認知症予防に効果的な食べ物とは?


認知症を根本的に治療する方法は、一部の種類を除いてまだ見つかっていません。だからこそ、「なるべく認知症を予防する方法を知りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。

日常的な認知症予防の方法として大事なのは、適切な食事です。青魚や緑黄色野菜など、認知症予防に効果的とされるさまざまな食材を意識して積極的に摂取することで、脳や体の健康を保つ効果が期待できます。

この記事では、認知症予防に効果的な食べ物や、注意が必要な食べ物、食事の際に心がけるポイントなどを紹介します。

認知症予防に食事が大切な理由

そもそも、認知症を予防するうえでなぜ食事が効果的なのでしょうか。認知症と食事の関係について説明します。

認知症とは、脳の病気や障害などが原因で認知機能が低下し、日常生活に支障が出てしまう状態です。

認知症にはいくつかの種類がありますが、なかでもアルツハイマー型認知症は発症する人の割合が最も大きいとされています。
アルツハイマー型認知症の原因は、アミロイドβというたんぱく質が脳に蓄積することといわれています。

食生活が乱れていると、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まります。そして生活習慣病になると、アミロイドβの分解が減少する可能性があり、結果的に認知症を発症しやすくなる可能性があるのです。
アミロイドβの蓄積を防ぐには、青魚に含まれるDHA・EPAなどの不飽和脂肪酸や、緑茶に含まれるカテキンなどの成分の摂取が効果的だと考えられています。

また、食事を含む生活習慣を改善することで、高血圧や動脈硬化などの予防・改善にもつながるとされています。
そのため、脳卒中や脳梗塞などの予防につながり、結果として脳血管性認知症のリスクも間接的に抑えられることにつながるかもしれません。

現段階では認知症を根本的に治療する方法はないといわれており、アミロイドβが蓄積しないように毎日の適切な食事を意識し、認知症の予防をすることが大切です

認知症予防に効果的な食べ物とは?

それでは、認知症予防に効果的とされている食べ物の例や、期待される効果などを紹介します。

青魚

先述したように、サバやサンマ、アジなどの青魚は不飽和脂肪酸のDHAやEPAが豊富に含まれる食材です。不飽和脂肪酸には、血液中の悪玉コレステロールを減少させる効果があり、血液の循環をよくして動脈硬化などを予防してくれます。

脳の構成成分であるDHAには脳を活性化させる作用があり、記憶力や判断力の向上も期待できます。さらにEPAには血行をよくする働きがあるため、生活習慣病の予防にも繋がるでしょう。

緑黄色野菜・果物

ほうれん草やにんじんなどの緑黄色野菜やいちごなどの果物には、ビタミンB群の一種である葉酸が含まれます。葉酸は血液中の有害なアミノ酸を無害化する作用があり、動脈硬化のリスク軽減につながる栄養素です。

ビタミンC・ビタミンEも豊富に含まれている野菜・果物を摂ることで、血中コレステロール値を下げたり抗酸化作用を高めたりする効果も期待できます。

コーヒー・緑茶

コーヒーに含まれるクロロゲン酸、緑茶に含まれるカテキンなどのポリフェノールも、認知症予防に有効な成分といわれています。抗酸化作用によって、アルツハイマー型認知症の原因となるといわれているアミロイドβの蓄積を抑える効果が期待できます。また、カフェインの利尿作用には、血液中の不要なたんぱく質を排出させる働きもあります。

カフェインを多量に摂取すると睡眠障害やめまいなどが起こるリスクもあるため、適量を守るようにしましょう。

大豆製品

納豆や豆腐、味噌などの大豆製品も、認知症予防に有効な食材です。大豆に含まれるレシチンは、記憶などの脳機能にかかわる神経伝達物質のアセチルコリンを作る材料になります。特に、納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素には、血栓を防いで脳梗塞などのリスクを下げる効果があるとされています。

カレー

カレーに使われるスパイスの一つであるウコン(ターメリック)には、クルクミンという成分が含まれています。クルクミンには、免疫細胞を活性化したり、アミロイドβの蓄積を抑えたりする効果があるとされており、認知症予防が期待できる成分の一つです。

オリーブオイル

オリーブオイルには、オレイン酸という不飽和脂肪酸が含まれています。オレイン酸には血中コレステロールや中性脂肪をコントロールしてくれる働きがあり、脳梗塞や動脈硬化の予防に役立ちます。

認知症の発症リスクを高める食べ物に注意

認知症予防効果が期待できる食べ物を紹介しましたが、食べ物によっては認知症の発症リスクを高めてしまう可能性もあります。注意するべき食べ物について解説します。

肉の脂身

脂身や背脂、ラードといった動物性の脂肪には、飽和脂肪酸が含まれています。飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、生活習慣病などのリスクを高める原因となります。そのため、摂取しすぎると脳梗塞などが原因の脳血管性認知症が発症するリスクも高まるといえます

