幻覚症状の原因には、認知症が影響しているものとそれ以外のものがあります。
幻覚症状は主に、レビー小体型認知症で見られます。レビー小体型認知症とは、レビー小体と呼ばれる、異常タンパク質が脳内に蓄積することで発症する認知症です。幻覚症状の中でも、幻視が特徴的な症状として知られています。幻視が現れる原因は、記憶を司る「側頭葉」や情報処理を行う「後頭葉」に異常が起こるためだとされています。レビー小体型認知症の発症割合は女性よりも男性の方が高く、認知症の進行が比較的早いのが特徴です。
認知症になると、神経同士での情報のやり取りに障害が起こります。それにより視覚や聴覚、味覚などの五感、空間認識能力に異常が生じ、幻覚症状を引き起こすのです。また、不安感を抱きやすい環境だと幻覚症状が起こりやすくなります。認知症者は負の感情を記憶しやすいため、幻覚症状が起こるとさらに不安を感じます。悪循環に陥らないよう、環境を整えておくことが重要です。
認知症以外の原因による幻覚症状は、統合失調症やうつ病などの精神疾患で多くなっています。他にも過眠症やナルコレプシーなどの睡眠障害、肝性脳症や単純ヘルペス脳炎などの意識障害が見られる疾患で幻覚症状は生じます。
また、アルコールの過剰摂取や薬の副作用でも幻覚症状が引き起こされる場合があります。認知症の症状である「興奮」や「せん妄」に対して睡眠薬や抗不安薬を用いますが、副作用に「せん妄」のリスクがあります。せん妄とは軽度の意識障害のことで、幻覚症状を引き起こしやすいため注意が必要です。
幻覚にはさまざまな症状があります。認知症の種類によって現れやすい幻覚が異なります。どのような認知症でどういった幻覚が現れやすいかにも注目して見ていきましょう。
レビー小体型認知症で特徴的な症状が「幻視」です。他の人には見えていないものが、見えてしまう症状になります。レビー小体型認知症では、よりリアルに物や人が見えるのが特徴です。アルツハイマー型認知症でも見られる場合がありますが、レビー小体型認知症と比べればあまり目立ちません。
実際には聞こえないものが聞こえてしまう症状が「幻聴」です。幻聴もさまざまで「誰かの声が聞こえる」「電話の音が聞こえる」「誰かと誰かの会話が聞こえる」などがあります。主にレビー小体型認知症で生じます。周囲からは何かに取りつかれているように見え、対応に困りがちです。認知症による症状であることを把握し、冷静に対応しましょう。
幻味は、実際にはない味を感じ、食事の際に「変な味がする」といった発言が見られます。しかし、口の中に食べ物がなかったり、食べていても何も味がしなかったりしても、さまざまな味を感じるようです。
幻臭は、実際にはない臭いを感じ「変な臭いがする」といった発言が見られます。
体感幻覚は、皮膚や臓器に幻覚を生じるものです。具体的には「手足を触られている感じがする」「虫が体を這っている感じがする」「脳が溶けてしまった」といった症状が見られます。精神疾患の患者に多い幻覚症状です。
錯視は、実際にそこにあるものを見間違える現象です。幻覚症状の一種ではありませんが、レビー小体型認知症にて幻視とともに錯視が起こります。錯視がきっかけで幻視が引き起こされることもあります。