認知症の方の自動車運転はNG?
運転をやめてもらうための方法や運転免許更新時の検査


「認知症の方は運転しても大丈夫なのか?」「高齢の家族に運転をやめてもらうには?」と不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。

認知症と診断されたら運転免許の取り消し・停止となります。認知症家族がなかなか運転をやめてくれない場合、医師など家族以外の人からの説得が必要となる場合もあります。

そのまま運転を続けていると、いずれ大きな事故を起こしてしまう危険性もあります。

この記事では、認知症の方の自動車運転や認知機能検査と事故のリスクなどを解説します。

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医師から認知症と診断されたら運転免許の取り消しまたは停止になる

高齢の家族を持つ方のなかには「認知症の方は自動車を運転してもいい?問題ないの?」と疑問に思っている方もいるかもしれません。医師から認知症と診断された場合は、道路交通法に基づいて運転免許の取り消し・停止となります。

このときの「認知症」とは、「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態」を指します。
事故を未然に防ぐためにも、決して隠れて自動車を運転することのないようにしてください。

75歳以上の方が運転免許更新時に受験する「認知機能検査」について

「認知機能検査」とは、更新期間満了日の年齢が75歳以上の方が、運転免許更新時に受検しなければならない検査のことです。この検査によってドライバーの記憶力や判断力を測り、認知機能の低下や認知症の恐れがあるかないかを判定します。

認知機能検査には、検査時の年月日や時間を記入する「時間の見当識」と、イラストを記憶し、別の課題終了後にそのイラストを思い出す「手がかり再生」の2項目があります。

70歳以上の高齢者における運転免許更新の流れ

ここでは、70歳以上の方の運転免許更新について紹介します。70~74歳と75歳以上とで少し流れが異なるため、当てはまるものをチェックしましょう。

70~74歳の免許更新の流れ

運転免許証の更新期間満了日の年齢が70~74歳の方は、高齢者講習を受講したあとに免許更新の手続きとなります。70歳以上のドライバーは高齢者講習を必ず受講しなければなりません。

高齢者講習は座学・運転適性検査・実車の3つで構成されており、全体の所要時間は2時間です。原付免許・二輪免許・小型特殊免許・大型特殊免許のみをお持ちの方は実車がない分、所要時間は1時間と短くなります。

75歳以上の免許更新の流れ

運転免許証の更新期間満了日の年齢が75歳以上の方は、高齢者講習の前に認知機能検査を受ける必要があります。そして、その判定結果で運転免許更新の流れは変わります。

なお、信号無視や速度超過といった一定の違反歴がある方は「運転技能検査」に合格しないと運転免許証の更新ができないため注意してください。運転技能検査は実際にコースを運転し課題をこなしていくもので、更新期間が満了するまで繰り返し受験できます。

認知機能検査:認知症の恐れなしの場合

認知機能検査で「認知症の恐れなし」と判定された場合は、該当する高齢者講習を受けてから更新手続きとなります。認知機能検査以後は、70~74歳の方と同じ流れです。

認知機能検査:認知症の恐れありの場合

認知機能検査で「認知症の恐れあり」と判定された場合は、臨時適性検査の受検もしくは医師の診断書の提出が必要です。

その結果、認知症ではないと診断されたら高齢者講習を受けて更新手続きとなります。しかし、認知症であると診断された方は、聴聞などの手続きを経て免許の取り消しまたは停止となります。

認知症の方の自動車運転は事故や危険運転のリスクが高い

認知症になると、自動車運転に必要な認知・予測・判断・操作の行動がスムーズにできない可能性があります。そのため、追突事故や接触事故、わき見運転、速度維持の困難といった事故・危険運転のリスクも高まります。

