認知症の症状を落ち着かせる方法は?


認知症患者の介護者のなかには、「認知症にはどのような症状がある?」「症状を落ち着かせる方法は?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。

認知症の症状を落ち着かせるには、介護者が共感する、寄り添う姿勢を心がける、自尊心を傷付けないなどの配慮が必要です。

今回は、認知症の症状や認知症の方への3つの対応ポイント、症状別の対処法を解説します。介護者が介護疲れにならない方法も紹介するので、参考にしてください。

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認知症の症状とは?

認知症の方を介護する際は、症状を理解することが大切です。認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状」の2つに分類されます。

中核症状

「中核症状」は、脳の神経細胞の障害を原因とする認知機能障害です。中核症状には、おもに以下のような症状が挙げられます。

● 失語、失行、失認
● 判断力や理解力の低下
● 記憶障害
● 実行機能障害
● 見当識障害

周辺症状

周辺症状とは、行動・心理症状とも呼ばれ、中核症状に心理要因・身体要因・環境要因が加わることにより出現する症状を指します。

認知症の方に落ち着きが見られなくなるのは、おもに周辺症状によるものです。周辺症状は、以下のように精神症状と行動症状に分けられます。

● 精神症状:抑うつ、不安、幻覚、妄想、無気力など
● 行動症状:多動、不潔行為、暴言暴力、徘徊、暴食など

周辺症状は、多くの要因が原因となって表れるため、症状の出方には個人差があります。

認知症の方への対応 3つのポイント

ここからは、認知症の方への対応ポイントを3つ解説します。

共感や寄り添う姿勢を心がける

認知症の方を介護するときは、共感や寄り添う姿勢で優しく接しましょう。認知症の方が周囲の強い言葉や感情に振り回されず、落ち着いて生活できる場所で過ごすことが、不安やストレスの緩和につながるためです。

また、認知症の方を驚かせないように声かけは一人で行なう、目線を合わせゆっくり話すなどを心がけることもよいでしょう。

自尊心を傷付けない

以前よりも作業スピードが落ちる、できていたことができなくなるなどの症状が見られても、過度に心配する、責める、叱咤するなどの行為は控えましょう。

認知症の方のペースに合わせ、動作や思考を急かさないことが大切です。

良い感情が残るようにサポートする

認知症が進行した際、事実関係を記憶する能力は低下するものの、「悲しい」「楽しい」「寂しい」などの感情は残りやすくなります。

また、認知症の方が、認知症による症状の変化を自覚している場合、不安や孤独感などに苛まれることもあります。

介護者は、優しい言葉をかける、笑顔で話すなど、認知症の方に良い感情が残るようにサポートすることが大切です。

【症状別】認知症の症状を落ち着かせる方法

次に、認知症の症状を落ち着かせる一般的な方法を、症状別に解説します。

収集癖

認知症の症状の一つに、特定のものを集める収集癖があります。収集癖の要因は、「不安や孤独を解消したい」「周りの人から注目されたい」などがあります。

認知症の方にとって収集は意味がある行為のため、ものを勝手に捨てない、集めることを否定しないよう注意してください。

収集したものが成果として理解できるように、整理整頓をして満足感を得られることを促すなどの方法で対処しましょう。

妄想

妄想の症状が出ると「ものを盗まれた」「他人に悪口を言われた」「知らない人が家に入ってくる」など、事実ではないことを本当に起こった出来事のようにとらえてしまいます。

妄想の原因は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、認知症の種類によって異なる場合があるものの、周りの人への不満・恐怖・不安・寂しさなどの感情が原因とされています。

妄想は、「話を聞いてほしい」「共感してほしい」などの感情がもとになる場合もあるため、認知症の方が話す内容を否定も肯定もせず、「そうなんですね、そういったことがあったんですね」と共感しながら話に耳を傾けることが大切です。

徘徊

認知症の方が徘徊する理由には、身体的要因・環境的要因・心理的要因によるものが考えられます。

● 身体的要因:「トイレに行きたい」「水を飲みたい」「お腹が空いた」などの身体的違和感によるもの
● 環境的要因:環境の変化により「居心地が悪い」「ほかの場所に行きたい」などの感情によるもの
● 心理的要因:「会社に行かなければならない」「子どもを迎えに行かなければならない」など、過去の生活習慣や焦燥感、見当識障害が重なった結果によるもの

徘徊の対処法には、徘徊行動を否定しない、日中の運動によるストレスの緩和、睡眠の質の向上を促し昼夜逆転の生活を改善するなどが挙げられます。

徘徊は行方不明や事故の原因になるため、居場所がわからなくなった場合は、速やかに警察に連絡を入れましょう。

暴言・暴力

暴言や暴力の症状が出る要因には、大脳の前頭葉部分の萎縮などが原因による感情抑制の欠如や、失語により感情をうまく伝えられないなどが挙げられます。

また、理解力や認知力の低下による不安、向精神薬による薬の副作用なども要因です。

暴言や暴力を落ち着かせるには、共感しながら話をよく聞く、要因を探し対処するなど、認知症の方が安心して日常生活を送れるよう配慮しましょう。

あまりにも暴言や暴力が収まらない場合は、その場を離れ、時間や距離を置くことも一つの方法です。

介護疲れを軽減するには?

認知症の方の介護では、介護者に精神的・身体的・経済的な負担がかかります。昨今では、介護者による虐待や介護離職などの問題があとを絶ちません。最後に、介護疲れを軽減するための方法を紹介します。

言動の背景を考え対処する

認知症の方の落ち着きのない言動には、不安や混乱、自尊心を傷付けられたなど、それぞれに理由があります。認知症の方を強い言葉で責めたりせず、まずは落ち着きのない言動の背景や要因を冷静に考えましょう。

適切な対応により、認知症の方が落ち着きを取り戻すと、介護負担の軽減につながる可能性があります。

相談することで精神的負担を軽減する

介護期間が長期におよんだ場合、介護者にはさまざまな負担がかかります。介護は一人で抱え込まず、相談することで精神的負担を軽減させましょう。介護に関するおもな相談先は以下のとおりです。

● 地域包括支援センター
● 市区町村の役所
● 居宅介護支援事業所
● 社会福祉協議会
● 通院している病院の医師やソーシャルワーカー
など
介護相談により、介護者の精神的負担が軽減されるだけでなく、新たな解決策も期待できます。

介護サービスの利用を検討する

介護者の負担を減らすには、他人の力を頼ることも大切です。介護サービスを利用し、自分の時間を確保することで、心身の休養やリフレッシュをしましょう。

介護サービスは、要支援・要介護認定を受けた方が利用できるサービスです。サービス内容は、要支援・要介護の度合いによって異なり、デイサービス・ショートステイ・介護保険施設への入居などがあります。

これらの介護サービスを利用する際は、上述の相談先へ問い合わせをするとよいでしょう。

認知症の症状を落ち着かせるには寄り添う心がけが大切


認知症による収集癖・被害妄想・徘徊などの症状には、それぞれに認知症の方の不安・孤独・恐怖などの感情がもとにあります。

そのため、自尊心を傷付けない、良い感情が残るようにサポートするなど、言動に共感し寄り添いながら接することを心がけ、認知症の方が落ち着いた気持ちで暮らせるような環境づくりをすることが重要です。

とはいえ、認知症の症状の度合いや介護の長期化により、介護者にかかる精神的・身体的・経済的な負担も忘れてはなりません。

認知症の介護者は、不安や悩みを一人で抱え込まず、無理なく介護が続けられるように、介護の相談機関や介護サービスの利用を検討しましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年10月2日

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