認知症予防のポイント
今から改善できる生活習慣とは

認知症は高齢化社会における大きな課題であり、発症への不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。完全な治療が難しい認知症ですが、適切な生活習慣を身に付けることで、発症リスクの軽減が期待できます。

本記事では、認知症予防に効果的な生活習慣のポイントや早期発見の重要性、認知症予防に役立つ最新の研究・技術について解説します。将来の認知症リスクを減らし、健康的な生活を送るための参考にしてみてください。

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何歳から認知症の予防を考えるべき?

脳の老化が始まるのは、40代後半頃からといわれています。

また、アルツハイマー型認知症は65歳以上の高齢者に多い病気ですが、発症の約20年前から脳内に原因となる物質がたまり始めるとされるため、40代頃から認知症予防について考え始めることが大切です。

認知症には決定的な予防方法はありませんが、生活習慣との関わりが認められています。できるだけ早いうちから対策を行うことで、予防につなげられるでしょう。

認知症の前段階として、記憶力や注意力の低下などの症状が現れる「軽度認知障害(MCI)」が発現すると、5年以内に認知症に移行する可能性が高まります。しかし、予防的な活動に取り組めば、症状の進行を遅らせることも可能です。

認知症予防のポイント(1):バランスの良い食事

高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は、認知症発症リスクを上げるといわれています。そのため、生活習慣病を防ぐことは、認知症予防にもつながります。

生活習慣病を防ぐには、バランスの良い食事を心がけることが重要です。

活動量に見合った食事量・摂取カロリーを心がける

肥満は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症のリスクを高めます。

食べすぎは肥満を招きやすくなるため、身体活動量に見合った食事量を心がけましょう。
食事は規則正しい時間に、しっかり嚙んで食べるのがポイントです。間食を摂る場合は、カロリーオーバーにならないように気を付けましょう。

また、脳の健康のためには、栄養素が偏らないように野菜・肉・魚・豆類・適量の果物をバランス良く食べることも大切です。主食・主菜・副菜を意識し、品目を増やしたり、調理法を変えたりすると多くの食材を摂取できます。

認知症予防に効果的な食材はこちらの記事からもご確認いただけます。

関連記事:認知症患者の食生活と住環境。どのようにサポートすればよいでしょうか?

塩分・糖分・アルコールは控える

塩分・糖分・アルコールの摂りすぎも、認知症発症のリスクを高める要因です。

塩分の摂りすぎは高血圧や血管の老化を招き、脳血管性疾患のリスクを、糖尿病は動脈硬化を起こし、脳血管性認知症・アルツハイマー型認知症両方のリスクを高めることがわかっています。

また、大量に飲酒する習慣がある人や、アルコール依存症の人は脳の萎縮が起こりやすく、認知症発症の確率が高くなります。特に、大量の飲酒は前頭葉が萎縮しやすく、認知症の症状に加えて、脱抑制(衝動や感情を抑えられない)といった精神的な症状が出ることもあるので注意が必要です。

認知症予防に効果的な食品を選ぶ

認知症予防には、特定の栄養素を含む食品を意識的に摂ることも重要です。

抗酸化物質は、酸化によって脳の細胞が損傷することを防ぎ、認知機能の低下に結び付くたんぱく質の蓄積を抑える効果があるため、積極的に摂取しましょう。特に、ビタミンB群、C、E、βカロチンを多く含む野菜や果物をとり入れるのがおすすめです。緑茶やブルーベリーなどに含まれるポリフェノールにも抗酸化作用があり、認知症予防に有効です。

魚介類や良質な脂質も認知症の予防に効果があります。特にDHA・EPAを豊富に含む青魚は、週1~2回食べると、脳の健康維持に効果的です。また、脂質を含む食事では、オリーブオイルなどの植物性油を意識的に摂取することをおすすめします。

関連記事:認知症予防に効果的な食べ物とは?