警察庁は、平成29年3月12日~平成30年3月31日のあいだに認知症の恐れがあるとして診断書を提出した方を対象に、診断書提出前1年間の違反・事故件数を調査しました。
その結果でも、実際に認知症と診断された方の違反・事故件数は、認知症ではない方や認知機能低下と診断された方に比べて高いことが報告されています。
また、運転中に「なぜ運転しているのか」「自分は今どこにいるのか」の判断ができず、認知症の方自身がそのまま行方不明になってしまうケースもあります。

自分および他者の安全のためにも、自動車の運転は控えるべきでしょう。

認知症の方に自動車の運転をやめてもらう4つの方法

認知症の家族に運転をやめてもらうには、早いうちから話し合っておくことが大切ですが、なかなかうまくいかない場合もあるでしょう。「事故を起こしていないのにどうして運転してはいけないんだ!」と怒らせてしまったことがある方もいるのではないでしょうか。

ここでは、認知症の方に自動車の運転をやめてもらう方法(家族ができること)を4つ解説します。

第三者から説得してもらう

家族が説得しても聞く耳を持たない場合は、かかりつけ医や孫など普段身近にいる人以外から説得してもらうのが効果的です。家族の言葉には反発していても、医師や目上の人、自分がかわいがっている人からの言葉なら素直に受け止めてくれる可能性があります。

親戚や知人に自主返納をした高齢者がいれば協力してもらうのもおすすめです。

また、どうしても説得が難しい場合は、地域包括支援センターや運転免許センターへ相談してみましょう。自治体によってはアドバイスや本人への指導をしてもらえます。

家族側がどれだけ不安を抱いていても、強制的に運転免許を返納させることはできないため注意が必要です。

運転免許を返納するメリットを説明する

高齢者のなかには「買い物や遊びに行くときの足がなくなる」「友達に会いに行けなくなる」などの理由から自動車の運転をやめたくないと感じている方もいるでしょう。

その場合は、これらの不安を解消できるようなメリットを説明することで、自主返納を前向きに検討してもらえる可能性があります。

運転免許を自主返納する大きなメリットは、運転経歴証明書の交付申請ができることです。運転経歴証明書は身分証明書の代わりになるだけでなく、公共交通機関の割引やレジャー施設の割引といった特典も受けられます。

特典の詳しい内容は自治体によって異なるため、事前に調べておくと認知症の家族の心を動かすヒントが見つかるでしょう。

費用対効果を訴える

車を持っていることでかかる費用と、車を手放したときにかかる費用を計算してみるのも一つの方法です。

車を持ち続ける限り、ガソリン代や駐車場代、車検費用といった維持費がどうしても発生してしまいます。一方で、車を手放した場合はタクシーやバスを使うことになるものの、毎月の交通費を考えると車の維持費より安く済む可能性があります。

運転経歴証明書を利用したり家族が代わりに運転したりすれば、より費用を抑えられるでしょう。

説得する際は、節約して浮いたお金を自分の趣味や家族とのお出かけなどにあてられる点も一緒に伝えるのがポイントです。

高齢ドライバーによる事故の現状を伝える

過去に報道された高齢ドライバーによる事故の話や記事などを話題にすることもよいでしょう。その危険性や家族も責任を負わなければならない可能性などを伝えれば、運転免許を自主返納するきっかけになるかもしれません。

運転をしている中で以下のような行動が見え始めたら、運転をやめてもらうことを視野に入れるべきです。

・知っている場所なのに道に迷う
・急に車線変更することが増えた
・標識の見逃しやウインカーの出し忘れがある
など

認知症の方の気持ちに寄り添って対応することが大切


認知症と診断された場合は、道路交通法に基づき運転免許の取り消しまたは停止となります。

高齢ドライバーの事故は現在多発しているため「事故を起こしたことがないから大丈夫」と思わず、少しでもおかしいなと思ったらなるべく早めに運転をやめてもらう、もしくは運転免許の自主返納を促すことをおすすめします。

その際は、運転をやめてほしい気持ちを押しつけないように気を付けながら、認知症の方の気持ちに寄り添ってじっくり話し合うよう心がけましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年1月26日

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