要介護4の状態・認知症との関係とは?
利用できるサービスや支援制度も解説


要介護認定には「要介護4」という区分があります。では要介護4は具体的にどのような状態を指し、どのような介護サービスを利用できるのでしょうか。

要介護4と認定される方は、日常生活の大部分において介助を要する状態です。家族やご自身に介護が必要となった際に慌てないためにも、認定される基準などへの理解を深めておきましょう。

本記事では、要介護4の具体的な状態や利用できる介護サービス、支援制度などについて解説します。

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要介護4とはどのような状態?

まずは、どのような場合に要介護4と認定されるのかを確認しておきましょう。

要介護4は自力での日常生活が難しい状態

要介護4とは、日常生活のほとんどに介助を必要とする状態です。入浴や食事、排泄など、これまでは当たり前のようにできていたことでも、自力で行うことが難しくなります。

歩行や立ち上がり、座った姿勢の維持など、日常生活のなかで必ず起こる動作も、自力では難しいでしょう。

厚生労働省では、要介護状態を「身体上または精神上の障害があるために、入浴や食事、排泄などの日常生活で常時介護を要する状態であり、厚生労働省令で定める区分(要介護状態区分)のいずれかに該当する場合」と定義しています。

要介護4では、理解力や思考力の低下、徘徊や誤食、妄想といった認知症の周辺症状も見受けられるようになります。

要介護4の認定基準

要介護認定の段階を判定する際には、厚生労働省が定めている「要介護認定等基準時間」を用います。要介護認定等基準時間とは、介護にかかる手間を時間であらわしたもので、7段階(「自立」を合わせると8段階)に区分されます。

以下の表によると、要介護4の要介護認定等基準時間は90分以上110分未満です。

分類

要介護認定等基準時間の範囲

要支援1

25分以上32分未満、またはこれに相当する状態

要支援2

要介護1

32分以上50分未満、またはこれに相当する状態

要介護2

50分以上70分未満、またはこれに相当する状態

要介護3

70分以上90分未満、またはこれに相当する状態

要介護4

90分以上110分未満、またはこれに相当する状態

要介護5

110分以上、またはこれに相当する状態

出典:厚生労働省 要介護認定はどのように行われるか
ただし、要介護認定は介護にかかる時間だけではなく、認知症の進行具合や日常生活の自立状態なども含め、多面的に判断されます。

要介護4になる原因

厚生労働省による令和4年の「国民生活基礎調査」によると、脳卒中や骨折・転倒、認知症といった原因が上位を占めています。

ほかにも、神経変性疾患のパーキンソン病や、加齢によって引き起こされる全身の機能低下なども要介護4になる原因です。

要介護4と認知症の関係

要介護4の状態になると、身体機能だけではなく、認知機能も低下しやすくなります。
認知症の進行程度の判断基準として使われるのが「日常生活自立度」です。

認知症高齢者の日常生活自立度は9段階(Ⅰ・Ⅱ・Ⅱa・Ⅱb・Ⅲ・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・M)にランク分けされており、数字が大きくなるほど自立した日常生活が困難であると判定されます。

要介護4では認知症が進行しているケースも多く、9つのランク分けのなかでも大きめの数字になるでしょう。

要介護3・要介護5との違い

以下では、要介護3と要介護5との違いについて解説します。

要介護3との違い

要介護4と要介護3では、介護に要する時間が異なります。前述のとおり、要介護3の基準時間は70分以上90分未満ですが、要介護4は90分以上110分未満です。

また、日常のほとんどに介助が必要なことは共通しているものの、要介護3はサポートがあれば自力でできることもある点に違いが見られます。

認知症の進行状況の点でも、要介護4は要介護3よりも意思疎通を取るのが難しい状況といえるでしょう。

要介護5との違い

要介護5になると、介護に要する基準時間は110分以上です。介助なしでは日常生活を送れず、基本的には寝たきりの状態と考えられるでしょう。

認知機能もさらに低下し、意思疎通が完全にできないケースも見受けられます。

要介護4でも在宅介護は可能?