認知症予防のポイント(2):適度な運動

適度な運動は、認知症の予防効果が期待できるという研究があります。
運動が脳に良い影響を与えるだけでなく、認知症の要因となる生活習慣病の予防・改善効果も期待できるため、積極的に取り組みましょう。

週2~3回定期的な軽い運動が有効

認知症の予防のための運動は、ハードである必要はありません。週2~3回30分以上、ウォーキングなどの軽く汗ばむ程度の軽い運動で十分効果的です。

また、運動能力が低下していると、認知症が発症したあとに急激に症状が進行しやすくなります。認知症の進行を抑えるためにも、運動で体力をつけておくことが重要です。

有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる

有酸素運動に加えて、スクワットや腹筋運動など筋力アップを目的としたトレーニングを取り入れることで、より高い認知症予防効果が期待できます。

有酸素運動と筋トレを組み合わせて行うと、脳への血流量が増加し、BDNFというたんぱく質の分泌が促進されます。これにより、脳の活性化が促され、認知機能の低下を遅らせる効果が期待できるのです。

また、筋トレによって筋肉量を増やすことは転倒予防、身体機能維持にもつながります。認知症を予防するため、また日々を快適に過ごすためにも、週2~3回程度、大臀筋(だいでんきん)や大腿(だいたい)四頭筋、腹筋、背筋など主要な筋肉を鍛えるとよいでしょう。

認知症予防に効果的な運動方法

国立長寿医療研究センターによると、認知症予防には、パズルやしりとりなどの頭の体操と運動を組み合わせた、コグニサイズ※と呼ばれる運動が有効です。運動をしながら脳を使うことで、認知症リスクとなる運動不足を解消しながら、脳の活動を活発にする効果が期待できます。

コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みのことです。
引用:国立長寿医療研究センター作成パンフレット.認知症予防に向けた運動 コグニサイズ

認知症予防のポイント(3):人や社会との関わりを持つ

刺激がない単調な生活は、認知症リスクが高まります。脳の活性化のために、社会活動に参加することも有効です。

人との交流機会を増やしておく

会話は脳と口を動かすトレーニングになるため、認知症予防には定期的に人と交流することも大切です。

孤独は認知症のリスク要因であることが指摘されており、国立長寿医療研究センターの調査では、人との交流機会が多様なほど認知症リスクが低下するという結果が報告されました。
人間関係が仕事に関わるものばかりだと、定年退職により途切れてしまうことにもなりかねません。年齢を重ねてからの関係構築は難しいこともあるため、早いうちから多方面に交流の機会を持っておきましょう。

社会活動への参加は生きがいにもつながる

人とのつながりが少ない方は、趣味の集まりや地域のボランティアなどに参加することも有効です。交流の機会が増えると同時に、身体活動量が増えるというメリットもあります。

また、人の役に立つことで達成感を得られ、生きがいにもつながるでしょう。参加がストレスにならないよう、楽しめる範囲で取り組むことが大切です。

認知症予防のポイント(4):生活習慣の改善

普段の生活習慣を改善することでも、認知症予防につながります。なかでも、十分な睡眠と知的活動に取り組むことは、認知機能の低下を抑え、生活の質向上にも効果的です。

十分な睡眠を取る

睡眠障害は、アルツハイマー型認知症発症のリスク要因です。

アルツハイマー型認知症は、脳内の老廃物アミロイドβの蓄積が関与していると考えられています。アミロイドβは睡眠中に排出されるため、睡眠障害がある人はアミロイドβの蓄積が多くなりやすく、アルツハイマー型認知症のリスクが高いといわれています。

なお、睡眠不足解消のための昼寝は、1時間以上になると夜の睡眠が浅くなり、逆効果になるので注意が必要です。

年齢を重ねると、睡眠が短くなったり浅くなったりする傾向がありますが、睡眠障害は疾患によっても生じます。睡眠を妨げる要因となる睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群などの疾患がある場合には、適切な治療を受けましょう。

関連記事:睡眠不足は認知症の発症リスクに影響する?発症リスク低減につながる睡眠のポイント

ストレスをためない

認知症発症リスクを軽減するには、適度な休養を取り、ストレスをためないよう心がけることが重要です。慢性的なストレスはうつ病を引き起こすだけでなく、認知症発症のリスクを上げる可能性もあります。

ストレス解消法は個人によって異なりますが、趣味の活動や運動、瞑想(めいそう)などを通じて自分に合った方法を見つけることが大切です。ただし、ストレス解消といっても、過度な飲酒や喫煙は避けましょう。脳の健康に悪影響を与え、かえって認知症のリスクを高める可能性があります。

ストレス耐性を高めるには、規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠を取ることが大切です。また、家族や友人との交流を大切にする、悩みがあるときには親しい人に相談することもストレスの解消によいでしょう。

知的活動に取り組む

学習やゲーム、楽器演奏などの知的活動は、脳の活性化につながり認知症予防に効果的です。ただし、難しすぎるとストレスになり習慣化できなくなるため、無理なく続けられるような活動を行いましょう。日々の楽しみとなるものだと、生活にも張りが生まれます。

