効果や副作用


認知症の飲み薬を処方されたものの、薬を飲むのが苦手などの理由で「嫌だな」と感じる方もいるかもしれません。認知症の症状を抑制する薬には飲み薬以外に、貼り薬もあります。

ただ、貼る場所や貼るタイミング、枚数などに気を付けなければならず、皮膚に赤みが出るといった副作用にも注意が必要です。

本記事では、認知症の貼り薬の種類や効果、注意点や副作用を解説します。飲み薬が苦手な方の対応に、貼り薬を検討される際の参考にしてみてください。

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認知症に使われる貼り薬の種類

認知症の方に処方される貼り薬には、「リバスタッチ・イクセロンパッチ」と「アリドネパッチ」の2種類があります。各貼り薬の特徴について説明します。

リバスタッチ・イクセロンパッチ

リバスタッチ・イクセロンパッチは、アルツハイマー型認知症の治療に用いる、症状の進行を遅らせるための抗認知症薬であり、フィルム型の貼り薬です。

リバスタッチとイクセロンパッチは製造会社が違うため、製品名こそ異なりますが、有効成分は同一です。

有効成分は「リバスチグミン」で、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの量を増やし、神経の情報伝達を促進する作用を有します。これにより、アルツハイマー病など認知症の症状進行を抑えることが可能です。

1日1回貼るだけですむため、服薬管理を行う家族や介護者の負担を軽くすることにもつながります。

アリドネパッチ

アリドネパッチは、軽度から高度のアルツハイマー型認知症の方に使用できる、高度アルツハイマー型認知症患者に対する日本初の経皮吸収型製剤です。

有効成分は、既存の経口薬と同じ「ドネペジル」です。ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用により、脳内アセチルコリン量を増加させます。これにより、記憶障害や見当識障害、判断の困難化などといった認知症の症状の進行を遅らせます。

アリドネパッチは、2023年4月にアルツハイマー型認知症の治療薬として発売された製品です。

認知症に使われる貼り薬にはどんな効果がある?

認知症の貼り薬には、アルツハイマー型認知症の進行を抑える効果があります。注意したいのは「抑える効果」はあるものの、認知症そのものを治す効果はないということです。

そもそも認知症とは一体どういった状態なのでしょうか。
私たちは、脳の神経伝達物質を介して記憶や学習を行っています。認知症はその神経伝達物質が減少し、情報伝達が悪くなっている状態であると考えられています。

神経伝達物質は酵素によって分解されます。貼り薬にはその酵素による分解を阻害し、認知機能障害の進行を抑制する役割があるのです。

内服薬の場合、薬を飲んだかどうか忘れる可能性もありますが、貼るタイプの薬なら、一目で確認できます。また、間違って過剰に貼ってしまった場合、パッチをはがすだけで簡単に薬の過剰摂取を防ぐことが可能です。

薬を飲むことが苦手という方でも、貼るだけで薬の効果を得られる点はメリットといえるでしょう。

貼る場所と使用上の注意

貼り薬を使用する場合、どのようなことに気を付けてどこへ貼れば良いのでしょうか。以下では、貼り薬を貼る場所や注意事項、使用し忘れた場合どうしたら良いのかを解説します。

貼り薬を貼る場所

貼り薬は1日に1回、同じ時間に貼ります。薬を貼る場所は背部や上腕部、胸部のいずれか1カ所です。また、薬を貼る際には、貼る場所に傷や皮膚の疾患がないかもしっかりとチェックしておきましょう。

貼り薬を貼る場所は、傷や皮膚病がある場所は避け、正常な皮膚に貼りましょう。入浴後に使用する場合は十分に水気を拭き取り、乾いてから貼りましょう。

貼り薬を使用する際の注意事項

貼り薬は1日1枚まで使用でき、一度に2枚以上の使用はできません。そのため、貼り薬を貼りかえる際には、前回の貼り薬をはがしてから新しい貼り薬を貼ります。

貼り薬は優しくはがし、はがした部位は濡れタオルなどを使ってきれいに拭き取りましょう。使い終わった貼り薬にも薬の成分はまだ残っています。子供や認知症の方が誤って使ってしまわないように、はがしたテープは接着面を内側に折り込んで処分してください。

副作用のリスクを軽減するため、なるべく同じ場所に貼るのは避けましょう。貼る場所をいくつか決めておき、ローテーションで貼っていくやり方がおすすめです。

使用し忘れた場合

貼り忘れに気が付いた場合や、貼りかえるのを忘れた場合は、気が付いた時点で新しい貼り薬を貼ってください。そして翌日からはいつもと同じ時間に貼り薬を使用しましょう。忘れていたからといって一度に2日分以上使ってはいけません。

もし4日以上貼っていない期間がある場合は、次に使う貼り薬のサイズなどが変更される可能性もあるので、主治医に相談しましょう。

貼り薬を使用することで起こりうる副作用

アリドネパッチの副作用としては、薬を貼った部分が赤くなってしまったり、かゆくなってしまったりする皮膚症状や、下痢や食欲不振、吐き気・嘔吐といった消化器症状が報告されています。

また、リバスタッチ・イクセロンパッチの代表的な副作用も、アリドネパッチの副作用と同様です。一番多いとされているのが、かゆみや発赤などといった皮膚症状です。次に嘔気などの消化器症状が多く確認されています。重い副作用は少ないとされていますが、まれに脈拍が異常に遅くなるなどといった症状も出るため、特に心臓病のある人は注意しましょう。

皮膚症状の予防として効果的な方法は、毎回違う位置に薬を貼ることです。また、入浴後や体を拭いたあとに、保湿剤を塗るなどして肌のケアを行うのも有効です。

しかし皮膚症状があらわれてしまった場合、自然に治らないケースがあります。高齢者は特に皮膚自体が弱くなっているため、悪化する可能性も少なくありません。皮膚症状が気になったり続いたりする場合には、医療機関を受診し医師に相談するとよいでしょう。

他人事ではない認知症

近年、高齢化が加速するなかで認知症患者にも増加傾向がみられます。

内閣府が公表している65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計によると、2012年の認知症高齢者数は462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人の割合でしたが、2030年には約830万人まで増加するとの推計がなされています。
 
軽度認知障害(MCI)・認知症患者を合わせると約1,548万人の患者数が推計されており、65歳以上の約3人に1人が認知症患者となる見込みです。

参考:内閣府「平成29年版高齢社会白書」、首相官邸認知症施策推進関係閣僚会議(第2回)資料、厚生労働省老健局 社会保障審議会介護保険部会(第92回)「介護保険制度をめぐる最近の動向について」より当社試算(65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用)

これらはそう遠くない将来の話であり、認知症になることは他人事ではありません。認知症を患ってしまう前に知識を持っておくかどうかで、受け止め方や対処方法も変わってきます。他人事ではなく自分のこととしてとらえ、認知症のリスクに備えておくとよいでしょう。

認知症治療の選択肢の一つに「貼り薬」を


認知症の貼り薬「リバスタッチ・イクセロンパッチ」や「アリドネパッチ」は使用方法や使用上の注意を守り使用することで、認知症の進行を抑える効果が期待できます。

飲み薬が苦手な方にとって、貼り薬は有用です。また、飲み薬とは異なり、見た目で薬の使用状況が確認できる点も、貼り薬のメリットです。

認知症の患者数は増えています。将来自分や親が認知症になるという可能性も低くはありません。そのようなときに備えて、貼り薬という選択肢があることを知っておくとよいでしょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年6月27日

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