要介護4の認定を受けるということは、日常生活のほぼすべての場面で介助を要するということです。そのため、一人暮らしはできない可能性が高いでしょう。

また、認知症が進行している場合、意思疎通が難しいことも予想されます。介助者がいたとしても、介護者への負担が大きく、自宅での介護を継続することが困難になる場合もあるかもしれません。

以上のことから、認定を受けた本人や親族が在宅介護を希望する際は、ケアマネジャーと相談しながら無理のないプランを検討することが大切です。

自宅での介護が厳しい状況になった場合は、施設サービスの利用や介護リフォームなども検討する必要があるでしょう。

要介護4で利用できる介護サービス

 
自宅で介護を行う場合は、介護者と被介護者双方の負担を軽減するためにも、公的介護保険の介護サービスを利用するとよいでしょう。

例えば、要介護4では以下のような介護サービスを利用できます。

施設に通う

「通所型サービス」

認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション(デイケア)、地域密着型通所介護、通所介護(デイサービス)、療養通所介護など

自宅で介護を受ける

「訪問型サービス」

訪問リハビリテーション、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、居宅療養管理指導など

「短期入所型サービス」

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)、短期入所生活介護(ショートステイ)など

「地域密着型サービス」

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型特定施設入所者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護など

通い・訪問・宿泊を組み合わせてサービスを利用する場合

看護小規模多機能型居宅看護(複合型サービス)、小規模多機能型居宅介護など

また、福祉用具をレンタル・購入する場合は、公的介護保険が適用されます。

レンタル

車いす、歩行器、床ずれ防止用具、スロープ(工事をともなわないもの)など

購入

腰かけ便座、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトの吊り具部分など



要介護4における公的介護保険の支給限度額

要介護4に定められている支給限度額は、1カ月あたり30万9,380円です。支給限度額の範囲内でサービスを利用する場合は、原則1割を自己負担します。

支給限度額の範囲を超過してサービスを利用することも可能ですが、超過分は全額自己負担となる点に注意が必要です。また、一定以上所得者の場合は2割負担または3割負担となります。

要介護4の方が介護サービスを利用した場合の費用例

厚生労働省「介護サービス概算料金の試算」では、実際に介護サービスを受けた際の費用感を確認することが可能です。参考として、自宅に住む場合と施設に住む場合の、要介護4の方にかかる費用例を紹介します。

<自宅に住む場合>

 

利用回数

費用額

訪問介護

8

25,360

訪問入浴介護

4

57,120

訪問看護

8

43,680

認知症対応型通所介護

4

54,960

福祉用具貸与

-

20,100

1カ月の参考介護サービス費用試算額

201,220

1割負担の自己負担額の目安

20,122

 

<施設に住む場合>

 

費用額

認知症対応型共同生活介護(短期利用以外)

296,330

1カ月の参考介護サービス費用試算額

296,330

1割負担の自己負担額の目安

29,633

※施設介護では、上記費用に加えて食費や居住費などの全額自己負担となる費用があります。

要介護4における金銭的負担を軽減する支援制度9つ

介護を行うとなれば、金銭的負担が大きくなることは想像に難くありません。家計への影響に不安を抱く方もいるかもしれませんが、国や自治体では、金銭的な負担を軽減するための支援制度を設けています。

高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、同じ世帯で医療費と介護サービス費の自己負担があった折に、その合計額が一定の上限を超えた分を払い戻す制度です。

医療保険と公的介護保険の自己負担を合算し、家計の負担を軽減できる仕組みで、上限額は世帯の所得区分によって異なります。

対象期間は毎年8月から翌年7月までの1年間で、原則として申請が必要です。

高額介護サービス費制度

公的介護保険制度において、介護サービスの利用者負担は原則1~3割ですが、サービスの利用頻度や内容によっては、月々の負担額が高額となることもあります。そうした場合に活用できるのが「高額介護サービス費制度」です。

この制度では、1カ月間に支払った自己負担額が定められた上限額を超えた場合、その超過分が払い戻されます。上限額は、同一世帯に属する65歳以上の方の課税所得額に応じて設定されています。

