認知症の検査の費用はどのくらい?検査を受けるメリットや費用の目安・検査方法


ご自身やご家族について「最近もの忘れの頻度が高くなった」「仕事や家事でのミスが多くなった」などの悩みから、認知症の検査を受けるか検討している方は少なくないでしょう。
その際、どこで検査を受けられるのか、費用はどのくらいか、検査方法はどのようなものがあるのかと、疑問に思う方もいるかもしれません。

今回は、認知症の検査について、何科で受けられるのか、いつ受けるべきかを解説します。また、検査を受けるメリットや費用の目安、検査方法、検査後にすべきことや注意点も紹介します。

認知症の検査は何科でいつ受けるべき?

認知症の検査は、精神科や心療内科、老年科、脳神経外科、脳神経内科などがある医療機関で受けられます。検査可能な診療科が幅広い理由は、認知症の原因によって検査方法や治療法が異なるためです。

例えば、脳神経外科や脳神経内科では、脳が原因となる認知機能の低下や麻痺症状などの検査・治療に対応しています。対して精神科や心療内科では、認知症の二次症状とされる「BPSD(行動・心理症状)」に対応し、脳波や心電図測定などの検査を行ないます。

どの診療科を受診すべきかわからない場合は、症状をかかりつけ医に相談し適した診療科を紹介してもらう、もしくは「地域包括支援センター」を利用するとよいでしょう。

地域包括支援センターとは、高齢者自身が住み慣れている地域で生活を続けられるよう支援を行なう相談窓口です。社会福祉士や保健師などの専門家が配置されており、「どの病院に行けばいいのかわからない」といった認知症の検査や受診に関する問い合わせ・相談ができます。

医療機関を受診するタイミングは、認知症の初期症状と思われる症状が出たときです。初期症状では、以下のような様子が見られます。

・何度も同じことを聞く、もの忘れが頻繁になる
・趣味や日課に対する興味、意欲が減少する
・怒りっぽくなるなどの感情の起伏が変化する
・料理や計算、運転のミスが増える

上記はあくまで一例であり、認知症の症状は原因や周囲の環境、本人の性格などにより異なります。普段と違うと感じる点があれば、早めに受診するとよいでしょう。

認知症の検査を受けるメリット

次に、認知症の検査を受けるメリットを2つ紹介します。

早期発見や早期治療につながる

認知症の検査を受けることで、認知症の早期発見・治療につながります。

例えば、三大認知症と呼ばれるアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症は、脳の変性やダメージにより認知機能が低下する病気です。変性した箇所やダメージを受けた箇所は基本的に回復せず、症状は日々進行するため完治しないとされています。

しかし、完治が困難な認知症でも、治療によって症状の進行を遅らせることは可能です。そのためには、医療機関の受診・検査によってできる限り早く認知症かどうかを確認し、適切な治療を始めることが重要といえます。

ほかの病気の発見・治療につながる

検査を通して認知症の原因を探るなかで、認知症以外の病気が見つかるケースがあります。
例えば、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などの病気です。

これらの病気では、認知症に似た症状が見られる場合があります。発見が遅れると命の危険にもかかわりかねないため、注意が必要です。認知症の検査によって病気の早期発見・治療ができれば、認知症の進行を食い止めるだけでなく命を守ることにもつながるでしょう。

認知症検査の費用の目安

認知症の検査にかかる費用の目安は、およそ数百円から数万円前後です。健康保険や介護保険の対象かどうかや負担の割合、受ける検査の種類によって費用が異なるため、費用の幅が大きくなります。

例えば、認知機能テストの場合は3割負担で約250円ですが、CT検査の場合は同じ3割負担でも約5,000円~1万円がかかります。MRI検査は3割負担で1万円前後、MCIスクリーニング検査は健康保険適用外となるため、自費で約2~3万円です。

症状によって、どの検査が必要になるのかは異なります。また、検査を複数組み合わせる場合など、検査項目が増えるほど費用が高くなる点に留意しましょう。

おもな認知症の検査方法5つ

認知症の検査方法はおもに5種類です。ここでは、それぞれの特徴や検査内容を解説します。

ただし、以下で解説する検査をすべて行なうとは限りません。症状や後述する診察(問診)で得た情報に基づいて、必要な検査を実施する点に留意してください。

診察(問診)

検査をする前に、専門医が本人や家族に聞き取りを行ない、心身の状態や症状を診察します。この診察(問診)の結果をもとに、以降で紹介する検査のなかから適したものを選び実施します。

画像検査

画像検査は、脳の画像を撮影し診断する検査方法です。おもな画像検査には、MRIやCTなどの「形態画像検査」、SPECT検査やPET検査などの「機能画像検査」が挙げられます。

形態画像検査では、脳の萎縮や脳梗塞、腫瘍や出血などの疾病がないかチェックします。対して機能画像検査は、脳の血流や代謝など、脳の活動状態をチェックして診断する検査です。

MRIやCTは、認知症だけでなく慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などの病気の発見にもつながります

MCIスクリーニング検査

MCIスクリーニング検査は、血液検査で脳に蓄積される毒性物質(アミロイドベータペプチド)を除去するたんぱく質の量を測定して、脳細胞へのダメージの大きさを調べる方法です。

血中のたんぱく質が減ると、脳神経を守る機能が弱まるため、減少の割合が高いほど認知症のリスクが高いと判断されます。

また、MCIスクリーニング検査は健康保険適用外となるため、検査費用が自費で2万円前後かかる点に注意しましょう。

神経心理学検査

神経心理学検査は、簡単な作業や質問を通して認知症かどうかを調べる検査です。点数が一定基準に届かない場合、認知症の疑いがあると判断されます。

おもな神経心理学検査には、「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」「時計描画テスト(CDT)」「ミニメンタルステート検査(MMSE)」などが挙げられます。