マーガリン・ショートニング

マーガリンやショートニングには、脂肪酸の一種であるトランス脂肪酸が含まれています。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化などの原因となることで知られています。ファストフードやお菓子などに使われていることもあるため、トランス脂肪酸が多く含まれている食べ物を摂取しすぎないように、日頃からの心がけが大切です

菓子パン

菓子パンには、先述したマーガリンやショートニングが多く含まれています。また、砂糖や小麦も悪玉コレステロールの増加につながるため、菓子パンなどを多く食べるような食生活は避け、過度な摂取に注意しましょう。

過度の飲酒

過度な飲酒は、脳の委縮や認知症のリスクが高まる原因となります。また、最近は少量でもアルコールを摂取すると健康を害するという報告もあり、健康維持のためにはそもそもアルコール摂取は控える方が賢明です。

ただ、コミュニケーションを行う上でアルコールを摂取せざるを得ない機会も多々あると思います。飲酒は適量を心がけましょう。

認知症予防のための食事のポイント5つ

ここまで、認知症におすすめの食べ物と、注意が必要な食べ物について紹介しました。それでは、それらの食べ物を効果的に摂取するために、毎日の食事で気を付けるべき5つのポイントについて見ていきましょう。

1.栄養バランスの良い食事を心がける

まずは、栄養バランスの良い食事です。認知症予防に効果的な食べ物をただ摂取すれば良いというわけではなく、主食・主菜・副菜がそろったバランスの良い食事で、健康な体をつくりましょう。先ほど紹介した効果的な食べ物を意識して取り入れつつ、必要なエネルギーや栄養素を過不足なく摂取できるような献立を考えることが大切です

2.適切なカロリー摂取で肥満を予防する

肥満は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まる要因の一つとされています。また認知症だけでなく、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病を引き起こす可能性もあります。認知症だけでなく全身の健康を守るためにも、適切な摂取カロリーを意識して肥満を予防しましょう

3.塩分過多に注意する

塩分過多は高血圧の原因です。高血圧になると脳梗塞などの病気を引き起こしやすく、脳血管性認知症の発症リスクも高まります。普段の食事からなるべく減塩を心がけましょう。カリウムを多く含む野菜や果物、海藻類も高血圧予防に効果的とされているので、積極的に取り入れるとよいでしょう。

4.糖分を摂りすぎない

糖尿病にも注意が必要です。糖尿病になると脳にアミロイドβが蓄積されやすくなり、アルツハイマー型認知症のリスクが高まると考えられています。甘いお菓子などの食べすぎには注意しましょう。

5.自分で調理することも効果的

自分で調理して食事をすることも、認知症の予防に効果的です。食材や栄養バランスを意識して献立を考えたり、実際に手を動かして料理したりすることで、脳の活性化につながるでしょう

認知症予防におすすめの食事

最後に、この記事で解説した食べ物や食事のポイントを踏まえて、認知症を予防するためにおすすめの食事について紹介します。

和食

和食は認知症予防におすすめの食事といえます。サバやアジの焼き魚などをおかずにすることで、青魚の脂をしっかり摂取できる点が特徴です。また、納豆や豆腐、味噌などの大豆製品も、和食なら取り入れやすいでしょう。 和食の基本である「一汁三菜」で栄養素をバランスよく摂取できる点も、心身の健康を維持するためのポイントです。

地中海食

地中海食とは、イタリアやスペインなど、地中海沿岸の国で食べられている食事のことです。「肉よりも魚がおもな食材として使われる」「緑黄色野菜が豊富」「オリーブオイルをよく使用する」などの特徴があります。

上記の特徴からもわかるように、地中海食は認知症予防に効果的とされている食材を豊富に使う食事です。和食よりはなじみがないかもしれませんが、ぜひ家庭でも地中海料理を取り入れてみてはいかがでしょうか。

認知症予防に効果的な食べ物をバランス良く取り入れよう


認知症の予防には、青魚・緑黄色野菜・果物・緑茶・大豆製品・オリーブオイルといった食べ物が効果的だとされています。一方で、脂身やマーガリンなどの脂肪酸、多量のアルコールなどは認知症の発症リスクを高める可能性があるので、過度な摂取には注意が必要です。

認知症予防に有効な食べ物を食事に取り入れる際は、栄養バランスを考慮し、カロリーや塩分、糖分などを摂りすぎないように心がけましょう。自分でメニューを考えたり調理したりすることは脳の活性化につながり、さらに認知症予防の効果が期待できます。

今回紹介した地中海食や和食など、有効な食材を効率的に取り入れられる食事例を参考にしながら、毎日の食事から認知症予防に取り組みましょう

なお、認知症が発症した場合への備えとして、介護保険を検討しておくと安心です。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年8月4日

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