認知症の末期を迎える頃には、症状が深刻化して自身では対応しきれないことが増えるかもしれません。ここでは、認知症の症状が深刻化する前にできることを解説します。
認知症の介護は、症状が進行するごとに対応しなければならない範囲が広がるため、介護者の負担も大きくなることが予想されます。介護を継続するのが難しいと判断した場合は、介護施設への入所も検討するとよいでしょう。
介護施設に入所することで、患者本人は社会とのつながりを持てるようになります。また、介護側の負担を軽減できるメリットがあるのです。
一方で、介護施設に入所すると、余命が短くなるといった話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
介護施設に入所すると、環境の変化や服薬の調整によって一時的に症状が悪化する可能性が考えられます。時間の経過によって症状は落ち着くため、余命への影響は心配しなくてもよいでしょう。
認知症の症状が深刻化する前に、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実施を検討してみてはいかがでしょうか。
アドバンス・ケア・プランニングとは、認知症患者の希望を聞いて、終末期介護や医療について話し合うことです。意思疎通が困難になる前に、受けたい医療やその理由を医療チームと共有することで、包括的なケアの実現に貢献します。
アドバンス・ケア・プランニングを行なう際は、「最期はどうなるのか」ではなく「どのように最期を迎えたいか」を前向きに話し合うことが大切です。患者と家族の意向を尊重し、納得のいく終末期の迎え方について話し合うとよいでしょう。
アドバンス・ケア・プランニングのメリットとデメリット
アドバンス・ケア・プランニングの実施によって得られるメリットは、患者本人の自律性の向上です。患者自身の決断を家族や医療チームに共有することで、自身が決断したことに責任を持つことが期待されます。
患者本人の希望を関係者全員が共有することでコミュニケーションが良好になり、患者本人や家族の満足度が高まることも期待できるでしょう。
一方で、アドバンス・ケア・プランニングを実施することは、患者や家族にとって辛い経験になることが懸念される側面もあります。実施するタイミングが難しいことや、時間と手間を要することを考慮した場合、実施することがデメリットになる可能性もあるでしょう。
これらを踏まえると、すべての患者に適用するのは難しいかもしれませんが、望まない医療の回避にも貢献します。全員が納得のいく終末期を迎えるためにも、アドバンス・ケア・プランニングを取り入れてみてはいかがでしょうか。
認知症の進行によって症状が深刻化すると、自力で生活するのが難しくなります。介護を要する生活となれば、医療費のほかに介護費用も捻出しなければなりません。
公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021年度」 によれば、2021年における介護にかかる月額費用は平均で8万3,000円であることがわかります。
40歳を迎えるタイミングで公的介護保険に加入 することになりますが、公的制度だけではカバーしきれない可能性があります。十分な介護を受けるためにも、民間の保険への加入も検討し、将来に備えておくとよいでしょう。