前述の3つの基本的な対処法に加えて、妄想の種類別に対処法を解説します。種類に合わせた対応をとり、妄想の改善につなげましょう。
物盗られ妄想がある場合、事実を否定も肯定もせず、感情に寄り添って対応することが大切です。誰に何を盗られたのか、認知症の方が話す内容を受け止め、共感しながら妄想が発生した背景を考えていきましょう。
そして妄想の内容をもとに、なくなったものを一緒に探したり、本人が自力で見つけられる場所に置き直したりしてください。なくなったものを自分で発見できれば、認知症の方が安心でき、生活するうえでの自信もつきます。
物盗られ妄想では、なくなったものを認知症の方本人に見つけてもらうことが大切です。なくなったものを認知症の方以外が見つけて指摘してしまうと、新たな妄想に発展するおそれがあります。認知症の方に見つけてもらえるよう工夫しましょう。
見捨てられ妄想は自信の喪失が原因であることが多いため、自信を取り戻せるよう促すことが大切です。日頃からコミュニケーションを密にしていき、得意なことや簡単な作業を頼んで感謝を伝え、達成感を得られるようにしましょう。
自信や達成感が生まれれば、妄想を和らげられる可能性があります。認知症の方の好きなことや得意なことを把握し、生活に楽しみを見つけてもらえるようにしましょう。
被害妄想や迫害妄想の症状がある場合は、妄想によるトラブルを防ぐため、まずは第三者にも症状のことを共有しておくことが大切です。情報を共有していないと、虐待を疑われてしまいかねません。
被害妄想や迫害妄想は、認知症の方からの暴言や暴力をともなう場合もあります。周囲と連携して適度な距離をおき、介護者がストレスを抱え込まないようにしましょう。また、言動をメモしてかかりつけ医に相談するのもおすすめです。
被害妄想・迫害妄想へ対処する際に注意しなければならないのが、認知症の方の訴える被害が事実である場合です。介護者が見ていないところで被害を受けている可能性もあるため、すべて妄想だと決めつけず、訴える内容をよく聞いて事実確認を行ないましょう。
嫉妬妄想では、妄想の内容に合わせた対処が必要です。妄想の内容から、誰のどのような行動に対して不安を抱えているのかを考え、対処していきましょう。
例えば、配偶者が浮気していると感じているなら、配偶者とかかわる時間を増やし、一緒に出かけるなどして配偶者に大切にされていることを実感してもらいます。日頃から丁寧に接することで安心感が生まれ、焦燥感や寂しさを和らげられるでしょう。
自分に自信を持ってもらうために、家庭内での役割を持ってもらうのもおすすめです。家族や大切な人に必要とされている実感を持ってもらえるよう、認知症の方ができることを探してみてください。