また、高齢になっても取り組めるような、手先を使用する趣味を持っておくのもおすすめです。手先を使うことは脳に刺激を与える効果もあるため、効率的に脳を活性化できるでしょう。

関連記事:認知症予防にゲームが効果的?|その理由と効果的な7つのゲーム

認知症の早期発見と早期治療が重要

認知症の予防には、適切な生活習慣を身につけることが大切ですが、同時に、初期症状を理解し、早期発見・早期治療につなげることも大切です。ここでは、認知症の初期症状や早期診断の重要性について解説します。

認知症の初期症状を知る

認知症の初期症状には、おもに以下のようなものがあります。
  • 記憶力の低下:同じことを何度も言う、同じものを買う
  • 時間・場所の感覚の乱れ:今日の日付や通り慣れた道がわからなくなる
  • 思考力や判断力の衰え:会話についていけなくなる、お金の計算ができなくなる
  • 集中力・注意力の低下:テレビの内容が追えなくなる、一つの作業に集中できなくなる
  • 性格や行動の変化:怒りっぽくなる、ふさぎ込んで外出を避けるようになる
これらの症状が複数見られる場合は、認知症の可能性があります。また、認知機能が低下しているものの、日常生活に大きな支障がない状態を指すMCI(軽度認知障害)も、認知症の前段階として注意が必要です。
 

※1厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」

※2厚生労働省「e-ヘルスネット」より、年間10%の方が認知症に進行すると仮定して当社試算

早期診断の重要性を理解する

認知症の兆候が現れたら、早期に病院を受診することが重要です。水頭症や慢性硬膜下血腫などが原因で認知症を患っている場合は、手術で症状を改善できる可能性があります。薬物療法や生活習慣の改善によって、症状の進行を遅らせることも可能です。

また、認知症の初期症状のうちに対応できれば、患者本人が将来の生活設計や介護サービスの選択に関与できる機会が増えるだけでなく、家族も介護の準備や支援体制の構築に時間をかけられます。社会的支援サービスへのアクセスも容易になり、患者と家族の生活の質を維持・向上させることができるでしょう。

認知症予防に役立つ最新の研究と技術

認知症予防に関する研究は日々進歩しており、新たな技術や方法が開発されています。以下では、認知症予防に役立つ最新の研究成果や技術についてご紹介します。

脳トレーニングアプリの効果

認知症予防に効果があるとして注目されているのが「脳トレーニングアプリ」です。特に科学的根拠に基づいて開発・設計されている脳トレアプリは、定期的に利用することで、記憶力や注意力の維持・向上が期待できます。スマートフォンやタブレットを通じて手軽に行えるため、日常生活に取り入れやすいでしょう。

実際に、このような脳トレアプリは、高齢者の実行機能と処理速度を向上させる効果が既に報告されており、認知機能の維持・向上に効果的なツールの一つとして認識されています。

認知症予防サプリメントの可能性

臨床試験で効果が確認され、認知機能の一部である記憶力の向上に役立つ可能性が示された認知症予防サプリメントもあります。例えば、ビフィズス菌を含むプロバイオティクスが軽度認知障害患者の認知機能改善に効果がある可能性が報告されています。しかし、多くの市販サプリメントは科学的根拠に乏しく、効果が不明確なものも少なくありません。

医薬品とは異なり、成分含有量の表示や品質管理に厳格な規制がないため、サプリメントを利用する際は信頼できる製品を選ぶことが重要です。また、サプリメントだけに頼るのではなく、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、総合的な生活習慣の改善を意識しましょう。

認知症予防は生活習慣の見直しから始めよう


認知症には明確な予防方法はありませんが、リスク要因を減らすことは十分に可能です。

認知症につながりやすい生活習慣病を招かないよう、バランスの良い食事、適度な運動を習慣にしましょう。

また、人との交流につながる社会的活動に取り組むことで、間接的な予防効果が期待できます。認知症は長い時間をかけてゆっくりと進行していくため、できるだけ早い段階から予防に取り組むことが大切です。

同時に、認知症の早期発見・早期診断も重要です。特に認知症の一歩手前の段階であるMCIは、日常生活への影響がほとんどありません。ただのもの忘れと軽く考えず、少しでも不安があれば病院を受診して検査を受けるなど、早めに対応することが将来の備えになります。

医療は日々進歩しています。最新の研究や技術などにもアンテナを張り、長く健康的な生活が送れるよう認知症予防に努めましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2025年3月10日

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