以下は、3つの検査の大まかな検査内容や特徴です。

・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R):日付や場所の質問、単純な計算、単語の記憶といった記憶力を中心に認知機能障害の有無を調べる

・時計描画テスト(CDT):指定した時刻の時計を描画できるかチェックする。ほかの検査に比べて、患者の抵抗感が少ない点が特徴

・ミニメンタルステート検査(MMSE):「精神状態短時間検査」とも呼ばれ、制限時間内に口頭での質問や図形の描画、単純作業や計算ができるかチェックする検査

このほかにも、「MoCA」「高齢者うつスケール(GDS)」など、幅広い種類のテストが実施されます。

血液検査・尿検査

認知症だけでなく、甲状腺機能低下症といった脳以外の臓器からくる症状を含め、その他の異常がないかをチェックするために実施されます。

検査の結果「認知症」と診断されたらすべきこと

前述した各種検査を受け、その結果認知症であると診断されたら何をすればいいのかと悩んでしまう方もいるでしょう。ここでは、認知症と診断されたら取るべき行動について解説します。

認知症の治療を始める

三大認知症などに該当する場合は特に、完治を期待するのは困難です。しかし、適切な治療を受けることで、症状の進行を抑えられる可能性があります。

なお、認知症の治療方法は、大きく「薬物療法」と「非薬物療法」に分けられます。

薬物療法は、医師と相談のうえ、症状に合った薬を服用することで進行を抑える治療方法です。例えば、コリンエステラーゼ阻害薬のような脳の情報伝達を整えるための抗認知症薬を用います。その他、不安や睡眠障害など行動・心理症状を軽減するために漢方薬や睡眠導入剤が使用されるケースもあります。

一方の非薬物療法は、不安・抑うつなどの周辺症状を、脳の活性化により軽減させることを目的に行なわれる治療方法です。例えば、過去の記憶を人に話したり聞いたりする「回想法」、ゲームや計算ドリルを用いる「認知リハビリテーション」、音楽や演奏を楽しむ「音楽療法」などが挙げられます。

介護保険の要支援・要介護認定を受ける

要支援・要介護認定を受けると介護予防サービスや介護サービスが利用できるようになり、介護に必要な施設の利用やリハビリ、費用の支援などが受けられます。これらのサービスを利用できるようにしておくことで、今後の症状の進行に備えられるでしょう。

要支援・要介護認定を受ける流れは、以下のとおりです。

① 市区町村役所の担当窓口で申請手続きを行なう
② 調査員による訪問調査を受ける
③ 認知症の診断をした医師やかかりつけ医に、主治医意見書を用意してもらう
④ コンピューターによる一次判定が行なわれる
⑤ 主治医意見書と一次判定の結果をもとに、介護認定審査会が要支援・要介護度を二次判定する
⑥ 認定審査会の審査結果に基づいて市区町村役所が要支援・要介護認定し、その結果が申請者に通知される

認定を受ける際は、事前に本人の様子などを記録しておくと、訪問調査や認定時の資料として役立つでしょう。なお、判定結果は申請から原則30日以内に通知されます。

認知症の検査を受ける際の3つの注意点

最後に、認知症の検査を受ける際に注意すべきポイントを3つ紹介します。

認知症に対する心構えをしておく

認知症に対する理解が浅い、もしくは間違った知識を持つことによって不安を感じたり、ネガティブなイメージを抱いたりする方は少なくありません。検査・治療に対して過度に心配しないためにも、検査を受ける前に認知症に対する理解を深め、心の準備をしておくことが大切です。

そのためには、認知症の症状や検査・診断について解説している本、または認知症経験者・その家族の手記などを読むのがおすすめです。認知症発症者や家族に認知症の方がいる人が集まる会に赴き、情報を集めるのもよいでしょう。

本人だけでなく、家族や周囲の人も認知症を正しく理解することで、ネガティブなイメージが払拭され、不安やストレスの軽減につながります。

検査や検査結果を聞くときは家族に同行してもらう

検査の際は、可能な限り家族も同行しましょう。検査時、本人の普段の様子などを家族に質問する場合があるためです。

同行する家族は、普段からメモを作っておき、あらかじめ医師に情報を共有できるようにしておくと検査をスムーズに進められます。かかりつけ医がいる場合は、既往歴などの情報をまとめ、紹介状やお薬手帳などを持参してください。

また、検査結果を聞くときも、家族が同行するとよいでしょう。家族が同行し話を聞くメリットとしては、複数人で話を聞くことで正確な情報を得られる、検査結果の告知や情報に対して本人および家族で情報の共有が得られるといったことが挙げられます。

不明な点がある場合はセカンドオピニオンも検討する

検査の結果などに不明点や納得できない部分がある場合は、ほかの医療機関でセカンドオピニオンを受けるのもおすすめです。現在受診している病院にセカンドオピニオンを受ける旨を伝えれば、検査の情報を次の医療機関へ提供してくれる場合があります。

認知症は診断が難しく、医師が認知症を見逃す可能性はゼロではありません。認知症は、今後の生活にも大きく影響します。病状をきちんと把握するためにも、ためらわずにセカンドオピニオンを検討するとよいでしょう。

認知症かも?と思ったら早めに認知症検査を受けよう


認知症の症状の進行を抑えるためには、早期発見・治療が重要です。そのため、もし仕事や家事などが以前のようにできない、周囲に何度も同じことを聞いてしまうなど普段と違うことがあれば、早めに認知症の検査を受けましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年8月4日

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