ここからは、徘徊を事前に防ぐための対策方法を解説します。
何もやることがなく、話し相手もいないような環境だと、「ここは自分の居場所ではない」と感じ、「家に帰ろう」「外に行ってみよう」という気持ちになりやすいでしょう。
まずは見守りをするなかで、次のような対策をしてみてください。
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仕事や趣味、役割を持つ
簡単な手作業や充実感が得られる役割などを与え、本人にできることをやってもらうようにします。趣味の活動でもよいでしょう。本人の自己肯定感を育むことが「自分の居場所」作りに役立ちます。
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外出などの運動を日課にする
一日中、同じ場所で過ごすのはつらいものです。適度な運動でエネルギーを発散させ、充実感・疲労感を味わってもらうことで、外出衝動を抑えられることもあります。
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規則正しい生活リズムを作る
脱水や体の痛みで夜に眠れないなど、生活のリズムが崩れてしまうと、徘徊につながることがあります。そのような場合は、まず体の状態を改善し、日々の生活リズムを整えることで気持ちが落ち着いてくるかもしれません。
家の外に出てしまう前に、家族・介護者が徘徊に気付ける工夫をしましょう。
徘徊して行方不明になってしまった場合を想定して、事前に以下のような対策をしておくと役立ちます。
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連絡先や本人の氏名などがわかるようにしておく
連絡先や氏名を書いた紙を財布などに入れたり、名札にして服に縫い付けたりしておくと、身元がわかるため早期発見につながりやすくなります。
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GPSを利用する
位置情報を確認できるGPSを利用するのも効果的です。GPSに対応した携帯を首からさげたり、端末を靴に付けたりするなどの対策を、日頃からしておくとよいかもしれません。
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顔写真を用意する
顔写真など日頃の姿を撮影した写真があると、捜索の際に役立ちます。また、当日の服装も重要な情報であるため、毎朝服装を写真に撮っておくのもおすすめです。
自治体が中心になり、認知症の方の徘徊に対応する「徘徊・見守りSOSネットワーク」という制度があります。徘徊が心配な場合は、地域包括支援センターや警察、自治体などの窓口にあらかじめ登録しておきましょう。
担当ケアマネージャーや介護事業所などとも日頃から連絡を密にし、本人が行きそうなお店や駅などを把握しておくと、いざというときに協力をお願いできます。
十分に注意していても、徘徊は起きてしまうことがあります。認知症の方の行方不明は事故などによる命の危険があるため、徘徊で行方不明になってしまった場合は以下のような対処を至急行なってください。
まずは、迅速に警察に届け出ることが重要です。「家族の問題だから」「他人に迷惑をかける」などと躊躇しているうちに、徘徊している人は遠くに行ってしまいます。
少しでも早く連絡したほうが捜索範囲は狭く済み、発見できる可能性も高まります。
一人で、または家族だけで探そうとせず、近所にも協力をお願いしましょう。本人が立ち寄りそうな場所があれば、そこから探します。
先ほど紹介した「徘徊・見守りSOSネットワーク」を活用することも重要です。担当ケアマネージャーや地域包括支援センター、介護事業所などにも連絡し、捜索のコツなどのアドバイスを受けながら、早期に探し出せるように努めましょう。