医療費控除

介護に加え、継続的な医療が必要な高齢者も多く、医療費の負担が家計を圧迫するケースもあります。そこで活用したい制度が「医療費控除」です。

1年間(1月~12月)に支払った医療費の合計が10万円、もしくは総所得の5%のいずれか低い金額を超えた場合、その超過分を所得から控除できます。

医療費控除の対象となるのは、診察代、治療費、薬代、通院にかかる交通費などです。控除を受けるには確定申告を行う必要があるため、領収書や明細書を保管するなど、利用した医療費の記録を残しておきましょう。

障害者控除

介護が必要な高齢者のなかには、事故や病気の後遺症などにより、日常生活動作に著しい支障がある方も少なくありません。こうした場合、税制上の「障害者控除」を受けられる可能性があります。

控除の対象は「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3区分に分かれており、所得税や住民税の軽減が期待できます。

控除を受けるためには、市町村長や福祉事務所長による認定を受ける必要があり、申請には医師の診断書や介護認定結果などを提出しなければなりません。認定の基準や申請書類は自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。

特定入所者介護サービス費

「特定入所者介護サービス費」とは、公的介護保険施設に入所する要介護者のうち、所得が低く経済的に困難な人に対して、食費や居住費の自己負担額を軽減する制度です。

対象となるのは、老齢福祉年金受給者や住民税非課税世帯などで、申請により「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。

関連記事:介護保険負担限度額認定証の交付対象者や使用可能な施設 具体的な負担額とは?

住宅改修補助制度

在宅で介護を続ける場合、住環境の整備も重要な課題の一つです。特に要介護4の高齢者では、手すりの設置や段差の解消などの住宅改修が必要になるでしょう。こうした費用の一部を補助してくれるのが「住宅改修補助制度」です。

この制度では、要介護認定を受けた方が自宅の改修を行う際に、最大で20万円の支給限度額まで利用できます。なお、補助金を一度に使い切る必要はなく、数回に分けて利用することも可能です。

関連記事:介護リフォームの補助金とは?支給要件や対象工事と申請方法を詳しく解説

家族介護慰労金

在宅で要介護者の介護を長期間担っている家族に対し、感謝と経済的支援の意味を込めて支給されるのが「家族介護慰労金」です。

各自治体が実施している制度で、支給条件や金額、支給のタイミング(年1回、月額など)は地域によって異なります。

一般的な条件としては「介護者と要介護者が1年以上その自治体に居住していること」や「要介護4または5の認定を受けており、施設に入所せずに在宅で介護されていること」などが挙げられます。

交通機関の割引制度

遠方に住む家族が、介護のために頻繁に移動する場合、交通費が家計を圧迫しかねません。こうした負担を少しでも軽減するために、一部の民間企業では介護に関連した割引制度を導入しています。

例えば、航空会社や鉄道会社によっては、特定の条件を満たした場合に運賃が割引される制度を設けています。

割引の対象者や必要書類、割引率は企業ごとに異なり、利用できる路線や時期によっても変動します。そのため、利用する際は、事前に公式サイトやカスタマーセンターで詳細を確認し、条件を満たすかどうかをチェックしておくと安心です。

おむつ代助成制度

要介護4以上の高齢者では、おむつの使用が日常的になるケースも少なくありません。そのような状況に対して、自治体ごとに実施されているのが「おむつ代助成制度」です。

おむつ代助成制度には「現物支給」と「現金給付」の2つの形態があり、具体的な内容や支給額、対象者の条件は自治体によって異なります。

例えば、要介護3~5の認定を受けており、常時おむつが必要な状態で、今後も継続的な使用が見込まれる65歳以上の高齢者を対象としている自治体があります。

申請には医師の意見書やケアマネジャーの証明などが必要となる場合もあるため、詳細は住んでいる自治体に確認しましょう。

要介護認定の基準を理解して、介護の備えをしておこう


要介護4は、食事や入浴などをはじめ、日常生活のほとんどに介助を必要とする状態です。

要介護認定は、介護にかかる時間をベースとした区分「要介護認定等基準時間」のほか、身体機能や認知機能の低下度合いをランク分けした「日常生活自立度」などから多面的に判定します。

要介護認定を受けた方のための介護サービスや支援制度は充実しているものの、症状の変化や利用するサービス内容によっては、想定以上の費用がかかるかもしれません。

将来必要になる介護を考慮し、事前に備えを始めておくことが大切です。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年5月14日

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